陸軍召集条例
法令番号: 勅令第三百六十四號
公布年月日: 明治29年11月13日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ陸軍召集條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年十一月十二日
陸軍大臣 子爵 高島鞆之助
勅令第三百六十四號
陸軍召集條例
第一章
綱領
第二章
充員召集
第一款
總則
第二款
充員召集準備
第三款
充員召集實施
第四款
充員召集準備ノ復舊
第三章
國民兵召集
第一款
總則
第二款
國民兵召集準備
第三款
國民兵召集實施
第四章
演習召集
第一款
總則
第二款
演習召集準備
第三款
演習召集實施
第五章
敎育召集
第一款
總則
第二款
敎育召集準備
第三款
敎育召集實施
第六章
補缺召集
第七章
簡閱㸃呼
第一款
總則
第二款
簡閱㸃呼準備
第三款
簡閱㸃呼實施
附 則
陸軍召集條例
第一章 綱領
第一條 本條例ハ戰時若クハ事變ニ際シ陸軍ヲ動員スル爲メ及平時ニ於テ演習、敎育、補缺、簡閱㸃呼ヲ行フ爲メ在鄕ノ陸軍軍人及兵役義務アル者ノ召集ニ關スル事ヲ規定ス
第二條 各師團及警備隊ノ召集區ハ當該師管及警備隊區トス
召集ハ召集區ニ於テスルヲ例トス但場合ニ依リ召集區外ニ召集スルコトアルヘシ
第三條 在鄕軍人及兵役義務者ノ召集ハ召集區所管ノ師團長之ヲ行フ
將官同相當官ノ召集ハ本條例ノ規定ニ依ラス陸軍大臣ノ命令ニ基キ師團長直ニ之ヲ行フ
第四條 戒嚴ヲ宣吿シ得ル權アル司令官時機切迫シテ命ヲ請フ途ナキトキハ獨斷シテ充員召集令及國民兵召集令ヲ下スコトヲ得此ノ場合ニ於テ該司令官ハ召集ニ關シ師團長ト同一ノ職權ヲ有ス
第五條 在鄕軍人及補充兵ヲ召集スルニハ召集令狀ヲ用井其ノ編入スヘキ部隊竝ニ到著地㸃及其ノ期日ヲ指定スヘシ
後備役屯田兵下士以下ヲ召集スルニハ召集令狀ヲ用井スシテ召集令ヲ本人ニ達スヘシ
國民兵ヲ召集スルニハ召集令傳達書ヲ用井其ノ集合地㸃及其ノ期日ヲ指定スヘシ
簡閱㸃呼ヲ爲スニハ㸃呼令狀ヲ用井㸃呼場及其ノ到著日時ヲ指定スヘシ
第六條 召集事務ニ關シ師團長ノ爲シタル規定ハ地方長官、警視總監、憲兵司令官及憲兵隊長之ヲ遵行スヘシ
第七條 師團長ハ定期ニ若クハ臨時ニ聯隊區司令部竝ニ地方官廳及公署ニ於ケル召集事務ノ整否ヲ檢査シ又ハ部下將校ヲシテ之ヲ檢査セシムヘシ
地方長官、警視總監、憲兵司令官、憲兵隊長ハ其ノ所部召集事務ノ整否ヲ檢査シ又ハ部下官吏ヲシテ之ヲ檢査セシムヘシ
第八條 充員召集及國民兵召集旅費支出ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第九條 此ノ條例中聯隊區司令官同副官ノ職務ハ警備隊區ニ在テハ警備隊司令官同副官、郡長ノ職務ハ島廳ヲ置ク島嶼ニ在テハ島司、郡長及町村長ノ職務ハ市ニ在テハ市長東京市京都市大阪市及市制町村制ヲ施行セサル地方ノ區ニ在テハ區長町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ戶長及之ニ準スヘキ者之ヲ行フ
後備役屯田兵下士以下ノ召集事務ニ關シ郡長及町村長ノ職務ハ屯田兵村監視之ヲ行フ
第十條 此ノ條例中聯隊區司令部トアルハ警備隊司令部ニ郡トアルハ島廳ヲ置キタル島嶼、市東京市京都市大阪市及市制町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ區ニ當該ス
第十一條 島嶼ニ於テ此ノ條例中ノ規定ヲ實施スルコト能ハサルトキハ師團長適宜ノ方法ヲ設クルコトヲ得
第二章 充員召集
第一款 總則
第十二條 充員召集トハ動員ニ際シ陸軍ノ全部若クハ一部ヲ充員スル爲メ及動員完結後缺員ヲ補充スル爲メ其ノ要員ヲ召集スルヲ謂フ
第十三條 充員召集事務ニ關シ職責アル者ハ平時豫メ之ニ關スル行務ヲ計畫準備シ有事ノ際決シテ遺算無キヲ要ス
第十四條 充員召集發令後ハ召集事務ニ關シ訓示ヲ請フコトヲ許サス
第二款 充員召集準備
第十五條 充員召集ニ關スル諸準備ハ動員年度ノ初日ニ於ケル現在員ヲ豫定シテ之ヲ爲シ此ノ期日以前ニ結了スヘシ
第十六條 師團長ハ諸部團隊ヲ同時ニ或ハ各別ニ充員シ得ヘク準備スヘシ
第十七條 師團長ハ每年諸部團隊ノ充足要員ヲ定メ將校佐官同相當官尉官同相當官及准士官ヲ謂フ、以下同シハ人名、下士以下ハ人員ヲ以テ各聯隊區ニ配當シ之ヲ聯隊區司令官ニ達スヘシ
師團長ハ他ノ師管ヨリ召集ニ應スヘキ者アルトキハ前項ニ依リ該師管ノ聯隊區ニ配當シ之ヲ本籍所管ノ師團長ニ通知ス本籍所管ノ師團長ハ之ヲ聯隊區司令官ニ達スヘシ
第十八條 聯隊區司令官前條ノ配當ヲ受クルトキハ之ニ基キ聯隊區ノ充員名簿ヲ作リ更ニ各郡ノ充員名簿及召集令狀屯田後備役兵村ニ在テハ各兵村ノ充員名簿ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
警備隊司令官ハ自ラ警備隊ノ充足要員ヲ定メ前項ノ取扱ヲ爲スヘシ
第十九條 郡長充員名簿竝ニ召集令狀ヲ受領シタルトキハ召集令狀ニ所要ノ記入ヲ爲シ各町村ノ充員名簿ヲ作リ召集令狀ト共ニ町村長ニ送付スヘシ
第二十條 町村長充員名簿竝ニ召集令狀ヲ受領シタルトキハ之ヲ保管シ召集ニ當リ速ニ召集令狀ヲ本人ニ交付スルノ準備ヲ爲スヘシ
町村長ハ充員名簿ニ記載シ在ル應召員將校以下召集ニ應スヘキ者ヲ謂フ、以下同シニ其ノ編入セラルヘキ部隊竝ニ到著地ヲ豫メ通知スヘシ
第二十一條 召集ニ際シ應召員ノ宿泊ニ供スル爲メ軍用旅舍ヲ定メ之ニ看板及標旗若クハ標燈ヲ揭ケシメ又通行ニ支障無カラシムル等召集ヲ容易ナラシムル爲メ地方長官ハ豫メ憲兵隊長東京府ニ在テハ警視總監憲兵司令官、以下同シト協議シ相當ノ措置ヲ爲スヘシ
第三款 充員召集實施
第二十二條 師團長ハ動員令ニ從ヒ其ノ師團ノ全部或ハ一部ヲ充員スル爲メ充員召集令ヲ部下諸部團隊長ニ達シ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
他ノ師管ヨリ召集ニ應スヘキ者アルトキハ其ノ本籍所管ノ師團長ニ通知シ該師團長ハ之ヲ聯隊區司令官ニ達シ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第二十三條 充員召集令ヲ受ケタル官衙竝ニ公署ハ直ニ軍事警報ヲ揭示スルモノトス但師團長ハ陸軍大臣ノ命ニ依リ之ヲ揭示セシメサルコトヲ得
第二十四條 召集令ハ確實迅速ナル方法ヲ以テ通達スヘシ
第二十五條 聯隊區司令官充員召集令ヲ受クルトキハ直ニ之ヲ郡長ニ達スヘシ
聯隊區司令官ハ召集期日前ニ其ノ司令部員若干ニ充員名簿戰時名簿補充兵ニシテ戰時名簿無キ者ニ在テハ補充兵名簿ヲ携帶セシメ充員交付官トシテ豫定ノ場所ニ到リ召集事務所ヲ開設セシムヘシ
第二十六條 地方長官充員召集令ヲ受クルトキハ之ヲ郡長其ノ他關係アル官衙ニ達スヘシ
憲兵隊長充員召集令ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第二十七條 郡長地方長官若クハ聯隊區司令官ヨリ充員召集令ヲ受クルトキハ其ノ何レヨリ受クルヲ問ハス速ニ之ヲ町村長ニ達シ召集事務ニ服行スヘシ
屯田兵村監視充員召集令ヲ受クルトキハ之ヲ應召員ニ達スヘシ
第二十八條 町村長充員召集令ヲ受クルトキハ召集令狀ニ所要ノ記入ヲ爲シ直ニ豫定ノ方法ヲ以テ之ヲ應召員又ハ召集通報人ニ交付シ受領證ヲ受取ルヘシ
