重要物産同業組合法
法令番号: 法律第三十五號
公布年月日: 明治33年3月7日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル重要物產同業組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月六日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
農商務大臣 曾禰荒助
法律第三十五號
重要物產同業組合法
第一條 重要物產ノ生產、製造又ハ販賣ニ關スル營業ヲ爲ス者ハ同業者又ハ密接ノ關係ヲ有スル營業者相集リテ本法ニ依リ同業組合ヲ設置スルコトヲ得
重要物產及密接ノ關係ヲ有スル營業ノ種類ハ農商務大臣ノ認定ニ依ル
第二條 同業組合ハ組合員協同一致シテ營業上ノ弊害ヲ矯正シ其ノ利益ヲ增進スルヲ以テ目的ト爲ス
第三條 同業組合ヲ設置セムトスルトキハ豫メ地區ヲ定メ其ノ地區內ノ同業者三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ但シ二種以上ノ營業者相集リ組合ヲ設置セムトスルトキハ各種營業每ニ三分ノ二以上ノ同意ヲ要ス
第四條 同業組合設置ノ地區內ニ於テ組合員ト同一ノ業ヲ營ム者ハ其ノ組合ニ加入スヘシ但シ營業上特別ノ情況ニ依リ農商務大臣ニ於テ加入ノ必要ナシト認ムル者ハ此ノ限ニ在ラス
第五條 同業組合ハ組合相互ノ氣脈ヲ通シ其ノ目的ヲ達スル爲同業組合聯合會ヲ設置スルコトヲ得
同業組合聯合會ヲ設置セムトスルトキハ其ノ創立總會ヲ開キ定款ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第六條 同業組合及同業組合聯合會ハ法人トス
同業組合及同業組合聯合會ハ營利事業ヲ爲スコトヲ得ス
第七條 同業組合及同業組合聯合會ノ定款ノ變更ハ各其ノ定款ノ規定ニ從ヒ之ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第八條 同業組合及同業組合聯合會ハ左ノ役員ヲ置クヘシ
一 組長 一名
一 副組長 若干名
一 評議員 若干名
前項ノ役員ノ外定款ノ規定ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
役員ハ同業組合ニ於テハ組合員中ヨリ同業組合聯合會ニ於テハ聯合會ヲ組織スル同業組合ノ組合員中ヨリ之ヲ選擧シ農商務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第九條 組長ハ其ノ同業組合又ハ同業組合聯合會ヲ統轄シ其ノ事務ヲ擔任ス
副組長ハ組長ノ事務ヲ輔佐シ組長故障アルトキ之ヲ代理ス
評議員ハ組長ノ諮詢ニ應シ及業務施行ノ狀況ヲ監査スルモノトス
副組長及評議員ハ定款ノ規定ニ依リ組長ノ擔任スル事務ノ一部ヲ分掌スルコトヲ得
組長副組長共ニ故障アルトキハ評議員之ヲ代理ス
第十條 同業組合及同業組合聯合會ハ各其ノ定款ニ於テ檢査規定ヲ設ケ組合員ノ營業品ヲ檢査スルコトヲ得
同業組合及同業組合聯合會ハ各其ノ定款ニ於テ違約者ニ關スル規定ヲ設ケ違約者ニ對シ過怠金ヲ徵シ違約物品ヲ沒收スルコトヲ得
第十一條 同業組合及同業組合聯合會ノ經費ノ豫算竝徵收法ハ各其ノ定款ノ規定ニ從ヒ之ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
經費ノ決算及業務成蹟ハ每年少クトモ一囘組合員ニ公示シ農商務大臣ニ報吿スヘシ
第十二條 同業組合及同業組合聯合會ハ其ノ事務ニ關シ行政廳ニ建議スルコトヲ得又其ノ諮問アルトキハ答申スヘシ
第十三條 同業組合及同業組合聯合會ハ農商務大臣又ハ地方長官ノ命シタル官吏ノ臨檢ヲ拒ムコトヲ得ス又其ノ質問ニ對シ確實ニ答辯スヘキモノトス
第十四條 農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ同業組合及同業組合聯合會ヲ設ケシムルコトヲ得
農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ同業組合ノ地區ノ範圍、營業ノ種類又ハ定款ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第十五條 同業組合若ハ同業組合聯合會ノ決議又ハ其ノ役員ノ行爲ニシテ法律命令ニ違背シ又ハ公益ヲ害シ又ハ其ノ目的ニ違背シ又ハ監督官廳ノ命シタル事項ヲ執行セサルトキハ農商務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 同業組合若ハ同業組合聯合會ノ解散又ハ其ノ業務ノ停止
