第二條 左ニ揭クル電信又ハ電話ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ私設スルコトヲ得
一 一邸宅內若ハ一構內ニ於テ專用ニ供スル爲施設スルモノ
二 鐵道業其ノ他電信電話ノ專用ヲ必要トスル事業ノ爲施設スルモノ
三 公共團體ノ事務執行ノ爲一市區町村內若ハ鄰接市區町村間ニ於テ公署相互間又ハ一郡市區內ニ於テ公署ト第一次監督官廳トノ間ニ施設スルモノ
四 電報送受ノ目的ヲ以テ一人ノ專用ニ供スル爲電信官署トノ間ニ施設スルモノ
五 一市區町村內若ハ鄰接市區町村間ニ於テ又ハ電信電話ノ連絡ナク且第四號ニ依ルヲ不適當トスル市區町村間ニ於テ一人又ハ一營業ノ專用ニ供スル爲施設スルモノ
第三條 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ニ依リ施設シタル電信又ハ電話ヲ公衆通信又ハ軍事上必要ナル通信ノ用ニ供セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ主務大臣ハ吏員ヲ派遣シテ其ノ取扱ヲ爲サシムルコトヲ得
第四條 主務大臣ハ公安ノ爲必要ト認ムルトキハ區域ヲ定メ電信又ハ電話ニ依ル通信ヲ停止若ハ制限スルコトヲ得
第五條 電信又ハ電話ニ依ル通信ニシテ公安ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ壞亂スルモノト認ムルトキハ主務大臣ノ指定シタル電信官署又ハ電話官署ニ於テ之ヲ停止スルコトヲ得
第六條 職務執行中ノ電信又ハ電話ノ工夫配達人及配達用車馬等ハ道路ニ障碍アリテ通行シ難キ場合ニ於テ墻壁又ハ欄柵ナキ宅地田畑其ノ他ノ場所ヲ通行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府ハ被害者ノ請求ニ因リ其ノ損害ノ賠償ヲ爲スヘシ
第七條 職務執行中ノ電信又ハ電話ノ工夫配達人及配達用舟車馬等事故ニ遭遇シタル場合ニ於テ電信又ハ電話ノ工夫配達人若ハ吏員ヨリ助力ヲ求メラレタル者ハ正當ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス此ノ場合ニ於テハ政府ハ助力者ノ請求ニ因リ相當ノ報酬ヲ爲スヘシ
第八條 職務執行中ノ電信又ハ電話ノ工夫配達人及配達用舟車馬等ニ對シテハ渡津、運河、道路、橋梁其ノ他ノ場所ニ於ケル通行錢ヲ請求スルコトヲ得ス
前項ノ工夫及配達人ハ何時ニテモ渡津ノ出船ヲ求ムルコトヲ得
第九條 政府ハ電信又ハ電話ノ用ニ供スル爲鐵道用地及停車場建物ノ一部ヲ使用シ必要アルトキハ建物ノ建築又ハ改築ヲ命スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ土地建物ノ使用料及建築改築ノ費用ハ請求ニ因リ政府之ヲ支給ス
第十條 政府カ鐵道用地內ニ電信線又ハ電話線ヲ施設シタルトキハ使用料ヲ支給セス
第十一條 電信若ハ電話專用ノ物件又ハ現ニ其ノ用ニ供スル物件ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第十二條 電信又ハ電話取扱ニ關シ電信官署又ハ電話官署ニ對シテ無能力者ノ爲シタル行爲ハ能力者ノ爲シタルモノト看做ス
第十三條 電報ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外其ノ宛所ニ配達ス
第十四條 電報ハ命令ヲ以テ定ムル場合ニ限リ發信人ノ請求ニ因リ其ノ送達ヲ停止スルコトヲ得
第十五條 宛所ニ配達シ又ハ受信人ニ交付シ得サル電報ハ之ヲ公示ス其ノ公示ノ日ヨリ三十日間ニ交付ノ請求ナキトキハ之ヲ棄却ス
第十六條 電信官署ニ於テ必要ト認ムルトキハ發信人ニ對シ其ノ電報ニ用井タル祕辭隱語ノ說明ヲ求ムルコトヲ得發信人若其ノ說明ヲ拒ミタルトキハ其ノ電報ノ取扱ヲ拒絕ス
第十七條 電信又ハ電話ニ關スル料金及電信又ハ電話ニ依ル通信ノ取扱ニ必要ナル制限ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十八條 電信又ハ電話ニ關スル旣納及過納ノ料金ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ還付セス
