河川法施行規程
法令番号: 勅令第二百三十六號
公布年月日: 明治29年6月3日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ河川法施行規程ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年六月二日
內務大臣 伯爵 板垣退助
勅令第二百三十六號
河川法施行規程
第一條 內務大臣ニ於テ公共ノ利害ニ重大ノ關係アリト認定シタル河川ハ官報ヲ以テ之ヲ吿示スヘシ
內務大臣ニ於テ河川法ノ全部若ハ一部ヲ施行スヘキ區域及時期ヲ定メタルトキ亦同シ
第二條 府縣知事ニ於テ河川ノ支川若ハ派川ト認定シタルモノハ其ノ地方ノ公布式ニ依リ之ヲ吿示スヘシ
第三條 沿岸、沿堤及河川附近ノ土地ノ區域ハ府縣知事之ヲ定メ內務大臣ノ定ムル方法ニ依リ之ヲ吿示スヘシ
第四條 河川法第八條ニ依リ內務大臣ニ於テ自ラ工事ヲ施行シ又ハ河川ニ關スル工事ニ因リ特ニ利益ヲ受クル公共團體ノ行政廳ニ命シテ工事ヲ施行セシムル場合ニ於テハ官報ヲ以テ其ノ工事ヲ施行スヘキ河川竝ニ其ノ區域及起工年度ヲ吿示スヘシ
前項ノ工事ヲ終了シタルトキハ官報ヲ以テ之ヲ吿示スヘシ
第五條 河川法第六條但書ニ依リ內務大臣ニ於テ河川ノ管理又ハ維持修繕ヲナストキハ內務省直轄ノ土木事業ニ準シテ土木監督署長之ヲ行フ
第六條 河川法第三十八條ニ依リ府縣知事ニ於テ土石、砂礫、芝草、竹木及運搬具ノ供給ヲナサシメントスルトキハ少クトモ五日前ニ其ノ供給セシムヘキ物件ノ種類、數量及補償金額等ヲ其ノ所有者ニ通知スヘシ
第七條 河川法第三十九條ニ依リ府縣知事ニ於テ堤外地、沿岸若ハ沿堤土地ニ立入リ又ハ之ヲ材料置場等ニ供セントスルトキハ少クトモ五日前ニ又之ニ現在スル建設物其ノ他ノ障害物ヲ除却セントスルトキハ少クトモ十五日前ニ其ノ場所若ハ建設物等ヲ其ノ所有者ニ通知スヘシ
第八條 河川法施行前ニ確定シタル河川ニ關スル費用ノ豫算ハ河川法施行ノ爲其ノ效力ヲ失ハス
前項豫算ニ依リ執行スヘキ事項ハ從前ノ規程又ハ慣習ニ依リ既ニ定リタル執行者ニ於テ之ヲ行フ
第九條 河川法施行前ニ私人ノ所有權ヲ認メタル河川ノ敷地ニシテ荒地ニアラサルモノハ從前ノ所有者若ハ其ノ相續人ノ請求ニ因リ府縣知事ハ公益ヲ妨ケサル限ニ於テ其ノ占用ヲ許可スヘシ
第十條 府縣知事ニ於テ從前ノ所有者若ハ其ノ相續人ニ前條ノ占用ヲ許可セサルトキ又ハ之ヲ禁止スルトキハ府縣ハ內務大臣ノ認可ヲ得テ相當ノ補償金ヲ下付スヘシ
公共ノ利益トナルヘキ事業ノ爲前項處分ノ必要ヲ生スルトキハ府縣知事ハ其ノ事業ノ許可ノ條件トシテ其ノ執行者ヲシテ補償金ノ全部若ハ一部ヲ負擔セシムルコトヲ妨ケス
河川ニ關スル工事ニ因リ下付ノ必要アル第一項ノ補償金ハ其ノ工事ノ豫算費用中ニ算入スヘシ
第十一條 河川法若ハ之ニ基キテ發スル命令ニ依リ行政廳ノ許可ヲ受クヘキ事項ニシテ其ノ施行ノ際ニ現存スルモノハ河川法若ハ之ニ基キテ發スル命令ニ依リ許可ヲ受ケタルモノト看做ス但其ノ施行ノ日ヨリ三箇月以內ニ府縣知事ニ於テ更ニ許可ヲ受クヘキコトヲ命シタルモノハ此ノ限ニアラス
河川法施行前許可ニ附シタル條件ハ河川法若ハ之ニ基キテ發スル命令ニ牴觸セサル程度ニ於テ效力ヲ有ス
第十二條 河川法施行前ニ許可シタル通航料ノ徵收ハ從前ノ規程ニ依ル但徵收ノ期限ナキモノハ府縣知事ニ於テ河川法施行後三十箇年以內ノ期限ヲ定メテ之ヲ許可スヘシ
第十三條 內務大臣ハ河川法ニ規定シタル私人ノ義務ニ關シ其ノ發スル所ノ命令ニ二十五圓以內ノ罰金若ハ二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
府縣知事及警視總監ハ河川法ニ規定シタル私人ノ義務ニ關シ其ノ發スル所ノ命令ニ十圓以內ノ罰金若ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第十四條 河川法第四條、第五條、第十三條、第十五條、第十六條、第十九條、第四十五條及第四十六條第二項ニ依リテ發スル命令ハ府縣令ヲ以テスルコトヲ得但東京府ニ在テハ第十六條及第十九條中警察ニ係ル事項ハ警視廳令ヲ以テスルコトヲ得