召集通報人ヲ設ケサル不在者ニ在テハ其ノ戶主本人戶主又ハ戶主不在ナレハ其ノ家族中家事ヲ擔當スル者、以下同シニ交付スヘシ
町村長ハ第一項第二項ニ依リ召集令狀ヲ交付シタル者ノ人名竝ニ事故アリテ之ヲ交付シ得サル者ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第二十九條 應召員ニ代リ召集令狀ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ召集令狀ヲ速ニ本人ニ交付スルノ處置ヲ爲スヘシ
第三十條 將校召集令狀ヲ受領スルトキハ旅費ヲ受領シテ速ニ所命ノ地ニ到著シ其ノ召集事務所ニ屆出ヘシ
第三十一條 下士以下ノ應召員召集令狀ヲ受領スルトキハ旅費ヲ受領シ其ノ令狀ニ定メラレタル期日ニ所命ノ地ニ到著シ召集事務所ニ屆出ヘシ
第二補充兵第一補充兵ニシテ敎育ヲ受ケサル者亦同シハ郡每ニ郡ノ吏員之ヲ引率シ召集事務所ニ到リ充員交付官ニ交付スヘシ
第三十二條 憲兵及警察官吏ハ町村長ヨリ第二十八條第三項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ應召員ヲシテ所命ノ期日ニ應召セシムルノ處置ヲ爲スヘシ
第三十三條 召集令狀ヲ受領スルモ傷痍疾病ノ爲メ應召スルコト能ハサル者ハ醫師ノ診斷證書ヲ添ヘ本人ヨリ聯隊區司令官ニ宛テタル屆書ヲ召集令狀受領後二十四時間以內ニ町村長ニ差出スヘシ
旅行、犯罪、失踪等ノ爲メ應召スルコト能ハサル者アルトキハ召集令狀ヲ受領シタル者ヨリ召集令狀受領後二十四時間以內ニ聯隊區司令官ニ宛テタル屆書ヲ町村長ニ差出スヘシ但犯罪、失踪等ニ係ルトキハ憲兵若クハ警察官吏ノ證明書ヲ添フヘシ
町村長第一項第二項ノ屆書ヲ受領スルトキハ調査ノ上每日之ヲ取纒メテ郡長ニ差出スヘシ郡長ハ每日之ヲ取纒メテ聯隊區司令官ニ差出スヘシ
第三十四條 前條第一項第二項ノ場合ニ於テ應召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミタルトキハ直ニ町村長ニ屆出テ其ノ指揮ヲ受クヘシ
前項ノ場合ニ於テ町村長ハ其ノ充員完結前ニ在テハ召集令狀ノ裏面ニ其ノ事由及出發日時ヲ記シ本人ヲシテ旅費ヲ受領シ出發セシメ其ノ充員完結後ニ在テハ其ノ出發ヲ差止メ置クヘシ
町村長ハ前項ノ者アルトキハ每日之ヲ取纒メテ郡長ニ報吿シ郡長ハ每日之ヲ取纒メテ聯隊區司令官ニ報吿スヘシ
第三十五條 應召員途中ニ於テ已ムヲ得サル事故ノ爲メ到著ヲ遲延スル場合ニ在テ其ノ事故傷痍疾病ナルトキハ醫師ノ診斷證書ヲ其ノ他ハ郡長、町村長、憲兵、警察官吏、船長若クハ驛長ニ就キ證明書ヲ受領シ到著ノ上召集事務所ニ差出スヘシ
第三十六條 應召員非常ノ情況ニ際シ交通斷絕シ所命ノ地ニ到著スルコト能ハサル場合ニ在テハ其ノ旨ヲ最寄諸部團隊諸部團隊無キ地ニ在テハ郡長、町村長、憲兵、警察官吏ニ屆出ヘシ
前項ノ屆出ヲ受ケタル者ハ適宜ノ處置ヲ爲シ事情之ヲ許スニ至レハ其ノ事由ヲ證明シ本人ヲ所命ノ地ニ到著セシムヘシ
第三十七條 應召員中過員若クハ事故ニ依リ歸鄕ヲ命セラレタル者ハ陸軍服役條例第八條第二十九條第八十條第百十八條第百三十七條ノ例ニ依リ屆出ヘシ補充兵ニ在テハ同條例第百三十七條ノ例ニ依リ屆出ヘシ
第三十八條 正當ノ事由無クシテ第二十九條ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
正當ノ事由無クシテ第三十三條第一項第二項第三十四條第一項第三十六條第一項ノ規定ニ背ク者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第三十七條ノ屆出ヲ怠ル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
第三十九條 充員完結スルトキハ諸部團隊長ハ之ヲ師團長ニ報吿シ師團長ハ之ヲ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知シ地方長官ハ之ヲ郡長其ノ他關係アル官衙ニ憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
他ノ師管ヨリ召集ニ應シタル者アルトキハ師團長ハ尙ホ其ノ本籍所管ノ師團長ニ通知シ該師團長、地方長官竝ニ憲兵隊長ハ前項ノ通達ヲ爲スヘシ
郡長第一項第二項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第四十條 動員完結後缺員ヲ補充スル爲メノ充員召集ハ必要ニ應シ師團長直ニ之ヲ行フ此ノ場合ニ於テハ第二十二條乃至第三十九條ノ例ニ依ル
第四款 充員召集準備ノ復舊
第四十一條 復員令下ルトキハ師團長ハ諸部團隊長ニ達シ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知シ地方長官ハ之ヲ郡長其ノ他關係アル官衙ニ憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
他ノ師管ヨリ召集ニ應シタル者アルトキハ師團長ハ尙ホ其ノ本籍所管ノ師團長ニ通知シ該師團長、地方長官竝ニ憲兵隊長ハ前項ノ通達ヲ爲スヘシ
郡長第一項第二項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第四十二條 師團長ハ復員後勉メテ速ニ充員召集準備ヲ復舊スルモノトス
第四十三條 復員ニ方リ歸鄕ヲ命セラレタル者ニハ第三十七條ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八條第二項ヲ適用ス
第三章 國民兵召集
第一款 總則
第四十四條 國民兵召集ニ關シテハ本章規定スルモノヲ除クノ外第十三條第十四條第十五條第十六條第二十一條第二十二條第二十三條第二十四條第二十六條第二十七條第一項第三十九條第四十條第四十一條第四十二條ノ規定ニ準據スヘシ
第四十五條 國民兵召集ヲ分テ第一國民兵召集第二國民兵召集ノ二種トス
第四十六條 第一第二國民兵ハ所要ニ應シ年齡若キ者ヨリ之ヲ召集スルヲ例トス但幹部ニ充ツヘキ者ハ年齡ニ關セス之ヲ召集スルコトヲ得
第四十七條 第二國民兵中十七歲以上二十一歲未滿ノ者ハ特別ノ命令アルニ非レハ之ヲ召集スルコトナシ
第二款 國民兵召集準備
第四十八條 町村長ハ每年一囘其ノ管內ニ在籍スル第一第二國民兵ノ人員表各二通ヲ製シ各一通ヲ郡長ニ差出シ他ハ之ヲ保管スヘシ
第四十九條 郡長前條ノ人員表ヲ受領シタルトキハ其ノ管內ノ第一第二國民兵人員表ヲ各別ニ調製シ之ヲ聯隊區司令官ニ送付スヘシ
第五十條 聯隊區司令官前條ノ人員表ヲ受領シタルトキハ其ノ管內ノ第一第二國民兵人員表ヲ各別ニ調製シテ之ヲ師團長ニ差出スヘシ
第五十一條 師團長ハ聯隊區司令官ニ召集スヘキ人員、編成地、編成地到著期日及集合場ヲ達スヘシ但召集人員ヲ定ムルニハ召集總員ヲ率トシ各聯隊區ニ於テ召集スヘキ年齡ニ相當スル者ノ人員ニ比例シ之ヲ各聯隊區ニ配當スルモノトス
第五十二條 聯隊區司令官前條ノ達ヲ受クルトキハ召集スヘキ人員及集合場到著期日ヲ定メ集合場ト共ニ之ヲ郡長ニ達スヘシ但聯隊區司令官其ノ人員ヲ定ムルニハ召集總員ヲ率トシ各郡ニ於テ召集スヘキ年齡ニ相當スル者ノ人員ニ比例シ之ヲ各郡ニ配當スルモノトス