第十九條 發信人ニ於テ前納スヘキ電信ニ關スル料金ニ不足アルトキハ發信人ヨリ其ノ不足額ノ二倍ノ料金ヲ徵收ス
第二十條 電信又ハ電話ニ關スル料金納付ノ義務ハ其ノ納付スヘキ日ヨリ六箇月內ニ納付ノ吿知ヲ受ケサルニ因リテ消滅ス
第二十一條 電信又ハ電話ニ關スル料金ノ不納金額ハ電信官署又ハ電話官署ニ於テ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收ス
前項ノ不納金額ニ付電信官署又ハ電話官署ハ國稅ニ次キ先取特權ヲ有ス
第二十二條 電信又ハ電話ニ依ル通信ニシテ電信、電話及郵便、郵便爲替、郵便貯金ノ事務又ハ氣象報吿ニ關スルモノハ命令ノ定ムル所ニ依リ無料ト爲スコトヲ得
第二十三條 電信又ハ電話ニ關スル料金ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外郵便切手ヲ以テ納付スヘシ
第二十四條 電信又ハ電話ノ取扱ニ關シテハ政府ハ損害賠償ノ責ニ任セス
第二十五條 本法ニ依ル損害賠償又ハ報酬ノ請求權ハ主務大臣ノ指定シタル電信官署又ハ電話官署ニ對シ其ノ事實アリタル日ヨリ三箇月間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第二十六條 電信官署若ハ電話官署ノ賠償又ハ報酬ニ關スル決定ニ對シ不服アル者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三箇月以內ニ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十七條 權利ナクシテ電信若ハ電話ヲ私設シタル者又ハ權利ヲ失ヒタル後主務官署ノ指定シタル期間內ニ私設ノ電信若ハ電話ヲ撤去セサル者ハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ其ノ電信線又ハ電話線及電信又ハ電話ノ機器ヲ沒收ス
前項ノ場合ニ於テ其ノ電信又ハ電話ヲ他人ノ用ニ供シ因テ金錢物品ヲ收得シタルトキハ之ヲ沒收ス旣ニ消費又ハ讓渡シタルトキハ其ノ金額又ハ代價ヲ追徵ス
第一項ノ電信又ハ電話ヲ使用シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十八條 第三條第一項ニ依ル場合ヲ除クノ外私設ノ電信若ハ電話ヲ他人ノ用ニ供シタル者又ハ其ノ私設者ニアラスシテ之ヲ使用シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ金錢物品ヲ收得シタルトキハ之ヲ沒收ス旣ニ消費又ハ讓渡シタルトキハ其ノ金額又ハ代價ヲ追徵ス
第二十九條 第三條第一項ノ場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ電信若ハ電話ノ供用ヲ拒ミ又ハ第九條第一項ノ場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ用地、建物ノ使用ヲ拒ミ若ハ建物ノ建築改築ヲ爲ササル者ハ五圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條 第六條ノ場合ニ於テ通行ヲ拒ミ又ハ第七條ノ場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ助力ヲ拒ミ又ハ第八條ノ場合ニ於テ通行錢ヲ强要シ若ハ正當ノ理由ナクシテ渡津ノ出船ヲ拒ミタル者ハ科料ニ處ス
第三十一條 電信官署又ハ電話官署ノ取扱中ニ係ル通信ノ祕密ヲ侵シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
電信又ハ電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ所爲アリタルトキハ本刑ニ一等ヲ加フ
第三十二條 不正ノ手段ヲ以テ電信又ハ電話ニ關スル料金ヲ免レ又ハ免レムトシタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
電信又ハ電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ所爲アリタルトキハ本刑ニ一等ヲ加フ