二 役員ノ解職
三 決議ノ取消
第十六條 同業組合若ハ同業組合聯合會解散ヲ爲サムトスルトキハ組合員三分ノ二以上ノ同意ニ依リ其ノ事由ヲ具シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十七條 地方長官ハ其ノ管內ニ於ケル同業組合及同業組合聯合會ヲ監督シ必要アルトキハ意見ヲ具シ農商務大臣ノ處分ヲ請フヘシ
第十八條 農商務大臣ハ同業組合及同業組合聯合會ニ關シ其ノ職權ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第十九條 第四條第十三條ノ規定ニ違背シタル者ハ二圓以上百圓以下ノ過料ニ處ス
前項ノ過料ニ付テハ非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ヲ準用ス
第二十條 同業組合又ハ同業組合聯合會ノ證票若ハ檢査證ヲ營業品ニ僞リテ附シタル者又ハ僞造、變造ノ證票若ハ檢査證ヲ營業品ニ附シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮又ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
第二十一條 本法ハ明治三十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
重要輸出品同業組合法ハ之ヲ廢止ス
第二十二條 重要輸出品同業組合法ニ依リテ設立シタル組合及聯合會ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依リ設立シタルモノト看做ス
第二十三條 他ノ法律中重要輸出品同業組合法ヲ準用スヘキモノト定メタル場合ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ本法ノ規定ヲ準用シ重要輸出品同業組合法中ノ規定ニ依ルヘキモノト定メタル場合ニ付テハ之ニ相當スル本法ノ規定ヲ準用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル重要物産同業組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月六日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
農商務大臣 曽祢荒助
法律第三十五号
重要物産同業組合法
第一条 重要物産ノ生産、製造又ハ販売ニ関スル営業ヲ為ス者ハ同業者又ハ密接ノ関係ヲ有スル営業者相集リテ本法ニ依リ同業組合ヲ設置スルコトヲ得
重要物産及密接ノ関係ヲ有スル営業ノ種類ハ農商務大臣ノ認定ニ依ル
第二条 同業組合ハ組合員協同一致シテ営業上ノ弊害ヲ矯正シ其ノ利益ヲ増進スルヲ以テ目的ト為ス
第三条 同業組合ヲ設置セムトスルトキハ予メ地区ヲ定メ其ノ地区内ノ同業者三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立総会ヲ開キ定款ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ但シ二種以上ノ営業者相集リ組合ヲ設置セムトスルトキハ各種営業毎ニ三分ノ二以上ノ同意ヲ要ス
第四条 同業組合設置ノ地区内ニ於テ組合員ト同一ノ業ヲ営ム者ハ其ノ組合ニ加入スヘシ但シ営業上特別ノ情況ニ依リ農商務大臣ニ於テ加入ノ必要ナシト認ムル者ハ此ノ限ニ在ラス
第五条 同業組合ハ組合相互ノ気脈ヲ通シ其ノ目的ヲ達スル為同業組合連合会ヲ設置スルコトヲ得
同業組合連合会ヲ設置セムトスルトキハ其ノ創立総会ヲ開キ定款ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第六条 同業組合及同業組合連合会ハ法人トス
同業組合及同業組合連合会ハ営利事業ヲ為スコトヲ得ス
第七条 同業組合及同業組合連合会ノ定款ノ変更ハ各其ノ定款ノ規定ニ従ヒ之ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第八条 同業組合及同業組合連合会ハ左ノ役員ヲ置クヘシ
一 組長 一名
一 副組長 若干名
一 評議員 若干名
