郡制
法令番号: 法律第六十五號
公布年月日: 明治32年3月16日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル郡制改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
內務大臣 侯爵 西鄕從道
法律第六十五號
郡制
第一章
總則
第二章
郡會
第一款
組織及選擧
第二款
職務權限及處務規程
第三章
郡參事會
第一款
組織及選擧
第二款
職務權限及處務規程
第四章
郡行政
第一款
郡吏員ノ組織及任免
第二款
郡官吏郡吏員ノ職務權限及處務規程
第三款給料及給與
第五章
郡ノ財務
第一款
財產營造物及郡費
第二款
歲入出豫算及決算
第六章
郡組合
第七章
郡行政ノ監督
第八章
附則
郡制
第一章 總則
第一條 郡ハ從來ノ區域ニ依リ町村ヲ包括ス
第二條 郡ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法律命令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務竝法律勅令ニ依リ郡ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條 郡ノ廢置分合又ハ境界變更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
郡ノ境界ニ涉リテ市町村境界ノ變更アリタルトキハ郡ノ境界モ亦自ラ變更ス町村ヲ變シテ市ト爲シ若ハ市ヲ變シテ町村ト爲シ又ハ所屬未定地ヲ町村ノ區域ニ編入シタルトキ亦同シ
本條ノ處分ニ付財產處分ヲ要スルトキハ內務大臣ハ關係アル府縣郡市參事會及町村會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム但シ特ニ法律ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二章 郡會
第一款 組織及選擧
第四條 郡會議員ハ各選擧區ニ於テ之ヲ選擧ス
選擧區ハ町村ノ區域ニ依ル但シ事情ニ依リ郡長ハ郡會ノ議決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ得テ數町村ノ區域ニ依リ選擧區ヲ設クルコトヲ得
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部ヲ共同處理スルモノハ之ヲ一町村ト看做ス
第五條 郡會議員ノ員數ハ十五人以上三十人以下トス
郡ノ狀況ニ依リ內務大臣ノ許可ヲ得テ前項ノ員數ヲ四十人マテ增加スルコトヲ得
郡會議員ノ定數及各選擧區ニ於テ選擧スヘキ郡會議員ノ數ハ郡會ノ議決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
前項議員ノ配當方法ニ關スル必要ナル事項ハ內務大臣之ヲ定ム
第六條 郡內ノ町村公民ニシテ町村會議員ノ選擧權ヲ有シ且其ノ郡內ニ於テ一年以來直接國稅年額三圓以上ヲ納ムル者ハ郡會議員ノ選擧權ヲ有ス
郡內ノ町村公民ニシテ町村會議員ノ選擧權ヲ有シ且其ノ郡內ニ於テ一年以來直接國稅年額五圓以上ヲ納ムル者ハ郡會議員ノ被選擧權ヲ有ス
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
郡會議員ハ住所ヲ移シタル爲町村ノ公民權ヲ失フコトアルモ其ノ住所同郡內ニ在ルトキハ之カ爲其ノ職ヲ失フコトナシ
郡會議員ノ選擧權及被選擧權ノ要件中其ノ年限ニ關スルモノハ府縣郡市町村ノ廢置分合若ハ境界變更ノ爲中斷セラルルコトナシ
左ニ揭クル者ハ郡會議員ノ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
一 所屬府縣ノ官吏及有給吏員
二 其ノ郡ノ官吏及有給吏員
三 檢事警察官吏及收稅官吏
四 神官僧侶其ノ他諸宗敎師
五 小學校敎員
前項ノ外ノ官吏ニシテ當選シ之ニ應セントスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ受クヘシ
選擧事務ニ關係アル吏員ハ其ノ選擧區ニ於テ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
郡ノ爲請負ヲ爲ス者又ハ郡ノ爲請負ヲ爲ス法人ノ役員ハ其ノ郡ノ郡會議員ノ被選擧權ヲ有セス
第七條 郡會議員ハ名譽職トス
郡會議員ノ任期ハ四年トス
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲又ハ議員ノ配當ヲ更正シタル爲解任ヲ要スル者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 郡會議員中闕員アルトキ及郡會議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲又ハ議員ノ配當ヲ更正シタル爲議員ノ選擧ヲ要スルトキハ三箇月以內ニ之ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
補闕議員ヲ除ク外本條第一項ニ依リ選擧セラレタル議員ハ次ノ改選期マテ在任ス
第九條 郡會議員ノ選擧ハ郡長ノ吿示ニ依リ之ヲ行フ其ノ吿示ニハ選擧ヲ行フヘキ選擧區投票ヲ行フヘキ日時及選擧スヘキ議員ノ員數ヲ記載シ新ニ選擧人名簿ヲ調製シテ選擧ヲ行フ場合ニ於テハ少クトモ七十日前其ノ他ノ場合ニ於テハ少クトモ十四日前ニ之ヲ發スヘシ
第十條 郡會議員ノ選擧ハ町村長之ヲ管理ス但シ數町村ヲ以テ一選擧區ト爲シタル場合ニ於テハ郡長ノ指定シタル町村長之ヲ管理ス
第十一條 町村長ハ選擧期日前六十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選擧人名簿ヲ調製スヘシ但シ數町村ノ區域ニ依リ選擧區ヲ設ケタル場合ニ於テハ選擧ヲ管理スル町村長ニ之ヲ送付スヘシ
選擧人其ノ住所ヲ有スル町村外ニ於テ直接國稅ヲ納ムルトキハ前項ノ期日マテニ當該行政廳ノ證明ヲ得テ其ノ住所地ノ町村長ニ屆出ツヘシ其ノ期限內ニ屆出ヲ爲ササルトキハ其ノ納稅ハ選擧人名簿ニ記載セラルヘキ要件ニ算入セス
選擧ヲ管理スル町村長ハ選擧前五十日ヲ期トシ其ノ日ヨリ七日間町村役場又ハ其ノ他ノ場所ニ於テ選擧人名簿ヲ關係者ノ縱覽ニ供スヘシ若關係者ニ於テ異議アルトキ又ハ正當ノ事故ニ依リ前項ノ手續ヲ爲スコト能ハスシテ名簿ニ登錄セラレサルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以內ニ之ヲ決定スヘシ
前項町村長ノ決定ニ不服アル者ハ郡參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡長町村長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
町村長ハ第三項異議ノ決定ニ依リ又ハ第四項訴願ノ裁決確定シ若ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ選擧ノ期日前七日マテニ修正ヲ加ヘテ確定名簿ト爲スヘシ
本條ニ依リ確定シタル名簿ハ郡內ノ各選擧區ニ涉リ同時ニ調製シタルモノハ確定シタル日ヨリ一年以內ニ於テ行フ選擧ニ之ヲ適用ス其ノ郡內一部ノ選擧區限リ調製シタルモノハ確定シタル日ヨリ一年以內ニ該選擧區ニ於テノミ行フ選擧ニ之ヲ適用ス但シ名簿確定後訴願ノ裁決若ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ選擧ノ期日前七日マテニ修正スヘシ
選擧人名簿ヲ修正シタルトキハ直ニ其ノ要領ヲ吿示スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ選擧人名簿ニ登錄セラルヘキ確定裁決書若ハ判決書ヲ所持シ選擧ノ當日選擧會場ニ到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
確定名簿ニ登錄セラレタル者選擧權ヲ有セサルトキハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無效ト爲リタルトキハ更ニ名簿ヲ調製スヘシ其ノ名簿調製ノ期日縱覽修正及確定ニ關スル期限等ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
第十二條 選擧會ハ町村役場若ハ選擧ヲ管理スル町村長ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ開クヘシ
數町村ヲ以テ一選擧區ト爲シタルトキハ選擧ヲ管理スル町村長ハ選擧ノ日ヨリ少クトモ四日前ニ選擧會ノ場所ヲ定メ關係町村長ニ通知スヘシ
選擧會ノ場所ハ選擧ノ日ヨリ少クトモ三日前町村長ニ於テ之ヲ吿示スヘシ
特別ノ事情アル地ニ於テハ命令ヲ以テ選擧分會ヲ設ケ其ノ選擧ニ關シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第十三條 選擧ヲ管理スル町村長ハ臨時ニ選擧人中ヨリ二名乃至四名ノ選擧立會人ヲ選任シ其ノ町村長ハ選擧長トナル
選擧立會人ハ名譽職トス
第十四條 選擧人ノ外選擧會場ニ入ルコトヲ得ス但シ選擧會場ノ事務ニ從事スル者選擧會場ヲ監視スル職權ヲ有スル者ハ此ノ限ニ在ラス
選擧人ハ選擧會場ニ於テ協議又ハ勸誘ヲ爲スコトヲ得ス
第十五條 選擧ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日自ラ選擧會場ニ到リ選擧人名簿ノ對照ヲ經投票簿ニ捺印シ投票スヘシ
選擧人ハ選擧會場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選擧人一名ノ氏名ヲ記載シテ投函スヘシ
投票用紙ニハ選擧人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ郡長ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
第十六條 左ノ投票ハ之ヲ無效トス
一 成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二 一投票中二人以上ノ被選擧人ヲ記載シタルモノ
三 被選擧人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
四 被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
五 被選擧人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十七條 投票ノ拒否竝效力ハ選擧立會人之ヲ議決ス可否同數ナルトキハ選擧長之ヲ決スヘシ
第十八條 郡會議員ノ選擧ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス投票ノ數相同キトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
同時ニ補闕員數名ヲ選擧スルトキハ投票ノ數多キ者、投票ノ數相同キトキハ年長者ヲ以テ殘任期ノ長キ前任者ノ補闕ト爲シ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ之ヲ定ム
第十九條 選擧長ハ選擧錄ヲ製シテ選擧ノ顚末ヲ記載シ選擧ヲ終リタル後之ヲ朗讀シ選擧立會人二名以上ト共ニ之ニ署名シ投票選擧人名簿其ノ他關係書類ト共ニ選擧ノ效力確定スルニ至ルマテ之ヲ保存スヘシ
第二十條 選擧ヲ終リタルトキハ選擧長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ吿知シ同時ニ選擧錄ノ寫ヲ添ヘ當選者ノ住所氏名ヲ郡長ニ報吿スヘシ
當選者當選ノ吿知ヲ受ケタルトキハ五日以內ニ其ノ當選ヲ承諾スルヤ否ヲ郡長ニ申立ツヘシ
一人ニシテ數選擧區ノ選擧ニ當リタルトキハ最終ニ當選ノ吿知ヲ受ケタル日ヨリ五日以內ニ何レノ選擧ニ應スヘキカヲ郡長ニ申立ツヘシ
定期改選增員選擧補闕選擧等ヲ同時ニ行ヒタル場合ニ於テ一人ニシテ其ノ數選擧ニ當リタルトキハ前項ノ例ニ依ル
前三項ノ申立ヲ其ノ期限內ニ爲ササルトキハ當選ヲ辭シタルモノト看做ス
第六條第七項ノ官吏ニシテ當選シタル者ニ關シテハ本條ニ定ムル期間ヲ二十日以內トス
第二十一條 郡會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ更ニ選擧ヲ行フヘシ
二人以上投票同數ニシテ年長ニ由テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルトキハ年少ニ由テ當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ年少ニ由テ當選セサリシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