第五十三條 郡長前條ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ但召集スヘキ人員ハ召集總員ヲ率トシ各町村ニ於テ召集スヘキ年齡ニ相當スル者ノ人員ニ比例シ之ヲ各町村ニ配當スルモノトス
第五十四條 町村長前條ノ達ヲ受クルトキハ國民兵豫定應召人名簿竝ニ國民兵召集令傳達書ヲ調製シ召集準備ヲ爲スヘシ
第三款 國民兵召集實施
第五十五條 師團長ハ國民軍召集ノ命下ルトキハ其ノ趣旨ニ從ヒ國民兵召集令ヲ發スヘシ
時機ニ依リ師團長ハ一部ノ地方ヲ限リ國民兵召集ヲ施行スルコトヲ得
第五十六條 聯隊區司令官國民兵召集令ヲ受クルトキハ直ニ之ヲ郡長ニ達スヘシ
聯隊區司令官若クハ副官ハ應召員集合期日前ニ司令部員若干ヲ率井其ノ集合場ニ出張スヘシ
第五十七條 郡長地方長官若クハ聯隊區司令官ヨリ國民兵召集令ヲ受クルトキハ直ニ之ヲ町村長ニ達スヘシ
郡長ハ應召員受領ノ爲メ集合期日前ニ吏員若干ヲ集合場ニ派遣スヘシ
第五十八條 町村長前條ノ達ヲ受クルトキハ豫定應召人名簿ニ記載シ在ル者ニ國民兵召集令傳達書ヲ交付シ受領證ヲ受取ルヘシ
旅行、犯罪、失踪等ノ爲メ不在ノ者ニ於テハ其ノ戶主ニ交付スヘシ
町村長ハ第一項第二項ニ依リ召集令傳達書ヲ交付シタル者ノ人名竝ニ事故ニ依リ交付シ得サル者ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
憲兵及警察官吏前項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ應召員ヲシテ所命ノ期日ニ應召セシムルノ處置ヲ爲スヘシ
第五十九條 應召員國民兵召集令傳達書ヲ受領シタルトキハ集合場迄ノ旅費ヲ受領シ該傳達書ヲ携ヘ町村長ノ引率ヲ受ケ集合場ニ到著スヘシ
町村長ハ集合期日ニ應召員ヲ引率シテ集合場ニ到リ豫定應召人名簿ト共ニ之ヲ郡ノ吏員ニ交付スヘシ
第六十條 應召員ニ代リ召集令傳達書ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ召集令傳達書ヲ速ニ本人ニ交付スルノ處置ヲ爲スヘシ
正當ノ事由無クシテ前項ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第六十一條 聯隊區司令官若クハ副官ハ集合場ニ於テ郡ノ吏員ヨリ應召員竝ニ豫定應召人名簿ヲ受領スルトキハ應召員ノ身體檢査ヲ行ヒ其ノ不合格若クハ過員ノ者ニハ旅費ヲ給シテ歸鄕セシメ其ノ他ハ之ヲ引率シテ編成地ニ到リ豫定應召人名簿ト共ニ師團長ノ指定スル部隊長ニ交付スヘシ
第六十二條 國民兵召集令傳達書ヲ受領スルモ傷痍疾病ノ爲メ應召スルコト能ハサル者ハ醫師ノ診斷證書ヲ添ヘ召集令傳達書受領後二十四時間以內ニ町村長ニ屆出ヘシ
旅行、犯罪、失踪等ノ爲メ應召スルコト能ハサル者アルトキハ召集令傳達書ヲ受領シタル者ヨリ召集令傳達書受領後二十四時間以內ニ町村長ニ屆出ヘシ
第一項第二項ノ屆出ヲ怠ル者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第四章 演習召集
第一款  總則
第六十三條 演習召集トハ豫備役後備役將校下士兵卒及第一補充兵ノ勤務演習召集竝ニ歸休兵ノ演習召集ヲ謂フ
第六十四條 師團長ハ在鄕軍人及第一補充兵ヲ演習ノ爲メ各部隊ニ召集ス但寄留地ニ於テ演習應召ヲ許可シタル者ハ其ノ寄留地ノ師團長之ヲ召集ス
第六十五條 第六十三條演習召集ノ外特別ノ命令ヲ以テ充員召集ノ演習ヲ目的トスル演習召集ヲ行フコトアリ
第六十六條 本籍所在ノ師管ニ於テ勤務演習ヲ爲スヘキ部隊無キ者ハ他ノ師管ノ部隊ニ於テ勤務演習ヲ爲サシム
第六十七條 一年志願兵終末試驗及第證書ヲ所持スル者ノ勤務演習召集ニ關シテハ陸軍補充條令ニ依ルノ外尙ホ本章ノ規定ニ依ル士官適任證書ヲ所持スル者ノ勤務演習召集亦同シ
第六十八條 後備役屯田兵下士以下ノ演習召集ニ關スル規定ハ第七師團長之ヲ定ム
第二款 演習召集準備
第六十九條 演習ニ召集スヘキ者ハ將校ハ人名、下士兵卒及第一補充兵ハ豫定人員ヲ以テ師團長ヨリ關係ノ諸部團隊長ニ達スヘシ
第七十條 聯隊區司令官前條ノ達ヲ受クルトキハ下士兵卒及第一補充兵ノ人名ヲ定メ寄留地應召者ヲ加ヘ各郡每ニ召集スヘキ將校、下士兵卒及第一補充兵ノ演習召集名簿竝ニ演習召集令狀ヲ作リ其ノ令狀ハ自ラ之ヲ保管シ名簿ハ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第七十一條 郡長前條ノ名簿ヲ受領スルトキハ旅費金額ヲ計算シテ之ニ記入シ更ニ各町村ノ演習召集名簿ヲ作リ之ヲ町村長ニ送付スヘシ
第七十二條 町村長前條ノ名簿ヲ受領スルトキハ其ノ年勤務演習ニ召集セラルヘキ者ニ其ノ旨ヲ通知スヘシ
第三款 演習召集實施
第七十三條 演習召集ヲ行フニハ師團長召集スヘキ在鄕軍人及第一補充兵ノ種類、召集期日及召集日數ヲ諸部團隊長ニ達シ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第七十四條 地方長官前條ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ郡長其ノ他關係アル官衙ニ達スヘシ
憲兵隊長前條ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第七十五條 聯隊區司令官第七十三條ノ達ヲ受クルトキハ演習召集令狀ニ所要ノ記入ヲ爲シ之ヲ郡長ニ送付シ召集スヘキ將校、下士兵卒及第一補充兵ノ連名簿ヲ其ノ召集部隊長ニ送付スヘシ
第七十六條 郡長第七十四條第一項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
郡長前條ノ演習召集令狀ヲ受領スルトキハ之ニ所要ノ記入ヲ爲シ町村長ニ送付スヘシ
第七十七條 町村長前條ノ演習召集令狀ヲ受領スルトキハ之ヲ本人又ハ召集通報人ニ交付スヘシ
第七十八條 應召員演習召集令狀ヲ受領シタルトキハ旅費ヲ受領シテ令狀ニ示ス期日ニ其ノ召集部隊ニ到著スヘシ
第七十九條 傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ依リ演習召集ニ應スルコト能ハサル者ハ町村長ノ奧書證印ヲ受ケタル屆書ヲ入隊期日迄ニ郡長ヲ經テ聯隊區司令官ニ差出スヘシ但傷痍疾病ノ者ハ醫師ノ診斷證書ヲ添フヘシ
前項ノ屆出ヲ怠ル者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第八十條 演習召集ニ際シ父母ノ疾病危篤又ハ死亡ノ爲メ召集ノ延期ヲ願フ者アルトキハ將校ニ在テハ師團長、下士兵卒及補充兵ニ在テハ聯隊區司令官ニ於テ十四日以內ノ延期ヲ許スヘシ
將校ニ在テハ其ノ願書ヲ聯隊區司令官ヲ經テ師團長ニ差出スヘシ
下士兵卒及補充兵ニ在テハ其ノ願書ニ町村長ノ奧書證印ヲ受ケ其ノ父母疾病危篤ノ者ハ醫師ノ診斷證書ヲ添ヘ郡長ヲ經テ聯隊區司令官ニ差出スヘシ
第八十一條 第七十九條第一項第八十條第一項ニ依リ應召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミ召集期日ノ翌日ヨリ計算シ十日以內ニ到著シ得ル者ハ其ノ召集部隊ニ到著スヘシ但演習ノ種類ニ依リ師團長必要ト認ムルトキハ此ノ日限ヲ變更スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ將校ニ在テハ聯隊區司令官ヲ經テ師團長ニ下士兵卒及補充兵ニ在テハ町村長及郡長ヲ經テ聯隊區司令官ニ屆出ヘシ
