陸軍召集条例
法令番号: 勅令第三百九十八號
公布年月日: 明治32年10月9日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ陸軍召集條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年十月七日
陸軍大臣 子爵 桂太郞
勅令第三百九十八號
陸軍召集條例
第一章 總則
第一條 召集及簡閱㸃呼ハ在鄕軍人及國民兵本籍地所管ノ師團長之ヲ掌ル
將官同相當官ノ召集ハ本條例ノ規定ニ依ラス師團長直ニ之ヲ行フ
第二條 戒嚴ヲ宣吿シ得ル權アル司令官時機切迫シテ命ヲ請フ途無キトキハ獨斷シテ充員召集補充召集及國民兵召集ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テ該司令官ハ召集ニ關シ師團長ト同一ノ職權ヲ有ス
第三條 召集事務ニ關シ師團長ノ定メタル規定ハ警視總監地方長官憲兵隊長及其ノ各所部ノ官吏公吏之ヲ遵行スヘシ
師團長ノ定メタル規定ニシテ公示ヲ要スルモノハ明治二十六年勅令第百九十九號ノ規定ヲ準用ス
第四條 師團長ハ定期又ハ臨時ニ地方官廳及公署ニ於ケル召集事務ノ整否ヲ檢閱シ又ハ部下將校ヲシテ之ヲ檢閱セシムヘシ
警視總監地方長官憲兵司令官及憲兵隊長ハ其ノ所部召集事務ノ整否ヲ檢閱シ又ハ部下官吏ヲシテ之ヲ檢閱セシムヘシ
第五條 在鄕軍人ノ召集ニハ召集令狀ヲ用井召集部隊到著地及到著日時ヲ指定シ簡閱㸃呼ニハ㸃呼令狀ヲ用井㸃呼場及到著日時ヲ指定ス
國民兵ノ召集ニハ召集令狀ヲ用井スシテ召集令ヲ達ス
第六條 應召員ノ到著スル地ニハ召集事務所ヲ設ク
第七條 召集ニ應スル爲旅行ヲ爲ス者ニハ其ノ出發前ニ於テ旅費ヲ給ス但シ一日行程以內ヲ旅行シタル後之ヲ給スルコトヲ得國民兵ニ在テハ到著地ニ到著シタル後之ヲ給スルコトヲ得
簡閱㸃呼ニ參會スル者ニハ旅費ヲ給セス
第八條 町村長ハ在鄕軍人名簿及第一國民兵名簿ヲ調製シ常ニ其ノ異動ヲ訂正スヘシ
第九條 本條例中在鄕軍人トアルハ豫備役後備役ノ將校同相當官准士官下士兵卒雜卒職工ヲ包含ス、以下同シ歸休兵及補充兵ヲ謂フ
第十條 本條例中到著地トアルハ召集部隊ノ所在地及應召員ノ召集部隊ニ到ル途中ニ於テ集合場ヲ設ケタル地ヲ謂フ
應召員トアルハ召集ニ應スヘキ者ヲ謂フ
第十一條 本條例中聯隊區司令部トアルハ警備隊司令部又ハ警備隊區司令部、聯隊區トアルハ警備隊區、郡トアルハ島司ヲ置キタル島嶼、島司又ハ郡長ヲ置カサル島嶼ニ在テハ島司又ハ郡長ニ準スヘキ者島司又ハ郡長ニ準スヘキ者無キ島嶼ニ在テハ町村長ニ準スヘキ者ノ管轄區、市東京市京都市大阪市及北海道沖繩縣ノ區ニ在テハ區、北海道ノ區制ヲ施行セサル地方ニ在テハ支廳長ノ管轄區ニ該當ス
第十二條 本條例中聯隊區司令官ノ職務ハ警備隊區ニ在テハ警備隊司令官又ハ警備隊區司令官、郡長ノ職務ハ島司ヲ置キタル島嶼ニ在テハ島司、島司又ハ郡長ヲ置カサル島嶼ニ在テハ島司又ハ郡長ニ準スヘキ者、北海道ノ區制ヲ施行セサル地方ニ在テハ支廳長、郡長及町村長ノ職務ハ市ニ在テハ市長東京市京都市大阪市ニ在テハ區長、北海道及沖繩縣ノ區ニ在テハ區長、島司郡長又ハ之ニ準スヘキ者ヲ置カサル島嶼ニ在テハ町村長ニ準スヘキ者、町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ町村長ニ準スヘキ者之ヲ行フ
第十三條 島嶼ニ於テ本條例中ノ規定ヲ實施スルコト能ハサルトキハ師團長適宜ノ方法ヲ設クルコトヲ得
第十四條 動員ニ方リ休職停職ノ將校同相當官准士官ヲ就職セシメ及十二月一日以後ニ於テ未タ入營セサル現役兵ヲ徵集スルニハ充員召集ノ方法ニ依ル
第二章 充員召集
第一款 通則
第十五條 充員召集トハ動員ニ方リ諸部團隊ノ要員ヲ充足スル爲在鄕軍人ヲ召集スルヲ謂フ
第十六條 充員召集事務ニ關シ職責アル者ハ平時之ニ關スル諸件ヲ計畫準備シ召集實施ニ方リ其ノ事務ニ關シ訓示ヲ請フコトヲ許サス
第二款 充員召集準備
第十七條 師團長ハ召集要員ヲ定メテ各聯隊區ニ配當ス聯隊區司令官ハ之ニ基キ各郡ノ充員召集名簿待命員名簿及充員召集令狀ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第十八條 地方長官東京府ニ在テハ警視總監ハ召集實施ニ方リ應召員ノ宿泊ニ供スル爲軍用旅舍ヲ定メ其ノ他召集ヲ容易ナラシムル措置ヲ爲スヘシ
第三款 充員召集實施
第十九條 充員召集ハ動員令ニ依リ之ヲ實施ス
第二十條 師團長ハ動員令ヲ聯隊區司令官ニ達シ警視總監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
第二十一條 聯隊區司令官ハ動員令ノ達ヲ受ケタルトキハ之ヲ郡長ニ達スヘシ
第二十二條 地方長官東京府ニ在テハ警視總監ハ動員令ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ警察署長警察分署長ヲ包含ス、以下同シニ達シ東京市京都市及大阪市ニ在テハ地方長官之ヲ市長ニ達スヘシ