二人以上投票同數ニシテ抽籤ニ依テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルトキハ抽籤ノ爲當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ抽籤ノ爲當選セサリシ者二人以上アルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
第二十二條 當選者其ノ當選ヲ承諾シタルトキハ郡長ハ直ニ當選證書ヲ付與シ及其ノ住所氏名ヲ吿示スヘシ
第二十三條 選擧人選擧若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ノ日ヨリ十四日以內ニ之ヲ郡長ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ郡參事會ノ決定ニ付スヘシ
郡長ニ於テ選擧若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ第一項申立ノ有無ニ拘ラス第二十條第一項ノ報吿ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ郡參事會ノ決定ニ付スルコトヲ得
本條郡參事會ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ關シテハ府縣知事郡長選擧ヲ管理スル町村長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十四條 選擧ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其ノ選擧ヲ無效トス但シ選擧ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞ナキモノハ此ノ限ニ在ラス
當選者ニシテ被選擧權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第二十五條 選擧若ハ當選無效ト確定シタルトキハ更ニ選擧ヲ行フヘシ但シ得票數ノ査定ニ錯誤アリタル爲又ハ選擧ノ際被選擧權ヲ有セサル爲當選無效ト確定シタルトキハ第十八條及第二十條ノ例ニ依ル
第二十六條 郡會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ニ關スル異議ハ郡參事會之ヲ決定ス
郡會ニ於テ其ノ議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ郡長ニ通知スヘシ但シ議員ハ自己ノ資格ニ關スル會議ニ於テ辯明スルコトヲ得ルモ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
郡長ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ郡參事會ノ決定ニ付スヘシ郡長ニ於テ被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキ亦同シ
本條郡參事會ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ關シテハ府縣知事郡長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
郡會議員ハ其ノ被選擧權ヲ有セストスル決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アルマテハ會議ニ列席シ及發言スルノ權ヲ失ハス
第二十七條 本款ニ規定スル異議ノ決定及訴願ノ裁決ハ其ノ決定書若ハ裁決書ヲ交付シタルトキ直ニ之ヲ吿示スヘシ
第二十八條 郡會議員ノ選擧ニ付テハ市町村會議員選擧ニ關スル罰則ヲ準用ス
第二款 職務權限及處務規程
第二十九條 郡會ノ議決スヘキ事件左ノ如シ
一 歲入出豫算ヲ定ムル事
二 決算報吿ニ關スル事
三 法律命令ニ定ムルモノヲ除ク外使用料手數料及夫役現品ノ賦課徵收ニ關スル事
四 不動產ノ處分竝買受讓受ニ關スル事
五 積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六 歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲ス事
七 財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
八 其ノ他法律命令ニ依リ郡會ノ權限ニ屬スル事項
第三十條 郡會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ郡參事會ニ委任スルコトヲ得
第三十一條 郡會ハ法律命令ニ依リ選擧ヲ行フヘシ
第三十二條 郡會ハ郡ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ郡長若ハ監督官廳ニ呈出スルコトヲ得
第三十三條 郡會ハ官廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
郡會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ郡會招集ニ應セス若ハ成立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ當該官廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十四條 郡會議員ハ選擧人ノ指示若ハ委囑ヲ受クヘカラス
第三十五條 郡會ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選擧スヘシ
議長副議長ハ議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
第三十六條 議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アルトキハ臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選擧スヘシ
第三十七條 郡長及其ノ委任若ハ囑託ヲ受ケタル官吏吏員ハ會議ニ列席シテ議事ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ發言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲議員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第三十八條 郡會ハ通常會及臨時會トス
通常會ハ每年一囘之ヲ開ク其ノ會期ハ十四日以內トス臨時會ハ必要アル場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ會期ハ五日以內トス
臨時會ニ付スヘキ事件ハ豫メ之ヲ吿示スヘシ但シ其ノ開會中急施ヲ要スル事件アルトキハ郡長ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得
第三十九條 郡會ハ郡長之ヲ招集ス
招集ハ開會ノ日ヨリ少クトモ十日前ニ吿示スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
郡會ハ郡長之ヲ開閉ス
第四十條 郡會ハ議員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第四十一條 郡會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十二條 議長及議員ハ自己若ハ父母祖父母妻子孫兄弟姊妹ノ一身上ニ關スル事件ニ付テハ郡會ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス
第四十三條 法律命令ノ規定ニ依リ郡會ニ於テ選擧ヲ行フトキハ一名每ニ匿名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス若過半數ヲ得タル者ナキトキハ最多數ヲ得タル者二名ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ爲サシム其ノ二名ヲ取ルニ當リ同數者アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テハ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス若同數ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム其ノ他ハ第十五條乃至第十七條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ選擧ニ付テハ郡會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選若ハ連名投票ノ法ヲ用ウルコトヲ得其ノ連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル
第四十四條 郡會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 郡長ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二 議長若ハ議員三名以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長若ハ議員ノ發議ハ討論ヲ須ヒス其ノ可否ヲ決スヘシ
第四十五條 議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第四十六條 郡會議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ涉リ言論スルコトヲ得ス
第四十七條 會議中此ノ法律若ハ會議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル議員アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ルマテ發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騷擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉ツルコトヲ得
第四十八條 傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騷ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騷擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第四十九條 議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ會議ノ妨害ヲ爲ス者アルトキハ議員若ハ第三十七條ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第五十條 郡會ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第五十一條 議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ顚末竝出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ會議錄ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルヲ要ス其ノ議員ハ郡會ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ會議錄ヲ添ヘ會議ノ結果ヲ郡長ニ報吿スヘシ
第五十二條 郡會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
會議規則ニハ此ノ法律竝會議規則ニ違背シタル議員ニ對シ郡會ノ議決ニ依リ三日以內出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章 郡參事會
第一款 組織及選擧
第五十三條 郡ニ郡參事會ヲ置キ左ノ職員ヲ以テ之ヲ組織ス
一 郡長
二 名譽職參事會員 五名
第五十四條 名譽職參事會員ハ郡會ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選擧スヘシ
郡會ハ名譽職參事會員ト同數ノ補充員ヲ選擧スヘシ
名譽職參事會員中闕員アルトキハ郡長ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補闕ス其ノ順序ハ選擧同時ナルトキハ投票數ニ依リ投票同數ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ニ依リ選擧ノ時ヲ異ニスルトキハ選擧ノ前後ニ依ル仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補闕選擧ヲ行フヘシ