第一項ノ規定ニ背ク者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第八十二條 第二十八條第二項第三項第三十二條第三十五條ハ本款ニ之ヲ適用ス
第二十九條ハ本款ニ之ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八條第一項ヲ適用ス
第八十三條 演習ヲ終リ又ハ召集中事故ニ依リ歸鄕ヲ命セラレタル者ニハ第三十七條ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八條第三項ヲ適用ス
第五章 敎育召集
第一款 總則
第八十四條 敎育召集トハ敎育ノ爲メ第一補充兵ヲ召集スルヲ謂フ
第八十五條 敎育召集ハ第一補充兵服役ノ初年ニ於テ行フヲ例トス
第二款 敎育召集準備
第八十六條 聯隊區司令官ハ每年二月一日ニ於ケル第一補充兵ノ現在員ヲ調査シ之ヲ各兵種ニ分チ師團長ニ報吿シ師團長ハ其ノ年敎育スヘキ人員ヲ諸部團隊長ニ達スヘシ
聯隊區司令官ハ各郡ノ敎育召集名簿ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第八十七條 郡長前條ノ名簿ヲ受領スルトキハ旅費金額ヲ計算シテ之ニ記入シ更ニ各町村ノ敎育召集名簿ヲ作リ之ヲ町村長ニ送付スヘシ
第三款 敎育召集實施
第八十八條 敎育召集ヲ行フニハ應召員ヲ先ツ聯隊區司令部所在地若クハ便宜ノ地ニ集合シ聯隊區司令部員若クハ其ノ他ノ下士兵卒ヲシテ召集地ニ引率セシムルモノトス但應召員五人未滿ナルトキハ單行セシム
第八十九條 敎育召集ヲ行フトキハ師團長其ノ兵種召集期日及召集日數ヲ聯隊區司令官ニ達シ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第九十條 地方長官前條ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ郡長其ノ他關係アル官衙ニ達シ管內ニ吿示スヘシ
憲兵隊長前條ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
郡長第一項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第九十一條 聯隊區司令官第八十九條ノ達ヲ受クルトキハ敎育召集令狀ヲ作リ郡長ニ送付シ郡長ハ之ヲ町村長ニ送付シ町村長ハ之ヲ本人又ハ召集通報人ニ交付スヘシ
第九十二條 應召員敎育召集令狀ヲ受領シタルトキハ旅費ヲ受領シ令狀ニ示ス期日ニ其ノ集合地又ハ部隊ニ到著シ第八十八條ノ引率員又ハ該部隊ニ屆出ヘシ
第九十三條 第二十八條第二項第三項第三十二條第三十五條第七十九條第八十條第八十一條ハ本款ニ之ヲ適用ス
第二十九條ハ本款ニ之ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八條第一項ヲ適用ス
第九十四條 敎育ヲ終リ歸鄕ヲ命セラレタル者ハ陸軍服役條例第百三十七條ノ例ニ依リ屆出ヘシ
前項ノ屆出ヲ怠ル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
第六章 補缺召集
第九十五條 補缺召集トハ平時ニ於テ臨時兵員ノ補缺ヲ要スルトキ歸休兵ヲ召集スルヲ謂フ
第九十六條 補缺召集ハ陸軍大臣ノ命ニ依リ師團長之ヲ行フ其ノ手續ハ第四章ヲ準用ス
第七章 簡閱㸃呼
第一款 總則
第九十七條 簡閱㸃呼トハ在鄕下士兵卒及第一補充兵ヲ集合シテ之ヲ簡閱シ平常ニ於ケル異動取扱ノ確實ヲ保シ且必要ナル訓示ヲ下スヲ謂フ
第二款 簡閱㸃呼準備
第九十八條 簡閱㸃呼ノ準備ハ聯隊區司令官之ヲ爲スヘシ
第三款 簡閱㸃呼實施
第九十九條 簡閱㸃呼ノ時期ハ師團長之ヲ定メ聯隊區司令官ニ達シ地方長官竝ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第百條 師團長ハ部下ノ尉官數名ニ簡閱㸃呼執行官ヲ命シ之ニ必要ノ訓令ヲ授クヘシ
在鄕下士兵卒及第一補充兵ノ人員僅少ナル僻陬ノ地ニ在テハ師團長ハ其ノ地ノ憲兵將校又ハ同下士ヲシテ簡閱㸃呼ヲ爲サシメ若クハ之ヲ省略スルコトヲ得
第百一條 聯隊區司令官ハ其ノ管內ニ若干ノ㸃呼場及之ニ屬スル㸃呼區域竝ニ㸃呼日割ヲ定メ之ヲ師團長ニ差出シ同時ニ地方長官、憲兵隊長竝ニ簡閱㸃呼執行官ニ通知シ郡長ニ達スヘシ
地方長官及郡長前項ノ通知ヲ受クルトキハ地方長官ハ之ヲ警察署長ニ郡長ハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
憲兵隊長第一項ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第百二條 聯隊區司令官ハ各㸃呼場ヘ參會スヘキ下士兵卒及第一補充兵ノ㸃呼名簿及㸃呼令狀ヲ作リ其ノ令狀ハ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第百三條 郡長㸃呼令狀ヲ受領スルトキハ直ニ之ヲ町村長ニ送付シ町村長ハ之ヲ本人又ハ召集通報人ニ交付スヘシ
召集通報人ヲ設ケサル不在者ニ在テハ戶主ニ交付スヘシ
町村長ハ事故ニ依リ㸃呼令狀ヲ交付シ得サル者ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第百四條 簡閱㸃呼參會者ニ代リ㸃呼令狀ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ㸃呼令狀ヲ速ニ本人ニ交付スルノ處置ヲ爲スヘシ
第百五條 㸃呼令狀ヲ受領シタル下士兵卒及第一補充兵ハ㸃呼令狀ヲ携ヘ指定ノ日時ニ㸃呼場ニ到リ簡閱㸃呼執行官ニ屆出ヘシ
第百六條 簡閱㸃呼參會者ニハ旅費日當ヲ官給セス
第百七條 憲兵及警察官吏町村長ヨリ第百三條第二項ノ通知ヲ受クルトキハ簡閱㸃呼參會者ヲシテ所命ノ日時ニ參會セシムルノ處置ヲ爲スヘシ
第百八條 郡長竝ニ町村長ハ簡閱㸃呼ニ參列スヘシ
第百九條 傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ依リ簡閱㸃呼ニ參會スルコト能ハサル者ハ町村長ノ奧書證印ヲ受ケタル屆書ヲ郡長ヲ經テ㸃呼執行日時ニ簡閱㸃呼執行官ニ差出スヘシ但傷痍疾病ノ者ハ醫師ノ診斷證書ヲ添フヘシ
第百十條 簡閱㸃呼參會者集合スルトキハ簡閱㸃呼執行官ハ默呼名簿ノ順序ニ從テ默呼シ所要ノ調査ヲ爲シ之ニ必要ノ訓示ヲ與ヘ解散ヲ命スヘシ
第百十一條 正當ノ事由無クシテ簡閱㸃呼ニ參會セサル者及第百九條ノ規定ニ背ク者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
正當ノ事由無クシテ第百四條ノ規定ニ背ク者及簡閱㸃呼參會者默呼場ニ於テ簡閱㸃呼執行官ノ命ニ服セス又ハ其ノ職務ノ執行ヲ妨害スル者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第百十二條 簡閱㸃呼執行官簡閱㸃呼ヲ終ルトキハ簡閱㸃呼結果表及報吿書各二通ヲ作リ其ノ一通ハ師團長ニ差出シ他ノ一通ハ聯隊區司令官ニ送付スヘシ
附 則
第百十三條 後備役屯田兵下士以下及其ノ兵村ニ關スル事項ハ隊伍ニ編入セサル豫備役屯田兵下士以下及其ノ兵村ニ適用ス