憲兵隊長ハ動員令ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ憲兵分隊長ニ達スヘシ
第二十三條 郡長ハ動員令ノ達ヲ受ケタルトキハ充員召集令狀ヲ町村長ニ送付スヘシ但シ演習召集敎育召集中ノ者ノ令狀ハ之ヲ送付セサルモノトス
第二十四條 町村長ハ令狀ヲ受ケタルトキハ之ヲ應召員又ハ召集通報人休職停職者ニ軍衙ノ命令ヲ通報スヘキ者ヲ包含ス、以下同シニ交付シ召集通報人ヲ設ケサル不在者ニ在テハ其ノ戶主ニ交付シ受領證ヲ受取ルヘシ
前項ノ場合ニ於テ戶主不在ナルトキハ其ノ家族中家事ヲ擔當スル者ニ令狀ヲ交付シ受領證ヲ受取ルヘシ
召集通報人不在ナルトキハ前二項ニ依ル
第二十五條 應召員ニ代リ令狀ヲ受ケタル者ハ直ニ確實迅速ナル方法ヲ以テ召集部隊到著地及到著日時ヲ本人ニ通報本人ノ所在地ト到著地ト遠隔スル爲到著ヲ遲延スルノ虞アル場合其ノ他必要ノ場合ニ於テハ電信ヲ以テシ其ノ令狀ヲ速ニ交付スルノ處置ヲ爲スヘシ
第二十六條 應召員ハ令狀又ハ召集ノ通報ヲ受ケタルトキハ令狀ヲ携ヘ指定ノ日時ニ到著地ニ到著シ召集事務所ニ屆出ツヘシ但シ通報ヲ受ケタル者ニシテ令狀ノ交付ヲ受クル爲到著ヲ遲延スルノ虞アル場合ニ於テハ令狀ヲ携フルヲ要セス
召集ノ通報ヲ受ケタル應召員ニシテ指定ノ日時ニ到著スルコト能ハサル者ハ所在地ノ憲兵又ハ警察官吏ニ就キ其ノ通報ヲ受ケタル日時及出發日時ノ證明書ヲ受ケ到著ノ上召集事務所ニ屆出ツヘシ
前項ノ場合ニ於テ集合場ニ到著スヘキ者ハ直ニ召集部隊ニ到著スヘシ
第二十七條 應召員ニシテ動員ニ方リ演習召集又ハ敎育召集中ノ者アルトキハ部隊長其ノ召集ヲ解除シ其ノ部隊ノ充員召集ニ應スヘキ者ハ直ニ之ヲ當該部隊ニ編入シ他ノ部隊ノ充員召集ニ應スヘキ者ニハ聯隊區司令官ヨリ受ケタル令狀ヲ交付スヘシ
第二十八條 應召員中令狀又ハ通報受領ノ際傷痍疾病ノ爲應召スルコト能ハサル者ハ令狀又ハ通報受領後二十四時間以內ニ聯隊區司令官ニ宛タル屆書ニ醫師ノ診斷證書及令狀ヲ添ヘ之ヲ本籍地町村長ニ差出スヘシ但シ寄留又ハ旅行先ヨリ屆出ツル者ハ本籍地町村長ニ宛發送スヘシ
令狀又ハ通報受領後出發迄ノ間ニ於テ傷痍疾病ノ爲應召スルコト能ハサルニ至リタル者ハ直ニ前項ノ手續ヲ爲スヘシ
犯罪所在不明等ノ爲應召スルコト能ハサル者アルトキ又ハ其ノ虞アルトキハ令狀ヲ受領シタル者ヨリ令狀受領後二十四時間以內ニ聯隊區司令官ニ宛タル屆書ニ憲兵又ハ警察官吏ノ證明書及令狀ヲ添ヘ之ヲ本籍地町村長ニ差出スヘシ
第一項第二項ノ手續ヲ爲スニ方リ未タ令狀ヲ受領セサル者ハ受領後別ニ之ヲ差出スヘシ
第二十九條 前條ノ場合ニ於テ應召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミタルトキハ直ニ本籍地町村長ニ屆出テ指揮ヲ受クヘシ
町村長ハ前項ノ屆出ヲ受ケタルトキハ聯隊區司令官ノ指定ニ基キ本人ニ出發ヲ命シ又ハ出發ヲ差止ムヘシ
前項ニ依リ出發スル者集合場ニ到著スヘキ者ナルトキハ直ニ召集部隊ニ到著スヘシ
第三十條 應召員ハ途中ニ於テ傷痍疾病ニ罹リ到著ヲ遲延スルノ虞アルトキハ直ニ醫師ノ診斷證書ヲ添ヘ召集部隊長ニ屆出テ出發スルコトヲ得ルニ至リタルトキハ速ニ到著ノ上召集事務所ニ屆出ツヘシ
傷痍疾病ノ外止ムヲ得サル事故ニ因リ到著ヲ遲延スルノ虞アルトキハ其ノ地ノ郡長町村長憲兵警察官吏船長又ハ驛長ノ證明書ヲ受ケ到著ノ上召集事務所ニ屆出ツヘシ
前二項ノ場合ニ於テ集合場ニ到著スヘキ者ハ直ニ召集部隊ニ到著スヘシ
第三十一條 應召員ハ非常事變ニ因リ交通斷絕シタル爲到著地ニ到著スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ旨ヲ最寄諸部團隊諸部團隊無キ地ニ在テハ郡長町村長憲兵又ハ警察官吏ニ屆出ツヘシ
前項ノ屆出ヲ受ケタル者ハ適宜ノ處置ヲ爲シ本人ヲシテ到著地ニ到著セシメ得ルニ至レハ證明書ヲ與ヘ出發セシムヘシ但シ集合場ニ到著スヘキ者ニ在テハ直ニ召集部隊ニ到著セシムヘシ
第三十二條 應召員中事故ニ因リ歸鄕ヲ命セラレタル者ハ陸軍服役條例第八條第二十九條第八十條第百十八條第百三十七條ノ例ニ依リ屆出ツヘシ補充兵ニ在テハ同條例第百三十七條ノ例ニ依リ屆出ツヘシ其ノ召集ニ應スル以前ノ寄留地ニ歸ル者ノ本籍地聯隊區司令官ニ差出スヘキ屆書ニハ寄留地町村長ノ證明ヲ受クヘシ
第四款 充員召集ノ解除
第三十三條 充員召集ノ解除ハ復員令ニ依リ之ヲ實施ス
第三十四條 復員令ノ達及通知ニハ第二十條乃至第二十二條ヲ準用ス
第三十五條 郡長ハ復員令ノ達ヲ受ケタルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第三十六條 召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二條ヲ準用ス
第三章 補充召集
第三十七條 補充召集トハ充員召集實施後缺員ヲ補充スル爲在鄕軍人ヲ召集スルヲ謂フ
第三十八條 師團長ハ補充召集令ヲ聯隊區司令官ニ達シ警視總監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