前項ノ役員ノ外定款ノ規定ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
役員ハ同業組合ニ於テハ組合員中ヨリ同業組合連合会ニ於テハ連合会ヲ組織スル同業組合ノ組合員中ヨリ之ヲ選挙シ農商務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第九条 組長ハ其ノ同業組合又ハ同業組合連合会ヲ統轄シ其ノ事務ヲ担任ス
副組長ハ組長ノ事務ヲ輔佐シ組長故障アルトキ之ヲ代理ス
評議員ハ組長ノ諮詢ニ応シ及業務施行ノ状況ヲ監査スルモノトス
副組長及評議員ハ定款ノ規定ニ依リ組長ノ担任スル事務ノ一部ヲ分掌スルコトヲ得
組長副組長共ニ故障アルトキハ評議員之ヲ代理ス
第十条 同業組合及同業組合連合会ハ各其ノ定款ニ於テ検査規定ヲ設ケ組合員ノ営業品ヲ検査スルコトヲ得
同業組合及同業組合連合会ハ各其ノ定款ニ於テ違約者ニ関スル規定ヲ設ケ違約者ニ対シ過怠金ヲ徴シ違約物品ヲ没収スルコトヲ得
第十一条 同業組合及同業組合連合会ノ経費ノ予算並徴収法ハ各其ノ定款ノ規定ニ従ヒ之ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
経費ノ決算及業務成蹟ハ毎年少クトモ一回組合員ニ公示シ農商務大臣ニ報告スヘシ
第十二条 同業組合及同業組合連合会ハ其ノ事務ニ関シ行政庁ニ建議スルコトヲ得又其ノ諮問アルトキハ答申スヘシ
第十三条 同業組合及同業組合連合会ハ農商務大臣又ハ地方長官ノ命シタル官吏ノ臨検ヲ拒ムコトヲ得ス又其ノ質問ニ対シ確実ニ答弁スヘキモノトス
第十四条 農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ同業組合及同業組合連合会ヲ設ケシムルコトヲ得
農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ同業組合ノ地区ノ範囲、営業ノ種類又ハ定款ノ変更ヲ命スルコトヲ得
第十五条 同業組合若ハ同業組合連合会ノ決議又ハ其ノ役員ノ行為ニシテ法律命令ニ違背シ又ハ公益ヲ害シ又ハ其ノ目的ニ違背シ又ハ監督官庁ノ命シタル事項ヲ執行セサルトキハ農商務大臣ハ左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 同業組合若ハ同業組合連合会ノ解散又ハ其ノ業務ノ停止
二 役員ノ解職
三 決議ノ取消
第十六条 同業組合若ハ同業組合連合会解散ヲ為サムトスルトキハ組合員三分ノ二以上ノ同意ニ依リ其ノ事由ヲ具シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十七条 地方長官ハ其ノ管内ニ於ケル同業組合及同業組合連合会ヲ監督シ必要アルトキハ意見ヲ具シ農商務大臣ノ処分ヲ請フヘシ
第十八条 農商務大臣ハ同業組合及同業組合連合会ニ関シ其ノ職権ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第十九条 第四条第十三条ノ規定ニ違背シタル者ハ二円以上百円以下ノ過料ニ処ス
前項ノ過料ニ付テハ非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ヲ準用ス
第二十条 同業組合又ハ同業組合連合会ノ証票若ハ検査証ヲ営業品ニ偽リテ附シタル者又ハ偽造、変造ノ証票若ハ検査証ヲ営業品ニ附シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮又ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
第二十一条 本法ハ明治三十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
重要輸出品同業組合法ハ之ヲ廃止ス
第二十二条 重要輸出品同業組合法ニ依リテ設立シタル組合及連合会ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依リ設立シタルモノト看做ス
第二十三条 他ノ法律中重要輸出品同業組合法ヲ準用スヘキモノト定メタル場合ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ本法ノ規定ヲ準用シ重要輸出品同業組合法中ノ規定ニ依ルヘキモノト定メタル場合ニ付テハ之ニ相当スル本法ノ規定ヲ準用ス