第百十四條 本條例ノ施行細則ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第百十五條 本條例ハ明治三十年四月一日ヨリ實施ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ陸軍召集条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年十一月十二日
陸軍大臣 子爵 高島鞆之助
勅令第三百六十四号
陸軍召集条例
第一章
綱領
第二章
充員召集
第一款
総則
第二款
充員召集準備
第三款
充員召集実施
第四款
充員召集準備ノ復旧
第三章
国民兵召集
第一款
総則
第二款
国民兵召集準備
第三款
国民兵召集実施
第四章
演習召集
第一款
総則
第二款
演習召集準備
第三款
演習召集実施
第五章
教育召集
第一款
総則
第二款
教育召集準備
第三款
教育召集実施
第六章
補欠召集
第七章
簡閲点呼
第一款
総則
第二款
簡閲点呼準備
第三款
簡閲点呼実施
附 則
陸軍召集条例
第一章 綱領
第一条 本条例ハ戦時若クハ事変ニ際シ陸軍ヲ動員スル為メ及平時ニ於テ演習、教育、補欠、簡閲点呼ヲ行フ為メ在郷ノ陸軍軍人及兵役義務アル者ノ召集ニ関スル事ヲ規定ス
第二条 各師団及警備隊ノ召集区ハ当該師管及警備隊区トス
召集ハ召集区ニ於テスルヲ例トス但場合ニ依リ召集区外ニ召集スルコトアルヘシ
第三条 在郷軍人及兵役義務者ノ召集ハ召集区所管ノ師団長之ヲ行フ
将官同相当官ノ召集ハ本条例ノ規定ニ依ラス陸軍大臣ノ命令ニ基キ師団長直ニ之ヲ行フ
第四条 戒厳ヲ宣告シ得ル権アル司令官時機切迫シテ命ヲ請フ途ナキトキハ独断シテ充員召集令及国民兵召集令ヲ下スコトヲ得此ノ場合ニ於テ該司令官ハ召集ニ関シ師団長ト同一ノ職権ヲ有ス
第五条 在郷軍人及補充兵ヲ召集スルニハ召集令状ヲ用井其ノ編入スヘキ部隊並ニ到著地点及其ノ期日ヲ指定スヘシ
後備役屯田兵下士以下ヲ召集スルニハ召集令状ヲ用井スシテ召集令ヲ本人ニ達スヘシ
国民兵ヲ召集スルニハ召集令伝達書ヲ用井其ノ集合地点及其ノ期日ヲ指定スヘシ
簡閲点呼ヲ為スニハ点呼令状ヲ用井点呼場及其ノ到著日時ヲ指定スヘシ
第六条 召集事務ニ関シ師団長ノ為シタル規定ハ地方長官、警視総監、憲兵司令官及憲兵隊長之ヲ遵行スヘシ
第七条 師団長ハ定期ニ若クハ臨時ニ連隊区司令部並ニ地方官庁及公署ニ於ケル召集事務ノ整否ヲ検査シ又ハ部下将校ヲシテ之ヲ検査セシムヘシ
地方長官、警視総監、憲兵司令官、憲兵隊長ハ其ノ所部召集事務ノ整否ヲ検査シ又ハ部下官吏ヲシテ之ヲ検査セシムヘシ
第八条 充員召集及国民兵召集旅費支出ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第九条 此ノ条例中連隊区司令官同副官ノ職務ハ警備隊区ニ在テハ警備隊司令官同副官、郡長ノ職務ハ島庁ヲ置ク島嶼ニ在テハ島司、郡長及町村長ノ職務ハ市ニ在テハ市長東京市京都市大阪市及市制町村制ヲ施行セサル地方ノ区ニ在テハ区長町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ戸長及之ニ準スヘキ者之ヲ行フ
後備役屯田兵下士以下ノ召集事務ニ関シ郡長及町村長ノ職務ハ屯田兵村監視之ヲ行フ
第十条 此ノ条例中連隊区司令部トアルハ警備隊司令部ニ郡トアルハ島庁ヲ置キタル島嶼、市東京市京都市大阪市及市制町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ区ニ当該ス
第十一条 島嶼ニ於テ此ノ条例中ノ規定ヲ実施スルコト能ハサルトキハ師団長適宜ノ方法ヲ設クルコトヲ得
第二章 充員召集
第一款 総則
第十二条 充員召集トハ動員ニ際シ陸軍ノ全部若クハ一部ヲ充員スル為メ及動員完結後欠員ヲ補充スル為メ其ノ要員ヲ召集スルヲ謂フ
第十三条 充員召集事務ニ関シ職責アル者ハ平時予メ之ニ関スル行務ヲ計画準備シ有事ノ際決シテ遺算無キヲ要ス
第十四条 充員召集発令後ハ召集事務ニ関シ訓示ヲ請フコトヲ許サス
第二款 充員召集準備
第十五条 充員召集ニ関スル諸準備ハ動員年度ノ初日ニ於ケル現在員ヲ予定シテ之ヲ為シ此ノ期日以前ニ結了スヘシ
第十六条 師団長ハ諸部団隊ヲ同時ニ或ハ各別ニ充員シ得ヘク準備スヘシ
第十七条 師団長ハ毎年諸部団隊ノ充足要員ヲ定メ将校佐官同相当官尉官同相当官及准士官ヲ謂フ、以下同シハ人名、下士以下ハ人員ヲ以テ各連隊区ニ配当シ之ヲ連隊区司令官ニ達スヘシ
師団長ハ他ノ師管ヨリ召集ニ応スヘキ者アルトキハ前項ニ依リ該師管ノ連隊区ニ配当シ之ヲ本籍所管ノ師団長ニ通知ス本籍所管ノ師団長ハ之ヲ連隊区司令官ニ達スヘシ
第十八条 連隊区司令官前条ノ配当ヲ受クルトキハ之ニ基キ連隊区ノ充員名簿ヲ作リ更ニ各郡ノ充員名簿及召集令状屯田後備役兵村ニ在テハ各兵村ノ充員名簿ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
警備隊司令官ハ自ラ警備隊ノ充足要員ヲ定メ前項ノ取扱ヲ為スヘシ
第十九条 郡長充員名簿並ニ召集令状ヲ受領シタルトキハ召集令状ニ所要ノ記入ヲ為シ各町村ノ充員名簿ヲ作リ召集令状ト共ニ町村長ニ送付スヘシ
第二十条 町村長充員名簿並ニ召集令状ヲ受領シタルトキハ之ヲ保管シ召集ニ当リ速ニ召集令状ヲ本人ニ交付スルノ準備ヲ為スヘシ
町村長ハ充員名簿ニ記載シ在ル応召員将校以下召集ニ応スヘキ者ヲ謂フ、以下同シニ其ノ編入セラルヘキ部隊並ニ到著地ヲ予メ通知スヘシ
第二十一条 召集ニ際シ応召員ノ宿泊ニ供スル為メ軍用旅舎ヲ定メ之ニ看板及標旗若クハ標灯ヲ掲ケシメ又通行ニ支障無カラシムル等召集ヲ容易ナラシムル為メ地方長官ハ予メ憲兵隊長東京府ニ在テハ警視総監憲兵司令官、以下同シト協議シ相当ノ措置ヲ為スヘシ
第三款 充員召集実施
第二十二条 師団長ハ動員令ニ従ヒ其ノ師団ノ全部或ハ一部ヲ充員スル為メ充員召集令ヲ部下諸部団隊長ニ達シ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
他ノ師管ヨリ召集ニ応スヘキ者アルトキハ其ノ本籍所管ノ師団長ニ通知シ該師団長ハ之ヲ連隊区司令官ニ達シ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第二十三条 充員召集令ヲ受ケタル官衙並ニ公署ハ直ニ軍事警報ヲ掲示スルモノトス但師団長ハ陸軍大臣ノ命ニ依リ之ヲ掲示セシメサルコトヲ得
第二十四条 召集令ハ確実迅速ナル方法ヲ以テ通達スヘシ
第二十五条 連隊区司令官充員召集令ヲ受クルトキハ直ニ之ヲ郡長ニ達スヘシ
連隊区司令官ハ召集期日前ニ其ノ司令部員若干ニ充員名簿戦時名簿補充兵ニシテ戦時名簿無キ者ニ在テハ補充兵名簿ヲ携帯セシメ充員交付官トシテ予定ノ場所ニ到リ召集事務所ヲ開設セシムヘシ
第二十六条 地方長官充員召集令ヲ受クルトキハ之ヲ郡長其ノ他関係アル官衙ニ達スヘシ
憲兵隊長充員召集令ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第二十七条 郡長地方長官若クハ連隊区司令官ヨリ充員召集令ヲ受クルトキハ其ノ何レヨリ受クルヲ問ハス速ニ之ヲ町村長ニ達シ召集事務ニ服行スヘシ
屯田兵村監視充員召集令ヲ受クルトキハ之ヲ応召員ニ達スヘシ
第二十八条 町村長充員召集令ヲ受クルトキハ召集令状ニ所要ノ記入ヲ為シ直ニ予定ノ方法ヲ以テ之ヲ応召員又ハ召集通報人ニ交付シ受領証ヲ受取ルヘシ
召集通報人ヲ設ケサル不在者ニ在テハ其ノ戸主本人戸主又ハ戸主不在ナレハ其ノ家族中家事ヲ担当スル者、以下同シニ交付スヘシ
町村長ハ第一項第二項ニ依リ召集令状ヲ交付シタル者ノ人名並ニ事故アリテ之ヲ交付シ得サル者ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第二十九条 応召員ニ代リ召集令状ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ召集令状ヲ速ニ本人ニ交付スルノ処置ヲ為スヘシ
第三十条 将校召集令状ヲ受領スルトキハ旅費ヲ受領シテ速ニ所命ノ地ニ到著シ其ノ召集事務所ニ届出ヘシ
第三十一条 下士以下ノ応召員召集令状ヲ受領スルトキハ旅費ヲ受領シ其ノ令状ニ定メラレタル期日ニ所命ノ地ニ到著シ召集事務所ニ届出ヘシ
第二補充兵第一補充兵ニシテ教育ヲ受ケサル者亦同シハ郡毎ニ郡ノ吏員之ヲ引率シ召集事務所ニ到リ充員交付官ニ交付スヘシ
第三十二条 憲兵及警察官吏ハ町村長ヨリ第二十八条第三項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ応召員ヲシテ所命ノ期日ニ応召セシムルノ処置ヲ為スヘシ
第三十三条 召集令状ヲ受領スルモ傷痍疾病ノ為メ応召スルコト能ハサル者ハ医師ノ診断証書ヲ添ヘ本人ヨリ連隊区司令官ニ宛テタル届書ヲ召集令状受領後二十四時間以内ニ町村長ニ差出スヘシ
旅行、犯罪、失踪等ノ為メ応召スルコト能ハサル者アルトキハ召集令状ヲ受領シタル者ヨリ召集令状受領後二十四時間以内ニ連隊区司令官ニ宛テタル届書ヲ町村長ニ差出スヘシ但犯罪、失踪等ニ係ルトキハ憲兵若クハ警察官吏ノ証明書ヲ添フヘシ
町村長第一項第二項ノ届書ヲ受領スルトキハ調査ノ上毎日之ヲ取纒メテ郡長ニ差出スヘシ郡長ハ毎日之ヲ取纒メテ連隊区司令官ニ差出スヘシ
第三十四条 前条第一項第二項ノ場合ニ於テ応召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミタルトキハ直ニ町村長ニ届出テ其ノ指揮ヲ受クヘシ
前項ノ場合ニ於テ町村長ハ其ノ充員完結前ニ在テハ召集令状ノ裏面ニ其ノ事由及出発日時ヲ記シ本人ヲシテ旅費ヲ受領シ出発セシメ其ノ充員完結後ニ在テハ其ノ出発ヲ差止メ置クヘシ
町村長ハ前項ノ者アルトキハ毎日之ヲ取纒メテ郡長ニ報告シ郡長ハ毎日之ヲ取纒メテ連隊区司令官ニ報告スヘシ
第三十五条 応召員途中ニ於テ已ムヲ得サル事故ノ為メ到著ヲ遅延スル場合ニ在テ其ノ事故傷痍疾病ナルトキハ医師ノ診断証書ヲ其ノ他ハ郡長、町村長、憲兵、警察官吏、船長若クハ駅長ニ就キ証明書ヲ受領シ到著ノ上召集事務所ニ差出スヘシ
第三十六条 応召員非常ノ情況ニ際シ交通断絶シ所命ノ地ニ到著スルコト能ハサル場合ニ在テハ其ノ旨ヲ最寄諸部団隊諸部団隊無キ地ニ在テハ郡長、町村長、憲兵、警察官吏ニ届出ヘシ
前項ノ届出ヲ受ケタル者ハ適宜ノ処置ヲ為シ事情之ヲ許スニ至レハ其ノ事由ヲ証明シ本人ヲ所命ノ地ニ到著セシムヘシ
第三十七条 応召員中過員若クハ事故ニ依リ帰郷ヲ命セラレタル者ハ陸軍服役条例第八条第二十九条第八十条第百十八条第百三十七条ノ例ニ依リ届出ヘシ補充兵ニ在テハ同条例第百三十七条ノ例ニ依リ届出ヘシ
第三十八条 正当ノ事由無クシテ第二十九条ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
正当ノ事由無クシテ第三十三条第一項第二項第三十四条第一項第三十六条第一項ノ規定ニ背ク者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第三十七条ノ届出ヲ怠ル者ハ五銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第三十九条 充員完結スルトキハ諸部団隊長ハ之ヲ師団長ニ報告シ師団長ハ之ヲ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知シ地方長官ハ之ヲ郡長其ノ他関係アル官衙ニ憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
他ノ師管ヨリ召集ニ応シタル者アルトキハ師団長ハ尚ホ其ノ本籍所管ノ師団長ニ通知シ該師団長、地方長官並ニ憲兵隊長ハ前項ノ通達ヲ為スヘシ
郡長第一項第二項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第四十条 動員完結後欠員ヲ補充スル為メノ充員召集ハ必要ニ応シ師団長直ニ之ヲ行フ此ノ場合ニ於テハ第二十二条乃至第三十九条ノ例ニ依ル
第四款 充員召集準備ノ復旧
第四十一条 復員令下ルトキハ師団長ハ諸部団隊長ニ達シ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知シ地方長官ハ之ヲ郡長其ノ他関係アル官衙ニ憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
他ノ師管ヨリ召集ニ応シタル者アルトキハ師団長ハ尚ホ其ノ本籍所管ノ師団長ニ通知シ該師団長、地方長官並ニ憲兵隊長ハ前項ノ通達ヲ為スヘシ
郡長第一項第二項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第四十二条 師団長ハ復員後勉メテ速ニ充員召集準備ヲ復旧スルモノトス
第四十三条 復員ニ方リ帰郷ヲ命セラレタル者ニハ第三十七条ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八条第二項ヲ適用ス
第三章 国民兵召集
第一款 総則
第四十四条 国民兵召集ニ関シテハ本章規定スルモノヲ除クノ外第十三条第十四条第十五条第十六条第二十一条第二十二条第二十三条第二十四条第二十六条第二十七条第一項第三十九条第四十条第四十一条第四十二条ノ規定ニ準拠スヘシ
第四十五条 国民兵召集ヲ分テ第一国民兵召集第二国民兵召集ノ二種トス
第四十六条 第一第二国民兵ハ所要ニ応シ年齢若キ者ヨリ之ヲ召集スルヲ例トス但幹部ニ充ツヘキ者ハ年齢ニ関セス之ヲ召集スルコトヲ得
第四十七条 第二国民兵中十七歳以上二十一歳未満ノ者ハ特別ノ命令アルニ非レハ之ヲ召集スルコトナシ
第二款 国民兵召集準備
第四十八条 町村長ハ毎年一回其ノ管内ニ在籍スル第一第二国民兵ノ人員表各二通ヲ製シ各一通ヲ郡長ニ差出シ他ハ之ヲ保管スヘシ
第四十九条 郡長前条ノ人員表ヲ受領シタルトキハ其ノ管内ノ第一第二国民兵人員表ヲ各別ニ調製シ之ヲ連隊区司令官ニ送付スヘシ
第五十条 連隊区司令官前条ノ人員表ヲ受領シタルトキハ其ノ管内ノ第一第二国民兵人員表ヲ各別ニ調製シテ之ヲ師団長ニ差出スヘシ
第五十一条 師団長ハ連隊区司令官ニ召集スヘキ人員、編成地、編成地到著期日及集合場ヲ達スヘシ但召集人員ヲ定ムルニハ召集総員ヲ率トシ各連隊区ニ於テ召集スヘキ年齢ニ相当スル者ノ人員ニ比例シ之ヲ各連隊区ニ配当スルモノトス
第五十二条 連隊区司令官前条ノ達ヲ受クルトキハ召集スヘキ人員及集合場到著期日ヲ定メ集合場ト共ニ之ヲ郡長ニ達スヘシ但連隊区司令官其ノ人員ヲ定ムルニハ召集総員ヲ率トシ各郡ニ於テ召集スヘキ年齢ニ相当スル者ノ人員ニ比例シ之ヲ各郡ニ配当スルモノトス
第五十三条 郡長前条ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ但召集スヘキ人員ハ召集総員ヲ率トシ各町村ニ於テ召集スヘキ年齢ニ相当スル者ノ人員ニ比例シ之ヲ各町村ニ配当スルモノトス
第五十四条 町村長前条ノ達ヲ受クルトキハ国民兵予定応召人名簿並ニ国民兵召集令伝達書ヲ調製シ召集準備ヲ為スヘシ
第三款 国民兵召集実施
第五十五条 師団長ハ国民軍召集ノ命下ルトキハ其ノ趣旨ニ従ヒ国民兵召集令ヲ発スヘシ
時機ニ依リ師団長ハ一部ノ地方ヲ限リ国民兵召集ヲ施行スルコトヲ得
第五十六条 連隊区司令官国民兵召集令ヲ受クルトキハ直ニ之ヲ郡長ニ達スヘシ
連隊区司令官若クハ副官ハ応召員集合期日前ニ司令部員若干ヲ率井其ノ集合場ニ出張スヘシ
第五十七条 郡長地方長官若クハ連隊区司令官ヨリ国民兵召集令ヲ受クルトキハ直ニ之ヲ町村長ニ達スヘシ
郡長ハ応召員受領ノ為メ集合期日前ニ吏員若干ヲ集合場ニ派遣スヘシ
第五十八条 町村長前条ノ達ヲ受クルトキハ予定応召人名簿ニ記載シ在ル者ニ国民兵召集令伝達書ヲ交付シ受領証ヲ受取ルヘシ
旅行、犯罪、失踪等ノ為メ不在ノ者ニ於テハ其ノ戸主ニ交付スヘシ
町村長ハ第一項第二項ニ依リ召集令伝達書ヲ交付シタル者ノ人名並ニ事故ニ依リ交付シ得サル者ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
憲兵及警察官吏前項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ応召員ヲシテ所命ノ期日ニ応召セシムルノ処置ヲ為スヘシ
第五十九条 応召員国民兵召集令伝達書ヲ受領シタルトキハ集合場迄ノ旅費ヲ受領シ該伝達書ヲ携ヘ町村長ノ引率ヲ受ケ集合場ニ到著スヘシ
町村長ハ集合期日ニ応召員ヲ引率シテ集合場ニ到リ予定応召人名簿ト共ニ之ヲ郡ノ吏員ニ交付スヘシ
第六十条 応召員ニ代リ召集令伝達書ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ召集令伝達書ヲ速ニ本人ニ交付スルノ処置ヲ為スヘシ
正当ノ事由無クシテ前項ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第六十一条 連隊区司令官若クハ副官ハ集合場ニ於テ郡ノ吏員ヨリ応召員並ニ予定応召人名簿ヲ受領スルトキハ応召員ノ身体検査ヲ行ヒ其ノ不合格若クハ過員ノ者ニハ旅費ヲ給シテ帰郷セシメ其ノ他ハ之ヲ引率シテ編成地ニ到リ予定応召人名簿ト共ニ師団長ノ指定スル部隊長ニ交付スヘシ
第六十二条 国民兵召集令伝達書ヲ受領スルモ傷痍疾病ノ為メ応召スルコト能ハサル者ハ医師ノ診断証書ヲ添ヘ召集令伝達書受領後二十四時間以内ニ町村長ニ届出ヘシ
旅行、犯罪、失踪等ノ為メ応召スルコト能ハサル者アルトキハ召集令伝達書ヲ受領シタル者ヨリ召集令伝達書受領後二十四時間以内ニ町村長ニ届出ヘシ
第一項第二項ノ届出ヲ怠ル者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第四章 演習召集
第一款  総則
第六十三条 演習召集トハ予備役後備役将校下士兵卒及第一補充兵ノ勤務演習召集並ニ帰休兵ノ演習召集ヲ謂フ
第六十四条 師団長ハ在郷軍人及第一補充兵ヲ演習ノ為メ各部隊ニ召集ス但寄留地ニ於テ演習応召ヲ許可シタル者ハ其ノ寄留地ノ師団長之ヲ召集ス
第六十五条 第六十三条演習召集ノ外特別ノ命令ヲ以テ充員召集ノ演習ヲ目的トスル演習召集ヲ行フコトアリ
第六十六条 本籍所在ノ師管ニ於テ勤務演習ヲ為スヘキ部隊無キ者ハ他ノ師管ノ部隊ニ於テ勤務演習ヲ為サシム
第六十七条 一年志願兵終末試験及第証書ヲ所持スル者ノ勤務演習召集ニ関シテハ陸軍補充条令ニ依ルノ外尚ホ本章ノ規定ニ依ル士官適任証書ヲ所持スル者ノ勤務演習召集亦同シ
第六十八条 後備役屯田兵下士以下ノ演習召集ニ関スル規定ハ第七師団長之ヲ定ム
第二款 演習召集準備
第六十九条 演習ニ召集スヘキ者ハ将校ハ人名、下士兵卒及第一補充兵ハ予定人員ヲ以テ師団長ヨリ関係ノ諸部団隊長ニ達スヘシ
第七十条 連隊区司令官前条ノ達ヲ受クルトキハ下士兵卒及第一補充兵ノ人名ヲ定メ寄留地応召者ヲ加ヘ各郡毎ニ召集スヘキ将校、下士兵卒及第一補充兵ノ演習召集名簿並ニ演習召集令状ヲ作リ其ノ令状ハ自ラ之ヲ保管シ名簿ハ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第七十一条 郡長前条ノ名簿ヲ受領スルトキハ旅費金額ヲ計算シテ之ニ記入シ更ニ各町村ノ演習召集名簿ヲ作リ之ヲ町村長ニ送付スヘシ
第七十二条 町村長前条ノ名簿ヲ受領スルトキハ其ノ年勤務演習ニ召集セラルヘキ者ニ其ノ旨ヲ通知スヘシ
第三款 演習召集実施
第七十三条 演習召集ヲ行フニハ師団長召集スヘキ在郷軍人及第一補充兵ノ種類、召集期日及召集日数ヲ諸部団隊長ニ達シ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第七十四条 地方長官前条ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ郡長其ノ他関係アル官衙ニ達スヘシ
憲兵隊長前条ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第七十五条 連隊区司令官第七十三条ノ達ヲ受クルトキハ演習召集令状ニ所要ノ記入ヲ為シ之ヲ郡長ニ送付シ召集スヘキ将校、下士兵卒及第一補充兵ノ連名簿ヲ其ノ召集部隊長ニ送付スヘシ
第七十六条 郡長第七十四条第一項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
郡長前条ノ演習召集令状ヲ受領スルトキハ之ニ所要ノ記入ヲ為シ町村長ニ送付スヘシ
第七十七条 町村長前条ノ演習召集令状ヲ受領スルトキハ之ヲ本人又ハ召集通報人ニ交付スヘシ
第七十八条 応召員演習召集令状ヲ受領シタルトキハ旅費ヲ受領シテ令状ニ示ス期日ニ其ノ召集部隊ニ到著スヘシ
第七十九条 傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ依リ演習召集ニ応スルコト能ハサル者ハ町村長ノ奥書証印ヲ受ケタル届書ヲ入隊期日迄ニ郡長ヲ経テ連隊区司令官ニ差出スヘシ但傷痍疾病ノ者ハ医師ノ診断証書ヲ添フヘシ
前項ノ届出ヲ怠ル者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第八十条 演習召集ニ際シ父母ノ疾病危篤又ハ死亡ノ為メ召集ノ延期ヲ願フ者アルトキハ将校ニ在テハ師団長、下士兵卒及補充兵ニ在テハ連隊区司令官ニ於テ十四日以内ノ延期ヲ許スヘシ
将校ニ在テハ其ノ願書ヲ連隊区司令官ヲ経テ師団長ニ差出スヘシ
下士兵卒及補充兵ニ在テハ其ノ願書ニ町村長ノ奥書証印ヲ受ケ其ノ父母疾病危篤ノ者ハ医師ノ診断証書ヲ添ヘ郡長ヲ経テ連隊区司令官ニ差出スヘシ
第八十一条 第七十九条第一項第八十条第一項ニ依リ応召スルコト能ハサル者其ノ事故止ミ召集期日ノ翌日ヨリ計算シ十日以内ニ到著シ得ル者ハ其ノ召集部隊ニ到著スヘシ但演習ノ種類ニ依リ師団長必要ト認ムルトキハ此ノ日限ヲ変更スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ将校ニ在テハ連隊区司令官ヲ経テ師団長ニ下士兵卒及補充兵ニ在テハ町村長及郡長ヲ経テ連隊区司令官ニ届出ヘシ
第一項ノ規定ニ背ク者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第八十二条 第二十八条第二項第三項第三十二条第三十五条ハ本款ニ之ヲ適用ス
第二十九条ハ本款ニ之ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八条第一項ヲ適用ス
第八十三条 演習ヲ終リ又ハ召集中事故ニ依リ帰郷ヲ命セラレタル者ニハ第三十七条ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八条第三項ヲ適用ス
第五章 教育召集
第一款 総則
第八十四条 教育召集トハ教育ノ為メ第一補充兵ヲ召集スルヲ謂フ
第八十五条 教育召集ハ第一補充兵服役ノ初年ニ於テ行フヲ例トス
第二款 教育召集準備
第八十六条 連隊区司令官ハ毎年二月一日ニ於ケル第一補充兵ノ現在員ヲ調査シ之ヲ各兵種ニ分チ師団長ニ報告シ師団長ハ其ノ年教育スヘキ人員ヲ諸部団隊長ニ達スヘシ
連隊区司令官ハ各郡ノ教育召集名簿ヲ作リ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第八十七条 郡長前条ノ名簿ヲ受領スルトキハ旅費金額ヲ計算シテ之ニ記入シ更ニ各町村ノ教育召集名簿ヲ作リ之ヲ町村長ニ送付スヘシ
第三款 教育召集実施
第八十八条 教育召集ヲ行フニハ応召員ヲ先ツ連隊区司令部所在地若クハ便宜ノ地ニ集合シ連隊区司令部員若クハ其ノ他ノ下士兵卒ヲシテ召集地ニ引率セシムルモノトス但応召員五人未満ナルトキハ単行セシム
第八十九条 教育召集ヲ行フトキハ師団長其ノ兵種召集期日及召集日数ヲ連隊区司令官ニ達シ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第九十条 地方長官前条ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ郡長其ノ他関係アル官衙ニ達シ管内ニ告示スヘシ
憲兵隊長前条ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
郡長第一項ノ達ヲ受クルトキハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
第九十一条 連隊区司令官第八十九条ノ達ヲ受クルトキハ教育召集令状ヲ作リ郡長ニ送付シ郡長ハ之ヲ町村長ニ送付シ町村長ハ之ヲ本人又ハ召集通報人ニ交付スヘシ
第九十二条 応召員教育召集令状ヲ受領シタルトキハ旅費ヲ受領シ令状ニ示ス期日ニ其ノ集合地又ハ部隊ニ到著シ第八十八条ノ引率員又ハ該部隊ニ届出ヘシ
第九十三条 第二十八条第二項第三項第三十二条第三十五条第七十九条第八十条第八十一条ハ本款ニ之ヲ適用ス
第二十九条ハ本款ニ之ヲ適用ス其ノ規定ニ背ク者ニハ第三十八条第一項ヲ適用ス
第九十四条 教育ヲ終リ帰郷ヲ命セラレタル者ハ陸軍服役条例第百三十七条ノ例ニ依リ届出ヘシ
前項ノ届出ヲ怠ル者ハ五銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第六章 補欠召集
第九十五条 補欠召集トハ平時ニ於テ臨時兵員ノ補欠ヲ要スルトキ帰休兵ヲ召集スルヲ謂フ
第九十六条 補欠召集ハ陸軍大臣ノ命ニ依リ師団長之ヲ行フ其ノ手続ハ第四章ヲ準用ス
第七章 簡閲点呼
第一款 総則
第九十七条 簡閲点呼トハ在郷下士兵卒及第一補充兵ヲ集合シテ之ヲ簡閲シ平常ニ於ケル異動取扱ノ確実ヲ保シ且必要ナル訓示ヲ下スヲ謂フ
第二款 簡閲点呼準備
第九十八条 簡閲点呼ノ準備ハ連隊区司令官之ヲ為スヘシ
第三款 簡閲点呼実施
第九十九条 簡閲点呼ノ時期ハ師団長之ヲ定メ連隊区司令官ニ達シ地方長官並ニ憲兵隊長ニ通知スヘシ
第百条 師団長ハ部下ノ尉官数名ニ簡閲点呼執行官ヲ命シ之ニ必要ノ訓令ヲ授クヘシ
在郷下士兵卒及第一補充兵ノ人員僅少ナル僻陬ノ地ニ在テハ師団長ハ其ノ地ノ憲兵将校又ハ同下士ヲシテ簡閲点呼ヲ為サシメ若クハ之ヲ省略スルコトヲ得
第百一条 連隊区司令官ハ其ノ管内ニ若干ノ点呼場及之ニ属スル点呼区域並ニ点呼日割ヲ定メ之ヲ師団長ニ差出シ同時ニ地方長官、憲兵隊長並ニ簡閲点呼執行官ニ通知シ郡長ニ達スヘシ
地方長官及郡長前項ノ通知ヲ受クルトキハ地方長官ハ之ヲ警察署長ニ郡長ハ之ヲ町村長ニ達スヘシ
憲兵隊長第一項ノ通知ヲ受クルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第百二条 連隊区司令官ハ各点呼場ヘ参会スヘキ下士兵卒及第一補充兵ノ点呼名簿及点呼令状ヲ作リ其ノ令状ハ之ヲ郡長ニ送付スヘシ
第百三条 郡長点呼令状ヲ受領スルトキハ直ニ之ヲ町村長ニ送付シ町村長ハ之ヲ本人又ハ召集通報人ニ交付スヘシ
召集通報人ヲ設ケサル不在者ニ在テハ戸主ニ交付スヘシ
町村長ハ事故ニ依リ点呼令状ヲ交付シ得サル者ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第百四条 簡閲点呼参会者ニ代リ点呼令状ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ点呼令状ヲ速ニ本人ニ交付スルノ処置ヲ為スヘシ
第百五条 点呼令状ヲ受領シタル下士兵卒及第一補充兵ハ点呼令状ヲ携ヘ指定ノ日時ニ点呼場ニ到リ簡閲点呼執行官ニ届出ヘシ
第百六条 簡閲点呼参会者ニハ旅費日当ヲ官給セス
第百七条 憲兵及警察官吏町村長ヨリ第百三条第二項ノ通知ヲ受クルトキハ簡閲点呼参会者ヲシテ所命ノ日時ニ参会セシムルノ処置ヲ為スヘシ
第百八条 郡長並ニ町村長ハ簡閲点呼ニ参列スヘシ
第百九条 傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ依リ簡閲点呼ニ参会スルコト能ハサル者ハ町村長ノ奥書証印ヲ受ケタル届書ヲ郡長ヲ経テ点呼執行日時ニ簡閲点呼執行官ニ差出スヘシ但傷痍疾病ノ者ハ医師ノ診断証書ヲ添フヘシ
第百十条 簡閲点呼参会者集合スルトキハ簡閲点呼執行官ハ黙呼名簿ノ順序ニ従テ黙呼シ所要ノ調査ヲ為シ之ニ必要ノ訓示ヲ与ヘ解散ヲ命スヘシ
第百十一条 正当ノ事由無クシテ簡閲点呼ニ参会セサル者及第百九条ノ規定ニ背ク者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
正当ノ事由無クシテ第百四条ノ規定ニ背ク者及簡閲点呼参会者黙呼場ニ於テ簡閲点呼執行官ノ命ニ服セス又ハ其ノ職務ノ執行ヲ妨害スル者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第百十二条 簡閲点呼執行官簡閲点呼ヲ終ルトキハ簡閲点呼結果表及報告書各二通ヲ作リ其ノ一通ハ師団長ニ差出シ他ノ一通ハ連隊区司令官ニ送付スヘシ
附 則
第百十三条 後備役屯田兵下士以下及其ノ兵村ニ関スル事項ハ隊伍ニ編入セサル予備役屯田兵下士以下及其ノ兵村ニ適用ス
第百十四条 本条例ノ施行細則ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第百十五条 本条例ハ明治三十年四月一日ヨリ実施ス