第三十九條 聯隊區司令官ハ前條ノ達ヲ受ケタルトキハ直ニ補充召集令狀ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第四十條 郡長ハ令狀ヲ受ケタルトキハ之ヲ町村長ニ送付スヘシ
第四十一條 補充召集ニ關シテハ第十六條第二十四條乃至第三十一條及第三十三條ヲ準用ス
應召員中事故ニ因リ歸鄕ヲ命セラレタル者及召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二條ヲ準用ス
第四章 國民兵召集
第四十二條 國民兵召集トハ國民軍ヲ動員スル爲國民兵ヲ召集スルヲ謂フ
國民兵召集ヲ分テ第一國民兵召集第二國民兵召集ノ二種トス
第四十三條 町村長ハ其ノ管內ニ在籍スル國民兵ノ人員表及退役將校同相當官准士官ノ名簿ヲ作リ之ヲ郡長ニ差出スヘシ
第四十四條 郡長ハ前條ノ人員表及名簿ヲ受ケタルトキハ其ノ管內ニ在籍スル國民兵ノ人員表及退役將校同相當官准士官ノ名簿ヲ作リ之ヲ警視總監地方長官及聯隊區司令官ニ差出スヘシ
第四十五條 師團長ハ國民兵ヲ召集スルニハ召集スヘキ國民兵ノ種類年齡集合場其ノ他必要ノ事項ヲ聯隊區司令官ニ達シ其ノ種類年齡及集合場ヲ警視總監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
第四十六條 聯隊區司令官ハ國民兵召集令ノ達ヲ受ケタルトキハ召集スヘキ國民兵ノ種類年齡集合場及集合場到著日時ヲ郡長ニ達スヘシ
第四十七條 國民兵召集ニ關シテハ第二十二條ヲ準用ス
第四十八條 郡長ハ國民兵召集令ノ達ヲ受ケタルトキハ之ヲ町村長ニ達シ應召員到著日時前ニ吏員ヲ集合場ニ派遣スヘシ
第四十九條 町村長ハ國民兵召集令ノ達ヲ受ケタルトキハ直ニ應召員ニ其ノ旨ヲ達シ指定ノ日時迄ニ之ヲ集合場ニ引率シ聯隊區司令官又ハ聯隊區司令部ノ職員ニ交付スヘシ但シ將校同相當官准士官ハ直ニ集合場ニ到著スヘシ
第五十條 聯隊區司令官又ハ聯隊區司令部ノ職員ハ集合場ニ於テ應召員ノ身體檢査ヲ行ヒ召集ニ適セサル者ハ歸鄕セシムヘシ
集合場ニ在ル郡ノ吏員ハ聯隊區司令官又ハ聯隊區司令部ノ職員ノ要求ニ應シ其ノ事務ヲ補助スヘシ
第五章 演習召集
第五十一條 演習召集トハ演習ノ爲在鄕軍人第二補充兵ヲ除クヲ召集スルヲ謂フ
演習召集ヲ分テ定期演習召集臨時演習召集ノ二種トス
第五十二條 臨時演習召集ハ本章ノ規定ニ依ラス臨時規定スルモノヲ除ク外第二章第三款及第四款ヲ準用ス
第五十三條 演習召集ハ本籍所在ノ師管ニ於テス但シ其ノ師管ニ於テ演習ヲ爲スヘキ部隊無キ者ハ他ノ師管ニ於テス
近衞師團ニハ第一師管外ニ在籍スル者ヲ召集スルコトアルヘシ
第五十四條 寄留地ニ於テ演習召集ニ應スヘキ許可ヲ受ケタル者ハ寄留地所管ノ師團長之ヲ召集ス
第五十五條 一年志願兵終末試驗及第證書ヲ所持スル者ヲ士官ニ任スル爲行フ演習召集ニ關シテハ陸軍補充條例ニ依ルノ外仍本章ノ規定ニ依ル
第五十六條 師團長ハ演習召集ノ日時人員日數及部隊ヲ定メ之ヲ聯隊區司令官ニ達シ警視總監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
前項ノ召集日數ハ演習ノ成績ニ依リ之ヲ增加スルコトアルヘシ
第五十七條 聯隊區司令官ハ前條ノ達ヲ受ケタルトキハ演習召集令狀ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第五十八條 應召員中傷痍疾病犯罪所在不明等ノ爲應召スルコト能ハサル者ハ應召員又ハ之ニ代リ令狀ヲ受ケタル者ヨリ到著日時迄ニ聯隊區司令官ニ宛タル屆書及其ノ令狀ヲ本籍地町村長寄留地ニ於テ召集ニ應スヘキ許可ヲ受ケタル者ニ在テハ寄留地町村長ニ差出スヘシ但シ傷痍疾病ニ係ルトキハ醫師ノ診斷證書犯罪所在不明等ニ係ルトキハ憲兵又ハ警察官吏ノ證明書ヲ添フヘシ
前項ノ手續ヲ爲スニ方リ未タ令狀ヲ受領セサル者ハ受領後別ニ之ヲ差出スヘシ
第五十九條 應召員中父母ノ疾病危篤又ハ死亡ノ爲召集ノ延期ヲ願ハントスル者ハ將校同相當官准士官ニ在テハ師團長、下士兵卒及補充兵ニ在テハ聯隊區司令官ニ宛タル願書ヲ本籍地町村長寄留地ニ於テ召集ニ應スヘキ許可ヲ受ケタル者ニ在テハ寄留地町村長ニ差出スヘシ但シ父母ノ疾病危篤ノ者ハ醫師ノ診斷證書ヲ添フヘシ
第六十條 第五十八條ノ場合ニ於テ應召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミタルトキハ直ニ本籍地町村長寄留地ニ於テ召集ニ應スヘキ者ニ在テハ寄留地町村長ニ屆出テ指揮ヲ受クヘシ
町村長ハ前項ノ屆出ヲ受ケタルトキハ聯隊區司令官ノ指定ニ基キ本人ニ出發ヲ命シ又ハ出發ヲ差止ムヘシ
第六十一條 演習召集ニ關シテハ第二十四條第二十五條第二十六條第一項第二項第三十條第一項第二項及第四十條ヲ準用ス
應召員中事故ニ因リ歸鄕ヲ命セラレタル者及召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二條ヲ準用ス