第三十三條 自己若ハ他人ニ利益ヲ與ヘ又ハ他人ニ損害ヲ加フル目的ヲ以テ虛僞ノ電報ヲ發シタル者ハ一月以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
前項ノ場合ニ於テ電信爲替ニ要スヘキ電報ニ係ルトキハ輕懲役ニ處ス
電信事務ニ從事スル者前二項ノ所爲アリタルトキハ本刑ニ一等ヲ加フ
第三十四條 電信又ハ電話ノ事務ニ從事スル者電信官署又ハ電話官署ノ取扱中ニ係ル電信又ハ電話ノ用紙ニ貼用シタル郵便切手ヲ剝脫シタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ未タ消印ヲ爲ササルモノニ關シテハ刑法竊盜ノ罪ニ照シテ處斷ス
第三十五條 電信官署ノ取扱中ニ係ル電報ヲ正當ノ事由ナクシテ開披、毀損、隱匿若ハ放棄シタル者又ハ受取人ニ非サル者ニ交付シ若ハ情ヲ知リテ之ヲ受取リタル者又ハ其ノ傳送配達ヲ妨害シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
電信事務ニ從事スル者前項ノ所爲アリタルトキハ本刑ニ一等ヲ加フ
第三十六條 電信若ハ電話ノ事務ニ從事スル者正當ノ事由ナクシテ其ノ通信ノ取扱ヲ拒絕シ又ハ其ノ傳送ヲ遲延セシメタルトキハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十七條 電信線又ハ電話線其ノ他電信又ハ電話ノ機器建造物ヲ毀損シ若ハ通信ヲ障碍シタル者ハ一月以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
過失ニ因リ通信ヲ障碍シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十八條 電信線若ハ電話線ノ建築修理又ハ線路ノ巡視測量ヲ妨害シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第三十九條 電信、電話ノ線條若ハ其ノ支持物ニ物品ヲ懸ケ若ハ擲チ又ハ之ニ動物若ハ舟筏ヲ繫キ又ハ之ヲ汚穢シタル者ハ科料ニ處ス
第四十條 主務官署ノ指定シタル水底電信線路若ハ水底電話線路ノ區域內ニ於テ船舶ヲ繫留シ又ハ漁業採藻ヲ爲シ若ハ土砂ヲ掘鑿シ又ハ水底電信線若ハ水底電話線ノ號標ニ舟筏ヲ繫キ又ハ其ノ號標ヲ毀棄シタル者ハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
水底電信線若ハ水底電話線ノ布設若ハ修理ノ爲其ノ位置ヲ示スヘキ浮標又ハ其ノ布設若ハ修理ニ從事スル船舶ヨリ主務官署ノ指定シタル距離以內ニ於テ前項ノ所爲ヲ爲シ若ハ航行シタル者亦同シ
第四十一條 第三十二條ヲ除クノ外前數條ニ記載シタル輕罪ヲ犯サムトシテ未タ遂ケサル者ハ刑法未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第四十二條 法人ノ業務ニ關シ其ノ代表者又ハ雇人其ノ他ノ從業者前數條ノ罪ヲ犯シタルトキハ其ノ罰則ヲ法人ニ適用ス但シ罰金科料以外ノ刑ニ處スヘキ場合ニ於テハ法人ヲ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
法人ヲ處罰スヘキ場合ニ於テハ法人ノ代表者ヲ以テ被吿人トス
法人ヲ處罰スルノ裁判確定シタル日ヨリ罰金ニ關シテハ一月以內科料ニ關シテハ十日以內ニ之ヲ納完セサルトキハ民事訴訟法第六編ノ規定ニ從ヒテ其ノ執行ヲ爲ス此ノ場合ニ於テハ檢事ノ命令ヲ以テ執行力ヲ有スル債務名義ト同一ノ效力アルモノトス
前項ニ依リ執行ヲ爲スニハ執行前裁判ノ送達ヲ爲スコトヲ要セス
第四十三條 公衆通信又ハ第三條第一項ニ依リ現ニ軍事通信ノ用ニ供スル私設ノ電信又ハ電話ニ關シテハ第九條ヲ除クノ外本法中政府ノ施設ニ係ル電信又ハ電話ニ關スル規定ヲ準用ス
第四十四條 電信又ハ電話ニ非スト雖通報信號ヲ爲スモノニ關シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法ノ規定ヲ準用スルコトヲ得
第四十五條 帝國外國間ニ於ケル電信ニ關シ別ニ法令條約又ハ特許ノ條款ニ明文アルモノハ各其ノ定ムル所ニ依ル