補闕員ハ前任者ノ殘任期間在任ス
名譽職參事會員及其ノ補充員ハ郡會議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ但シ名譽職參事會員ハ後任者就任ノ日マテ在任ス
第五十五條 郡參事會ハ郡長ヲ以テ議長トス郡長故障アルトキハ出席會員中ヨリ臨時議長ヲ互選スヘシ
第二款 職務權限及處務規程
第五十六條 郡參事會ノ職務權限左ノ如シ
一 郡會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スル事
二 郡會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ郡長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ郡會ニ代テ議決スル事
三 郡長ヨリ郡會ニ提出スル議案ニ付郡長ニ對シ意見ヲ述フル事
四 郡會ノ議決シタル範圍內ニ於テ財產及營造物ノ管理ニ關シ重要ナル事項ヲ議決スル事
五 郡費ヲ以テ支辨スヘキ工事ノ執行ニ關スル規定ヲ議決スル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六 郡ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項ヲ議決スル事
七 其ノ他法律命令ニ依リ郡參事會ノ權限ニ屬スル事項
第五十七條 郡參事會ハ名譽職參事會員中ヨリ委員ヲ選擧シ之ヲシテ郡ニ係ル出納ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ檢査ニハ郡長又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立會フコトヲ要ス
第五十八條 第三十二條第三十三條第三十七條及第五十條ノ規定ハ郡參事會ニ之ヲ準用ス
第五十九條 郡參事會ハ郡長之ヲ招集ス若名譽職參事會員半數以上ノ請求アル場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ郡長ハ郡參事會ヲ招集スヘシ
郡參事會ノ會期ハ郡長之ヲ定ム
第六十條 郡參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第六十一條 郡參事會ハ議長及名譽職參事會員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第五十六條第二ノ議決ヲ爲ストキハ郡長ハ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
郡參事會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
會議ノ顚末ハ之ヲ會議錄ニ記載シ議長及名譽職參事會員二名以上之ニ署名スヘシ
第六十二條 第四十二條ノ規定ハ郡參事會員ニ之ヲ準用ス但シ同條ノ規定ニ依リ會員ノ數減少シテ前條第一項ノ數ヲ得サルトキハ郡長ハ補充員ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ以テ第五十四條第三項ノ順序ニ依リ臨時之ニ充テ仍其ノ數ヲ得サルトキハ郡會議員ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ臨時ニ指名シ其ノ闕員ヲ補充スヘシ
第四章 郡行政
第一款 郡吏員ノ組織及任免
第六十三條 郡ニ有給ノ郡吏員ヲ置クコトヲ得其ノ定員ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
前項ノ郡吏員ハ府縣知事之ヲ任免ス
第六十四條 郡ニ郡出納吏ヲ置キ官吏吏員ノ中ニ就キ郡長之ヲ命ス
第六十五條 郡ハ郡會ノ議決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ得テ臨時若ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名譽職トス
委員ノ組織選任任期等ニ關スル事項ハ郡會ノ議決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
第二款 郡官吏郡吏員ノ職務權限及處務規程
第六十六條 郡長ハ郡ヲ統轄シ郡ヲ代表ス
郡長ノ擔任スル事務ノ槪目左ノ如シ
一 郡費ヲ以テ支辨スヘキ事件ヲ執行スル事
二 郡會及郡參事會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發スル事
三 財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
四 收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
五 證書及公文書類ヲ保管スル事
六 法律命令又ハ郡會若ハ郡參事會ノ議決ニ依リ使用料手數料郡費及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
七 其ノ他法律命令ニ依リ郡長ノ職權ニ屬スル事項
第六十七條 郡長ハ議案ヲ郡會ニ提出スル前之ヲ郡參事會ノ審査ニ付シ若郡參事會ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ郡參事會ノ意見ヲ議案ニ添ヘ郡會ニ提出スヘシ
第六十八條 郡長ハ郡ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ町村吏員ニ補助執行セシメ若ハ委任スルコトヲ得
郡長ハ郡ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ郡吏員ニ臨時代理セシムルコトヲ得
第六十九條 郡會若ハ郡參事會ノ議決若ハ選擧其ノ權限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クト認ムルトキハ郡長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選擧ヲ取消シ又ハ議決ニ付テハ再議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消處分ニ不服アル郡會若ハ郡參事會ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
郡會若ハ郡參事會ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ郡長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ府縣知事ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ
前項府縣知事ノ處分ニ不服アル郡會若ハ郡參事會ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第七十條 郡會若ハ郡參事會ニ於テ郡ノ收支ニ關シ不適當ノ議決ヲ爲シタルトキハ郡長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ府縣知事ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ府縣知事ノ指揮ヲ請フコトヲ得
前項府縣知事ノ處分ニ不服アル郡會若ハ郡參事會ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第七十一條 郡長ハ期日ヲ定メテ郡會ノ停會ヲ命スルコトヲ得
第七十二條 郡會若ハ郡參事會招集ニ應セス又ハ成立セサルトキハ郡長ハ府縣知事ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ得第四十二條第六十二條ノ場合ニ於テ會議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
郡會若ハ郡參事會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ郡會ニ於テ其ノ招集前吿示セラレタル事件ニ關シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
郡參事會ノ決定若ハ裁決スヘキ事項ニ關シテハ本條第一項第二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル郡長ノ處分ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本條ノ處分ハ次ノ會期ニ於テ之ヲ郡會若ハ郡參事會ニ報吿スヘシ
第七十三條 郡參事會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ郡長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ郡長ハ專決處分シ次ノ會期ニ於テ其ノ處分ヲ郡參事會ニ報吿スヘシ
第七十四條 郡參事會ノ權限ニ屬スル事項ハ其ノ議決ニ依リ郡長ニ於テ專決處分スルコトヲ得
第七十五條 官吏ノ郡行政ニ關スル職務關係ハ此ノ法律中規定アルモノヲ除ク外國ノ行政ニ關スル其ノ職務關係ノ例ニ依ル
第七十六條 郡出納吏ハ出納事務ヲ掌ル
第七十七條 郡吏員ハ郡長ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
第七十八條 委員ハ郡長ノ指揮監督ヲ承ケ財產若ハ營造物ヲ管理シ其ノ他郡行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨ス
第七十九條 郡ノ事務ニ關スル處務規程ハ郡長之ヲ定ム
第三款 給料及給與
第八十條 有給郡吏員ノ給料額竝旅費額及其ノ支給方法ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
第八十一條 郡會議長名譽職參事會員其ノ他名譽職員ハ職務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
費用辨償額及其ノ支給方法ハ郡會ノ議決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ府縣知事之ヲ定ム
第八十二條 有給郡吏員ノ退隱料退職給與金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ郡會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム若許可スヘカラスト認ムルトキハ內務大臣之ヲ定ム
第八十三條 退隱料退職給與金遺族扶助料及費用辨償ノ給與ニ關シ異議アルトキハ之ヲ郡長ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ郡參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ關シテハ府縣知事郡長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第八十四條 給料旅費退隱料退職給與金遺族扶助料費用辨償其ノ他諸給與ハ郡ノ負擔トス
第五章 郡ノ財務
第一款 財產營造物及郡費
第八十五條 郡ハ積立金穀等ヲ設クルコトヲ得
第八十六條 郡ハ營造物若ハ公共ノ用ニ供シタル財產ノ使用ニ付使用料ヲ徵收シ又ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第八十七條 此ノ法律中別ニ規定アルモノヲ除ク外使用料手數料ニ關スル細則ハ郡會ノ議決ヲ經府縣知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム其ノ細則ニハ過料二圓以下ノ罰則ヲ設クルコトヲ得
過料ニ處シ及之ヲ徵收スルハ郡長之ヲ掌ル其ノ處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第八十八條 郡ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附若ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第八十九條 郡ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令ニ依リ郡ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
前項ノ負擔ハ財產ヨリ生スル收入及其ノ他ノ收入ヲ以テ充ツルモノヽ外之ヲ郡內各町村ニ分賦スヘシ