第六章 敎育召集
第六十二條 敎育召集トハ敎育ノ爲第一補充兵ヲ召集スルヲ謂フ
第六十三條 聯隊區司令官ハ敎育召集ノ達ヲ受ケタルトキハ敎育召集令狀ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第六十四條 敎育召集ニ關シテハ第二十四條第二十五條第二十六條第一項第二項第三十條第一項第二項第四十條第五十三條第五十四條第五十六條及第五十八條乃至第六十條ヲ準用ス
應召員中事故ニ因リ歸鄕ヲ命セラレタル者又ハ召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二條ヲ準用ス
第七章 補缺召集
第六十五條 補缺召集トハ平時ニ於テ臨時ニ兵員ノ補缺ヲ要スルトキ歸休兵ヲ召集スルヲ謂フ
第六十六條 補缺召集ハ陸軍大臣ノ認可ヲ得テ師團長之ヲ行フ
第六十七條 聯隊區司令官ハ補缺召集ノ達ヲ受ケタルトキハ補缺召集令狀ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第六十八條 補缺召集ニ關シテハ第二十四條第二十五條第二十六條第一項第二項第三十條第一項第二項第四十條第五十六條第一項第五十八條乃至第六十條ヲ準用ス
第八章 簡閱㸃呼
第六十九條 簡閱㸃呼トハ豫備役後備役下士兵卒歸休兵及第一補充兵ヲ集合シテ之ヲ㸃檢査閱スルヲ謂フ
第七十條 師團長ハ簡閱㸃呼ノ時期ヲ定メ之ヲ聯隊區司令官ニ達スヘシ
第七十一條 師團長ハ部下ノ佐官又ハ尉官ニ簡閱㸃呼執行官ヲ命シ之ニ必要ナル訓示ヲ授クヘシ
簡閱㸃呼ハ參會スヘキ者僅少ナル僻陬ノ地ニ在テハ之ヲ省略スルコトヲ得
第七十二條 聯隊區司令官ハ第七十條ノ達ヲ受ケタルトキハ㸃呼場㸃呼區域及㸃呼日割ヲ定メ之ヲ師團長ニ差出シ警視總監地方長官憲兵隊長簡閱㸃呼執行官及郡長ニ通知スヘシ
第七十三條 地方長官東京府ニ在テハ警視總監及郡長ハ前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ地方長官東京府ニ在テハ警視總監ハ之ヲ警察署長、郡長ハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
憲兵隊長ハ前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ憲兵分隊長ニ達スヘシ
第七十四條 聯隊區司令官ハ㸃呼令狀ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第七十五條 簡閱㸃呼ニ關シテハ第二十四條第二十五條及第四十條ヲ準用ス
第七十六條 令狀又ハ參會ノ通報ヲ受ケタル者ハ指定ノ日時ニ㸃呼場ニ到著シ簡閱㸃呼執行官ニ屆出ツヘシ
第七十七條 町村長ハ簡閱㸃呼ニ參列シ簡閱㸃呼執行官ノ要求ニ應シ其ノ事務ヲ補助スヘシ又必要アルトキハ㸃呼參會者ニ訓示ヲ與フルコトヲ得
第七十八條 令狀又ハ參會ノ通報ヲ受ケタル者ニシテ傷痍疾病犯罪所在不明等ノ爲參會スルコト能ハサル者ハ本人又ハ本人ニ代リ令狀ヲ受ケタル者ヨリ參會日時迄ニ簡閱㸃呼執行官ニ宛タル屆書及其ノ令狀ヲ本籍地町村長寄留地ニ於テ簡閱㸃呼ニ參會スヘキ許可ヲ受ケタル者ニ在テハ寄留地町村長ニ差出スヘシ但シ傷痍疾病ニ係ルトキハ醫師ノ診斷證書、犯罪所在不明等ニ係ルトキハ憲兵又ハ警察官吏ノ證明書ヲ添フヘシ
第七十九條 簡閱㸃呼執行官ハ遲參ノ爲簡閱㸃呼ヲ終ラサル者ニハ他ノ㸃呼場ヲ指定シテ參會ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ令狀ヲ作リ之ヲ交付シ受領證ヲ受取ルヘシ
第九章 罰則
第八十條 正當ノ事由無クシテ第二十五條ノ規定及之ヲ準用シタル規定ニ違背シタル者竝簡閱㸃呼參會者ニシテ㸃呼場ニ於テ簡閱㸃呼執行官ノ命ニ服セス又ハ其ノ職務ノ執行ヲ妨害シタル者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第八十一條 正當ノ事由無クシテ第二十六條第二項第二十八條第一項乃至第三項第二十九條第一項第三十條第一項第二項第三十一條第一項第五十八條第一項第六十條第一項第七十八條ノ規定及之ヲ準用シタル規定ニ違背シタル者竝正當ノ事由無クシテ簡閱㸃呼ニ參會セサル者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第八十二條 正當ノ事由無クシテ第三十二條ノ規定及之ヲ準用シタル規定ニ違背シタル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
附 則
第八十三條 臺灣ニ於テ演習召集敎育召集及簡閱㸃呼ヲ行フニ際シテハ陸軍大臣適宜其ノ方法ヲ規定スルコトヲ得
第八十四條 豫備役後備役屯田兵下士卒ノ召集事務ニ關シ郡長及町村長ノ職務ハ屯田兵村監視之ヲ行フ
第八十五條 士官適任證書所持者ヲ士官ニ任スル爲行フ演習召集ニ關シテハ第五十五條ヲ準用ス
第八十六條 當分ノ內第七師團ニ於テハ演習ノ爲他ノ師管在籍ノ者ヲ召集スルコトヲ得