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ河川法施行規程ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年六月二日
内務大臣 伯爵 板垣退助
勅令第二百三十六号
河川法施行規程
第一条 内務大臣ニ於テ公共ノ利害ニ重大ノ関係アリト認定シタル河川ハ官報ヲ以テ之ヲ告示スヘシ
内務大臣ニ於テ河川法ノ全部若ハ一部ヲ施行スヘキ区域及時期ヲ定メタルトキ亦同シ
第二条 府県知事ニ於テ河川ノ支川若ハ派川ト認定シタルモノハ其ノ地方ノ公布式ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第三条 沿岸、沿堤及河川附近ノ土地ノ区域ハ府県知事之ヲ定メ内務大臣ノ定ムル方法ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第四条 河川法第八条ニ依リ内務大臣ニ於テ自ラ工事ヲ施行シ又ハ河川ニ関スル工事ニ因リ特ニ利益ヲ受クル公共団体ノ行政庁ニ命シテ工事ヲ施行セシムル場合ニ於テハ官報ヲ以テ其ノ工事ヲ施行スヘキ河川並ニ其ノ区域及起工年度ヲ告示スヘシ
前項ノ工事ヲ終了シタルトキハ官報ヲ以テ之ヲ告示スヘシ
第五条 河川法第六条但書ニ依リ内務大臣ニ於テ河川ノ管理又ハ維持修繕ヲナストキハ内務省直轄ノ土木事業ニ準シテ土木監督署長之ヲ行フ
第六条 河川法第三十八条ニ依リ府県知事ニ於テ土石、砂礫、芝草、竹木及運搬具ノ供給ヲナサシメントスルトキハ少クトモ五日前ニ其ノ供給セシムヘキ物件ノ種類、数量及補償金額等ヲ其ノ所有者ニ通知スヘシ
第七条 河川法第三十九条ニ依リ府県知事ニ於テ堤外地、沿岸若ハ沿堤土地ニ立入リ又ハ之ヲ材料置場等ニ供セントスルトキハ少クトモ五日前ニ又之ニ現在スル建設物其ノ他ノ障害物ヲ除却セントスルトキハ少クトモ十五日前ニ其ノ場所若ハ建設物等ヲ其ノ所有者ニ通知スヘシ
第八条 河川法施行前ニ確定シタル河川ニ関スル費用ノ予算ハ河川法施行ノ為其ノ効力ヲ失ハス
前項予算ニ依リ執行スヘキ事項ハ従前ノ規程又ハ慣習ニ依リ既ニ定リタル執行者ニ於テ之ヲ行フ
第九条 河川法施行前ニ私人ノ所有権ヲ認メタル河川ノ敷地ニシテ荒地ニアラサルモノハ従前ノ所有者若ハ其ノ相続人ノ請求ニ因リ府県知事ハ公益ヲ妨ケサル限ニ於テ其ノ占用ヲ許可スヘシ
第十条 府県知事ニ於テ従前ノ所有者若ハ其ノ相続人ニ前条ノ占用ヲ許可セサルトキ又ハ之ヲ禁止スルトキハ府県ハ内務大臣ノ認可ヲ得テ相当ノ補償金ヲ下付スヘシ
公共ノ利益トナルヘキ事業ノ為前項処分ノ必要ヲ生スルトキハ府県知事ハ其ノ事業ノ許可ノ条件トシテ其ノ執行者ヲシテ補償金ノ全部若ハ一部ヲ負担セシムルコトヲ妨ケス
河川ニ関スル工事ニ因リ下付ノ必要アル第一項ノ補償金ハ其ノ工事ノ予算費用中ニ算入スヘシ
第十一条 河川法若ハ之ニ基キテ発スル命令ニ依リ行政庁ノ許可ヲ受クヘキ事項ニシテ其ノ施行ノ際ニ現存スルモノハ河川法若ハ之ニ基キテ発スル命令ニ依リ許可ヲ受ケタルモノト看做ス但其ノ施行ノ日ヨリ三箇月以内ニ府県知事ニ於テ更ニ許可ヲ受クヘキコトヲ命シタルモノハ此ノ限ニアラス
河川法施行前許可ニ附シタル条件ハ河川法若ハ之ニ基キテ発スル命令ニ牴触セサル程度ニ於テ効力ヲ有ス
第十二条 河川法施行前ニ許可シタル通航料ノ徴収ハ従前ノ規程ニ依ル但徴収ノ期限ナキモノハ府県知事ニ於テ河川法施行後三十箇年以内ノ期限ヲ定メテ之ヲ許可スヘシ
第十三条 内務大臣ハ河川法ニ規定シタル私人ノ義務ニ関シ其ノ発スル所ノ命令ニ二十五円以内ノ罰金若ハ二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
府県知事及警視総監ハ河川法ニ規定シタル私人ノ義務ニ関シ其ノ発スル所ノ命令ニ十円以内ノ罰金若ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第十四条 河川法第四条、第五条、第十三条、第十五条、第十六条、第十九条、第四十五条及第四十六条第二項ニ依リテ発スル命令ハ府県令ヲ以テスルコトヲ得但東京府ニ在テハ第十六条及第十九条中警察ニ係ル事項ハ警視庁令ヲ以テスルコトヲ得