第九十條 郡費分賦ノ割合ハ其ノ豫算ノ屬スル年度ノ前前年度ニ於ケル各町村ノ直接國稅府縣稅ノ徵收額ニ依ル但シ本條ノ分賦方法ニ依リ難キ事情アルトキハ郡長ハ郡會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ特別ノ分賦方法ヲ設クルコトヲ得
第九十一條 郡內ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ內務大臣ノ定ムル所ニ依リ不均一ノ賦課ヲ爲スコトヲ得
第九十二條 郡ハ其ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ郡內一部ノ町村ニ賦課スルコトヲ得但シ學藝美術及手工ニ關スル勞役ヲ課スルコトヲ得ス
夫役及現品ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金額ニ算出シテ賦課スヘシ
夫役又ハ現品ヲ賦課セラレタル町村ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金錢ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第九十三條 使用料手數料ノ徵收ニ關シ吿知ヲ受ケタル者其ノ吿知ニ違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ吿知書ノ交付後三箇月以內ニ郡長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
郡費ノ分賦ニ關シ町村ニ於テ其ノ分賦ニ違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ其ノ吿知ヲ受ケタル時ヨリ三箇月以內ニ郡長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前二項ノ異議ハ之ヲ郡參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ關シテハ府縣知事郡長町村吏員ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十四條 使用料手數料過料其ノ他郡ノ收入ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘシ
本條ニ記載スル徵收金ハ府縣ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
本條第一項ノ場合ニ於テ町村吏員ノ處分ニ不服アル者ハ郡參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ郡長ノ處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡長町村吏員ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本條第一項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
第九十五條 郡ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ郡ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲必要アル場合ニ限リ郡會ノ議決ヲ經テ郡債ヲ起スコトヲ得
郡債ヲ起スニ付郡會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
郡ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス郡參事會ノ議決ヲ經テ一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
第二款 歲入出豫算及決算
第九十六條 郡長ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ年度開始前郡會ノ議決ヲ經ヘシ
郡ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ヲ郡會ニ提出スルトキハ郡長ハ併セテ財產表ヲ提出スヘシ
第九十七條 郡長ハ郡會ノ議決ヲ經テ旣定豫算ノ追加若ハ更正ヲ爲スコトヲ得
第九十八條 郡費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ郡會ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第九十九條 豫算外ノ支出若ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設クヘシ但シ郡會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百條 豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ府縣知事ニ報吿シ竝其ノ要領ヲ吿示スヘシ
第百一條 郡長ハ郡會ノ議決ヲ經テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百二條 決算ハ翌翌年ノ通常會ニ於テ之ヲ郡會ニ報吿スヘシ
郡長ハ決算ヲ郡會ニ報吿スル前郡參事會ノ審査ニ付スヘシ若郡長ト郡參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ郡長ハ郡參事會ノ意見ヲ決算ニ添ヘ郡會ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ府縣知事ニ報吿シ竝其ノ要領ヲ吿示スヘシ
第百三條 豫算調製ノ式竝費目流用其ノ他財務ニ關スル必要ナル規定ハ內務大臣之ヲ定ム
第百四條 郡吏員ノ身元保證及賠償責任ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 郡組合
第百五條 特定ノ事務ヲ共同處理セシムル必要アル場合ニ於テハ府縣知事ハ關係アル郡參事會ノ意見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ郡組合ヲ設置スルコトヲ得郡組合ノ廢止若ハ變更ニ付テモ亦同シ
第百六條 郡組合ヲ設置スルトキハ府縣知事ハ關係アル郡參事會ノ意見ヲ徵シ府縣參事會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ郡組合會ノ組織事務ノ管理方法竝其ノ費用ノ支辨方法其ノ他必要ナル事項ヲ定ムヘシ
第百七條 郡組合ハ法人トス
郡組合ニ關シテハ本章中規定スルモノヲ除ク外此ノ法律ノ規定ヲ準用ス但シ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルモノハ此ノ限ニ在ラス
第七章 郡行政ノ監督
第百八條 郡ノ行政ハ第一次ニ於テ府縣知事之ヲ監督シ第二次ニ於テ內務大臣之ヲ監督ス
第百九條 此ノ法律中別段ノ規定アル場合ヲ除ク外郡ノ行政ニ關スル府縣知事ノ處分ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
此ノ法律ニ規定スル異議若ハ訴願ハ處分ヲ爲シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ十四日以內ニ之ヲ提起スヘシ但シ此ノ法律中別ニ期限ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
此ノ法律ニ規定スル行政訴訟ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ二十一日以內ニ之ヲ提起スヘシ
決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケサル者ニ關シテハ前二項ノ期間ハ吿示ノ翌日ヨリ起算ス
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
此ノ法律ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ付スヘシ
前項異議ノ決定書ハ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ申立若ハ訴願ノ提起ニ關スル期間ノ計算竝天災事變ノ場合ニ於ケル特例ニ付テハ民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
異議ヲ申立テ又ハ訴願訴訟ヲ提起スル者アルトキハ行政廳及行政裁判所ハ其ノ職權ニ依リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムル場合ニ限リ處分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第百十條 監督官廳ハ郡行政ノ法律命令ニ背戾セサルヤ又ハ公益ヲ害セサルヤ否ヲ監視スヘシ監督官廳ハ之カ爲行政事務ニ關シテ報吿ヲ爲サシメ書類帳簿ヲ徵シ竝實地ニ就キ事務ヲ視察シ出納ヲ檢閱スルノ權ヲ有ス
監督官廳ハ郡行政ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スノ權ヲ有ス
第百十一條 監督官廳ハ郡ノ豫算中不適當ト認ムルモノアルトキハ之ヲ削減スルコトヲ得
第百十二條 內務大臣ハ郡會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
郡會解散ノ場合ニ於テハ三箇月以內ニ議員ヲ選擧スヘシ
解散後始メテ郡會ヲ招集スルトキハ郡長ハ第三十八條第二項ノ規定ニ拘ラス府縣知事ノ許可ヲ得テ別ニ會期ヲ定ムルコトヲ得
第百十三條 郡吏員ノ服務紀律ハ內務大臣之ヲ定ム
第百十四條 左ニ揭クル事件ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 學藝美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ若ハ大ナル變更ヲ爲ス事
二 使用料手數料ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
第百十五條 郡債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ若ハ之ヲ變更スルトキハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス但シ第九十五條末項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
第百十六條 左ニ揭クル事件ハ府縣知事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
二 寄附若ハ補助ヲ爲ス事
三 不動產ノ處分ニ關スル事
四 第九十二條ニ依リ夫役及現品ヲ賦課スル事但シ急迫ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
五 繼續費ヲ定メ若ハ變更スル事
六 特別會計ヲ設クル事
第百十七條 郡ノ行政ニ關シ監督官廳ノ許可ヲ要スヘキ事項ニ付テハ監督官廳ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第百十八條 郡ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項中其ノ輕易ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ其ノ職權ヲ府縣知事ニ委任スルコトヲ得
第百十九條 府縣知事ハ郡吏員ニ對シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
府縣知事ハ郡吏員ノ懲戒處分ヲ行ハントスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命シ竝給料ヲ支給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間其ノ郡ノ公職ニ選擧セラレ若ハ任命セラルルコトヲ得ス
第八章 附則
第百二十條 此ノ法律ハ明治二十三年法律第三十六號郡制ヲ施行シタル府縣ニハ明治三十二年七月一日ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ府縣ニ關スル施行ノ時期ハ府縣知事ノ具申ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
第百二十一條 郡內總町村ニ屬スル事業竝其ノ財產營造物ハ小學校ヲ除ク外此ノ法律施行ノ日ヨリ郡ニ移ルモノトス
第百二十二條 此ノ法律ノ規定ニ依リ府縣知事府縣參事會ノ職權ニ屬スル事件ニシテ數府縣ニ涉ルモノアルトキハ關係府縣知事ノ具狀ニ依リ內務大臣ニ於テ其ノ事件ヲ管理スヘキ府縣知事及府縣參事會ヲ指定スヘシ