第八十七條 本條例ハ明治三十二年十月二十日ヨリ施行ス但シ師團長ハ七箇月以內一部ノ施行ヲ延期シ舊令ニ依ルコトヲ得
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ陸軍召集条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年十月七日
陸軍大臣 子爵 桂太郎
勅令第三百九十八号
陸軍召集条例
第一章 総則
第一条 召集及簡閲点呼ハ在郷軍人及国民兵本籍地所管ノ師団長之ヲ掌ル
将官同相当官ノ召集ハ本条例ノ規定ニ依ラス師団長直ニ之ヲ行フ
第二条 戒厳ヲ宣告シ得ル権アル司令官時機切迫シテ命ヲ請フ途無キトキハ独断シテ充員召集補充召集及国民兵召集ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テ該司令官ハ召集ニ関シ師団長ト同一ノ職権ヲ有ス
第三条 召集事務ニ関シ師団長ノ定メタル規定ハ警視総監地方長官憲兵隊長及其ノ各所部ノ官吏公吏之ヲ遵行スヘシ
師団長ノ定メタル規定ニシテ公示ヲ要スルモノハ明治二十六年勅令第百九十九号ノ規定ヲ準用ス
第四条 師団長ハ定期又ハ臨時ニ地方官庁及公署ニ於ケル召集事務ノ整否ヲ検閲シ又ハ部下将校ヲシテ之ヲ検閲セシムヘシ
警視総監地方長官憲兵司令官及憲兵隊長ハ其ノ所部召集事務ノ整否ヲ検閲シ又ハ部下官吏ヲシテ之ヲ検閲セシムヘシ
第五条 在郷軍人ノ召集ニハ召集令状ヲ用井召集部隊到著地及到著日時ヲ指定シ簡閲点呼ニハ点呼令状ヲ用井点呼場及到著日時ヲ指定ス
国民兵ノ召集ニハ召集令状ヲ用井スシテ召集令ヲ達ス
第六条 応召員ノ到著スル地ニハ召集事務所ヲ設ク
第七条 召集ニ応スル為旅行ヲ為ス者ニハ其ノ出発前ニ於テ旅費ヲ給ス但シ一日行程以内ヲ旅行シタル後之ヲ給スルコトヲ得国民兵ニ在テハ到著地ニ到著シタル後之ヲ給スルコトヲ得
簡閲点呼ニ参会スル者ニハ旅費ヲ給セス
第八条 町村長ハ在郷軍人名簿及第一国民兵名簿ヲ調製シ常ニ其ノ異動ヲ訂正スヘシ
第九条 本条例中在郷軍人トアルハ予備役後備役ノ将校同相当官准士官下士兵卒雑卒職工ヲ包含ス、以下同シ帰休兵及補充兵ヲ謂フ
第十条 本条例中到著地トアルハ召集部隊ノ所在地及応召員ノ召集部隊ニ到ル途中ニ於テ集合場ヲ設ケタル地ヲ謂フ
応召員トアルハ召集ニ応スヘキ者ヲ謂フ
第十一条 本条例中連隊区司令部トアルハ警備隊司令部又ハ警備隊区司令部、連隊区トアルハ警備隊区、郡トアルハ島司ヲ置キタル島嶼、島司又ハ郡長ヲ置カサル島嶼ニ在テハ島司又ハ郡長ニ準スヘキ者島司又ハ郡長ニ準スヘキ者無キ島嶼ニ在テハ町村長ニ準スヘキ者ノ管轄区、市東京市京都市大阪市及北海道沖縄県ノ区ニ在テハ区、北海道ノ区制ヲ施行セサル地方ニ在テハ支庁長ノ管轄区ニ該当ス
第十二条 本条例中連隊区司令官ノ職務ハ警備隊区ニ在テハ警備隊司令官又ハ警備隊区司令官、郡長ノ職務ハ島司ヲ置キタル島嶼ニ在テハ島司、島司又ハ郡長ヲ置カサル島嶼ニ在テハ島司又ハ郡長ニ準スヘキ者、北海道ノ区制ヲ施行セサル地方ニ在テハ支庁長、郡長及町村長ノ職務ハ市ニ在テハ市長東京市京都市大阪市ニ在テハ区長、北海道及沖縄県ノ区ニ在テハ区長、島司郡長又ハ之ニ準スヘキ者ヲ置カサル島嶼ニ在テハ町村長ニ準スヘキ者、町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ町村長ニ準スヘキ者之ヲ行フ
第十三条 島嶼ニ於テ本条例中ノ規定ヲ実施スルコト能ハサルトキハ師団長適宜ノ方法ヲ設クルコトヲ得
第十四条 動員ニ方リ休職停職ノ将校同相当官准士官ヲ就職セシメ及十二月一日以後ニ於テ未タ入営セサル現役兵ヲ徴集スルニハ充員召集ノ方法ニ依ル
第二章 充員召集
第一款 通則
第十五条 充員召集トハ動員ニ方リ諸部団隊ノ要員ヲ充足スル為在郷軍人ヲ召集スルヲ謂フ
第十六条 充員召集事務ニ関シ職責アル者ハ平時之ニ関スル諸件ヲ計画準備シ召集実施ニ方リ其ノ事務ニ関シ訓示ヲ請フコトヲ許サス
第二款 充員召集準備
第十七条 師団長ハ召集要員ヲ定メテ各連隊区ニ配当ス連隊区司令官ハ之ニ基キ各郡ノ充員召集名簿待命員名簿及充員召集令状ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第十八条 地方長官東京府ニ在テハ警視総監ハ召集実施ニ方リ応召員ノ宿泊ニ供スル為軍用旅舎ヲ定メ其ノ他召集ヲ容易ナラシムル措置ヲ為スヘシ
第三款 充員召集実施
第十九条 充員召集ハ動員令ニ依リ之ヲ実施ス
第二十条 師団長ハ動員令ヲ連隊区司令官ニ達シ警視総監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
第二十一条 連隊区司令官ハ動員令ノ達ヲ受ケタルトキハ之ヲ郡長ニ達スヘシ
第二十二条 地方長官東京府ニ在テハ警視総監ハ動員令ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ警察署長警察分署長ヲ包含ス、以下同シニ達シ東京市京都市及大阪市ニ在テハ地方長官之ヲ市長ニ達スヘシ
憲兵隊長ハ動員令ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ憲兵分隊長ニ達スヘシ
第二十三条 郡長ハ動員令ノ達ヲ受ケタルトキハ充員召集令状ヲ町村長ニ送付スヘシ但シ演習召集教育召集中ノ者ノ令状ハ之ヲ送付セサルモノトス
第二十四条 町村長ハ令状ヲ受ケタルトキハ之ヲ応召員又ハ召集通報人休職停職者ニ軍衙ノ命令ヲ通報スヘキ者ヲ包含ス、以下同シニ交付シ召集通報人ヲ設ケサル不在者ニ在テハ其ノ戸主ニ交付シ受領証ヲ受取ルヘシ
前項ノ場合ニ於テ戸主不在ナルトキハ其ノ家族中家事ヲ担当スル者ニ令状ヲ交付シ受領証ヲ受取ルヘシ
召集通報人不在ナルトキハ前二項ニ依ル
第二十五条 応召員ニ代リ令状ヲ受ケタル者ハ直ニ確実迅速ナル方法ヲ以テ召集部隊到著地及到著日時ヲ本人ニ通報本人ノ所在地ト到著地ト遠隔スル為到著ヲ遅延スルノ虞アル場合其ノ他必要ノ場合ニ於テハ電信ヲ以テシ其ノ令状ヲ速ニ交付スルノ処置ヲ為スヘシ
第二十六条 応召員ハ令状又ハ召集ノ通報ヲ受ケタルトキハ令状ヲ携ヘ指定ノ日時ニ到著地ニ到著シ召集事務所ニ届出ツヘシ但シ通報ヲ受ケタル者ニシテ令状ノ交付ヲ受クル為到著ヲ遅延スルノ虞アル場合ニ於テハ令状ヲ携フルヲ要セス
召集ノ通報ヲ受ケタル応召員ニシテ指定ノ日時ニ到著スルコト能ハサル者ハ所在地ノ憲兵又ハ警察官吏ニ就キ其ノ通報ヲ受ケタル日時及出発日時ノ証明書ヲ受ケ到著ノ上召集事務所ニ届出ツヘシ
前項ノ場合ニ於テ集合場ニ到著スヘキ者ハ直ニ召集部隊ニ到著スヘシ
第二十七条 応召員ニシテ動員ニ方リ演習召集又ハ教育召集中ノ者アルトキハ部隊長其ノ召集ヲ解除シ其ノ部隊ノ充員召集ニ応スヘキ者ハ直ニ之ヲ当該部隊ニ編入シ他ノ部隊ノ充員召集ニ応スヘキ者ニハ連隊区司令官ヨリ受ケタル令状ヲ交付スヘシ
第二十八条 応召員中令状又ハ通報受領ノ際傷痍疾病ノ為応召スルコト能ハサル者ハ令状又ハ通報受領後二十四時間以内ニ連隊区司令官ニ宛タル届書ニ医師ノ診断証書及令状ヲ添ヘ之ヲ本籍地町村長ニ差出スヘシ但シ寄留又ハ旅行先ヨリ届出ツル者ハ本籍地町村長ニ宛発送スヘシ
令状又ハ通報受領後出発迄ノ間ニ於テ傷痍疾病ノ為応召スルコト能ハサルニ至リタル者ハ直ニ前項ノ手続ヲ為スヘシ
犯罪所在不明等ノ為応召スルコト能ハサル者アルトキ又ハ其ノ虞アルトキハ令状ヲ受領シタル者ヨリ令状受領後二十四時間以内ニ連隊区司令官ニ宛タル届書ニ憲兵又ハ警察官吏ノ証明書及令状ヲ添ヘ之ヲ本籍地町村長ニ差出スヘシ
第一項第二項ノ手続ヲ為スニ方リ未タ令状ヲ受領セサル者ハ受領後別ニ之ヲ差出スヘシ
第二十九条 前条ノ場合ニ於テ応召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミタルトキハ直ニ本籍地町村長ニ届出テ指揮ヲ受クヘシ
町村長ハ前項ノ届出ヲ受ケタルトキハ連隊区司令官ノ指定ニ基キ本人ニ出発ヲ命シ又ハ出発ヲ差止ムヘシ
前項ニ依リ出発スル者集合場ニ到著スヘキ者ナルトキハ直ニ召集部隊ニ到著スヘシ
第三十条 応召員ハ途中ニ於テ傷痍疾病ニ罹リ到著ヲ遅延スルノ虞アルトキハ直ニ医師ノ診断証書ヲ添ヘ召集部隊長ニ届出テ出発スルコトヲ得ルニ至リタルトキハ速ニ到著ノ上召集事務所ニ届出ツヘシ
傷痍疾病ノ外止ムヲ得サル事故ニ因リ到著ヲ遅延スルノ虞アルトキハ其ノ地ノ郡長町村長憲兵警察官吏船長又ハ駅長ノ証明書ヲ受ケ到著ノ上召集事務所ニ届出ツヘシ
前二項ノ場合ニ於テ集合場ニ到著スヘキ者ハ直ニ召集部隊ニ到著スヘシ
第三十一条 応召員ハ非常事変ニ因リ交通断絶シタル為到著地ニ到著スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ旨ヲ最寄諸部団隊諸部団隊無キ地ニ在テハ郡長町村長憲兵又ハ警察官吏ニ届出ツヘシ
前項ノ届出ヲ受ケタル者ハ適宜ノ処置ヲ為シ本人ヲシテ到著地ニ到著セシメ得ルニ至レハ証明書ヲ与ヘ出発セシムヘシ但シ集合場ニ到著スヘキ者ニ在テハ直ニ召集部隊ニ到著セシムヘシ
第三十二条 応召員中事故ニ因リ帰郷ヲ命セラレタル者ハ陸軍服役条例第八条第二十九条第八十条第百十八条第百三十七条ノ例ニ依リ届出ツヘシ補充兵ニ在テハ同条例第百三十七条ノ例ニ依リ届出ツヘシ其ノ召集ニ応スル以前ノ寄留地ニ帰ル者ノ本籍地連隊区司令官ニ差出スヘキ届書ニハ寄留地町村長ノ証明ヲ受クヘシ
第四款 充員召集ノ解除
第三十三条 充員召集ノ解除ハ復員令ニ依リ之ヲ実施ス
第三十四条 復員令ノ達及通知ニハ第二十条乃至第二十二条ヲ準用ス
第三十五条 郡長ハ復員令ノ達ヲ受ケタルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第三十六条 召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二条ヲ準用ス
第三章 補充召集
第三十七条 補充召集トハ充員召集実施後欠員ヲ補充スル為在郷軍人ヲ召集スルヲ謂フ
第三十八条 師団長ハ補充召集令ヲ連隊区司令官ニ達シ警視総監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