第百二十三條 島嶼ニ關シテハ別ニ勅令ヲ以テ其ノ制ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ島嶼ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス
第百二十四條 明治二十三年法律第三十六號郡制ノ規定ニ依リ選擧セラレタル郡會議員郡參事會員ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ其ノ職ヲ失フ
本法發布後施行ノ日ニ至ルマテノ間ニ明治二十三年法律第三十六號郡制ヲ施行シタル府縣ニ於テハ郡會議員ノ改選ヲ要スルコトアルモ其ノ改選ヲ行ハス議員ハ本法施行ノ日マテ在任ス
第百二十五條此ノ法律施行ノ際郡會及郡參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ルマテノ間郡長之ヲ行フ
第百二十六條 此ノ法律ニ定ムル府縣參事會ノ職務ハ府縣制ヲ施行シ府縣參事會ノ成立ニ至ルマテノ間府縣知事之ヲ行フ
第百二十七條 此ノ法律ニ定ムル直接稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ吿示ス
第百二十八條 明治十一年第十七號布吿郡區町村編制法其ノ他此ノ法律ニ牴觸スル法規ハ此ノ法律施行ノ地ニ於テハ其ノ效力ヲ失フ
第百二十九條 此ノ法律ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル郡制改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
内務大臣 侯爵 西郷従道
法律第六十五号
郡制
第一章
総則
第二章
郡会
第一款
組織及選挙
第二款
職務権限及処務規程
第三章
郡参事会
第一款
組織及選挙
第二款
職務権限及処務規程
第四章
郡行政
第一款
郡吏員ノ組織及任免
第二款
郡官吏郡吏員ノ職務権限及処務規程
第三款給料及給与
第五章
郡ノ財務
第一款
財産営造物及郡費
第二款
歳入出予算及決算
第六章
郡組合
第七章
郡行政ノ監督
第八章
附則
郡制
第一章 総則
第一条 郡ハ従来ノ区域ニ依リ町村ヲ包括ス
第二条 郡ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法律命令ノ範囲内ニ於テ其ノ公共事務並法律勅令ニ依リ郡ニ属スル事務ヲ処理ス
第三条 郡ノ廃置分合又ハ境界変更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
郡ノ境界ニ渉リテ市町村境界ノ変更アリタルトキハ郡ノ境界モ亦自ラ変更ス町村ヲ変シテ市ト為シ若ハ市ヲ変シテ町村ト為シ又ハ所属未定地ヲ町村ノ区域ニ編入シタルトキ亦同シ
本条ノ処分ニ付財産処分ヲ要スルトキハ内務大臣ハ関係アル府県郡市参事会及町村会ノ意見ヲ徴シテ之ヲ定ム但シ特ニ法律ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二章 郡会
第一款 組織及選挙
第四条 郡会議員ハ各選挙区ニ於テ之ヲ選挙ス
選挙区ハ町村ノ区域ニ依ル但シ事情ニ依リ郡長ハ郡会ノ議決ヲ経府県知事ノ許可ヲ得テ数町村ノ区域ニ依リ選挙区ヲ設クルコトヲ得
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部ヲ共同処理スルモノハ之ヲ一町村ト看做ス
第五条 郡会議員ノ員数ハ十五人以上三十人以下トス
郡ノ状況ニ依リ内務大臣ノ許可ヲ得テ前項ノ員数ヲ四十人マテ増加スルコトヲ得
郡会議員ノ定数及各選挙区ニ於テ選挙スヘキ郡会議員ノ数ハ郡会ノ議決ヲ経府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
前項議員ノ配当方法ニ関スル必要ナル事項ハ内務大臣之ヲ定ム
第六条 郡内ノ町村公民ニシテ町村会議員ノ選挙権ヲ有シ且其ノ郡内ニ於テ一年以来直接国税年額三円以上ヲ納ムル者ハ郡会議員ノ選挙権ヲ有ス
郡内ノ町村公民ニシテ町村会議員ノ選挙権ヲ有シ且其ノ郡内ニ於テ一年以来直接国税年額五円以上ヲ納ムル者ハ郡会議員ノ被選挙権ヲ有ス
家督相続ニ依リ財産ヲ取得シタル者ハ其ノ財産ニ付被相続人ノ為シタル納税ヲ以テ其ノ者ノ納税シタルモノト看做ス
郡会議員ハ住所ヲ移シタル為町村ノ公民権ヲ失フコトアルモ其ノ住所同郡内ニ在ルトキハ之カ為其ノ職ヲ失フコトナシ
郡会議員ノ選挙権及被選挙権ノ要件中其ノ年限ニ関スルモノハ府県郡市町村ノ廃置分合若ハ境界変更ノ為中断セラルルコトナシ
左ニ掲クル者ハ郡会議員ノ被選挙権ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサル者亦同シ
一 所属府県ノ官吏及有給吏員
二 其ノ郡ノ官吏及有給吏員
三 検事警察官吏及収税官吏
四 神官僧侶其ノ他諸宗教師
五 小学校教員
前項ノ外ノ官吏ニシテ当選シ之ニ応セントスルトキハ所属長官ノ許可ヲ受クヘシ
選挙事務ニ関係アル吏員ハ其ノ選挙区ニ於テ被選挙権ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサル者亦同シ
郡ノ為請負ヲ為ス者又ハ郡ノ為請負ヲ為ス法人ノ役員ハ其ノ郡ノ郡会議員ノ被選挙権ヲ有セス
第七条 郡会議員ハ名誉職トス
郡会議員ノ任期ハ四年トス
議員ノ定数ニ異動ヲ生シタル為又ハ議員ノ配当ヲ更正シタル為解任ヲ要スル者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 郡会議員中闕員アルトキ及郡会議員ノ定数ニ異動ヲ生シタル為又ハ議員ノ配当ヲ更正シタル為議員ノ選挙ヲ要スルトキハ三箇月以内ニ之ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ残任期間在任ス
補闕議員ヲ除ク外本条第一項ニ依リ選挙セラレタル議員ハ次ノ改選期マテ在任ス
第九条 郡会議員ノ選挙ハ郡長ノ告示ニ依リ之ヲ行フ其ノ告示ニハ選挙ヲ行フヘキ選挙区投票ヲ行フヘキ日時及選挙スヘキ議員ノ員数ヲ記載シ新ニ選挙人名簿ヲ調製シテ選挙ヲ行フ場合ニ於テハ少クトモ七十日前其ノ他ノ場合ニ於テハ少クトモ十四日前ニ之ヲ発スヘシ
第十条 郡会議員ノ選挙ハ町村長之ヲ管理ス但シ数町村ヲ以テ一選挙区ト為シタル場合ニ於テハ郡長ノ指定シタル町村長之ヲ管理ス
第十一条 町村長ハ選挙期日前六十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選挙人名簿ヲ調製スヘシ但シ数町村ノ区域ニ依リ選挙区ヲ設ケタル場合ニ於テハ選挙ヲ管理スル町村長ニ之ヲ送付スヘシ
選挙人其ノ住所ヲ有スル町村外ニ於テ直接国税ヲ納ムルトキハ前項ノ期日マテニ当該行政庁ノ証明ヲ得テ其ノ住所地ノ町村長ニ届出ツヘシ其ノ期限内ニ届出ヲ為ササルトキハ其ノ納税ハ選挙人名簿ニ記載セラルヘキ要件ニ算入セス
選挙ヲ管理スル町村長ハ選挙前五十日ヲ期トシ其ノ日ヨリ七日間町村役場又ハ其ノ他ノ場所ニ於テ選挙人名簿ヲ関係者ノ縦覧ニ供スヘシ若関係者ニ於テ異議アルトキ又ハ正当ノ事故ニ依リ前項ノ手続ヲ為スコト能ハスシテ名簿ニ登録セラレサルトキハ縦覧期限内ニ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以内ニ之ヲ決定スヘシ
前項町村長ノ決定ニ不服アル者ハ郡参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ関シテハ府県知事郡長町村長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
町村長ハ第三項異議ノ決定ニ依リ又ハ第四項訴願ノ裁決確定シ若ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ選挙ノ期日前七日マテニ修正ヲ加ヘテ確定名簿ト為スヘシ
本条ニ依リ確定シタル名簿ハ郡内ノ各選挙区ニ渉リ同時ニ調製シタルモノハ確定シタル日ヨリ一年以内ニ於テ行フ選挙ニ之ヲ適用ス其ノ郡内一部ノ選挙区限リ調製シタルモノハ確定シタル日ヨリ一年以内ニ該選挙区ニ於テノミ行フ選挙ニ之ヲ適用ス但シ名簿確定後訴願ノ裁決若ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ選挙ノ期日前七日マテニ修正スヘシ
選挙人名簿ヲ修正シタルトキハ直ニ其ノ要領ヲ告示スヘシ
確定名簿ニ登録セラレサル者ハ選挙ニ参与スルコトヲ得ス但シ選挙人名簿ニ登録セラルヘキ確定裁決書若ハ判決書ヲ所持シ選挙ノ当日選挙会場ニ到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
確定名簿ニ登録セラレタル者選挙権ヲ有セサルトキハ選挙ニ参与スルコトヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無効ト為リタルトキハ更ニ名簿ヲ調製スヘシ其ノ名簿調製ノ期日縦覧修正及確定ニ関スル期限等ハ府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
第十二条 選挙会ハ町村役場若ハ選挙ヲ管理スル町村長ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ開クヘシ
数町村ヲ以テ一選挙区ト為シタルトキハ選挙ヲ管理スル町村長ハ選挙ノ日ヨリ少クトモ四日前ニ選挙会ノ場所ヲ定メ関係町村長ニ通知スヘシ
選挙会ノ場所ハ選挙ノ日ヨリ少クトモ三日前町村長ニ於テ之ヲ告示スヘシ
特別ノ事情アル地ニ於テハ命令ヲ以テ選挙分会ヲ設ケ其ノ選挙ニ関シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第十三条 選挙ヲ管理スル町村長ハ臨時ニ選挙人中ヨリ二名乃至四名ノ選挙立会人ヲ選任シ其ノ町村長ハ選挙長トナル
選挙立会人ハ名誉職トス
第十四条 選挙人ノ外選挙会場ニ入ルコトヲ得ス但シ選挙会場ノ事務ニ従事スル者選挙会場ヲ監視スル職権ヲ有スル者ハ此ノ限ニ在ラス
選挙人ハ選挙会場ニ於テ協議又ハ勧誘ヲ為スコトヲ得ス
第十五条 選挙ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選挙人ハ選挙ノ当日自ラ選挙会場ニ到リ選挙人名簿ノ対照ヲ経投票簿ニ捺印シ投票スヘシ
選挙人ハ選挙会場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選挙人一名ノ氏名ヲ記載シテ投函スヘシ
投票用紙ニハ選挙人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選挙人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ為スコトヲ得ス
投票用紙ハ郡長ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
第十六条 左ノ投票ハ之ヲ無効トス
一 成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二 一投票中二人以上ノ被選挙人ヲ記載シタルモノ
三 被選挙人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
四 被選挙権ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
五 被選挙人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所又ハ敬称ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十七条 投票ノ拒否並効力ハ選挙立会人之ヲ議決ス可否同数ナルトキハ選挙長之ヲ決スヘシ
第十八条 郡会議員ノ選挙ハ有効投票ノ最多数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス投票ノ数相同キトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選挙長抽籤シテ其ノ当選者ヲ定ム
同時ニ補闕員数名ヲ選挙スルトキハ投票ノ数多キ者、投票ノ数相同キトキハ年長者ヲ以テ残任期ノ長キ前任者ノ補闕ト為シ同年月ナルトキハ選挙長抽籤シテ之ヲ定ム
第十九条 選挙長ハ選挙録ヲ製シテ選挙ノ顛末ヲ記載シ選挙ヲ終リタル後之ヲ朗読シ選挙立会人二名以上ト共ニ之ニ署名シ投票選挙人名簿其ノ他関係書類ト共ニ選挙ノ効力確定スルニ至ルマテ之ヲ保存スヘシ
第二十条 選挙ヲ終リタルトキハ選挙長ハ直ニ当選者ニ当選ノ旨ヲ告知シ同時ニ選挙録ノ写ヲ添ヘ当選者ノ住所氏名ヲ郡長ニ報告スヘシ
当選者当選ノ告知ヲ受ケタルトキハ五日以内ニ其ノ当選ヲ承諾スルヤ否ヲ郡長ニ申立ツヘシ
一人ニシテ数選挙区ノ選挙ニ当リタルトキハ最終ニ当選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ五日以内ニ何レノ選挙ニ応スヘキカヲ郡長ニ申立ツヘシ
定期改選増員選挙補闕選挙等ヲ同時ニ行ヒタル場合ニ於テ一人ニシテ其ノ数選挙ニ当リタルトキハ前項ノ例ニ依ル
前三項ノ申立ヲ其ノ期限内ニ為ササルトキハ当選ヲ辞シタルモノト看做ス
第六条第七項ノ官吏ニシテ当選シタル者ニ関シテハ本条ニ定ムル期間ヲ二十日以内トス
第二十一条 郡会議員ノ当選ヲ辞シタル者アルトキハ更ニ選挙ヲ行フヘシ
二人以上投票同数ニシテ年長ニ由テ当選シタル者其ノ当選ヲ辞シタルトキハ年少ニ由テ当選セサリシ者ヲ以テ当選トス但シ年少ニ由テ当選セサリシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選挙長抽籤シテ其ノ当選者ヲ定ム
二人以上投票同数ニシテ抽籤ニ依テ当選シタル者其ノ当選ヲ辞シタルトキハ抽籤ノ為当選セサリシ者ヲ以テ当選トス但シ抽籤ノ為当選セサリシ者二人以上アルトキハ選挙長抽籤シテ其ノ当選者ヲ定ム
第二十二条 当選者其ノ当選ヲ承諾シタルトキハ郡長ハ直ニ当選証書ヲ付与シ及其ノ住所氏名ヲ告示スヘシ
第二十三条 選挙人選挙若ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙ノ日ヨリ十四日以内ニ之ヲ郡長ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ郡参事会ノ決定ニ付スヘシ
郡長ニ於テ選挙若ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ第一項申立ノ有無ニ拘ラス第二十条第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ郡参事会ノ決定ニ付スルコトヲ得
本条郡参事会ノ決定ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ関シテハ府県知事郡長選挙ヲ管理スル町村長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十四条 選挙ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其ノ選挙ヲ無効トス但シ選挙ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞ナキモノハ此ノ限ニ在ラス
当選者ニシテ被選挙権ヲ有セサルトキハ其ノ当選ヲ無効トス
第二十五条 選挙若ハ当選無効ト確定シタルトキハ更ニ選挙ヲ行フヘシ但シ得票数ノ査定ニ錯誤アリタル為又ハ選挙ノ際被選挙権ヲ有セサル為当選無効ト確定シタルトキハ第十八条及第二十条ノ例ニ依ル
第二十六条 郡会議員ニシテ被選挙権ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選挙権ニ関スル異議ハ郡参事会之ヲ決定ス
郡会ニ於テ其ノ議員中被選挙権ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ郡長ニ通知スヘシ但シ議員ハ自己ノ資格ニ関スル会議ニ於テ弁明スルコトヲ得ルモ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
郡長ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ郡参事会ノ決定ニ付スヘシ郡長ニ於テ被選挙権ヲ有セサル者アリト認ムルトキ亦同シ
本条郡参事会ノ決定ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ関シテハ府県知事郡長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
郡会議員ハ其ノ被選挙権ヲ有セストスル決定若ハ裁決確定シ又ハ判決アルマテハ会議ニ列席シ及発言スルノ権ヲ失ハス
第二十七条 本款ニ規定スル異議ノ決定及訴願ノ裁決ハ其ノ決定書若ハ裁決書ヲ交付シタルトキ直ニ之ヲ告示スヘシ
第二十八条 郡会議員ノ選挙ニ付テハ市町村会議員選挙ニ関スル罰則ヲ準用ス
第二款 職務権限及処務規程
第二十九条 郡会ノ議決スヘキ事件左ノ如シ
一 歳入出予算ヲ定ムル事
二 決算報告ニ関スル事
三 法律命令ニ定ムルモノヲ除ク外使用料手数料及夫役現品ノ賦課徴収ニ関スル事
四 不動産ノ処分並買受譲受ニ関スル事
五 積立金穀等ノ設置及処分ニ関スル事
六 歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ抛棄ヲ為ス事
七 財産及営造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
八 其ノ他法律命令ニ依リ郡会ノ権限ニ属スル事項
第三十条 郡会ハ其ノ権限ニ属スル事項ヲ郡参事会ニ委任スルコトヲ得
第三十一条 郡会ハ法律命令ニ依リ選挙ヲ行フヘシ
第三十二条 郡会ハ郡ノ公益ニ関スル事件ニ付意見書ヲ郡長若ハ監督官庁ニ呈出スルコトヲ得
第三十三条 郡会ハ官庁ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
郡会ノ意見ヲ徴シテ処分ヲ為スヘキ場合ニ於テ郡会招集ニ応セス若ハ成立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ当該官庁ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ処分ヲ為スコトヲ得
第三十四条 郡会議員ハ選挙人ノ指示若ハ委嘱ヲ受クヘカラス
第三十五条 郡会ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選挙スヘシ
議長副議長ハ議員ノ定期改選毎ニ之ヲ改選スヘシ
第三十六条 議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アルトキハ臨時ニ議員中ヨリ仮議長ヲ選挙スヘシ
第三十七条 郡長及其ノ委任若ハ嘱託ヲ受ケタル官吏吏員ハ会議ニ列席シテ議事ニ参与スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ発言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之カ為議員ノ演説ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第三十八条 郡会ハ通常会及臨時会トス
通常会ハ毎年一回之ヲ開ク其ノ会期ハ十四日以内トス臨時会ハ必要アル場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ会期ハ五日以内トス
臨時会ニ付スヘキ事件ハ予メ之ヲ告示スヘシ但シ其ノ開会中急施ヲ要スル事件アルトキハ郡長ハ直ニ之ヲ其ノ会議ニ付スルコトヲ得
第三十九条 郡会ハ郡長之ヲ招集ス
招集ハ開会ノ日ヨリ少クトモ十日前ニ告示スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
郡会ハ郡長之ヲ開閉ス
第四十条 郡会ハ議員定員ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス
第四十一条 郡会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十二条 議長及議員ハ自己若ハ父母祖父母妻子孫兄弟姉妹ノ一身上ニ関スル事件ニ付テハ郡会ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ議事ニ参与スルコトヲ得ス
第四十三条 法律命令ノ規定ニ依リ郡会ニ於テ選挙ヲ行フトキハ一名毎ニ匿名投票ヲ為シ有効投票ノ過半数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス若過半数ヲ得タル者ナキトキハ最多数ヲ得タル者二名ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ為サシム其ノ二名ヲ取ルニ当リ同数者アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テハ最多数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス若同数ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム其ノ他ハ第十五条乃至第十七条ノ規定ヲ準用ス
前項ノ選挙ニ付テハ郡会ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選若ハ連名投票ノ法ヲ用ウルコトヲ得其ノ連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル
第四十四条 郡会ノ会議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 郡長ヨリ傍聴禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二 議長若ハ議員三名以上ノ発議ニ依リ傍聴禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長若ハ議員ノ発議ハ討論ヲ須ヒス其ノ可否ヲ決スヘシ
第四十五条 議長ハ会議ノ事ヲ総理シ会議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ会議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第四十六条 郡会議員ハ会議中無礼ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ渉リ言論スルコトヲ得ス
第四十七条 会議中此ノ法律若ハ会議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル議員アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若ハ発言ヲ取消サシメ命ニ従ハサルトキハ議長ハ当日ノ会議ヲ終ルマテ発言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ処分ヲ求ムルコトヲ得
議場騒擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ当日ノ会議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉ツルコトヲ得
第四十八条 傍聴人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ渉リ其ノ他会議ノ妨害ヲ為ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ従ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ処分ヲ求ムルコトヲ得
傍聴席騒擾ナルトキハ議長ハ総テノ傍聴人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ処分ヲ求ムルコトヲ得
第四十九条 議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ会議ノ妨害ヲ為ス者アルトキハ議員若ハ第三十七条ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第五十条 郡会ニ書記ヲ置キ議長ニ隷属シテ庶務ヲ処理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第五十一条 議長ハ書記ヲシテ会議録ヲ製シ会議ノ顛末並出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ会議録ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルヲ要ス其ノ議員ハ郡会ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ会議録ヲ添ヘ会議ノ結果ヲ郡長ニ報告スヘシ
第五十二条 郡会ハ会議規則及傍聴人取締規則ヲ設ケ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ
会議規則ニハ此ノ法律並会議規則ニ違背シタル議員ニ対シ郡会ノ議決ニ依リ三日以内出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章 郡参事会
第一款 組織及選挙
第五十三条 郡ニ郡参事会ヲ置キ左ノ職員ヲ以テ之ヲ組織ス
一 郡長
二 名誉職参事会員 五名
第五十四条 名誉職参事会員ハ郡会ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選挙スヘシ
郡会ハ名誉職参事会員ト同数ノ補充員ヲ選挙スヘシ