第三十九条 連隊区司令官ハ前条ノ達ヲ受ケタルトキハ直ニ補充召集令状ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第四十条 郡長ハ令状ヲ受ケタルトキハ之ヲ町村長ニ送付スヘシ
第四十一条 補充召集ニ関シテハ第十六条第二十四条乃至第三十一条及第三十三条ヲ準用ス
応召員中事故ニ因リ帰郷ヲ命セラレタル者及召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二条ヲ準用ス
第四章 国民兵召集
第四十二条 国民兵召集トハ国民軍ヲ動員スル為国民兵ヲ召集スルヲ謂フ
国民兵召集ヲ分テ第一国民兵召集第二国民兵召集ノ二種トス
第四十三条 町村長ハ其ノ管内ニ在籍スル国民兵ノ人員表及退役将校同相当官准士官ノ名簿ヲ作リ之ヲ郡長ニ差出スヘシ
第四十四条 郡長ハ前条ノ人員表及名簿ヲ受ケタルトキハ其ノ管内ニ在籍スル国民兵ノ人員表及退役将校同相当官准士官ノ名簿ヲ作リ之ヲ警視総監地方長官及連隊区司令官ニ差出スヘシ
第四十五条 師団長ハ国民兵ヲ召集スルニハ召集スヘキ国民兵ノ種類年齢集合場其ノ他必要ノ事項ヲ連隊区司令官ニ達シ其ノ種類年齢及集合場ヲ警視総監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
第四十六条 連隊区司令官ハ国民兵召集令ノ達ヲ受ケタルトキハ召集スヘキ国民兵ノ種類年齢集合場及集合場到著日時ヲ郡長ニ達スヘシ
第四十七条 国民兵召集ニ関シテハ第二十二条ヲ準用ス
第四十八条 郡長ハ国民兵召集令ノ達ヲ受ケタルトキハ之ヲ町村長ニ達シ応召員到著日時前ニ吏員ヲ集合場ニ派遣スヘシ
第四十九条 町村長ハ国民兵召集令ノ達ヲ受ケタルトキハ直ニ応召員ニ其ノ旨ヲ達シ指定ノ日時迄ニ之ヲ集合場ニ引率シ連隊区司令官又ハ連隊区司令部ノ職員ニ交付スヘシ但シ将校同相当官准士官ハ直ニ集合場ニ到著スヘシ
第五十条 連隊区司令官又ハ連隊区司令部ノ職員ハ集合場ニ於テ応召員ノ身体検査ヲ行ヒ召集ニ適セサル者ハ帰郷セシムヘシ
集合場ニ在ル郡ノ吏員ハ連隊区司令官又ハ連隊区司令部ノ職員ノ要求ニ応シ其ノ事務ヲ補助スヘシ
第五章 演習召集
第五十一条 演習召集トハ演習ノ為在郷軍人第二補充兵ヲ除クヲ召集スルヲ謂フ
演習召集ヲ分テ定期演習召集臨時演習召集ノ二種トス
第五十二条 臨時演習召集ハ本章ノ規定ニ依ラス臨時規定スルモノヲ除ク外第二章第三款及第四款ヲ準用ス
第五十三条 演習召集ハ本籍所在ノ師管ニ於テス但シ其ノ師管ニ於テ演習ヲ為スヘキ部隊無キ者ハ他ノ師管ニ於テス
近衛師団ニハ第一師管外ニ在籍スル者ヲ召集スルコトアルヘシ
第五十四条 寄留地ニ於テ演習召集ニ応スヘキ許可ヲ受ケタル者ハ寄留地所管ノ師団長之ヲ召集ス
第五十五条 一年志願兵終末試験及第証書ヲ所持スル者ヲ士官ニ任スル為行フ演習召集ニ関シテハ陸軍補充条例ニ依ルノ外仍本章ノ規定ニ依ル
第五十六条 師団長ハ演習召集ノ日時人員日数及部隊ヲ定メ之ヲ連隊区司令官ニ達シ警視総監地方長官及憲兵隊長ニ通知スヘシ
前項ノ召集日数ハ演習ノ成績ニ依リ之ヲ増加スルコトアルヘシ
第五十七条 連隊区司令官ハ前条ノ達ヲ受ケタルトキハ演習召集令状ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第五十八条 応召員中傷痍疾病犯罪所在不明等ノ為応召スルコト能ハサル者ハ応召員又ハ之ニ代リ令状ヲ受ケタル者ヨリ到著日時迄ニ連隊区司令官ニ宛タル届書及其ノ令状ヲ本籍地町村長寄留地ニ於テ召集ニ応スヘキ許可ヲ受ケタル者ニ在テハ寄留地町村長ニ差出スヘシ但シ傷痍疾病ニ係ルトキハ医師ノ診断証書犯罪所在不明等ニ係ルトキハ憲兵又ハ警察官吏ノ証明書ヲ添フヘシ
前項ノ手続ヲ為スニ方リ未タ令状ヲ受領セサル者ハ受領後別ニ之ヲ差出スヘシ
第五十九条 応召員中父母ノ疾病危篤又ハ死亡ノ為召集ノ延期ヲ願ハントスル者ハ将校同相当官准士官ニ在テハ師団長、下士兵卒及補充兵ニ在テハ連隊区司令官ニ宛タル願書ヲ本籍地町村長寄留地ニ於テ召集ニ応スヘキ許可ヲ受ケタル者ニ在テハ寄留地町村長ニ差出スヘシ但シ父母ノ疾病危篤ノ者ハ医師ノ診断証書ヲ添フヘシ
第六十条 第五十八条ノ場合ニ於テ応召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミタルトキハ直ニ本籍地町村長寄留地ニ於テ召集ニ応スヘキ者ニ在テハ寄留地町村長ニ届出テ指揮ヲ受クヘシ
町村長ハ前項ノ届出ヲ受ケタルトキハ連隊区司令官ノ指定ニ基キ本人ニ出発ヲ命シ又ハ出発ヲ差止ムヘシ
第六十一条 演習召集ニ関シテハ第二十四条第二十五条第二十六条第一項第二項第三十条第一項第二項及第四十条ヲ準用ス
応召員中事故ニ因リ帰郷ヲ命セラレタル者及召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二条ヲ準用ス
第六章 教育召集
第六十二条 教育召集トハ教育ノ為第一補充兵ヲ召集スルヲ謂フ
第六十三条 連隊区司令官ハ教育召集ノ達ヲ受ケタルトキハ教育召集令状ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第六十四条 教育召集ニ関シテハ第二十四条第二十五条第二十六条第一項第二項第三十条第一項第二項第四十条第五十三条第五十四条第五十六条及第五十八条乃至第六十条ヲ準用ス
応召員中事故ニ因リ帰郷ヲ命セラレタル者又ハ召集解除ヲ命セラレタル者ニハ第三十二条ヲ準用ス
第七章 補欠召集
第六十五条 補欠召集トハ平時ニ於テ臨時ニ兵員ノ補欠ヲ要スルトキ帰休兵ヲ召集スルヲ謂フ
第六十六条 補欠召集ハ陸軍大臣ノ認可ヲ得テ師団長之ヲ行フ
第六十七条 連隊区司令官ハ補欠召集ノ達ヲ受ケタルトキハ補欠召集令状ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第六十八条 補欠召集ニ関シテハ第二十四条第二十五条第二十六条第一項第二項第三十条第一項第二項第四十条第五十六条第一項第五十八条乃至第六十条ヲ準用ス
第八章 簡閲点呼
第六十九条 簡閲点呼トハ予備役後備役下士兵卒帰休兵及第一補充兵ヲ集合シテ之ヲ点検査閲スルヲ謂フ
第七十条 師団長ハ簡閲点呼ノ時期ヲ定メ之ヲ連隊区司令官ニ達スヘシ
第七十一条 師団長ハ部下ノ佐官又ハ尉官ニ簡閲点呼執行官ヲ命シ之ニ必要ナル訓示ヲ授クヘシ
簡閲点呼ハ参会スヘキ者僅少ナル僻陬ノ地ニ在テハ之ヲ省略スルコトヲ得
第七十二条 連隊区司令官ハ第七十条ノ達ヲ受ケタルトキハ点呼場点呼区域及点呼日割ヲ定メ之ヲ師団長ニ差出シ警視総監地方長官憲兵隊長簡閲点呼執行官及郡長ニ通知スヘシ
第七十三条 地方長官東京府ニ在テハ警視総監及郡長ハ前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ地方長官東京府ニ在テハ警視総監ハ之ヲ警察署長、郡長ハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
憲兵隊長ハ前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ憲兵分隊長ニ達スヘシ
第七十四条 連隊区司令官ハ点呼令状ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第七十五条 簡閲点呼ニ関シテハ第二十四条第二十五条及第四十条ヲ準用ス
第七十六条 令状又ハ参会ノ通報ヲ受ケタル者ハ指定ノ日時ニ点呼場ニ到著シ簡閲点呼執行官ニ届出ツヘシ
第七十七条 町村長ハ簡閲点呼ニ参列シ簡閲点呼執行官ノ要求ニ応シ其ノ事務ヲ補助スヘシ又必要アルトキハ点呼参会者ニ訓示ヲ与フルコトヲ得
第七十八条 令状又ハ参会ノ通報ヲ受ケタル者ニシテ傷痍疾病犯罪所在不明等ノ為参会スルコト能ハサル者ハ本人又ハ本人ニ代リ令状ヲ受ケタル者ヨリ参会日時迄ニ簡閲点呼執行官ニ宛タル届書及其ノ令状ヲ本籍地町村長寄留地ニ於テ簡閲点呼ニ参会スヘキ許可ヲ受ケタル者ニ在テハ寄留地町村長ニ差出スヘシ但シ傷痍疾病ニ係ルトキハ医師ノ診断証書、犯罪所在不明等ニ係ルトキハ憲兵又ハ警察官吏ノ証明書ヲ添フヘシ
第七十九条 簡閲点呼執行官ハ遅参ノ為簡閲点呼ヲ終ラサル者ニハ他ノ点呼場ヲ指定シテ参会ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ令状ヲ作リ之ヲ交付シ受領証ヲ受取ルヘシ
第九章 罰則
第八十条 正当ノ事由無クシテ第二十五条ノ規定及之ヲ準用シタル規定ニ違背シタル者並簡閲点呼参会者ニシテ点呼場ニ於テ簡閲点呼執行官ノ命ニ服セス又ハ其ノ職務ノ執行ヲ妨害シタル者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第八十一条 正当ノ事由無クシテ第二十六条第二項第二十八条第一項乃至第三項第二十九条第一項第三十条第一項第二項第三十一条第一項第五十八条第一項第六十条第一項第七十八条ノ規定及之ヲ準用シタル規定ニ違背シタル者並正当ノ事由無クシテ簡閲点呼ニ参会セサル者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第八十二条 正当ノ事由無クシテ第三十二条ノ規定及之ヲ準用シタル規定ニ違背シタル者ハ五銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
附 則
第八十三条 台湾ニ於テ演習召集教育召集及簡閲点呼ヲ行フニ際シテハ陸軍大臣適宜其ノ方法ヲ規定スルコトヲ得
第八十四条 予備役後備役屯田兵下士卒ノ召集事務ニ関シ郡長及町村長ノ職務ハ屯田兵村監視之ヲ行フ
第八十五条 士官適任証書所持者ヲ士官ニ任スル為行フ演習召集ニ関シテハ第五十五条ヲ準用ス
第八十六条 当分ノ内第七師団ニ於テハ演習ノ為他ノ師管在籍ノ者ヲ召集スルコトヲ得
第八十七条 本条例ハ明治三十二年十月二十日ヨリ施行ス但シ師団長ハ七箇月以内一部ノ施行ヲ延期シ旧令ニ依ルコトヲ得