名誉職参事会員中闕員アルトキハ郡長ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補闕ス其ノ順序ハ選挙同時ナルトキハ投票数ニ依リ投票同数ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ニ依リ選挙ノ時ヲ異ニスルトキハ選挙ノ前後ニ依ル仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補闕選挙ヲ行フヘシ
補闕員ハ前任者ノ残任期間在任ス
名誉職参事会員及其ノ補充員ハ郡会議員ノ定期改選毎ニ之ヲ改選スヘシ但シ名誉職参事会員ハ後任者就任ノ日マテ在任ス
第五十五条 郡参事会ハ郡長ヲ以テ議長トス郡長故障アルトキハ出席会員中ヨリ臨時議長ヲ互選スヘシ
第二款 職務権限及処務規程
第五十六条 郡参事会ノ職務権限左ノ如シ
一 郡会ノ権限ニ属スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スル事
二 郡会ノ権限ニ属スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ郡長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ郡会ニ代テ議決スル事
三 郡長ヨリ郡会ニ提出スル議案ニ付郡長ニ対シ意見ヲ述フル事
四 郡会ノ議決シタル範囲内ニ於テ財産及営造物ノ管理ニ関シ重要ナル事項ヲ議決スル事
五 郡費ヲ以テ支弁スヘキ工事ノ執行ニ関スル規定ヲ議決スル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六 郡ニ係ル訴願訴訟及和解ニ関スル事項ヲ議決スル事
七 其ノ他法律命令ニ依リ郡参事会ノ権限ニ属スル事項
第五十七条 郡参事会ハ名誉職参事会員中ヨリ委員ヲ選挙シ之ヲシテ郡ニ係ル出納ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ検査ニハ郡長又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立会フコトヲ要ス
第五十八条 第三十二条第三十三条第三十七条及第五十条ノ規定ハ郡参事会ニ之ヲ準用ス
第五十九条 郡参事会ハ郡長之ヲ招集ス若名誉職参事会員半数以上ノ請求アル場合ニ於テ相当ノ理由アリト認ムルトキハ郡長ハ郡参事会ヲ招集スヘシ
郡参事会ノ会期ハ郡長之ヲ定ム
第六十条 郡参事会ノ会議ハ傍聴ヲ許サス
第六十一条 郡参事会ハ議長及名誉職参事会員定員ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス
第五十六条第二ノ議決ヲ為ストキハ郡長ハ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
郡参事会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
会議ノ顛末ハ之ヲ会議録ニ記載シ議長及名誉職参事会員二名以上之ニ署名スヘシ
第六十二条 第四十二条ノ規定ハ郡参事会員ニ之ヲ準用ス但シ同条ノ規定ニ依リ会員ノ数減少シテ前条第一項ノ数ヲ得サルトキハ郡長ハ補充員ニシテ其ノ事件ニ関係ナキ者ヲ以テ第五十四条第三項ノ順序ニ依リ臨時之ニ充テ仍其ノ数ヲ得サルトキハ郡会議員ニシテ其ノ事件ニ関係ナキ者ヲ臨時ニ指名シ其ノ闕員ヲ補充スヘシ
第四章 郡行政
第一款 郡吏員ノ組織及任免
第六十三条 郡ニ有給ノ郡吏員ヲ置クコトヲ得其ノ定員ハ府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
前項ノ郡吏員ハ府県知事之ヲ任免ス
第六十四条 郡ニ郡出納吏ヲ置キ官吏吏員ノ中ニ就キ郡長之ヲ命ス
第六十五条 郡ハ郡会ノ議決ヲ経府県知事ノ許可ヲ得テ臨時若ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名誉職トス
委員ノ組織選任任期等ニ関スル事項ハ郡会ノ議決ヲ経府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
第二款 郡官吏郡吏員ノ職務権限及処務規程
第六十六条 郡長ハ郡ヲ統轄シ郡ヲ代表ス
郡長ノ担任スル事務ノ概目左ノ如シ
一 郡費ヲ以テ支弁スヘキ事件ヲ執行スル事
二 郡会及郡参事会ノ議決ヲ経ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ発スル事
三 財産及営造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
四 収入支出ヲ命令シ及会計ヲ監督スル事
五 証書及公文書類ヲ保管スル事
六 法律命令又ハ郡会若ハ郡参事会ノ議決ニ依リ使用料手数料郡費及夫役現品ヲ賦課徴収スル事
七 其ノ他法律命令ニ依リ郡長ノ職権ニ属スル事項
第六十七条 郡長ハ議案ヲ郡会ニ提出スル前之ヲ郡参事会ノ審査ニ付シ若郡参事会ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ郡参事会ノ意見ヲ議案ニ添ヘ郡会ニ提出スヘシ
第六十八条 郡長ハ郡ノ行政ニ関シ其ノ職権ニ属スル事務ノ一部ヲ町村吏員ニ補助執行セシメ若ハ委任スルコトヲ得
郡長ハ郡ノ行政ニ関シ其ノ職権ニ属スル事務ノ一部ヲ郡吏員ニ臨時代理セシムルコトヲ得
第六十九条 郡会若ハ郡参事会ノ議決若ハ選挙其ノ権限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クト認ムルトキハ郡長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選挙ヲ取消シ又ハ議決ニ付テハ再議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消処分ニ不服アル郡会若ハ郡参事会ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ関シテハ府県知事郡長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
郡会若ハ郡参事会ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ郡長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ府県知事ニ具状シテ指揮ヲ請フヘシ
前項府県知事ノ処分ニ不服アル郡会若ハ郡参事会ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第七十条 郡会若ハ郡参事会ニ於テ郡ノ収支ニ関シ不適当ノ議決ヲ為シタルトキハ郡長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ府県知事ニ具状シテ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ府県知事ノ指揮ヲ請フコトヲ得
前項府県知事ノ処分ニ不服アル郡会若ハ郡参事会ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第七十一条 郡長ハ期日ヲ定メテ郡会ノ停会ヲ命スルコトヲ得
第七十二条 郡会若ハ郡参事会招集ニ応セス又ハ成立セサルトキハ郡長ハ府県知事ニ具状シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ処分スルコトヲ得第四十二条第六十二条ノ場合ニ於テ会議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
郡会若ハ郡参事会ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ郡会ニ於テ其ノ招集前告示セラレタル事件ニ関シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
郡参事会ノ決定若ハ裁決スヘキ事項ニ関シテハ本条第一項第二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル郡長ノ処分ニ関シテハ各本条ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本条ノ処分ハ次ノ会期ニ於テ之ヲ郡会若ハ郡参事会ニ報告スヘシ
第七十三条 郡参事会ノ権限ニ属スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ郡長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ郡長ハ専決処分シ次ノ会期ニ於テ其ノ処分ヲ郡参事会ニ報告スヘシ
第七十四条 郡参事会ノ権限ニ属スル事項ハ其ノ議決ニ依リ郡長ニ於テ専決処分スルコトヲ得
第七十五条 官吏ノ郡行政ニ関スル職務関係ハ此ノ法律中規定アルモノヲ除ク外国ノ行政ニ関スル其ノ職務関係ノ例ニ依ル
第七十六条 郡出納吏ハ出納事務ヲ掌ル
第七十七条 郡吏員ハ郡長ノ命ヲ承ケ事務ニ従事ス
第七十八条 委員ハ郡長ノ指揮監督ヲ承ケ財産若ハ営造物ヲ管理シ其ノ他郡行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ処弁ス
第七十九条 郡ノ事務ニ関スル処務規程ハ郡長之ヲ定ム
第三款 給料及給与
第八十条 有給郡吏員ノ給料額並旅費額及其ノ支給方法ハ府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム
第八十一条 郡会議長名誉職参事会員其ノ他名誉職員ハ職務ノ為要スル費用ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
費用弁償額及其ノ支給方法ハ郡会ノ議決ヲ経府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ府県知事之ヲ定ム
第八十二条 有給郡吏員ノ退隠料退職給与金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ郡会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム若許可スヘカラスト認ムルトキハ内務大臣之ヲ定ム
第八十三条 退隠料退職給与金遺族扶助料及費用弁償ノ給与ニ関シ異議アルトキハ之ヲ郡長ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ郡参事会ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ関シテハ府県知事郡長ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第八十四条 給料旅費退隠料退職給与金遺族扶助料費用弁償其ノ他諸給与ハ郡ノ負担トス
第五章 郡ノ財務
第一款 財産営造物及郡費
第八十五条 郡ハ積立金穀等ヲ設クルコトヲ得
第八十六条 郡ハ営造物若ハ公共ノ用ニ供シタル財産ノ使用ニ付使用料ヲ徴収シ又ハ特ニ一個人ノ為ニスル事務ニ付手数料ヲ徴収スルコトヲ得
第八十七条 此ノ法律中別ニ規定アルモノヲ除ク外使用料手数料ニ関スル細則ハ郡会ノ議決ヲ経府県知事ノ許可ヲ得テ郡長之ヲ定ム其ノ細則ニハ過料二円以下ノ罰則ヲ設クルコトヲ得
過料ニ処シ及之ヲ徴収スルハ郡長之ヲ掌ル其ノ処分ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ関シテハ府県知事郡長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第八十八条 郡ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附若ハ補助ヲ為スコトヲ得
第八十九条 郡ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令ニ依リ郡ノ負担ニ属スル費用ヲ支弁スル義務ヲ負フ
前項ノ負担ハ財産ヨリ生スル収入及其ノ他ノ収入ヲ以テ充ツルモノヽ外之ヲ郡内各町村ニ分賦スヘシ
第九十条 郡費分賦ノ割合ハ其ノ予算ノ属スル年度ノ前前年度ニ於ケル各町村ノ直接国税府県税ノ徴収額ニ依ル但シ本条ノ分賦方法ニ依リ難キ事情アルトキハ郡長ハ郡会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ特別ノ分賦方法ヲ設クルコトヲ得
第九十一条 郡内ノ一部ニ対シ特ニ利益アル事件ニ関シテハ内務大臣ノ定ムル所ニ依リ不均一ノ賦課ヲ為スコトヲ得
第九十二条 郡ハ其ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ郡内一部ノ町村ニ賦課スルコトヲ得但シ学芸美術及手工ニ関スル労役ヲ課スルコトヲ得ス
夫役及現品ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金額ニ算出シテ賦課スヘシ
夫役又ハ現品ヲ賦課セラレタル町村ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金銭ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第九十三条 使用料手数料ノ徴収ニ関シ告知ヲ受ケタル者其ノ告知ニ違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ告知書ノ交付後三箇月以内ニ郡長ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
郡費ノ分賦ニ関シ町村ニ於テ其ノ分賦ニ違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ其ノ告知ヲ受ケタル時ヨリ三箇月以内ニ郡長ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
前二項ノ異議ハ之ヲ郡参事会ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定及裁決ニ関シテハ府県知事郡長町村吏員ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十四条 使用料手数料過料其ノ他郡ノ収入ヲ定期内ニ納メサル者アルトキハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ処分スヘシ
本条ニ記載スル徴収金ハ府県ノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
本条第一項ノ場合ニ於テ町村吏員ノ処分ニ不服アル者ハ郡参事会ニ訴願シ其ノ裁決又ハ郡長ノ処分ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ関シテハ府県知事郡長町村吏員ヨリモ亦訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本条第一項ノ処分ハ其ノ確定ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
第九十五条 郡ハ其ノ負債ヲ償還スル為又ハ郡ノ永久ノ利益ト為ルヘキ支出ヲ要スル為又ハ天災事変等ノ為必要アル場合ニ限リ郡会ノ議決ヲ経テ郡債ヲ起スコトヲ得
郡債ヲ起スニ付郡会ノ議決ヲ経ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ経ヘシ
郡ハ予算内ノ支出ヲ為ス為本条ノ例ニ依ラス郡参事会ノ議決ヲ経テ一時ノ借入金ヲ為スコトヲ得
第二款 歳入出予算及決算
第九十六条 郡長ハ毎会計年度歳入出予算ヲ調製シ年度開始前郡会ノ議決ヲ経ヘシ
郡ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ同シ
予算ヲ郡会ニ提出スルトキハ郡長ハ併セテ財産表ヲ提出スヘシ
第九十七条 郡長ハ郡会ノ議決ヲ経テ既定予算ノ追加若ハ更正ヲ為スコトヲ得
第九十八条 郡費ヲ以テ支弁スル事件ニシテ数年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ数年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ郡会ノ議決ヲ経テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ継続費ト為スコトヲ得
第九十九条 予算外ノ支出若ハ予算超過ノ支出ニ充ツル為予備費ヲ設クヘシ但シ郡会ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百条 予算ハ議決ヲ経タル後直ニ之ヲ府県知事ニ報告シ並其ノ要領ヲ告示スヘシ
第百一条 郡長ハ郡会ノ議決ヲ経テ特別会計ヲ設クルコトヲ得
第百二条 決算ハ翌翌年ノ通常会ニ於テ之ヲ郡会ニ報告スヘシ
郡長ハ決算ヲ郡会ニ報告スル前郡参事会ノ審査ニ付スヘシ若郡長ト郡参事会ト意見ヲ異ニスルトキハ郡長ハ郡参事会ノ意見ヲ決算ニ添ヘ郡会ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ府県知事ニ報告シ並其ノ要領ヲ告示スヘシ
第百三条 予算調製ノ式並費目流用其ノ他財務ニ関スル必要ナル規定ハ内務大臣之ヲ定ム
第百四条 郡吏員ノ身元保証及賠償責任ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 郡組合
第百五条 特定ノ事務ヲ共同処理セシムル必要アル場合ニ於テハ府県知事ハ関係アル郡参事会ノ意見ヲ徴シ府県参事会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ郡組合ヲ設置スルコトヲ得郡組合ノ廃止若ハ変更ニ付テモ亦同シ
第百六条 郡組合ヲ設置スルトキハ府県知事ハ関係アル郡参事会ノ意見ヲ徴シ府県参事会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ郡組合会ノ組織事務ノ管理方法並其ノ費用ノ支弁方法其ノ他必要ナル事項ヲ定ムヘシ
第百七条 郡組合ハ法人トス
郡組合ニ関シテハ本章中規定スルモノヲ除ク外此ノ法律ノ規定ヲ準用ス但シ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルモノハ此ノ限ニ在ラス
第七章 郡行政ノ監督
第百八条 郡ノ行政ハ第一次ニ於テ府県知事之ヲ監督シ第二次ニ於テ内務大臣之ヲ監督ス
第百九条 此ノ法律中別段ノ規定アル場合ヲ除ク外郡ノ行政ニ関スル府県知事ノ処分ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
此ノ法律ニ規定スル異議若ハ訴願ハ処分ヲ為シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ十四日以内ニ之ヲ提起スヘシ但シ此ノ法律中別ニ期限ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
此ノ法律ニ規定スル行政訴訟ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ二十一日以内ニ之ヲ提起スヘシ
決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケサル者ニ関シテハ前二項ノ期間ハ告示ノ翌日ヨリ起算ス
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
此ノ法律ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ為シ其ノ理由ヲ付スヘシ
前項異議ノ決定書ハ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ申立若ハ訴願ノ提起ニ関スル期間ノ計算並天災事変ノ場合ニ於ケル特例ニ付テハ民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
異議ヲ申立テ又ハ訴願訴訟ヲ提起スル者アルトキハ行政庁及行政裁判所ハ其ノ職権ニ依リ又ハ関係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムル場合ニ限リ処分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第百十条 監督官庁ハ郡行政ノ法律命令ニ背戻セサルヤ又ハ公益ヲ害セサルヤ否ヲ監視スヘシ監督官庁ハ之カ為行政事務ニ関シテ報告ヲ為サシメ書類帳簿ヲ徴シ並実地ニ就キ事務ヲ視察シ出納ヲ検閲スルノ権ヲ有ス
監督官庁ハ郡行政ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ処分ヲ為スノ権ヲ有ス
第百十一条 監督官庁ハ郡ノ予算中不適当ト認ムルモノアルトキハ之ヲ削減スルコトヲ得
第百十二条 内務大臣ハ郡会ノ解散ヲ命スルコトヲ得
郡会解散ノ場合ニ於テハ三箇月以内ニ議員ヲ選挙スヘシ
解散後始メテ郡会ヲ招集スルトキハ郡長ハ第三十八条第二項ノ規定ニ拘ラス府県知事ノ許可ヲ得テ別ニ会期ヲ定ムルコトヲ得
第百十三条 郡吏員ノ服務紀律ハ内務大臣之ヲ定ム
第百十四条 左ニ掲クル事件ハ内務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 学芸美術又ハ歴史上貴重ナル物件ヲ処分シ若ハ大ナル変更ヲ為ス事
二 使用料手数料ヲ新設シ増額シ又ハ変更スル事
第百十五条 郡債ヲ起シ並起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ若ハ之ヲ変更スルトキハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス但シ第九十五条末項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
第百十六条 左ニ掲クル事件ハ府県知事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 積立金穀等ノ設置及処分ニ関スル事
二 寄附若ハ補助ヲ為ス事
三 不動産ノ処分ニ関スル事
四 第九十二条ニ依リ夫役及現品ヲ賦課スル事但シ急迫ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
五 継続費ヲ定メ若ハ変更スル事
六 特別会計ヲ設クル事
第百十七条 郡ノ行政ニ関シ監督官庁ノ許可ヲ要スヘキ事項ニ付テハ監督官庁ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ許可ヲ与フルコトヲ得
第百十八条 郡ノ行政ニ関シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項中其ノ軽易ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ其ノ職権ヲ府県知事ニ委任スルコトヲ得
第百十九条 府県知事ハ郡吏員ニ対シ懲戒処分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責二十五円以下ノ過怠金及解職トス
府県知事ハ郡吏員ノ懲戒処分ヲ行ハントスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命シ並給料ヲ支給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間其ノ郡ノ公職ニ選挙セラレ若ハ任命セラルルコトヲ得ス
第八章 附則
第百二十条 此ノ法律ハ明治二十三年法律第三十六号郡制ヲ施行シタル府県ニハ明治三十二年七月一日ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ府県ニ関スル施行ノ時期ハ府県知事ノ具申ニ依リ内務大臣之ヲ定ム
第百二十一条 郡内総町村ニ属スル事業並其ノ財産営造物ハ小学校ヲ除ク外此ノ法律施行ノ日ヨリ郡ニ移ルモノトス
第百二十二条 此ノ法律ノ規定ニ依リ府県知事府県参事会ノ職権ニ属スル事件ニシテ数府県ニ渉ルモノアルトキハ関係府県知事ノ具状ニ依リ内務大臣ニ於テ其ノ事件ヲ管理スヘキ府県知事及府県参事会ヲ指定スヘシ
第百二十三条 島嶼ニ関シテハ別ニ勅令ヲ以テ其ノ制ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ島嶼ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス
第百二十四条 明治二十三年法律第三十六号郡制ノ規定ニ依リ選挙セラレタル郡会議員郡参事会員ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ其ノ職ヲ失フ
本法発布後施行ノ日ニ至ルマテノ間ニ明治二十三年法律第三十六号郡制ヲ施行シタル府県ニ於テハ郡会議員ノ改選ヲ要スルコトアルモ其ノ改選ヲ行ハス議員ハ本法施行ノ日マテ在任ス
第百二十五条此ノ法律施行ノ際郡会及郡参事会ノ職務ニ属スル事項ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ルマテノ間郡長之ヲ行フ
第百二十六条 此ノ法律ニ定ムル府県参事会ノ職務ハ府県制ヲ施行シ府県参事会ノ成立ニ至ルマテノ間府県知事之ヲ行フ
第百二十七条 此ノ法律ニ定ムル直接税ノ種類ハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ告示ス
第百二十八条 明治十一年第十七号布告郡区町村編制法其ノ他此ノ法律ニ牴触スル法規ハ此ノ法律施行ノ地ニ於テハ其ノ効力ヲ失フ
第百二十九条 此ノ法律ヲ施行スル為必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム