商事會社條例
商事會社
第一款　總則
第一條　商事會社ハ共同シテ商業ヲ營ムカ爲メニスルトキノミ之ヲ設立スルヲ得
法律ニ背戾スル目的ノ（禁止セラレタルコトヲ目的トスル）會社ハ初ヨリ無効トス公ケノ秩序又ハ風教ヲ紊亂スヘキ營業ヲ爲ス會社ハ裁判上ノ判决ヲ以テ解散セシムルコトヲ得可シ
第二條　商業ヲ營ムトハ商ヒノ取引ヲ不斷ニ爲スコトヲ云フ
第三條　商ヒノ取引トハ直接ト間接トヲ問ハス賣買、賃貸及其他ノ賣捌ノ方法ニ依リ產生物商品及有價證券ヲ賣捌クヲ趣旨ト爲ス總テノ取引殊ニ主トシテ賣捌ヲ目的ト爲ス產生物ノ諸起業及諸事業及製造ノ諸起業及諸事業貨物及行客運輸ノ諸起業及諸事業貨幣流通及信用流通ノ諸起業及諸事業保險ノ諸起業及諸事業トス
第四條　左ノ事項ハ商ヒノ取引ト同視スルモノトス
一　店ヲ開キ又ハ帳塲ヲ構ヘ又ハ其他ノ營業所ヲ設ケ又ハ廣告シテ營ム兩替及利足付又ハ其他ノ報酬付ノ貨幣貸付
二　新聞紙及雜誌ノ發行
三　商事上各種ノ代理
四　公ナル依賴引請營業及取次營業
五　諸公集塲營業及遊戱塲營業
六　請負ヒ仕事
第五條　左ノ事項ハ商ヒノ取引ト同視スヘカラサルモノトス
一　戸每ニ就キ又ハ道路ニ於テ物品又ハ勞役ヲ販賣又ハ勸請スル事伹常置ノ營業所ヨリ派出スルモノハ此限ニ在ラス
二　專ラ賃錢ヲ得ルノ目的ニテ物品ヲ製作シ又ハ勞役スル事
三　他人ノ爲ニ勞働及勞役ヲ約諾スル事伹商業ノ爲メニスルモノハ此限ニ在ラス
第六條　年齡十八歲ニ滿チタル未丁年者ハ其父又ハ後見人ノ許諾ヲ得有夫ノ婦ハ夫ノ許諾ヲ得テ會社ノ社員タルコトヲ得ルモノトス伹其許諾ハ之ヲ商業登錄簿ニ登記シ且公告セサル可カラス
第七條　官吏ハ會社ノ社員タルコトヲ得ス
第八條　第六條第七條ノ規定ハ株券得有及其現有ニ就キ適用セサル可シ
第九條　會社ノ權利義務上ノ關係ハ法律及會社契約ニ依テ定マルモノトス
會社ハ代表人其本分ヲ以テ爲シタル不法ノ所業ニ付責任ヲ有シ義務ヲ負フ可キモノトス
第十條　會社ハ本條例中ノ規則及商ヒノ爲ニ頒布シタル法律布達及規則ハ勿論此ノ外行政上及警察上ニ於テ政府ヨリ立タル許可ニ付テノ特別約束及特別規則ニ服從セサル可カラス
第十一條　株式會社ハ其發起及設立ニ付又行政及警察ノ區域ニ屬スル事業ヲ目的トスル合名及合資會社ハ其設立ニ付政府ノ許可ヲ受ルヲ要ス
右等ノ會社ハ其契約書ヲ主務省ニ差出シ其省ヨリ太政官ノ决裁ヲ得タル後正式ノ手續ヲ以テ許可ヲ與ヘ又ハ禁止ス可シ
其許可ヲ得ルニアラサレハ其會社ヲ設立シ又ハ商業登錄簿ニ登記スルヲ得ス
株式會社ニ在テハ第五款第二節ノ規定ヲ遵守セサル可カラス
第十二條　會社ハ社名及社印ヲ設ケ且其住所ヲ定メサル可カラス
社名ハ一地方ニ於テ同一ナル可カラス
會社既ニ存在セル營業ヲ引受クルトキハ其舊社名ヲ襲用スルコトヲ得ス
社名ハ社店ノ前面ニ揭示ス可シ
第十三條　社印ニハ社名ヲ彫刻ス可シ且登記ノ爲メ其印鑑一枚ヲ第二十七條ニ揭ケタル裁判所ニ差出ス可シ社印ヲ攺正又ハ攺刻スルトキモ亦此手續ヲ爲ス可シ
第十四條　社名及社印ハ總テ官廳ニ宛テタル文書幷ニ公報、廣告、株券、爲替手形其他總テ會社ニ於テ權利ヲ有シ義務ヲ負フ可キ各種ノ書類ニ用ユ可シ
第十五條　會社ハ特別ノ財產ヲ有シ又獨立シテ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス殊ニ其名義ヲ以テ債負債ヲ爲シ動產不動產ヲ所得シ又訴訟ニ付テハ原告又ハ被告ト爲ルコトヲ得可シ
會社ノ通常ノ裁判管轄ハ其住所ノ裁判所ニ屬スルモノトス
第十六條　二人以上結合シ共通ノ計算ヲ以テ一時ノ商ヒノ取引又ハ起業ヲ爲ストキハ之カ爲メ會社ハ成立セス其財產モ亦成立セサル可シ且其契約ハ會社ニ關スル本條例ノ規定ニ服從セサルモノトス伹其中ノ一員他員ノ爲メニ爲シタル契約施行ニ付テノ所爲又ハ各員共ニ躬ラ爲シ又ハ共同代理者ヲシテ爲サシメタル所爲ヨリシテ各員第三者ニ對シ直接ニ連帶ノ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第十七條　二人以上損益共分ノ約ヲ立タルトキハ假令別箇ニ一時ノ商ヒノ取引、起業又ハ營業ヲ爲スモ前條ト同樣連帶ノ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス伹此塲合ニ於テ其結合人員中他ノ一員又ハ數員ノ所業ノ爲メニ第三者ヨリ請求ヲ受タル者ハ先訟ノ抗辨ヲナスノ權利アルモノトス
第十八條　甲者一定ノ差入財產ヲ以テ乙者又ハ乙會社ノ商ヒニ加ルニ損益ヲ共分シ其差入財產ヲ乙者又ハ乙會社ノ所有ニ歸セシメ商務ニ參與セス又自己ノ氏名ヲ屋號又ハ社名中ニ加エサル方法ヲ以テ乙者又ハ乙會社ノ商ヒニ加リタルトキハ甲者ハ乙者又ハ乙會社ノ所業ノ爲メ第三者ニ對シ差入財產未納ナル塲合ニ於テハ其全額マテ義務ヲ負擔セサル可カラス
第十九條　前條ノ契約ハ定期又ハ無定期ニテ取結フコトヲ得可シ無定期ノ時ハ契約ニ依テ定メタル預メ爲ス可キ報告ニ依リ又ハ六ケ月前ニ報告スルトキハ何時ニテモ之ヲ解クコトヲ得可シ其他此契約ハ其契約シタル乙者ノ死亡又ハ破產又ハ乙會社ノ解散ニ依テ終止スルモノトス
第二十條　解約ノ時ハ甲者ノ負擔ス可キ損失又ハ負債ニ依テ减少シタル額ヲ除キ其差入財產ヲ還付セサル可カラス而シテ收入ス可キモ未タ領收セサル利潤ヲ以テ差入財產ニ增加スルコトナク又差入財產ニ减少アルトキト雖モ之ヲ以テ補塡スルコトナキモノトス
第二十一條　代辨者ト爲リ又ハ商業助手ノ仕事ヲ執ルハ商務ヲ共ニスルモノト視做ス可カラス
第二十二條　損益配當ノ部合ヲ明約セサリシトキハ共同資本總額ニ對スル各自差入財產ノ價額ノ比例ヲ以テ之ヲ算定ス可シ有分者ニシテ損失ノ配當ヲ受サル者アル約定ハ第三者ニ對シ無効トス
第二十三條　解約前ニ於テ契約ヲ取結タル當務者又ハ會社ノ破產ヲ爲シタルトキ債主ハ有分者ノ負擔ス可キ損失額ニ至ルマテ其差金ノ內ヨリ請求スルコトヲ得可シ
第二十四條　商ヒノ取引又ハ起業又ハ契約ノ了リタルトキハ執業者ハ有分者ニ計算ヲ示シ且關係ノ帳簿及證書ノ展撿查閱ヲ許ス可シ但右等ノ契約一年以上ニ涉ルトキハ每年前顯ノ手續ヲ爲ス可シ此規定ハ第十六條第十七條ニ定メタル塲合ニモ亦適用スルモノトス
第二十五條　會社ハ其業体中ニ行ハルヽ慣例ニ從ヒ商業帳簿ヲ設ケ總テ業務取扱上ノ事件ヲ記載スルノ義務アリトス又開業ノ時及每年初メノ三ケ月內ニ總財產ノ目錄幷ニ貸方借方ノ對照表ヲ製シ兩ナカラ之レカ爲メニ設ケタル帳簿ニ記入ス可シ
四季又ハ每半年ニ利足又ハ益金ヲ社員ニ配當スル會社ハ每半年ニ前項ニ揭ケタル財產目錄及貸借對照表ニ係ル規定ヲ履行ス可シ
第二十六條　商業帳簿ハ記入最終ノ後十年間保存シ亡失損傷セサル樣最モ能ク注意ヲ加フ可シ
第二款　商業登錄簿
第二十七條　本條例ニ規定シタル商業登錄薄ヘノ記入ハ會社ノ住所ヲ管轄スル裁判所ニテ之ヲ取扱フモノトス
第二十八條　登記ヲ受ク可キ事件ハ當務者自己又ハ其代理人ヨリ書面ヲ以テ之ヲ届出且之レカ爲メニ要用ナル證左ヲ添加ス可シ
第二十九條　記入ノ許否及記入事件ニ付テノ爭論ハ裁判所ノ裁决ヲ以テ終結トス以前ノ登記ヲ攺正シ又ハ取消サントスルトキノ爭論ニ就テモ亦同シ
第三十條　裁判所ハ職權ヲ以テ記入事件ノ拔書ヲ官報及其裁判所ノ官誌或ハ官ヨリ示定ス可キ他ノ地方新誌ニ公告ス可シ
第三十一條　登記及公告ハ其屆出タル日ヨリ五日內ニ之ヲ爲ス可シ
第三十二條　第三十條ニ揭ケタル地方新誌ノ種類及登記公告ノ費用ハ少ナクモ翌年分ヲ豫メ司法卿ヨリ布達ヲ以テ之ヲ定ム可シ
第三十三條　裁判所ヨリ一回ノ督促ヲ蒙ルモ法律ニ規定シタル登記ノ屆出ヲ怠ル者ハ五圓以上百圓以下ノ罰金ヲ科シテ其屆出ヲ爲サシム可シ
第三十四條　商業登錄簿ハ各人之ヲ展閱スルヲ得可シ都テ登記及廣告シタル事柄ハ公ケニシテ裁判所ノ認メタルモノトシ其事實ヲ知ラサルノ廉ヲ以テ義務ヲ免ルヽコトヲ得サルヲ通例トス
第三款　合名會社
第一節　會社ノ設立
第三十五條　二人以上七人以下金圓或ハ有價物件及勞力ノ供資ニ依リ共有資本ヲ集成シ共通計算ヲ以テ商業ヲ營ミ責任其供資ニ止マラサルモノヲ合名會社トス
第三十六條　社名ハ全社員又ハ其一名又ハ數名ノ人名ニ會社タルヲ表スヘキ附號ヲ加ヘタルモノタル可シ
第三十七條　合名會社ヲ設立スルトキハ必ス契約書ヲ作ル可シ總員連署シタル契約書一部ヲ各社員ニ交付ス可シ本條ノ規定ハ爾後會社契約攺正ノ時ニ當テモ亦之ヲ遵守ス可シ
第三十八條　合名會社ヲ設立シタルトキハ設立後十四日以內ニ此旨ヲ本店及支店ノ地ニ於テ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ廣告ス可シ之ヲ爲サヽル者ハ第三十三條ノ罰金ニ處セラル可シ
第三十九條　登記及廣告中ニ載スヘキ件々左ノ如シ
一　會社ノ種類、目的、社名及住所
二　各社員ノ氏名住所
三　設立ノ年月日
四　存立期限ヲ約定シタルトキハ其期限
五　契約ニ依リ商務ノ專權ヲ委任セラレタル社員アルトキハ其社員ノ氏名
第四十條　前條ニ記載シタル一件又ハ數件ニ於テ爾後變更ヲ生シ又ハ合議ヲ以テ變更シタルトキハ亦之ヲ七日以內ニ商業登錄簿ニ登記シ且廣告ス可シ之ヲ爲サヽル者ハ第三十三條ノ罰金ニ處セラル可シ
第四十一條　登記及廣告前ニ於テハ會社開業スルヲ得ス違背スルトキハ裁判上ノ處分ヲ以テ其營業ヲ差止メ且其會社ニ一日每ニ五圓以上五拾圓以下ノ罰金ヲ科ス可シ
第四十二條　會社登記ノ日ヨリ六ケ月間ニ開業セサルトキハ其登記及廣告ハ無効トス
第二節　會社契約ノ變更
第四十三條　會社契約ハ總員同意ノ决議ニ非ラサレハ變更スルヲ得ス其决議ヲ得サルトキハ從前ノ契約ニ循フ可シ
第四十四條　社員ハ其供資ヲ契約ニ定メタル高ノ外ニ增加シ又ハ損失ニ由テ减少シタル供資ノ高ヲ補充スルノ義務ナキモノトス
第四十五條　社員ハ自餘ノ社員總數ノ承諾ヲ得ルニ非ラサレハ自己ノ供資又ハ會社資產中ノ持分ヲ减少スルコトヲ得ス
第四十六條　社員ハ前條同樣ノ承諾ヲ得ルニ非ラサレハ他人ヲ會社ニ加入セシメ又ハ自己ノ地位ニ替ユルコトヲ得ス然レトモ亡社員ノ相續人又ハ權利承繼者ハ契約ニ反對ノ明條アルニ非サレハ本員ノ地位ヲ繼續スルコトヲ得可シ
第四十七條　會社資產中ノ持分ヲ他人ニ讓與又ハ轉移スルコトハ會社ニ對シテモ又ハ第三者ニ對シテモ其効ナキモノトス
第四十八條　社員若シ他人（間接有分者）ヲ自己ノ持分ニ加入セシムルトキハ本條例ノ總則（第十六條以下）ニ從テ其關係ヲ判定ス可シ
第四十九條　會社契約中ノ箇條ニシテ會社實行セサリシモノハ後來社員ニ對シテモ又ハ第三者ニ對シテモ之ヲ有効トスルコトヲ得ス
第三節　社員相互ノ權利義務
第五十條　社員相互ノ權利義務ハ法律及會社契約ニ依テ定マルモノトス
第五十一條　會社契約ニ規定セサル事項或ハ會社契約規定施行ニ關スル事項ハ社員ノ多數ニ依テ之ヲ决ス可シ
第五十二條　會社ノ目的ニ異ナルカ或ハ其目的ヲ踰ユル諸般ノ業務及事件ニ就テハ總社員ノ同意ヲ要ス
第五十三條　會社ノ業務施行及會社ノ利益ヲ保衛スルコトニ就テハ會社契約ニ別段ノ規定ナキ限リハ各社員同等ノ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
會社契約ニ依リ若干ノ業務又ハ諸般ノ業務取扱ヲ一社員又ハ數社員ニ專ラ委任シタルトキハ第五十一條ヲ又此ニ適用ス可シ
供資ノ額ニ從テ社員ノ發言權利ニ等差ヲ立ルコトヲ許サス
第五十四條　業務取扱ニ與ラサル社員ハ何時ニテモ業務實况ノ詳報及會社帳簿幷ニ書類ノ撿閱ヲ要求スルコトヲ得可シ
第五十五條　代辨者ヲ委任シ及解任スルノ權利ハ業務擔當ノ各社員之ヲ有スルモノトス
第五十六條　各社員ハ會社ニ對シテ誠實信義ヲ盡シ正當ナル商人自己ノ業務ニ於ケルト齊シキ勉勵注意ヲナスノ義務アリ其義務ヲ怠リ會社ニ生セシメタル損害ハ之ヲ補償セサル可カラス
第五十七條　社員ノ供資ハ會社ノ所有トシ契約ニ依テ定メタル價額ヲ以テ會社ノ財產目錄中ニ記入ス可シ
第五十八條　社員物件ノ入額所得權利又ハ使用權利ノミヲ供資トシテ差入ルヽトキハ其入額所得權利又ハ使用權利ノミ會社資產ニ移轉スルモノトス
第五十九條　前條ノ物件供資ノ義務ヲ盡サンカ爲メ會社ニ引渡シタル後消滅スルトキハ其所有權利ノ損失ハ所有主ニ歸シ其入額所得權利又ハ使用權利ノ損失ハ會社ニ歸スルモノトス
第六十條　社員ノ別離ト共ニ終止スル目的ヲ以テ物件ノ使用權利ヲ會社ニ引渡シタルトキハ其所有權及使用權ノ損失ハ社員ニ歸スルモノトス
第六十一條　自己ノ勤勞ヲ以テ供資ト爲シタル社員會社契約存立中ニ死亡スルカ或ハ其他之ヲ爲スコト能ハサルニ至リタルトキハ其供資ノ義務及ヒ社員タルコトハ之レカ爲メニ絶ユルモノトス
第六十二條　社員契約上ノ供資ヲ納メサルトキハ其怠納者ヲ除名スルト百分ノ七ノ利足ヲ出サシムルトハ會社ノ撰擇ニ在ルモノトス且會社ハ此兩樣ノ內何レノ塲合ニ在テモ損害ノ辨償ヲ要求スルコトヲ得可シ
第六十三條　社員契約上ノ供資ヲ納ムルコト能ハサルニ至リタルトキ總社員ノ承諾ヲ得テ他ノ供資ヲ代納スルニアラサレハ社員タルコトハ絕ユルモノトス
第六十四條　社員ヨリ會社ニ貸付ケタル金額及契約上ノ供資額ヲ超エテ會社ノ爲メニ支出シタル費用ニ就キ該社員ハ其辨償ノ外百分ノ七ノ利足ヲ要求スルコトヲ得可シ又社員業務取扱ノ爲メ直接ニ受タル損失ニ就テモ亦其辨償ヲ要求スルコトヲ得ルモノトス
第六十五條　社員負擔ノ供資額ヲ超エテ會社ニ供シタル勤勞ニ付テハ相當ノ報酬ヲ要求スルコトヲ得可シ
業務取扱上ノ執勞ニ就テハ會社契約ニ明條アルトキニ限リ社員其報酬ヲ要求スルノ權利ヲ有スルモノトス
第六十六條　社員會社ノ爲メニ領收シタル金圓ヲ相當ノ時限ニ會社ニ交付セス或ハ社金ヲ自己ノ用ニ供シタルトキハ百分ノ七ノ利足ヲ會社ニ納付シ且如何ナル損害ヲモ辨償スルノ義務アルモノトス
第六十七條　社員契約ニ依リ會社ノ承諾ヲ得ルニアラスシテ自己ノ計算又ハ第三者營業ノ計算ヲ以テ會社ノ商業部內ニ屬スル取引ヲ爲シ或ハ此等ノ取引ニ參與スルトキハ該社員ヲ除名スルトモ又ハ其取引ヲ會社ノ計算ニ移ストモ會社ノ撰擇ニ在ルモノトス且會社ハ此兩樣ノ內何レノ塲合ニ在テモ損害ノ辨償ヲ要求スルコトヲ得可シ
第六十八條　各社員會社ノ損益ヲ共分スル割合ハ契約ニ於テ定メサルトキハ供資ノ價額ニ應ス可シ
勞力ノ價額ヲ契約中ニ定メサルトキ爭論ノ起リタル塲合ニ於テハ裁判上ノ判决ヲ以テ之ヲ確定ス可シ
第六十九條　一名又ハ數名ノ社員他ノ社員ヲ除斥シ自己ノミ利益ヲ受ルノ約定ハ無効トス之ニ反シ特殊ノ理由ニ依リ一二ノ社員損失ヲ免カルヽノ約定ハ其効ヲ有スルモノトス
第七十條　契約ニ定メタル供資ノ價額其差入ノ時ノ實價ニ超過スルコト甚シキトキハ何時ニテモ其價額ヲ不當トシテ異議スルコトヲ得可シ
社員會社ニ賣渡シ又ハ他ノ報酬ヲ受テ讓渡シ又ハ賣渡若クハ讓渡ニ於テ利益ヲ受タル物件勞力ニ就テモ亦同一ノ異議ヲ爲スコトヲ得可シ
第七十一條　社員業務ニ與ラサル者ニシテ業務ヲ爲シ或ハ會社ニ對シテ詐僞ヲ行ヒ或ハ會社ニ對シ甚シク主要ノ義務ヲ欠タルトキハ第五十六條ニ制定シタル責任ノ外尙該社員ヲ除名スルコトヲ得可シ
第七十二條　社員會社契約又ハ本條例ノ規定ニ據リ會社ノ爲メニ執行シタル各種ノ所業及取引ハ各社員ニ於テ其持分ノ割合ニ應シ之ヲ承認スルノ義務アルモノトス
第四節　社員ノ第三者ニ對スル權利義務
第七十三條　社員ノ所業及取引ニ依リテ會社ニ得タル第三者ニ對スル權利ハ業務ニ參與セサルコトヲ登記及廣告セサル各社員裁判上ト裁判外トヲ論セス其範圍ヲ盡シテ之ヲ主張シ又其權利ヲ處分スルコトヲ得可シ
第七十四條　前條ニ等シク第三者ニ對スル會社ノ義務ハ第三者ヨリ代理權利アル何レノ社員ニ對シテモ裁判上ト裁判外トヲ論セス其範圍ヲ盡シテ之ヲ履行セシムルコトヲ得可シ
第七十五條　會社ハ公ニ業務擔當ヲ除カレサル社員ノ會社ノ爲メニ明言シテ爲シ又ハ事情會社ノ爲メニ爲シタルモノト看認ム可キ總テノ所業及取引ヨリ直接ニ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第七十六條　會社契約又ハ其他ノ約定ヲ以テ業務擔當社員ノ代理權利ノ範圍ニ制限ヲ立ルモ其制限ハ第三者ニ對シテ無効トス
第七十七條　會社ノ負債ニ對シテハ先ツ會社ノ財產之ニ當リ次テ社員各箇ノ全財產ヲ以テ負債ノ全額ニ當ルモノトス
第七十八條　社員ニアラスシテ其氏名ヲ社名ニ表出シ又ハ業務ニ參與スル者及供資ノ義務ヲ一定セスシテ社員タル者ノ權利ヲ有シ義務ヲ負フ者ハ其氏名ヲ登記廣告セサルモ前條ノ責任ヲ負フ可キモノトス
第七十九條　商業助手又ハ代辨者ニシテ給料ノ全部又ハ一部ヲ一定或ハ不定ノ利益配當ノ部合ニ依テ定メタル者ハ前條ノ者ト同視ス可カラス
第八十條　新ニ加入スル社員ハ社員ノ間又ハ會社ニ對スル債主トノ契約ニ因テ他ニ取極アルニアラサレハ其加入ノ時期ヨリ以後ニ生シタル會社義務ニ限リ責任ヲ負フモノトス
單ニ舊來ノ負債ヲ認知シ又ハ其負債ニ依テ得タル會社ノ物件ヲ使用スルノミヲ以テ右契約上ノ取極ト同視ス可カラス
第八十一條　新ニ加入シタル社員以前ノ取引ヨリ生スル利益ノ配當ヲ受ルトキハ其取引ノ爲メ自ラ第三者ニ對シ責任ヲ負ハサル可カラス
第八十二條　會社財產ハ其分配前ニ於テハ會社義務履行ノ爲メニアラサレハ要求ニ當ルコトヲ得ス伹其差入前之ニ對シ既ニ第三者ノ爲メニ權利ノ存立スルトキハ此限ニ在ラス
第八十三條　社員自己ノ債主ニ對シ會社財產中ノ持分ヲ以テ其義務ニ充ツルコトヲ得ルハ會社ノ承諾ヲ得スシテ引出スコトヲ得ル部分ニ限ル可シ
第八十四條　會社ニ對スル負債ト社員ニ對スル要求ト又ハ會社ニ對スル要求ト社員ニ對スル負債トノ抵塡ハ會社財產分配前ニ在テハ之ヲ爲スコトヲ許サス
第八十五條　任意ニ爲シタル社員持分ノ减少又ハ引取ニ依テ會社ノ債主會社財產ヨリノ辨償ヲ减少セラレ又ハ支障セラレタルトキハ該債主ハ之ヲ知リ得タル後一年以內ニ異議ヲ申立ルコトヲ得可シ伹異議ノ効果ハ其减少又ハ引取ノ嘗テアラサリシモノト見做スニアリトス
第五節　社員ノ別離
第八十六條　社員除名セラルヽノ外別離スル塲合ハ左ノ如シ
一　任意ノ退去」會社契約ノ無定期又ハ終身ナル時又ハ契約ニ定期アルニ於テハ會社ノ承諾ヲ得タル時
二　死亡」嗣員トナル權利承繼者ナキ時
三　獨立權ノ消失」別段ノ契約ナキ時
四　破產
五　商業ヲ爲ス能力ヲ失フタル事（第七條）
第八十七條　社員別離スル每ニ其別離ノ事ト其理由トヲ七日內ニ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ廣告ス可シ之ヲ爲サヽル者ハ第三十三條ノ罰金ニ處セラル可シ
第八十八條　任意ノ退去（第八十六條）ハ別段ノ約定アルニアラサレハ六ケ月前ニ預告シタル後事務年度ノ末ニ限ル可シ伹至急退去ス可キ重要ノ事由アルトキハ此限ニ在ラス
第八十九條　社員ノ別離ノ爲メニ會社自ラ解散ニ至ルモノニ非ス
第九十條　別離シタル社員ハ別離前ニ屬スル取引ニ就テ其持分ニ對シ會社トノ關係アルノ外別離ノ時ヨリ會社ノ取引及ヒ權利義務ニ加ハラサルモノトス
第九十一條　別離シタル社員ヘノ支拂ノ爲メ特ニ精算書ヲ製シ本員ノ加リタル取引ノ結了シタルモノ丈ケハ其精算書ニ據リ會社財產中ノ持分ヲ其別離ノ時ノ額ヲ以テ遲延ナク其社員又ハ權利承繼者ニ拂渡ス可シ
第九十二條　會社財產中ノ持分ヲ拂渡スハ其持分ニ相當スル會社義務ヲ除キタル餘分ニ限ル可シ
第九十三條　會社財產ノ持分高ノ現價ハ別段ノ約定アルニアラサレハ供資ノ何種類タリシニ拘ハラス必ス貨幣ニテ之ヲ拂渡ス可シ
社員ノ勤勞ハ其別離ト共ニ終止シ償却ヲ要求スルコトヲ得ス又社員ノ別離ト共ニ終止スル物件ノ使用權利（第六十條）ニ付テモ亦同シ伹會社ノ失錯ニ依テ物件ノ損傷シタルトキハ此限ニアラス
第九十四條　別離シタル社員會社ノ義務ニ對スル責任（第七十七條）ノ期滿免除ハ別離後一ケ年トス
第六節　會社ノ解散
第九十五條　會社ハ左ノ事項ニ據テ解散スルモノトス
一　會社存立期限ノ終リ
二　會社契約ニ定メタル解散事由ノ到來
三　總社員四分三以上同意ノ决定
四　會社ノ破產
五　裁判上ノ處分
第九十六條　會社仕拂ヲ停止シタル時ハ破產シタルモノトス
第九十七條　會社反法ノ事業又ハ公ケノ秩序及ヒ風教ヲ紊亂ス可キ事業ヲ營ムトキ又ハ會社ノ目的ヲ達スルコト能ハス若クハ會社ノ地位ヲ維持スル能ハサルニ至リ或社員ヲ除名スルモ尙之ヲ排除シ得サル事由ヲ以テ社員一名又ハ數名ヨリ解散ヲ發議スルトキハ裁判上ノ處分ヲ以テ會社ヲ解散セシムルコトヲ得可シ
第九十八條　第九十五條中第一項ヨリ第三項ニ記載シタル塲合ニ於テハ恊議ノ上總社員又ハ其一部社員ニ於テ該會社ヲ保續スルコトヲ得可シ然ルトキハ其保續ニ加ハラサル社員ハ退社々員（自第八十六條至第九十四條）トシテ之ヲ取扱フ可シ
第九十九條　會社ノ解散ハ其年月日、事由（第九十五條）及撰任シタル淸算人（第百一條）ノ氏名ヲ付シテ之ヲ七日以內ニ商業登錄簿ニ登記シ且公告スヘシ之ヲ爲サヽル者ハ第三十三條ノ罰金ニ處セラル可シ
第百條　會社ハ解散ニ依テ終ルモノトス會社ノ營業ハ一切之ト共ニ停止シ會社ノ財產ハ破產ノ塲合ノ外持分ニ應シテ各社員ニ分配ス可シ
第百一條　財產分配ノ目的ヲ以テ社員ハ其多數决ニ依リ一名又ハ數名ノ淸算人ヲ撰定ス可シ淸算人ハ殘務ヲ結了シ會社ノ義務ヲ履行シ未納ノ貸方ヲ收納シ現存ノ財產ニ屬スル物件ヲ賣却スルノ任アルモノトス淸算人此目的ヲ超ヘテ營業ヲ保續シ又ハ新ニ取引ヲ爲スコトヲ許サス
第百二條　淸算人ニ屬スル擔任ハ社員之ヲ制限スルコトヲ得ス伹重要ナル理由ニ依リ社員ノ申立タルトキハ裁判上ノ處分ヲ以テ其任ヲ解クコトヲ得可シ
第百三條　淸算人ハ其擔任ノ事務ヲ結了シタルトキハ直チニ又事情ニ依リテハ年々計算書ヲ社員ニ呈示シ且支障ナキ現在ノ資產ヲ遲延ナク社員ニ分配ス可シ
第百四條　社員ニ分配スルモノハ會社ノ全負債ヲ淸完シタル後殘存セル財產ニ限ル可シ
第百五條　各社員ハ他ノ約定アルニアラサレハ其持分ノ拂渡ヲ之ニ相當スル金額ニテ要求ス可シ
第百六條　解散シタル會社ノ商業帳簿及其他ノ書類ハ法律上ノ規定（第二十六條）ニ從ヒ會社ノ决議ヲ以テ之ヲ取扱フ可シ
第百七條　分配又ハ之ニ牽連スル事件ニ就テ社員相互ノ間又ハ社員ト淸算人トノ間ニ爭論ノ起ルトキハ裁判上ノ判决ヲ以テ之ヲ處理ス可シ
第百八條　會社ノ負債ニ對スル社員自己ノ責任ノ期滿免除ハ其負債ニ對シ五ケ年ヨリ短キ期滿免除期限ノ定メナキトキニ限リ會社解散後五ケ年トス伹未タ分配セサル會社財產ノ現在スルモノニ對シ債主ヨリ要求ヲナシタルトキハ此限ニ在ラス
第四款　合資會社
第百九條　社員ノ責任其一名又ハ數名ニ對シ別段ノ契約アルニアラサレハ供資トナシタル金圓又ハ有價物件ノ額ニ限ル會社ヲ合資會社トス
合資會社ハ社員十五名ヲ超ルコトヲ得ス
第百十條　合名會社ノ條則本款ニ於テ別ニ規定ナキモノハ合資會社ニモ亦之ヲ適用ス可シ
第百十一條　合資會社ハ登記及ヒ公告中第三十九條ニ揭クルモノヽ外尙ホ左ノ件々ヲ列記ス可シ
一　會社資本ノ總額
二　金額ニ引直シタル各社員ノ供資高
三　責任無限社員アルトキハ其氏名住所
四　業務擔當社員又ハ取締役ノ責任ノ有限若クハ無限（第百二十一條）
第百十二條　合資會社ノ社名ニハ責任有限社員ノ氏名ヲ用フルコトヲ得ス且該社名ニハ必ス合資會社ノ語ヲ加フ可シ
氏名ヲ社名ニ加ヘタルトキハ其社員ハ之レカ爲メ會社ノ負債ニ對シ自己ノ財產ヲ以テ其責ヲ負ハサル可カラス
第百十三條　合資會社ノ社員ハ一己ノ計算又ハ他人ト共同ニテ會社營業ト同種類又ハ異種類ノ商業取引、起業又ハ營業ヲ爲スコトヲ得可シ
第百十四條　契約ニ於テ他ノ取極アルニアラサレハ各社員ハ同等ニ會社ヲ代表スルノ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第百十五條　合資會社設立ノ時社員三名ヲ超ルトキハ直ニ會社契約ヲ以テ社員中ヨリ一名又ハ數名ノ取締役ヲ撰定ス可シ設立後三名以上ニ至リタルトキハ會社ノ决議ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
取締役數名ヲ撰定シタルトキハ取締役各自ニテ會社ノ爲メニ業務ヲ取扱フコトヲ得ル歟又ハ其中數名又ハ總員共同ニアラサレハ之ヲ取扱フコトヲ得サル歟ヲ之ト共ニ取極ム可シ
第百十六條　業務擔當者又ハ取締役ハ裁判上ト裁判外トノ事件タルニ抅ハラス總テ會社ヲ代表スルノ權利ヲ專有スル者トス伹會社契約中ノ規定及ヒ會社ノ决議ヲ遵守セサル可カラス
第百十七條　第百十五條第百十六條ニ記載シタル業務擔當者又ハ取締役ノ代表權利ノ制限ハ善意ヲ以テ之レト取引ヲ爲シタル第三者ニ對シテハ無効トス
第百十八條　社員ハ會社ノ承諾ヲ以テノミ持分ヲ他人ニ讓與スルコトヲ得可シ讓與シタルトキハ讓與者ハ別離社員ト視做シ讓受人ハ前社員ノ會社ニ係ル諸般ノ權利義務ヲ繼承スル者トス
第百十九條　業務擔當ノ任アル社員又ハ取締役ニ撰ハレタル社員ノ所業ニ因テノミ會社ハ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第百二十條　會社ノ負債ニ對シテハ會社財產及ヒ責任無限社員自己ノ全財產ヲ以テ之ニ充ツ可シ但社員未納ノ供資アルトキハ其供資亦之ニ充ツ可キモノトス
第百二十一條　業務擔當社員又ハ取締役其業務取扱中ニ生シタル會社ノ負債ニシテ會社ノ財產ヲ以テ債主ヘ辨償シ得サル分ハ其總員若クハ其中幾員各箇ノ全財產ヲ以テ之ニ充ツ可シトノコトヲ會社契約又ハ會社ノ决議ニ依テ取極ムルコトヲ得可シ
第百二十二條　前條ニ記載シタル無限責任ノ期滿免除ハ業務擔當者又ハ取締役ノ解任後一ケ年トス其解任ト共ニ退去スルト否トヲ問ハス
第百二十三條　各社員ハ業務ヲ擔當セサル者ト雖モ何時ニテモ業務ノ實况及効果ヲ質シ業務ヲ監シ意見ヲ陳シ幷ニ商業帳簿及其他會社ノ書類ヲ撿閱スルノ權アルモノトス
第百二十四條　業務擔當社員又ハ取締役ハ少クトモ年々一回總集會ヲ開ク可シ其他社員四分ノ一ノ申立アルトキハ總社員ヲ招集ス可シ凡集會ヲ開クニハ其目的ト事項トヲ示サヽル可カラス
第百二十五條　各年會ハ事務年度ノ終リタル後直ニ之ヲ開キ前年度ノ業務及ヒ其効果ノ詳明ナル記錄幷ニ整備シタル貸借對照表ヲ社員ニ示シテ撿查認定ヲ請フ可シ其記錄及對照表ハ遲クトモ集會ノ十四日前ニ各社員ニ送付ス可シ其認定ス可キト否トハ出席社員ノ多數决ニ依ル可シ
第百二十六條　會社前條記載外ノ事項ニ付キ决議ヲ要スルトキハ其事項ヲ集會ノ當日ヨリ少クトモ十四日以前ニ各社員ニ通知ス可シ其多數决ハ總社員過半數ノ出席ニ於テ爲シタルモノニシテ其後十四日ヲ過キ再ヒ集會ヲ開キ其出席人員ノ多數ニ依リ認定セラレタルモノニ限リ各社員ニ對シ効力アルモノトス
第百二十七條　供資ニ對スル利足又ハ益金ハ損失ニ依テ供資ニ减額アル間ハ之ヲ計算スルコトヲ得ス又何レノ社員ヘモ拂渡スコトアル可カラス此規定ト牴觸スル會社契約ノ條款又ハ决議ハ無効トス然レトモ既ニ正當ニ拂渡シタル利足又ハ益金ハ爾後ノ損失ヲ補フ爲メニ其返還ヲ要求スルコトヲ得ス
第百二十八條　社員三名ヲ超ユル會社ニ在テハ社員四分三ノ多數ニ依テ會社契約ノ變更ヲ决議スルコトヲ得可シ此ノ塲合ニ於テハ不同意ノ社員ハ假令反對ノ契約條款アルモ直ニ退去スルノ權アルモノトス
第五款　株式會社
第一節　總則
第百二十九條　七人ヨリ少カラサル商社ニシテ其資本ヲ一定平等ノ額ニ分チ移轉シ得可キモノ（株券）トシ其加入者（株主）商社ヲ代表セサルモノヲ株式會社ト爲ス
第百三十條　株式會社ハ商ヒノ取引ヲ以テ目的トセスト雖トモ商社ト視做ス可シ
第百三十一條　株式會社ノ負債ニ對シ第百七十九條ヲ適用スルモノヽ外會社財產ノミ之ニ當ルモノトス
第二節　株式會社ノ發起及設立
第百三十二條　株式會社ハ四人ヨリ少カラサル人員ニ非サレハ發起スルコトヲ得ス
第百三十三條　發起人ハ會社ノ起業目論見書及假定款ヲ立案シテ各自之ニ署名ス可シ其署名ハ裁判所又ハ公證人ノ公證ヲ受ク可シ此假定款ハ本條例ノ規定ト矛盾スルコトヲ得ス
第百三十四條　起業目論見書ニハ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一　社名
二　會社ノ住所
三　起業ノ目的及理由
四　株式會社ナル事
五　會社資本ノ總額幷ニ總株數及一株ノ金額
六　會社資本使用ノ槪算
七　發起人ノ氏名住所及各發起人ニ於テ引受ク可キ株數
八　株主記名ノ際直チニ各株ニ付拂ハシム可キ金額アルトキハ其金額
九　裁判所又ハ公證人ノ公證ヲ受ケタル發起人ノ署名書
第百三十五條　株式會社ハ地方廳ヲ經由シテ起業目論見書及假定款ヲ主務ノ省ニ差出シテ其發起ノ認可（第十一條）ヲ請フ可シ
第百三十六條　第百三十五條ノ認可ヲ得タルトキハ起業目論見書ヲ公告シテ株主ヲ募集スルコトヲ得可シ其公告中ニハ第一法律ニ從ヒ發起ノ認可ヲ得タル旨及認可ノ年月日第二各記名者ニ假定款ヲ展閱セシメ又ハ請求ニ依リテ交付ス可キ旨ヲ書加フ可シ
第百三十七條　株主記名ノ時ハ自己ノ氏名及其引受クル株數ヲ自ラ記入ス可シ
記名ハ委任狀ヲ與ヘタル代理者ヲ以テスルモ妨ナシ其代理者ハ委任者ノ氏名ト自己ノ氏名トヲ記入ス可シ
各記名者ハ少ナクモ一株ヲ引受ケサル可カラス
第百三十八條　記名ヲナシタル時ハ會社設立ニ至リ其株主トナリ定款ニ從ヒ各株ニ對スル拂込ノ義務ヲ負擔シタルモノトス
各株ニ付前以テ拂フ可キ金額ハ會社設置地ノ裁判所ニ差出シ會社ノ登記公告後マテ同裁判所ニ預リ置ク可シ
第百三十九條　總株記名ノ後ニ至リ會社設立ニ着手スルコトヲ得可シ
第百四十條　會社設立ニ就テノ要件左ノ如シ
一　太政官ノ免許（第十一條）
二　總會ニ於テ定款ノ認可ヲ受クル事
三　會社ノ登記
四　會社ノ公告
第百四十一條　太政官ノ免許ヲ請フ願書ニハ左ノ書類ヲ添フ可シ
一　會社ノ起業目論見書及假定款
二　總株主記名簿ノ公證アル謄寫
三　各株ニ付前以テ拂入レタル金額ヲ裁判所ニ預ケタル證（第百三十四條ノ八）
四　起業ノ國家又ハ公衆ノ利益ニ補ヒアルコト及起業ニ關スル特別ノ法律規則ニ從テ施行ス可キ方法ノ詳述書
五　發起ノ認可書（第百三十五條）
第百四十二條　太政官ヨリ免許ヲ與ヘサルトキ又ハ其他會社ノ設立ニ至ラサルトキハ株主ノ記名ハ無効ニ歸ス若シ既ニ拂込タル金額アルトキハ速ニ之ヲ本人ヘ償還ス可シ
第百四十三條　太政官ヨリ免許ヲ得タルトキハ會社ノ定款確定ノ爲メニ第一總會ヲ開ク可シ定款ハ免許ニ付テノ條件ニ牴觸ス可カラサルモノニシテ總記名者四分ノ三以上總株金半額以上ニ當ル者ノ承認ヲ以テ確定スルモノトス
第百四十四條　第一總會ニ於テハ前條議事ノ外第一ニ取締役ヲ撰擧シ又撿查役ヲ要スルトキハ之ヲ撰擧シ第二ニ第百五十二條ニ揭ケタル契約及出費承認ノコトヲ議决シ第三ニ株主金圓ニアラサル物件ヲ會社財產ニ差入レ株券又ハ其他ノ代償ヲ受クルトキハ其物件ノ價額ヲ議决ス可シ但詐僞アリトスルトキハ第二第三ノ决議ニ對シ異議ヲ申述フルコトヲ得
第百四十五條　會社定款確定シタル後ハ再ヒ之ヲ太政官ニ差出ス可シ然ル後正式ノ免許證書ヲ下附スルモノトス
第百四十六條　會社定款確定シタルトキハ株主一株ニ付少ナクモ百分ノ二十五ノ金額ヲ速ニ會社ニ拂入ルヽノ義務アリ其拂入レノ時ハ嚮キニ拂込タル金額アルトキハ之レヲ差引ク可シ
其拂入レ前ニ於テ會社ハ登記ヲ受クルコトヲ得ス其以前ノ登記ハ無効トス
第百四十七條　會社其登記ヲ受ルニハ左ノ書類ヲ差出ス可シ
一　會社ノ起業目論見書及定款
二　太政官ノ免許證書
三　株金百分ノ二十五以上拂入レタルノ證
四　各株主ノ氏名及其引受ケタル株數ヲ記載シタル名簿
五　取締役ノ氏名住所
六　開業ノ年月日
右ノ登記ヲナシタル時ハ其證書ヲ下付ス可シ
第百四十八條　登記後速ニ公告ヲナス可シ其公告中ニハ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一　會社ノ社名住所及其目的
二　株式會社ナル事
三　會社資本ノ總額及總株數幷ニ一株ノ金額
四　各株ニ付拂入レタル金額
五　取締役ノ氏名住所
六　太政官ノ免許證書ノ年月日
七　開業ノ年月日
第百四十九條　株式會社支店ヲ設置スルトキハ其支店モ亦設置地方ノ商業登錄簿ニ登記シ其地方ニ公告ス可シ
第百五十條　登記及公告ヲ爲サヽル前ニ開業スルコトヲ得ス又免許後一年以內ニ登記公告ヲ爲サヽルトキハ其免許ハ無効トス第四十二條ノ規定ハ株式會社ニモ亦適用ス可シ
第百五十一條　會社登記以前ニ會社ノ爲メニナシタル負債ニシテ第一總會ニ於テ承認ヲ得タルモノアリテ會社ノ登記濟マサルトキハ其負債ニ對シ發起人取締役及株主全財產ヲ以テ連帶ノ義務ヲ負フモノトス
第百五十二條　發起人ハ第一總會以前ノ契約及出費ニシテ第一總會ノ承認ヲ得サルモノニ對シテハ全財產ヲ以テ連帶ノ責任ヲ負ハサル可カラス
第三節　社名及社印
第百五十三條　株式會社ハ登記及公告ニ依テ設立シタルモノト認ム可シ此時ヨリ會社ハ社名ヲ唱ヘ社印ヲ用ヒ契約ヲ結ヒ各種ノ財產ヲ有スル權アルモノトス
第百五十四條　株式會社ノ社名ニハ株主ノ氏名ヲ用ユルコトヲ得ス且該社名ニハ必ス株式會社ノ語ヲ加フ可シ
第四節　株主名簿
第百五十五條　株式會社ハ株主名簿ヲ設ケ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一　各株主ノ氏名住所
二　各株主所有ノ株數及其番號
三　各株ニ就テ既ニ拂込タル金額
四　各株主入社ノ年月日
五　各株主退社ノ年月日
第百五十六條　名簿ハ社店ニ於テ通常ノ業務時間中各株主及他人ニ展閱ヲ許ス可シ
第百五十七條　會社正當ノ理由ナクシテ名簿中株主ノ氏名ヲ削除シ若クハ記入セス又ハ株主ニ非サル者ノ氏名ヲ記入シタルトキハ之カ爲ニ設ケタル罰則ニ拘ハラス裁判上ノ處分ヲ求ムルコトヲ得可シ
第百五十八條　會社ハ每年ノ第一通常總會後二十日以內ニ株主名簿ヲ商事裁判所ニ呈示ス可シ
第五節　株券
第百五十九條　一株ノ金額ハ貳拾圓ヲ下ル可カラス會社資本拾萬圓以上ナルトキハ百圓ヲ下ル可カラス
第百六十條　株券ニハ其金額、發行ノ年月日、番號及社名ヲ揭ケ社印ヲ捺シ株主ノ氏名ヲ記ス可シ
第百六十一條　株式ハ分割スルヲ得ス又合併スルヲ得ス
數人株券ニ對スル共同所有權ヲ得タルトキハ會社ハ其中ノ株券ヲ現有スル者ヲ以テ其專有者ト視做スコトヲ得可シ
第百六十二條　株金ノ拂込全額ニ充タサル間ハ會社ハ假株券ノミヲ交付スルコトヲ得全額完納ニ至リ之ヲ本株券ト交換ス可シ
第百六十三條　假株券及本株券トモ會社ノ登記以前ニ之ヲ交付スルコトヲ得ス
第百六十四條　株金額ノ四分一以上ヲ拂込サル前ニ於テハ請取證書、株式又ハ利札ノ讓渡シ賣渡シヲ無効トス
有効ナル讓渡賣渡ノ時ト雖トモ其讓渡人又ハ賣渡人ハ常ニ會社ニ對シテ株金ノ半額ニ充ツル迄拂込ノ義務ヲ免カレサルモノトス
第百六十五條　株券ノ讓渡又ハ賣渡ハ會社ノ承諾ヲ得其讓受人又ハ買受人ノ氏名ヲ株券及株主名簿ニ記載スルマテハ無効トス
第百六十六條　會社ハ名簿及計算整理ノ爲メニ年々公告ヲ以テ十五日ヲ踰ヘサル日數間株券ノ讓渡賣渡ヲ停止スルコトヲ得可シ
第百六十七條　株金ノ拂込全額ニ充タサル間ハ退社シタル株主ハ會社ノ負債ニ對シ其殘額ニ至ルマテノ義務ヲ免カレサルモノトス
第百六十八條　株式ノ所有權ニ就キ數人間又ハ一人若クハ數人ト會社トノ間ニ爭論ノ起ルトキハ裁判上ノ判决ヲ以テ之ヲ决ス可シ
第百六十九條　拂込タル株金額及其拂込ノ爲ニ得タル會社財產中ノ持分ハ會社解散前ニ於テ其拂戾ヲ要求スルコトヲ得ス
第六節　取締役及撿查役
第百七十條　總會ハ株主中ヨリ三名ヨリ少カラサル取締役ヲ遲クモ其執務ノ一ケ月前ニ選擧ス可シ又取締役ハ同役中ヨリ業務ヲ擔當スル者一名又ハ數名ヲ選定スルヲ得可シ其他會社ヲ代表スル者及役員ヲ選定スルト否トハ會社ノ便宜ニ任ス
第百七十一條　取締役ノ選擧政府ノ認可ヲ受ク可キトキハ其認可ヲ受タル後ニ非サレハ職務ヲ執行スルコトヲ得ス
第百七十二條　取締役ノ執務マテハ會社ノ發起人ニ於テ其職務ヲ擔當スルモノトス
第百七十三條　會社ハ特ニ取締役ノ所業ヲ以テ直接ニ權利ヲ得義務ヲ負フモノトス
取締役ノ代表權執行ノ方法ハ會社ノ定款ニ於テ之ヲ定ム可シ
取締役ノ代表權ヲ制限スルモ善意ノ第三者ニ對シテハ無効ト爲ス
第百七十四條　株主ノ取締役ニ選ハルヽ爲メ所有ス可キ株數ヲ會社定款ニ於テ定ム可シ取締役在任中ハ其株式ノ讓渡、賣渡、質入、書入、其他株式ノ利益ヲ他人ニ移ス可キ處置ヲ爲スコトヲ得ス
第百七十五條　取締役ノ任期ハ三ケ年ニ越ユ可カラス但再選スルハ妨ナシ
第百七十六條　取締役其職務ノ爲メ給料又ハ其他ノ報酬ヲ受ク可キトキハ定款又ハ總會ノ决議ヲ以テ之ヲ確定ス可シ
第百七十七條　會社ハ何時ニテモ取締役ヲ解任スルコトヲ得可シ其解任セラレタル者ハ之カ爲メ會社ニ對シテ賠償ヲ要求スルコトヲ得ス
第百七十八條　取締役ハ其職掌義務ヲ盡スコト幷ニ定款及會社ノ决議ヲ確守スルコトニ就キ會社ニ對シ全財產ヲ以テ責任ヲ負フモノトス
第百七十九條　會社ノ負債ニ對スル取締役ノ責任ハ各株主ト異ナルコトナシ然レトモ其在任中ニ生シタル負債ニ對シ解任後尙一年間全財產ヲ以テ連帶責任ヲ負フ可キコトヲ定款ニ於テ定ムルコトヲ得可シ
第百八十條　取締役更迭スル每ニ之レヲ商業登錄簿ニ登記シ且ツ公告ス可シ新任取締役ハ其登記公告前ニ職務ヲ執行スルコトヲ得ス
第百八十一條　定款ニ預定シタルトキ或ハ會社ニ於テ便宜ト認ムルトキハ株主中ヨリ三名乃至五名ノ撿查役ヲ撰擧ス可シ其任期ハ二ケ年トス滿期後再選スルモ妨ナシ
第百八十二條　撿查役ハ左ノ件々ヲ擔當ス可シ
一　會社ノ發起及設立ノ際法律ニ定メタル條款ヲ嚴密ニ遵守シタルヤ幷ニ發起人ノ業務取扱法律幷ニ定款ノ箇條及會社ノ决議ニ適合スルヤヲ監視シ且總テ其取扱上ノ過誤不整ヲ撿查スル事
二　每年ノ精算帳、貸借對照表及利足幷ニ分配金ノ配當案ヲ撿查シ株主總會ニ其報告ヲ爲ス事
三　會社ノ利害上ニ於テ必要又ハ有益ト認ムルトキハ總會ヲ招集スル事
第百八十三條　撿查役ノ執勞ニ對シ定款又ハ總會ノ决議ヲ以テ年々報勞金ヲ與フルコトヲ得可シ
第百八十四條　撿查役ハ擔當ノ事務ヲ分掌スルコトヲ得可シト雖トモ取締役又ハ會社ニ對シテハ共同一體ナルモノトス
撿查役中恊議ノ調ハサルトキハ少數ノ意見及申立ヲ多數ノ意見及申立ト共ニ必ス提出ス可シ
第百八十五條　撿查役ハ何時ニテモ會社業務ノ實况ヲ尋問シ會社ノ商業帳簿及其他ノ書類ヲ展閱シ會社ノ金庫及其全財產ノ現况ヲ撿查スルノ權アルモノトス
第百八十六條　撿查役ハ取締役ノ業務取扱及其結果ニ就テ責任ヲ有セス然レトモ自己ノ義務ニ背キ會社又ハ其債主ニ加ヘタル損害ニ就テハ其責ニ任セサル可カラス
第七節　總會
第百八十七條　株主總會ハ取締役撿查役其他本條例ニ從ヒ招集ノ權ヲ有スル者之ヲ招集ス可シ
第百八十八條　招集ヲ爲スニハ會日ヨリ遲クトモ十四日前ニ會議ノ目的ト事項トヲ報知シ且定款ニ定メタル方法ニ依ル可シ
第百八十九條　通常總會ハ每年少クトモ一度定款ニ定メタル時期ニ於テ之ヲ開キ前期ノ計算書、此較表、業務ノ結果及分配金ノ配當案ヲ株主ニ報告シ且其諸件ニ關スル總會ノ决議ヲ取ルモノトス
撿查役ノ報告書ハ取締役ノ提出スル書類ト共ニ之ヲ總會ニ差出ス可シ
第百九十條　臨時總會ハ第百八十七條ニ記載シタル者何時ニテモ之ヲ招集スルヲ得可シ其他總株金ノ少クモ五分一ニ當ル株主ヨリ事由ヲ擧ケテ申立ルトキハ之ヲ招集セサル可カラス
第百九十一條　總會ニ於テハ定款又ハ本條例ニ定メタル員數ノ株主出席スルニアラサレハ决議スルコトヲ得ス
此等ノ規定ナキ塲合ニ於テハ總株金ノ四分一ニ當ル員數以上ノ株主自己或ハ代理ノ出席シタル時ニ限リ决議スルコトヲ得
第百九十二條　左ノ件々ニ就キ有効ノ决議ヲ爲スニハ少クモ總株金ノ半額ニ當ル株主ノ出席ヲ必要トス
一　社名ノ變更
二　會社住所ノ移轉及支店ノ設置
三　記名株券ヲ無記名株券ニ變更スル事
四　總株金額又ハ各株金額ノ增减
五　定款ノ變更
六　定款ニ定メタル期限前ニ會社ヲ解散シ其他任意ノ决議ニ依テ之ヲ解散スル事
第百九十三條　總會ニ於テハ議長ヲ選擧シ議事ハ通例出席人ノ過半數ニ决スルモノトス伹シ第百九十二條ノ塲合ニ於テハ四分三ノ多數ニ决ス可シ
第百九十四條　適則ニ招集シタル總會ニ於テ定款又ハ本條例ニ定メタル員數ノ株主出席セサルトキ其出席人員中ノ多數（第百九十三條）ニ依テ爲シタル决議ハ爾後三週日ヲ過キ適則ニ招集シタル第二回ノ出席株主過半數ノ認可ヲ以テ其効力ヲ得ルモノトス
第百九十五條　株主ノ參决權ハ一株每ニ一個ヲ以テ通則ト爲ス然レトモ十株以上ヲ有スル株主ノ參决權ハ定款ニ於テ制限スルコトヲ得可シ
第八節　社名ノ變更及會社住所ノ移轉
第百九十六條　社名ノ變更及會社住所ノ移轉ハ總會ニ於テ完全ノ理由ヲ以テ之ヲ决議（第百九十二條）スルコトヲ得可シト雖トモ此决議ハ裁判上ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス其許可ハ會社ノ决議ヲ公告シ債主又ハ其他ノ關係人ニ於テ異議アルトキハ之ヲ申出可キコトヲ示シ異議スル者ナキカ或ハ其異議ノ不理ト决シタル後ニアラサレハ之ヲ與ルコトヲ得ス
第百九十七條　社名ノ變更ハ許可ヲ得タル後其許可ヲ得タル旨ヲ付シ之ヲ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其登記及公告前ニ在テハ新社名ヲ用フルコトヲ得ス
第百九十八條　住所ノ移轉ハ許可ヲ得タル後前條ニ同シク從前ノ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其新住地ノ裁判所從前ト異ナルトキハ新設ノ會社ト同樣ノ手續（第百四十七條以下）ヲ以テ登記及公告ヲ爲スヘシ其登記及公告以前ニハ新住地ニ於テ會社ノ營業ヲ始ルヲ得ス又此登記ニモ第百九十六條ノ許可ヲ得タル旨ヲ附ス可シ
第百九十九條　第百九十六條ニ記載シタル决議ノ爲ニ會社ニ存立スル權利義務ハ决シテ變更セサルモノトス
第九節　記名株券ヲ無記名株券ニ變更スル事
第二百條　總株金拂込ノ濟タル後總會ハ其記名株券ヲ無記名株券ニ變更スルノ决議ヲ爲スヲ得可シ（第百九十二條）
第二百一條　前條ノ决議ハ第百九十二條乃至第百九十四條ノ規定ニ從フタル旨ヲ附シテ十日以內ニ商業登錄簿ニ登記シ且公告ス可シ
第二百二條　株主ノ記名ニ關スル第百六十條ノ規則及第百五十五條乃至第百五十八條第百六十五條第百六十六條ノ規則ハ前條登記ノ日ヨリ適用セサルモノトス
第二百三條　無記名株券ハ自由ニ讓渡賣渡シ又ハ遺物ト爲スコトヲ得可キ動產トス會社ハ預メ告知ヲ得タル塲合ノ外現有者ノ所有權原ヲ取糺スノ義務ナキモノトス
第二百四條　紛失若クハ廢滅シタル無記名株券ハ之ヲ無効トシ新券ヲ交付スルコトヲ得可シ
第十節　總資本額又ハ株金額ノ增减
第二百五條　會社ハ定款ニ預定シタルトキ又ハ總會ノ决議（第百九十二條）ニ依リ總資本額又ハ株金額ヲ增减スルコトヲ得可シ然レトモ其增减ハ裁判所ノ許可ヲ得タル上之ヲ商業登錄簿ニ登記シ及公告シタル後ニアラサレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
其資本ヲ增加スルニハ株金ヲ增額シ或ハ新株券又ハ負債證券ヲ發行スルコトヲ得ヘシ
第二百六條　總資本ハ其四分一以下ニ减少スルコトヲ得ス
第二百七條　總資本又ハ株金額ヲ减少セント欲スルトキハ其意見ヲ各債主ニ通知シテ其承諾ヲ求メサル可ラス
第二百八條　會社前條ノ手續ヲ爲シタル後裁判所ノ許可ヲ要ムル爲メ承諾シタルト否トヲ書加ヘタル債主ノ全名簿ヲ添ヘ願書ヲ差出ス可シ裁判所ハ之ニ對シ異議アル者ハ必ス六十日以內ニ申出可キ旨ヲ公告ス可シ
第二百九條　承諾セサル債主アルトキハ其要求ヲ滿足セシムルカ或ハ之ニ對シ抵保ヲ備ルニ非サレハ其異議ヲ消除スルコトヲ得ス會社其要求ヲ拒ムトキハ裁判所ハ之ヲ判决シ且抵保ノ額ヲ裁定ス可シ
第二百十條　總債主ノ異議ヲ消除シタル後裁判所ヨリ减額ノ許可ヲ與フ可シ
第二百十一條　會社ノ債主中過失ニ非スシテ减額ノ事ヲ知ラサルカ爲メニ異議ヲ申立サリシ者ニ對シテハ减額ノトキ株主名簿（第百五十五條）ニ記入シアリタル株主其債主ノ之ヲ聞知シ得タル日ヨリ起算シテ一ケ年間减少セシ額ニ至ル迄ノ責任ヲ自己ニ負ハサル可ラス
第十一節　定款ノ變更
第二百十二條　第八節第九節及第十節ニ揭ケタル事項ノ外他ノ事項ニ付會社ノ定款ヲ變更スルトキハ其變更ノ件ヲ直ニ商業登錄薄ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其登記公告前ニ於テハ効力ヲ有セサルモノトス
第十二節　株金拂込
第二百十三條　各株主ハ會社ヨリ定款ニ從テ要求スルニ應シ所有ノ株券ニ係ル金額ヲ拂込ムノ義務アルモノトス但會社ノ承諾（第百四十四條）ヲ得金圓ニアラサル供資ヲ以テ株券ヲ受ル者ハ此限ニ在ラス
第二百十四條　拂込ノ要求ハ取締役ヨリ拂込期限ト不拂ニ依テ蒙ルヘキ損害トヲ記載セル公告ヲ以テ爲ス可キモノトス
第二百十五條　株主期限ニ拂込ヲ爲サヽルトキハ百分ノ七ノ延滯利足ト其延滯ニ由テ生シタル費用トヲ拂フノ義務アルモノトス取締役ヨリ期限ヲ定メ本人ニ宛テ催促ヲ爲スモ株主尙ホ拂込サルトキハ其株式ヲ沒收シ會社ノ所有ニ歸スルコトヲ得可シ
第二百十六條　株券ヲ沒收セラルヽト雖トモ其舊所有主ハ其時マテニ催促ヲ受ケテ拂込サル一切ノ金額ハ猶ホ會社ニ對シテ拂込ムノ義務ヲ負フモノトス
第十三節　會社ノ義務
第二百十七條　會社ハ株主ニ株金ノ全額又ハ幾分ヲ拂戾スコトヲ得ス又株主ニ在テモ之ヲ會社ヨリ取戾スコトヲ得ス若シ取戾シタルトキハ其半額ヲ罰金トシテ會社ニ拂フ可シ
拂戾シ又ハ取戾シタル金額ハ會社又ハ直接ニ會社ノ債主之ヲ償還セシムルヲ得
第二百十八條　會社ハ自己ノ株券ヲ所有ト爲スコトヲ得ス又質ニ取ルコトヲ得ス沒收シタル株券及ヒ負債辨償ノ爲ニ會社ニ交付セラレ若クハ其引受トナリタル株券ハ四週日以內ニ株式取引所ニ於テ之ヲ賣却シ其代金ヲ會社ノ金庫ニ納ム可シ
第二百十九條　株式會社ハ半年每ニ總勘定ヲ爲シ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ製シテ撿查役ノ撿查ヲ受ケ且總會ノ承諾ヲ經タル後之ヲ公告スルノ義務アルモノトス其公告書ニハ取締役及撿查役之ニ署名ス可シ
第二百二十條　利足及配當金ハ會社資本ノ損失ニ依テ减少セサル時ニ非レハ之ヲ計算シ又ハ拂渡スコトヲ得ス益金ハ先ツ减少シタル資本ノ補塡ニ充ツ可シ
第二百二十一條　利足又ハ配當金ヲ拂渡スニ先チ凖備金會社資本ノ四分一ニ至ル迄ハ每年益金ノ內少クトモ二十分一ヲ積置ク可シ
第二百二十二條　第二百十九條乃至第二百二十一條ノ規則ニ依ラスシテ拂出シタル利足及配當金ハ其拂出後三年間ハ何時ニテモ之ヲ償還セシムルコトヲ得可シ
第二百二十三條　利足及配當金ハ各株式ニ就テ拂込タル金額ニ應シ平均ニ各株主ニ拂渡ス可シ
第二百二十四條　會社ハ其本店及各支店ニ株主名簿、起業目論見書、定款、免許證書、登記證書、總會ノ决議書、每半年ノ總勘定書幷ニ貸借對照表及書入契約アル債主ノ名簿ヲ備ヘ置第二百二十五條ノ塲合ノ外通常ノ業務取扱時間ハ望ノ者ニ其展閱ヲ許ス可シ但株主ニ非サル者ニハ貳拾錢ヲ超ヘサル手數料ヲ出サシムルコトヲ得ヘシ
第二百二十五條　諸帳簿調查ノ爲メ半年每ニ一度三十日ヲ超ヘサル間前條ニ記載シタル展閱ヲ停止スルコトヲ得可シ其停止ノ旨ハ社店ノ戸外ニ揭示ス可シ
第十四節　會社ノ撿查
第二百二十六條　相當ノ理由ヲ以テ少クトモ總株金ノ五分一ニ當ル株主ノ申立アルトキハ會社住所地方ノ裁判所ハ官吏一名又ハ數名ヲ派遣シテ會社ノ業務及財產ノ實况ヲ撿查セシムルコトアル可シ
第二百二十七條　前條ノ撿查官吏ハ會社ノ帳簿及一切ノ書類ヲ撿閱シ取締役其他ノ役員ヲシテ誓ヲ爲シテ供述セシムルノ權アルモノトス
第二百二十八條　撿查官吏ハ撿查ノ次第及役員ノ供述ヲ筆記書トナシ其撿查ヲ命シタル裁判所ニ差出シ且其寫ヲ會社ニ下付ス可シ株主又ハ其他ノ人ニテモ望ノ者ニハ之ヲ下付スルコトヲ得可シ
第二百二十九條　主務ノ省ハ何時ニテモ其職權ヲ以テ第二百二十七條第二百二十八條ニ記載シタル撿查ヲ爲スコトヲ得可シ
第十五節　取締役及撿查役ニ對スル訴訟
第二百三十條　總會ハ撿查役又ハ特ニ選任シタル代理委員ヲ以テ取締役又ハ塲合ニ依リ撿查役ニ對シ訴訟ヲ起スコトヲ得可シ
第二百三十一條　會社資本ノ少クモ二十分一ニ當ル株主ハ又代理委員ヲ選任シテ取締役又ハ撿查役ニ係ル訴訟ノ原告又ハ被告タラシムルコトヲ得可シ但各株主ハ自己ノ名義ヲ以テスルカ又ハ間入者トナリテ裁判所ニ於テ其權利ヲ保衛スルニ妨アルコトナシ
第十六節　會社ノ解散
第二百三十二條　株式會社ハ左ノ事項ニ依テ解散スルモノトス
一　定款ニ規定シタル塲合
二　總會任意ノ决議
三　株主ノ員數七名ヨリ少數ニ减シタル事
四　會社資本四分一ヨリ少額ニ减シタル事
五　破產
六　裁判上ノ處分
第二百三十三條　會社不法ノ事業ヲ營ミ又ハ其業務上公ケノ秩序及風教ヲ紊亂スルトキハ裁判所ハ官廳ノ申立ニ依リ又ハ其職權ヲ以テ解散セシムルコトアル可シ
第二百三十四條　會社ノ解散ハ何レノ塲合ニ在テモ總會ノ决議ヲ取ル可シ其决議ハ十日以內ニ各株主ニ報知シ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ公告スヘシ會社此决議ヲ爲サヽルトキハ債主又ハ株主ノ申立ニ依リ又ハ裁判所ノ職權ニ依リ裁判上ノ處分ヲ以テ此决議ニ代フルコトヲ得可シ然ル時ハ其處分ヲ登記公告シ且株主ニ報知ス可シ
第二百三十五條　會社解散ス可キ塲合ニ於テ取締役第二百三十四條ニ記載シタル决議ヲ爲サンカ爲メ速ニ總會ヲ招集スルコトヲ怠リ或ハ其决議ヲ株主ニ報知スルコトヲ怠リ或ハ登記スルコトヲ怠ルトキハ其怠慢ノ爲メニ會社又ハ第三者ニ生セシメタル損害ニ就キ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負フ者トス
第二百三十六條　前條ノ塲合ニ至リタルトキハ仕懸リノ取引ヲ完結シ或ハ在來ノ會社義務ヲ盡スノ外直ニ業務ヲ停止ス可キモノトス
取締役ニ於テ仍ホ營業ヲ保續スルコトアルトキハ之ニ對シテハ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負ハサル可カラス
第二百三十七條　第二百三十二條第三項ノ塲合ニ於テ會社其營業ヲ保續シ六ケ月ヲ超ユルトキハ株主ハ其間ニ生シタル會社ノ總テノ負債ニ對シテ自己ノ全財產ヲ以テ連帶ノ責任ヲ負ハサル可カラス然レトモ七名未滿ニ减少セシヲ知ラサルコトヲ證明スル株主ハ此責任ヲ免カルヽモノトス
第二百三十八條　第二百三十四條ニ記載シタル總會ニ於テ解散ノ决議ヲ爲シタル後ハ直ニ淸算人一名又ハ數名ヲ選擧ス可シ若シ之ヲ選擧セサル時及第二百三十二條第五項及六項ノ塲合ニ於テハ會社住所地方ノ裁判所ニ於テ淸算人又ハ破產管財人ヲ任ス可シ
第二百三十九條　淸算人ノ氏名ハ遲滯ナク裁判所ニ屆出テ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ
第二百四十條　淸算人ノ氏名ヲ商業登錄簿ニ登記シタルトキハ即チ取締役ノ代表權ハ淸算人ニ移ルモノトス但取締役ハ淸算人ノ請求アルトキハ淸算事務ニ就テ之ヲ補助スルノ義務アルモノトス
第二百四十一條　解散及淸算ノ費用ハ他ノ支拂ニ先チ現在ノ會社財產ヨリ支出ス可シ
第二百四十二條　第二百三十二條第六項ヲ除クノ外株式會社解散ノ塲合ニ於テハ取締役ヨリ其旨ヲ裁判所ニ届出可シ裁判所ハ解散及淸算ノ實况ヲ監視スルノ權アルモノトス
第二百四十三條　解散决議（第二百三十四條）ヲ登記シタル後ハ總テ淸算ノ爲ニスルニ非サル財產處分及總テ株式ノ移轉ハ無効ト爲ス伹特別ノ理由アリテ裁判所ノ許可ヲ得タルモノハ此限ニ在ラス
第十七節　會社ノ淸算
第二百四十四條　第百一條乃至第百七條ノ規定ハ株式會社ノ淸算ニモ亦適用スルモノトス
第二百四十五條　淸算人ニハ其職務執行ニ關シ會社ヨリ訓示ヲ與ヘ又株主若クハ債主ノ申立アルトキハ裁判所ヨリ之ヲ與フルコトヲ得可シ淸算人ハ此訓示及法律ノ規定ヲ遵守スルノ責任ヲ負フモノトス
第二百四十六條　至當ノ理由アル債主ノ申立アルトキハ總會又ハ時宜ニ依リ裁判所ヨリ債主ノ利益ヲ監護スル爲メニ其代理者一名又ハ數名ヲ淸算人ニ參加セシムルコトアルヘシ
第二百四十七條　淸算人其事務ヲ執行スルニハ社名ニ淸算中ナル語ヲ附記シテ之ヲ用ユ可シ
第二百四十八條　淸算人ハ其任ヲ受タルヨリ六十日以內ニ會社ノ負債主及債主ノ全名簿ヲ製シ某期限內ニ負債主ハ其負債ヲ會社ニ辨償シ債主ハ其要求ヲ申込ム可キ旨ヲ廣告ヲ以テ催促シ此廣告中ニハ債主徒ラニ期限ヲ經過シタル時ハ其要求ヲ淸算中ヨリ取除ク可キ旨ヲ附記ス可シ
第二百四十九條　淸算人ハ淸算ノ爲メニ株金ノ未納額ヲ其株主ヨリ徵收スルノ權アルモノトス
第二百五十條　淸算人ハ債主トノ示談其他ノ措置及考案ニ就テ何時ニテモ總會ヲ招集スルコトヲ得可シ
總會ノ决議ニ依テ豫定シアルカ或ハ總株金五分一以上ニ當ル株主ノ申立アルトキハ總會ヲ招集スルノ義務アルモノトス
第二百五十一條　淸算人ハ其所爲ニ付總會ニ對シテノミ責任ヲ負フモノトス然レトモ株主各個ノ權利ヲ傷害シタル所爲又ハ怠慢アルトキハ淸算人ニ對シ株主ハ裁判所ニ訴ヘ其權利ノ認定及損害ノ賠償ヲ要ムルコトヲ得可シ
第二百五十二條　第百三條ニ規定シタル計算書ノ呈示ハ之ヲ總會ニ爲ス可キモノトス
第二百五十三條　會社ノ負債ヲ完償シテ殘餘ノ財產アルトキハ各株主ノ所有株式ニ應シ金圓ヲ以テ平等ニ配當ス可シ
株主ハ總會ニ於テ决議シタルトキト雖トモ從前ノ會社ニ代リ又ハ之ヲ保續スヘキ他ノ會社ノ株券或ハ債券ヲ其配當金トシテ請取ル可キ義務ナキモノトス
第二百五十四條　淸算結了シタル時ハ淸算人ハ總計算書及處務ノ槪報ヲ總會ニ差出シ卸責ヲ求ム可シ
第二百五十五條　計算上總會ト淸算人トノ間ニ爭論ノ起リタルトキハ裁判上ノ判决ヲ受ク可シ
第二百五十六條　卸責ヲ受タル時ハ淸算人ハ淸算結了ノ旨ヲ商業登錄簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其公告ニハ淸算ニ關シテ會社ニ對シ要求權利アル者ハ三ケ月以內ニ申込ムニ非ラサレハ其効ナキ旨ヲ附記ス可シ右ノ要求アルトキハ仍ホ淸算人ニ於テ之ヲ處分スルモノトス
第二百五十七條　淸算ノ際會社現在ノ財產會社ノ總債主ニ完償スルニ足ラサルコト出來シタルトキハ淸算人ハ破產處分ノ開始ヲ爲ス可シ此塲合ニ於テ淸算人善意ヲ以テ會社ノ債主又ハ株主ニ支拂タルモノハ無効トシ其領收者ヨリ之ヲ返還セシムルコトヲ得可シ貸方借方ノ割合如此ヲ查明シタル後支拂フタルモノニ就テハ淸算人自己ノ全財產ヲ以テ會社債主ニ對シ責任ヲ負フモノトス破產處分開始ノ上申ハ之ヲ廣告シ其會社ノ取引先ヘ通知ス可シ
第二百五十八條　總會ノ决議ヲ以テ會社帳簿及書類ノ保存ヲ委託セラレタル者ノ氏名ハ淸算人ヨリ裁判所ニ屆出ヘシ此届出ヲ爲サヽル間ハ淸算人其保存ノ責任ヲ負フモノトス
第二百五十九條　淸算ノ結了即チ左ノ件々ハ之ヲ淸算人ヨリ裁判所ニ届出且三度以上引續キ新聞紙ヲ以テ廣告シ幷ニ會社ノ取引先ヘ通知ス可シ其廣告通知ニハ既ニ結了シ總テ會社株券及債券ハ無効トナリタル旨ヲ明示セサル可ラス
一　支拂又ハ示談ニ依リ總債主ニ全部又ハ一部ヲ以テ濟方ヲ爲ス事
二　會社ノ殘餘財產配當ノ物件及額ヲ定メ幷ニ之ヲ株主ニ配當スル事
三　淸算費用ヲ支拂ヒ及淸算ニ關スル要求ヲ處分スル事
四　總會又ハ裁判上ノ處分ニ依リ總結算ノ卸責ヲ與フル事
五　會社ノ帳簿及書類保存ニ關スル處置ヲ爲ス事
商事会社条例
商事会社
第一款　総則
第一条　商事会社ハ共同シテ商業ヲ営ムカ為メニスルトキノミ之ヲ設立スルヲ得
法律ニ背戻スル目的ノ（禁止セラレタルコトヲ目的トスル）会社ハ初ヨリ無効トス公ケノ秩序又ハ風教ヲ紊乱スヘキ営業ヲ為ス会社ハ裁判上ノ判決ヲ以テ解散セシムルコトヲ得可シ
第二条　商業ヲ営ムトハ商ヒノ取引ヲ不断ニ為スコトヲ云フ
第三条　商ヒノ取引トハ直接ト間接トヲ問ハス売買、賃貸及其他ノ売捌ノ方法ニ依リ産生物商品及有価証券ヲ売捌クヲ趣旨ト為ス総テノ取引殊ニ主トシテ売捌ヲ目的ト為ス産生物ノ諸起業及諸事業及製造ノ諸起業及諸事業貨物及行客運輸ノ諸起業及諸事業貨幣流通及信用流通ノ諸起業及諸事業保険ノ諸起業及諸事業トス
第四条　左ノ事項ハ商ヒノ取引ト同視スルモノトス
一　店ヲ開キ又ハ帳場ヲ構ヘ又ハ其他ノ営業所ヲ設ケ又ハ広告シテ営ム両替及利足付又ハ其他ノ報酬付ノ貨幣貸付
二　新聞紙及雑誌ノ発行
三　商事上各種ノ代理
四　公ナル依頼引請営業及取次営業
五　諸公集場営業及遊戯場営業
六　請負ヒ仕事
第五条　左ノ事項ハ商ヒノ取引ト同視スヘカラサルモノトス
一　戸毎ニ就キ又ハ道路ニ於テ物品又ハ労役ヲ販売又ハ勧請スル事但常置ノ営業所ヨリ派出スルモノハ此限ニ在ラス
二　専ラ賃銭ヲ得ルノ目的ニテ物品ヲ製作シ又ハ労役スル事
三　他人ノ為ニ労働及労役ヲ約諾スル事但商業ノ為メニスルモノハ此限ニ在ラス
第六条　年齢十八歳ニ満チタル未丁年者ハ其父又ハ後見人ノ許諾ヲ得有夫ノ婦ハ夫ノ許諾ヲ得テ会社ノ社員タルコトヲ得ルモノトス但其許諾ハ之ヲ商業登録簿ニ登記シ且公告セサル可カラス
第七条　官吏ハ会社ノ社員タルコトヲ得ス
第八条　第六条第七条ノ規定ハ株券得有及其現有ニ就キ適用セサル可シ
第九条　会社ノ権利義務上ノ関係ハ法律及会社契約ニ依テ定マルモノトス
会社ハ代表人其本分ヲ以テ為シタル不法ノ所業ニ付責任ヲ有シ義務ヲ負フ可キモノトス
第十条　会社ハ本条例中ノ規則及商ヒノ為ニ頒布シタル法律布達及規則ハ勿論此ノ外行政上及警察上ニ於テ政府ヨリ立タル許可ニ付テノ特別約束及特別規則ニ服従セサル可カラス
第十一条　株式会社ハ其発起及設立ニ付又行政及警察ノ区域ニ属スル事業ヲ目的トスル合名及合資会社ハ其設立ニ付政府ノ許可ヲ受ルヲ要ス
右等ノ会社ハ其契約書ヲ主務省ニ差出シ其省ヨリ太政官ノ決裁ヲ得タル後正式ノ手続ヲ以テ許可ヲ与ヘ又ハ禁止ス可シ
其許可ヲ得ルニアラサレハ其会社ヲ設立シ又ハ商業登録簿ニ登記スルヲ得ス
株式会社ニ在テハ第五款第二節ノ規定ヲ遵守セサル可カラス
第十二条　会社ハ社名及社印ヲ設ケ且其住所ヲ定メサル可カラス
社名ハ一地方ニ於テ同一ナル可カラス
会社既ニ存在セル営業ヲ引受クルトキハ其旧社名ヲ襲用スルコトヲ得ス
社名ハ社店ノ前面ニ掲示ス可シ
第十三条　社印ニハ社名ヲ彫刻ス可シ且登記ノ為メ其印鑑一枚ヲ第二十七条ニ掲ケタル裁判所ニ差出ス可シ社印ヲ改正又ハ改刻スルトキモ亦此手続ヲ為ス可シ
第十四条　社名及社印ハ総テ官庁ニ宛テタル文書並ニ公報、広告、株券、為替手形其他総テ会社ニ於テ権利ヲ有シ義務ヲ負フ可キ各種ノ書類ニ用ユ可シ
第十五条　会社ハ特別ノ財産ヲ有シ又独立シテ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス殊ニ其名義ヲ以テ債負債ヲ為シ動産不動産ヲ所得シ又訴訟ニ付テハ原告又ハ被告ト為ルコトヲ得可シ
会社ノ通常ノ裁判管轄ハ其住所ノ裁判所ニ属スルモノトス
第十六条　二人以上結合シ共通ノ計算ヲ以テ一時ノ商ヒノ取引又ハ起業ヲ為ストキハ之カ為メ会社ハ成立セス其財産モ亦成立セサル可シ且其契約ハ会社ニ関スル本条例ノ規定ニ服従セサルモノトス但其中ノ一員他員ノ為メニ為シタル契約施行ニ付テノ所為又ハ各員共ニ躬ラ為シ又ハ共同代理者ヲシテ為サシメタル所為ヨリシテ各員第三者ニ対シ直接ニ連帯ノ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第十七条　二人以上損益共分ノ約ヲ立タルトキハ仮令別箇ニ一時ノ商ヒノ取引、起業又ハ営業ヲ為スモ前条ト同様連帯ノ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス但此場合ニ於テ其結合人員中他ノ一員又ハ数員ノ所業ノ為メニ第三者ヨリ請求ヲ受タル者ハ先訟ノ抗弁ヲナスノ権利アルモノトス
第十八条　甲者一定ノ差入財産ヲ以テ乙者又ハ乙会社ノ商ヒニ加ルニ損益ヲ共分シ其差入財産ヲ乙者又ハ乙会社ノ所有ニ帰セシメ商務ニ参与セス又自己ノ氏名ヲ屋号又ハ社名中ニ加エサル方法ヲ以テ乙者又ハ乙会社ノ商ヒニ加リタルトキハ甲者ハ乙者又ハ乙会社ノ所業ノ為メ第三者ニ対シ差入財産未納ナル場合ニ於テハ其全額マテ義務ヲ負担セサル可カラス
第十九条　前条ノ契約ハ定期又ハ無定期ニテ取結フコトヲ得可シ無定期ノ時ハ契約ニ依テ定メタル預メ為ス可キ報告ニ依リ又ハ六ケ月前ニ報告スルトキハ何時ニテモ之ヲ解クコトヲ得可シ其他此契約ハ其契約シタル乙者ノ死亡又ハ破産又ハ乙会社ノ解散ニ依テ終止スルモノトス
第二十条　解約ノ時ハ甲者ノ負担ス可キ損失又ハ負債ニ依テ減少シタル額ヲ除キ其差入財産ヲ還付セサル可カラス而シテ収入ス可キモ未タ領収セサル利潤ヲ以テ差入財産ニ増加スルコトナク又差入財産ニ減少アルトキト雖モ之ヲ以テ補填スルコトナキモノトス
第二十一条　代弁者ト為リ又ハ商業助手ノ仕事ヲ執ルハ商務ヲ共ニスルモノト視做ス可カラス
第二十二条　損益配当ノ部合ヲ明約セサリシトキハ共同資本総額ニ対スル各自差入財産ノ価額ノ比例ヲ以テ之ヲ算定ス可シ有分者ニシテ損失ノ配当ヲ受サル者アル約定ハ第三者ニ対シ無効トス
第二十三条　解約前ニ於テ契約ヲ取結タル当務者又ハ会社ノ破産ヲ為シタルトキ債主ハ有分者ノ負担ス可キ損失額ニ至ルマテ其差金ノ内ヨリ請求スルコトヲ得可シ
第二十四条　商ヒノ取引又ハ起業又ハ契約ノ了リタルトキハ執業者ハ有分者ニ計算ヲ示シ且関係ノ帳簿及証書ノ展検査閲ヲ許ス可シ但右等ノ契約一年以上ニ渉ルトキハ毎年前顕ノ手続ヲ為ス可シ此規定ハ第十六条第十七条ニ定メタル場合ニモ亦適用スルモノトス
第二十五条　会社ハ其業体中ニ行ハルヽ慣例ニ従ヒ商業帳簿ヲ設ケ総テ業務取扱上ノ事件ヲ記載スルノ義務アリトス又開業ノ時及毎年初メノ三ケ月内ニ総財産ノ目録並ニ貸方借方ノ対照表ヲ製シ両ナカラ之レカ為メニ設ケタル帳簿ニ記入ス可シ
四季又ハ毎半年ニ利足又ハ益金ヲ社員ニ配当スル会社ハ毎半年ニ前項ニ掲ケタル財産目録及貸借対照表ニ係ル規定ヲ履行ス可シ
第二十六条　商業帳簿ハ記入最終ノ後十年間保存シ亡失損傷セサル様最モ能ク注意ヲ加フ可シ
第二款　商業登録簿
第二十七条　本条例ニ規定シタル商業登録薄ヘノ記入ハ会社ノ住所ヲ管轄スル裁判所ニテ之ヲ取扱フモノトス
第二十八条　登記ヲ受ク可キ事件ハ当務者自己又ハ其代理人ヨリ書面ヲ以テ之ヲ届出且之レカ為メニ要用ナル証左ヲ添加ス可シ
第二十九条　記入ノ許否及記入事件ニ付テノ争論ハ裁判所ノ裁決ヲ以テ終結トス以前ノ登記ヲ改正シ又ハ取消サントスルトキノ争論ニ就テモ亦同シ
第三十条　裁判所ハ職権ヲ以テ記入事件ノ抜書ヲ官報及其裁判所ノ官誌或ハ官ヨリ示定ス可キ他ノ地方新誌ニ公告ス可シ
第三十一条　登記及公告ハ其届出タル日ヨリ五日内ニ之ヲ為ス可シ
第三十二条　第三十条ニ掲ケタル地方新誌ノ種類及登記公告ノ費用ハ少ナクモ翌年分ヲ予メ司法卿ヨリ布達ヲ以テ之ヲ定ム可シ
第三十三条　裁判所ヨリ一回ノ督促ヲ蒙ルモ法律ニ規定シタル登記ノ届出ヲ怠ル者ハ五円以上百円以下ノ罰金ヲ科シテ其届出ヲ為サシム可シ
第三十四条　商業登録簿ハ各人之ヲ展閲スルヲ得可シ都テ登記及広告シタル事柄ハ公ケニシテ裁判所ノ認メタルモノトシ其事実ヲ知ラサルノ廉ヲ以テ義務ヲ免ルヽコトヲ得サルヲ通例トス
第三款　合名会社
第一節　会社ノ設立
第三十五条　二人以上七人以下金円或ハ有価物件及労力ノ供資ニ依リ共有資本ヲ集成シ共通計算ヲ以テ商業ヲ営ミ責任其供資ニ止マラサルモノヲ合名会社トス
第三十六条　社名ハ全社員又ハ其一名又ハ数名ノ人名ニ会社タルヲ表スヘキ附号ヲ加ヘタルモノタル可シ
第三十七条　合名会社ヲ設立スルトキハ必ス契約書ヲ作ル可シ総員連署シタル契約書一部ヲ各社員ニ交付ス可シ本条ノ規定ハ爾後会社契約改正ノ時ニ当テモ亦之ヲ遵守ス可シ
第三十八条　合名会社ヲ設立シタルトキハ設立後十四日以内ニ此旨ヲ本店及支店ノ地ニ於テ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ広告ス可シ之ヲ為サヽル者ハ第三十三条ノ罰金ニ処セラル可シ
第三十九条　登記及広告中ニ載スヘキ件々左ノ如シ
一　会社ノ種類、目的、社名及住所
二　各社員ノ氏名住所
三　設立ノ年月日
四　存立期限ヲ約定シタルトキハ其期限
五　契約ニ依リ商務ノ専権ヲ委任セラレタル社員アルトキハ其社員ノ氏名
第四十条　前条ニ記載シタル一件又ハ数件ニ於テ爾後変更ヲ生シ又ハ合議ヲ以テ変更シタルトキハ亦之ヲ七日以内ニ商業登録簿ニ登記シ且広告ス可シ之ヲ為サヽル者ハ第三十三条ノ罰金ニ処セラル可シ
第四十一条　登記及広告前ニ於テハ会社開業スルヲ得ス違背スルトキハ裁判上ノ処分ヲ以テ其営業ヲ差止メ且其会社ニ一日毎ニ五円以上五拾円以下ノ罰金ヲ科ス可シ
第四十二条　会社登記ノ日ヨリ六ケ月間ニ開業セサルトキハ其登記及広告ハ無効トス
第二節　会社契約ノ変更
第四十三条　会社契約ハ総員同意ノ決議ニ非ラサレハ変更スルヲ得ス其決議ヲ得サルトキハ従前ノ契約ニ循フ可シ
第四十四条　社員ハ其供資ヲ契約ニ定メタル高ノ外ニ増加シ又ハ損失ニ由テ減少シタル供資ノ高ヲ補充スルノ義務ナキモノトス
第四十五条　社員ハ自余ノ社員総数ノ承諾ヲ得ルニ非ラサレハ自己ノ供資又ハ会社資産中ノ持分ヲ減少スルコトヲ得ス
第四十六条　社員ハ前条同様ノ承諾ヲ得ルニ非ラサレハ他人ヲ会社ニ加入セシメ又ハ自己ノ地位ニ替ユルコトヲ得ス然レトモ亡社員ノ相続人又ハ権利承継者ハ契約ニ反対ノ明条アルニ非サレハ本員ノ地位ヲ継続スルコトヲ得可シ
第四十七条　会社資産中ノ持分ヲ他人ニ譲与又ハ転移スルコトハ会社ニ対シテモ又ハ第三者ニ対シテモ其効ナキモノトス
第四十八条　社員若シ他人（間接有分者）ヲ自己ノ持分ニ加入セシムルトキハ本条例ノ総則（第十六条以下）ニ従テ其関係ヲ判定ス可シ
第四十九条　会社契約中ノ箇条ニシテ会社実行セサリシモノハ後来社員ニ対シテモ又ハ第三者ニ対シテモ之ヲ有効トスルコトヲ得ス
第三節　社員相互ノ権利義務
第五十条　社員相互ノ権利義務ハ法律及会社契約ニ依テ定マルモノトス
第五十一条　会社契約ニ規定セサル事項或ハ会社契約規定施行ニ関スル事項ハ社員ノ多数ニ依テ之ヲ決ス可シ
第五十二条　会社ノ目的ニ異ナルカ或ハ其目的ヲ踰ユル諸般ノ業務及事件ニ就テハ総社員ノ同意ヲ要ス
第五十三条　会社ノ業務施行及会社ノ利益ヲ保衛スルコトニ就テハ会社契約ニ別段ノ規定ナキ限リハ各社員同等ノ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
会社契約ニ依リ若干ノ業務又ハ諸般ノ業務取扱ヲ一社員又ハ数社員ニ専ラ委任シタルトキハ第五十一条ヲ又此ニ適用ス可シ
供資ノ額ニ従テ社員ノ発言権利ニ等差ヲ立ルコトヲ許サス
第五十四条　業務取扱ニ与ラサル社員ハ何時ニテモ業務実況ノ詳報及会社帳簿並ニ書類ノ検閲ヲ要求スルコトヲ得可シ
第五十五条　代弁者ヲ委任シ及解任スルノ権利ハ業務担当ノ各社員之ヲ有スルモノトス
第五十六条　各社員ハ会社ニ対シテ誠実信義ヲ尽シ正当ナル商人自己ノ業務ニ於ケルト斉シキ勉励注意ヲナスノ義務アリ其義務ヲ怠リ会社ニ生セシメタル損害ハ之ヲ補償セサル可カラス
第五十七条　社員ノ供資ハ会社ノ所有トシ契約ニ依テ定メタル価額ヲ以テ会社ノ財産目録中ニ記入ス可シ
第五十八条　社員物件ノ入額所得権利又ハ使用権利ノミヲ供資トシテ差入ルヽトキハ其入額所得権利又ハ使用権利ノミ会社資産ニ移転スルモノトス
第五十九条　前条ノ物件供資ノ義務ヲ尽サンカ為メ会社ニ引渡シタル後消滅スルトキハ其所有権利ノ損失ハ所有主ニ帰シ其入額所得権利又ハ使用権利ノ損失ハ会社ニ帰スルモノトス
第六十条　社員ノ別離ト共ニ終止スル目的ヲ以テ物件ノ使用権利ヲ会社ニ引渡シタルトキハ其所有権及使用権ノ損失ハ社員ニ帰スルモノトス
第六十一条　自己ノ勤労ヲ以テ供資ト為シタル社員会社契約存立中ニ死亡スルカ或ハ其他之ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ其供資ノ義務及ヒ社員タルコトハ之レカ為メニ絶ユルモノトス
第六十二条　社員契約上ノ供資ヲ納メサルトキハ其怠納者ヲ除名スルト百分ノ七ノ利足ヲ出サシムルトハ会社ノ撰択ニ在ルモノトス且会社ハ此両様ノ内何レノ場合ニ在テモ損害ノ弁償ヲ要求スルコトヲ得可シ
第六十三条　社員契約上ノ供資ヲ納ムルコト能ハサルニ至リタルトキ総社員ノ承諾ヲ得テ他ノ供資ヲ代納スルニアラサレハ社員タルコトハ絶ユルモノトス
第六十四条　社員ヨリ会社ニ貸付ケタル金額及契約上ノ供資額ヲ超エテ会社ノ為メニ支出シタル費用ニ就キ該社員ハ其弁償ノ外百分ノ七ノ利足ヲ要求スルコトヲ得可シ又社員業務取扱ノ為メ直接ニ受タル損失ニ就テモ亦其弁償ヲ要求スルコトヲ得ルモノトス
第六十五条　社員負担ノ供資額ヲ超エテ会社ニ供シタル勤労ニ付テハ相当ノ報酬ヲ要求スルコトヲ得可シ
業務取扱上ノ執労ニ就テハ会社契約ニ明条アルトキニ限リ社員其報酬ヲ要求スルノ権利ヲ有スルモノトス
第六十六条　社員会社ノ為メニ領収シタル金円ヲ相当ノ時限ニ会社ニ交付セス或ハ社金ヲ自己ノ用ニ供シタルトキハ百分ノ七ノ利足ヲ会社ニ納付シ且如何ナル損害ヲモ弁償スルノ義務アルモノトス
第六十七条　社員契約ニ依リ会社ノ承諾ヲ得ルニアラスシテ自己ノ計算又ハ第三者営業ノ計算ヲ以テ会社ノ商業部内ニ属スル取引ヲ為シ或ハ此等ノ取引ニ参与スルトキハ該社員ヲ除名スルトモ又ハ其取引ヲ会社ノ計算ニ移ストモ会社ノ撰択ニ在ルモノトス且会社ハ此両様ノ内何レノ場合ニ在テモ損害ノ弁償ヲ要求スルコトヲ得可シ
第六十八条　各社員会社ノ損益ヲ共分スル割合ハ契約ニ於テ定メサルトキハ供資ノ価額ニ応ス可シ
労力ノ価額ヲ契約中ニ定メサルトキ争論ノ起リタル場合ニ於テハ裁判上ノ判決ヲ以テ之ヲ確定ス可シ
第六十九条　一名又ハ数名ノ社員他ノ社員ヲ除斥シ自己ノミ利益ヲ受ルノ約定ハ無効トス之ニ反シ特殊ノ理由ニ依リ一二ノ社員損失ヲ免カルヽノ約定ハ其効ヲ有スルモノトス
第七十条　契約ニ定メタル供資ノ価額其差入ノ時ノ実価ニ超過スルコト甚シキトキハ何時ニテモ其価額ヲ不当トシテ異議スルコトヲ得可シ
社員会社ニ売渡シ又ハ他ノ報酬ヲ受テ譲渡シ又ハ売渡若クハ譲渡ニ於テ利益ヲ受タル物件労力ニ就テモ亦同一ノ異議ヲ為スコトヲ得可シ
第七十一条　社員業務ニ与ラサル者ニシテ業務ヲ為シ或ハ会社ニ対シテ詐偽ヲ行ヒ或ハ会社ニ対シ甚シク主要ノ義務ヲ欠タルトキハ第五十六条ニ制定シタル責任ノ外尚該社員ヲ除名スルコトヲ得可シ
第七十二条　社員会社契約又ハ本条例ノ規定ニ拠リ会社ノ為メニ執行シタル各種ノ所業及取引ハ各社員ニ於テ其持分ノ割合ニ応シ之ヲ承認スルノ義務アルモノトス
第四節　社員ノ第三者ニ対スル権利義務
第七十三条　社員ノ所業及取引ニ依リテ会社ニ得タル第三者ニ対スル権利ハ業務ニ参与セサルコトヲ登記及広告セサル各社員裁判上ト裁判外トヲ論セス其範囲ヲ尽シテ之ヲ主張シ又其権利ヲ処分スルコトヲ得可シ
第七十四条　前条ニ等シク第三者ニ対スル会社ノ義務ハ第三者ヨリ代理権利アル何レノ社員ニ対シテモ裁判上ト裁判外トヲ論セス其範囲ヲ尽シテ之ヲ履行セシムルコトヲ得可シ
第七十五条　会社ハ公ニ業務担当ヲ除カレサル社員ノ会社ノ為メニ明言シテ為シ又ハ事情会社ノ為メニ為シタルモノト看認ム可キ総テノ所業及取引ヨリ直接ニ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第七十六条　会社契約又ハ其他ノ約定ヲ以テ業務担当社員ノ代理権利ノ範囲ニ制限ヲ立ルモ其制限ハ第三者ニ対シテ無効トス
第七十七条　会社ノ負債ニ対シテハ先ツ会社ノ財産之ニ当リ次テ社員各箇ノ全財産ヲ以テ負債ノ全額ニ当ルモノトス
第七十八条　社員ニアラスシテ其氏名ヲ社名ニ表出シ又ハ業務ニ参与スル者及供資ノ義務ヲ一定セスシテ社員タル者ノ権利ヲ有シ義務ヲ負フ者ハ其氏名ヲ登記広告セサルモ前条ノ責任ヲ負フ可キモノトス
第七十九条　商業助手又ハ代弁者ニシテ給料ノ全部又ハ一部ヲ一定或ハ不定ノ利益配当ノ部合ニ依テ定メタル者ハ前条ノ者ト同視ス可カラス
第八十条　新ニ加入スル社員ハ社員ノ間又ハ会社ニ対スル債主トノ契約ニ因テ他ニ取極アルニアラサレハ其加入ノ時期ヨリ以後ニ生シタル会社義務ニ限リ責任ヲ負フモノトス
単ニ旧来ノ負債ヲ認知シ又ハ其負債ニ依テ得タル会社ノ物件ヲ使用スルノミヲ以テ右契約上ノ取極ト同視ス可カラス
第八十一条　新ニ加入シタル社員以前ノ取引ヨリ生スル利益ノ配当ヲ受ルトキハ其取引ノ為メ自ラ第三者ニ対シ責任ヲ負ハサル可カラス
第八十二条　会社財産ハ其分配前ニ於テハ会社義務履行ノ為メニアラサレハ要求ニ当ルコトヲ得ス但其差入前之ニ対シ既ニ第三者ノ為メニ権利ノ存立スルトキハ此限ニ在ラス
第八十三条　社員自己ノ債主ニ対シ会社財産中ノ持分ヲ以テ其義務ニ充ツルコトヲ得ルハ会社ノ承諾ヲ得スシテ引出スコトヲ得ル部分ニ限ル可シ
第八十四条　会社ニ対スル負債ト社員ニ対スル要求ト又ハ会社ニ対スル要求ト社員ニ対スル負債トノ抵填ハ会社財産分配前ニ在テハ之ヲ為スコトヲ許サス
第八十五条　任意ニ為シタル社員持分ノ減少又ハ引取ニ依テ会社ノ債主会社財産ヨリノ弁償ヲ減少セラレ又ハ支障セラレタルトキハ該債主ハ之ヲ知リ得タル後一年以内ニ異議ヲ申立ルコトヲ得可シ但異議ノ効果ハ其減少又ハ引取ノ嘗テアラサリシモノト見做スニアリトス
第五節　社員ノ別離
第八十六条　社員除名セラルヽノ外別離スル場合ハ左ノ如シ
一　任意ノ退去」会社契約ノ無定期又ハ終身ナル時又ハ契約ニ定期アルニ於テハ会社ノ承諾ヲ得タル時
二　死亡」嗣員トナル権利承継者ナキ時
三　独立権ノ消失」別段ノ契約ナキ時
四　破産
五　商業ヲ為ス能力ヲ失フタル事（第七条）
第八十七条　社員別離スル毎ニ其別離ノ事ト其理由トヲ七日内ニ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ広告ス可シ之ヲ為サヽル者ハ第三十三条ノ罰金ニ処セラル可シ
第八十八条　任意ノ退去（第八十六条）ハ別段ノ約定アルニアラサレハ六ケ月前ニ預告シタル後事務年度ノ末ニ限ル可シ但至急退去ス可キ重要ノ事由アルトキハ此限ニ在ラス
第八十九条　社員ノ別離ノ為メニ会社自ラ解散ニ至ルモノニ非ス
第九十条　別離シタル社員ハ別離前ニ属スル取引ニ就テ其持分ニ対シ会社トノ関係アルノ外別離ノ時ヨリ会社ノ取引及ヒ権利義務ニ加ハラサルモノトス
第九十一条　別離シタル社員ヘノ支払ノ為メ特ニ精算書ヲ製シ本員ノ加リタル取引ノ結了シタルモノ丈ケハ其精算書ニ拠リ会社財産中ノ持分ヲ其別離ノ時ノ額ヲ以テ遅延ナク其社員又ハ権利承継者ニ払渡ス可シ
第九十二条　会社財産中ノ持分ヲ払渡スハ其持分ニ相当スル会社義務ヲ除キタル余分ニ限ル可シ
第九十三条　会社財産ノ持分高ノ現価ハ別段ノ約定アルニアラサレハ供資ノ何種類タリシニ拘ハラス必ス貨幣ニテ之ヲ払渡ス可シ
社員ノ勤労ハ其別離ト共ニ終止シ償却ヲ要求スルコトヲ得ス又社員ノ別離ト共ニ終止スル物件ノ使用権利（第六十条）ニ付テモ亦同シ但会社ノ失錯ニ依テ物件ノ損傷シタルトキハ此限ニアラス
第九十四条　別離シタル社員会社ノ義務ニ対スル責任（第七十七条）ノ期満免除ハ別離後一ケ年トス
第六節　会社ノ解散
第九十五条　会社ハ左ノ事項ニ拠テ解散スルモノトス
一　会社存立期限ノ終リ
二　会社契約ニ定メタル解散事由ノ到来
三　総社員四分三以上同意ノ決定
四　会社ノ破産
五　裁判上ノ処分
第九十六条　会社仕払ヲ停止シタル時ハ破産シタルモノトス
第九十七条　会社反法ノ事業又ハ公ケノ秩序及ヒ風教ヲ紊乱ス可キ事業ヲ営ムトキ又ハ会社ノ目的ヲ達スルコト能ハス若クハ会社ノ地位ヲ維持スル能ハサルニ至リ或社員ヲ除名スルモ尚之ヲ排除シ得サル事由ヲ以テ社員一名又ハ数名ヨリ解散ヲ発議スルトキハ裁判上ノ処分ヲ以テ会社ヲ解散セシムルコトヲ得可シ
第九十八条　第九十五条中第一項ヨリ第三項ニ記載シタル場合ニ於テハ協議ノ上総社員又ハ其一部社員ニ於テ該会社ヲ保続スルコトヲ得可シ然ルトキハ其保続ニ加ハラサル社員ハ退社々員（自第八十六条至第九十四条）トシテ之ヲ取扱フ可シ
第九十九条　会社ノ解散ハ其年月日、事由（第九十五条）及撰任シタル清算人（第百一条）ノ氏名ヲ付シテ之ヲ七日以内ニ商業登録簿ニ登記シ且公告スヘシ之ヲ為サヽル者ハ第三十三条ノ罰金ニ処セラル可シ
第百条　会社ハ解散ニ依テ終ルモノトス会社ノ営業ハ一切之ト共ニ停止シ会社ノ財産ハ破産ノ場合ノ外持分ニ応シテ各社員ニ分配ス可シ
第百一条　財産分配ノ目的ヲ以テ社員ハ其多数決ニ依リ一名又ハ数名ノ清算人ヲ撰定ス可シ清算人ハ残務ヲ結了シ会社ノ義務ヲ履行シ未納ノ貸方ヲ収納シ現存ノ財産ニ属スル物件ヲ売却スルノ任アルモノトス清算人此目的ヲ超ヘテ営業ヲ保続シ又ハ新ニ取引ヲ為スコトヲ許サス
第百二条　清算人ニ属スル担任ハ社員之ヲ制限スルコトヲ得ス但重要ナル理由ニ依リ社員ノ申立タルトキハ裁判上ノ処分ヲ以テ其任ヲ解クコトヲ得可シ
第百三条　清算人ハ其担任ノ事務ヲ結了シタルトキハ直チニ又事情ニ依リテハ年々計算書ヲ社員ニ呈示シ且支障ナキ現在ノ資産ヲ遅延ナク社員ニ分配ス可シ
第百四条　社員ニ分配スルモノハ会社ノ全負債ヲ清完シタル後残存セル財産ニ限ル可シ
第百五条　各社員ハ他ノ約定アルニアラサレハ其持分ノ払渡ヲ之ニ相当スル金額ニテ要求ス可シ
第百六条　解散シタル会社ノ商業帳簿及其他ノ書類ハ法律上ノ規定（第二十六条）ニ従ヒ会社ノ決議ヲ以テ之ヲ取扱フ可シ
第百七条　分配又ハ之ニ牽連スル事件ニ就テ社員相互ノ間又ハ社員ト清算人トノ間ニ争論ノ起ルトキハ裁判上ノ判決ヲ以テ之ヲ処理ス可シ
第百八条　会社ノ負債ニ対スル社員自己ノ責任ノ期満免除ハ其負債ニ対シ五ケ年ヨリ短キ期満免除期限ノ定メナキトキニ限リ会社解散後五ケ年トス但未タ分配セサル会社財産ノ現在スルモノニ対シ債主ヨリ要求ヲナシタルトキハ此限ニ在ラス
第四款　合資会社
第百九条　社員ノ責任其一名又ハ数名ニ対シ別段ノ契約アルニアラサレハ供資トナシタル金円又ハ有価物件ノ額ニ限ル会社ヲ合資会社トス
合資会社ハ社員十五名ヲ超ルコトヲ得ス
第百十条　合名会社ノ条則本款ニ於テ別ニ規定ナキモノハ合資会社ニモ亦之ヲ適用ス可シ
第百十一条　合資会社ハ登記及ヒ公告中第三十九条ニ掲クルモノヽ外尚ホ左ノ件々ヲ列記ス可シ
一　会社資本ノ総額
二　金額ニ引直シタル各社員ノ供資高
三　責任無限社員アルトキハ其氏名住所
四　業務担当社員又ハ取締役ノ責任ノ有限若クハ無限（第百二十一条）
第百十二条　合資会社ノ社名ニハ責任有限社員ノ氏名ヲ用フルコトヲ得ス且該社名ニハ必ス合資会社ノ語ヲ加フ可シ
氏名ヲ社名ニ加ヘタルトキハ其社員ハ之レカ為メ会社ノ負債ニ対シ自己ノ財産ヲ以テ其責ヲ負ハサル可カラス
第百十三条　合資会社ノ社員ハ一己ノ計算又ハ他人ト共同ニテ会社営業ト同種類又ハ異種類ノ商業取引、起業又ハ営業ヲ為スコトヲ得可シ
第百十四条　契約ニ於テ他ノ取極アルニアラサレハ各社員ハ同等ニ会社ヲ代表スルノ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第百十五条　合資会社設立ノ時社員三名ヲ超ルトキハ直ニ会社契約ヲ以テ社員中ヨリ一名又ハ数名ノ取締役ヲ撰定ス可シ設立後三名以上ニ至リタルトキハ会社ノ決議ヲ以テ之ヲ為ス可シ
取締役数名ヲ撰定シタルトキハ取締役各自ニテ会社ノ為メニ業務ヲ取扱フコトヲ得ル歟又ハ其中数名又ハ総員共同ニアラサレハ之ヲ取扱フコトヲ得サル歟ヲ之ト共ニ取極ム可シ
第百十六条　業務担当者又ハ取締役ハ裁判上ト裁判外トノ事件タルニ拘ハラス総テ会社ヲ代表スルノ権利ヲ専有スル者トス但会社契約中ノ規定及ヒ会社ノ決議ヲ遵守セサル可カラス
第百十七条　第百十五条第百十六条ニ記載シタル業務担当者又ハ取締役ノ代表権利ノ制限ハ善意ヲ以テ之レト取引ヲ為シタル第三者ニ対シテハ無効トス
第百十八条　社員ハ会社ノ承諾ヲ以テノミ持分ヲ他人ニ譲与スルコトヲ得可シ譲与シタルトキハ譲与者ハ別離社員ト視做シ譲受人ハ前社員ノ会社ニ係ル諸般ノ権利義務ヲ継承スル者トス
第百十九条　業務担当ノ任アル社員又ハ取締役ニ撰ハレタル社員ノ所業ニ因テノミ会社ハ権利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
第百二十条　会社ノ負債ニ対シテハ会社財産及ヒ責任無限社員自己ノ全財産ヲ以テ之ニ充ツ可シ但社員未納ノ供資アルトキハ其供資亦之ニ充ツ可キモノトス
第百二十一条　業務担当社員又ハ取締役其業務取扱中ニ生シタル会社ノ負債ニシテ会社ノ財産ヲ以テ債主ヘ弁償シ得サル分ハ其総員若クハ其中幾員各箇ノ全財産ヲ以テ之ニ充ツ可シトノコトヲ会社契約又ハ会社ノ決議ニ依テ取極ムルコトヲ得可シ
第百二十二条　前条ニ記載シタル無限責任ノ期満免除ハ業務担当者又ハ取締役ノ解任後一ケ年トス其解任ト共ニ退去スルト否トヲ問ハス
第百二十三条　各社員ハ業務ヲ担当セサル者ト雖モ何時ニテモ業務ノ実況及効果ヲ質シ業務ヲ監シ意見ヲ陳シ並ニ商業帳簿及其他会社ノ書類ヲ検閲スルノ権アルモノトス
第百二十四条　業務担当社員又ハ取締役ハ少クトモ年々一回総集会ヲ開ク可シ其他社員四分ノ一ノ申立アルトキハ総社員ヲ招集ス可シ凡集会ヲ開クニハ其目的ト事項トヲ示サヽル可カラス
第百二十五条　各年会ハ事務年度ノ終リタル後直ニ之ヲ開キ前年度ノ業務及ヒ其効果ノ詳明ナル記録並ニ整備シタル貸借対照表ヲ社員ニ示シテ検査認定ヲ請フ可シ其記録及対照表ハ遅クトモ集会ノ十四日前ニ各社員ニ送付ス可シ其認定ス可キト否トハ出席社員ノ多数決ニ依ル可シ
第百二十六条　会社前条記載外ノ事項ニ付キ決議ヲ要スルトキハ其事項ヲ集会ノ当日ヨリ少クトモ十四日以前ニ各社員ニ通知ス可シ其多数決ハ総社員過半数ノ出席ニ於テ為シタルモノニシテ其後十四日ヲ過キ再ヒ集会ヲ開キ其出席人員ノ多数ニ依リ認定セラレタルモノニ限リ各社員ニ対シ効力アルモノトス
第百二十七条　供資ニ対スル利足又ハ益金ハ損失ニ依テ供資ニ減額アル間ハ之ヲ計算スルコトヲ得ス又何レノ社員ヘモ払渡スコトアル可カラス此規定ト牴触スル会社契約ノ条款又ハ決議ハ無効トス然レトモ既ニ正当ニ払渡シタル利足又ハ益金ハ爾後ノ損失ヲ補フ為メニ其返還ヲ要求スルコトヲ得ス
第百二十八条　社員三名ヲ超ユル会社ニ在テハ社員四分三ノ多数ニ依テ会社契約ノ変更ヲ決議スルコトヲ得可シ此ノ場合ニ於テハ不同意ノ社員ハ仮令反対ノ契約条款アルモ直ニ退去スルノ権アルモノトス
第五款　株式会社
第一節　総則
第百二十九条　七人ヨリ少カラサル商社ニシテ其資本ヲ一定平等ノ額ニ分チ移転シ得可キモノ（株券）トシ其加入者（株主）商社ヲ代表セサルモノヲ株式会社ト為ス
第百三十条　株式会社ハ商ヒノ取引ヲ以テ目的トセスト雖トモ商社ト視做ス可シ
第百三十一条　株式会社ノ負債ニ対シ第百七十九条ヲ適用スルモノヽ外会社財産ノミ之ニ当ルモノトス
第二節　株式会社ノ発起及設立
第百三十二条　株式会社ハ四人ヨリ少カラサル人員ニ非サレハ発起スルコトヲ得ス
第百三十三条　発起人ハ会社ノ起業目論見書及仮定款ヲ立案シテ各自之ニ署名ス可シ其署名ハ裁判所又ハ公証人ノ公証ヲ受ク可シ此仮定款ハ本条例ノ規定ト矛盾スルコトヲ得ス
第百三十四条　起業目論見書ニハ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一　社名
二　会社ノ住所
三　起業ノ目的及理由
四　株式会社ナル事
五　会社資本ノ総額並ニ総株数及一株ノ金額
六　会社資本使用ノ概算
七　発起人ノ氏名住所及各発起人ニ於テ引受ク可キ株数
八　株主記名ノ際直チニ各株ニ付払ハシム可キ金額アルトキハ其金額
九　裁判所又ハ公証人ノ公証ヲ受ケタル発起人ノ署名書
第百三十五条　株式会社ハ地方庁ヲ経由シテ起業目論見書及仮定款ヲ主務ノ省ニ差出シテ其発起ノ認可（第十一条）ヲ請フ可シ
第百三十六条　第百三十五条ノ認可ヲ得タルトキハ起業目論見書ヲ公告シテ株主ヲ募集スルコトヲ得可シ其公告中ニハ第一法律ニ従ヒ発起ノ認可ヲ得タル旨及認可ノ年月日第二各記名者ニ仮定款ヲ展閲セシメ又ハ請求ニ依リテ交付ス可キ旨ヲ書加フ可シ
第百三十七条　株主記名ノ時ハ自己ノ氏名及其引受クル株数ヲ自ラ記入ス可シ
記名ハ委任状ヲ与ヘタル代理者ヲ以テスルモ妨ナシ其代理者ハ委任者ノ氏名ト自己ノ氏名トヲ記入ス可シ
各記名者ハ少ナクモ一株ヲ引受ケサル可カラス
第百三十八条　記名ヲナシタル時ハ会社設立ニ至リ其株主トナリ定款ニ従ヒ各株ニ対スル払込ノ義務ヲ負担シタルモノトス
各株ニ付前以テ払フ可キ金額ハ会社設置地ノ裁判所ニ差出シ会社ノ登記公告後マテ同裁判所ニ預リ置ク可シ
第百三十九条　総株記名ノ後ニ至リ会社設立ニ着手スルコトヲ得可シ
第百四十条　会社設立ニ就テノ要件左ノ如シ
一　太政官ノ免許（第十一条）
二　総会ニ於テ定款ノ認可ヲ受クル事
三　会社ノ登記
四　会社ノ公告
第百四十一条　太政官ノ免許ヲ請フ願書ニハ左ノ書類ヲ添フ可シ
一　会社ノ起業目論見書及仮定款
二　総株主記名簿ノ公証アル謄写
三　各株ニ付前以テ払入レタル金額ヲ裁判所ニ預ケタル証（第百三十四条ノ八）
四　起業ノ国家又ハ公衆ノ利益ニ補ヒアルコト及起業ニ関スル特別ノ法律規則ニ従テ施行ス可キ方法ノ詳述書
五　発起ノ認可書（第百三十五条）
第百四十二条　太政官ヨリ免許ヲ与ヘサルトキ又ハ其他会社ノ設立ニ至ラサルトキハ株主ノ記名ハ無効ニ帰ス若シ既ニ払込タル金額アルトキハ速ニ之ヲ本人ヘ償還ス可シ
第百四十三条　太政官ヨリ免許ヲ得タルトキハ会社ノ定款確定ノ為メニ第一総会ヲ開ク可シ定款ハ免許ニ付テノ条件ニ牴触ス可カラサルモノニシテ総記名者四分ノ三以上総株金半額以上ニ当ル者ノ承認ヲ以テ確定スルモノトス
第百四十四条　第一総会ニ於テハ前条議事ノ外第一ニ取締役ヲ撰挙シ又検査役ヲ要スルトキハ之ヲ撰挙シ第二ニ第百五十二条ニ掲ケタル契約及出費承認ノコトヲ議決シ第三ニ株主金円ニアラサル物件ヲ会社財産ニ差入レ株券又ハ其他ノ代償ヲ受クルトキハ其物件ノ価額ヲ議決ス可シ但詐偽アリトスルトキハ第二第三ノ決議ニ対シ異議ヲ申述フルコトヲ得
第百四十五条　会社定款確定シタル後ハ再ヒ之ヲ太政官ニ差出ス可シ然ル後正式ノ免許証書ヲ下附スルモノトス
第百四十六条　会社定款確定シタルトキハ株主一株ニ付少ナクモ百分ノ二十五ノ金額ヲ速ニ会社ニ払入ルヽノ義務アリ其払入レノ時ハ嚮キニ払込タル金額アルトキハ之レヲ差引ク可シ
其払入レ前ニ於テ会社ハ登記ヲ受クルコトヲ得ス其以前ノ登記ハ無効トス
第百四十七条　会社其登記ヲ受ルニハ左ノ書類ヲ差出ス可シ
一　会社ノ起業目論見書及定款
二　太政官ノ免許証書
三　株金百分ノ二十五以上払入レタルノ証
四　各株主ノ氏名及其引受ケタル株数ヲ記載シタル名簿
五　取締役ノ氏名住所
六　開業ノ年月日
右ノ登記ヲナシタル時ハ其証書ヲ下付ス可シ
第百四十八条　登記後速ニ公告ヲナス可シ其公告中ニハ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一　会社ノ社名住所及其目的
二　株式会社ナル事
三　会社資本ノ総額及総株数並ニ一株ノ金額
四　各株ニ付払入レタル金額
五　取締役ノ氏名住所
六　太政官ノ免許証書ノ年月日
七　開業ノ年月日
第百四十九条　株式会社支店ヲ設置スルトキハ其支店モ亦設置地方ノ商業登録簿ニ登記シ其地方ニ公告ス可シ
第百五十条　登記及公告ヲ為サヽル前ニ開業スルコトヲ得ス又免許後一年以内ニ登記公告ヲ為サヽルトキハ其免許ハ無効トス第四十二条ノ規定ハ株式会社ニモ亦適用ス可シ
第百五十一条　会社登記以前ニ会社ノ為メニナシタル負債ニシテ第一総会ニ於テ承認ヲ得タルモノアリテ会社ノ登記済マサルトキハ其負債ニ対シ発起人取締役及株主全財産ヲ以テ連帯ノ義務ヲ負フモノトス
第百五十二条　発起人ハ第一総会以前ノ契約及出費ニシテ第一総会ノ承認ヲ得サルモノニ対シテハ全財産ヲ以テ連帯ノ責任ヲ負ハサル可カラス
第三節　社名及社印
第百五十三条　株式会社ハ登記及公告ニ依テ設立シタルモノト認ム可シ此時ヨリ会社ハ社名ヲ唱ヘ社印ヲ用ヒ契約ヲ結ヒ各種ノ財産ヲ有スル権アルモノトス
第百五十四条　株式会社ノ社名ニハ株主ノ氏名ヲ用ユルコトヲ得ス且該社名ニハ必ス株式会社ノ語ヲ加フ可シ
第四節　株主名簿
第百五十五条　株式会社ハ株主名簿ヲ設ケ左ノ件々ヲ記載ス可シ
一　各株主ノ氏名住所
二　各株主所有ノ株数及其番号
三　各株ニ就テ既ニ払込タル金額
四　各株主入社ノ年月日
五　各株主退社ノ年月日
第百五十六条　名簿ハ社店ニ於テ通常ノ業務時間中各株主及他人ニ展閲ヲ許ス可シ
第百五十七条　会社正当ノ理由ナクシテ名簿中株主ノ氏名ヲ削除シ若クハ記入セス又ハ株主ニ非サル者ノ氏名ヲ記入シタルトキハ之カ為ニ設ケタル罰則ニ拘ハラス裁判上ノ処分ヲ求ムルコトヲ得可シ
第百五十八条　会社ハ毎年ノ第一通常総会後二十日以内ニ株主名簿ヲ商事裁判所ニ呈示ス可シ
第五節　株券
第百五十九条　一株ノ金額ハ弐拾円ヲ下ル可カラス会社資本拾万円以上ナルトキハ百円ヲ下ル可カラス
第百六十条　株券ニハ其金額、発行ノ年月日、番号及社名ヲ掲ケ社印ヲ捺シ株主ノ氏名ヲ記ス可シ
第百六十一条　株式ハ分割スルヲ得ス又合併スルヲ得ス
数人株券ニ対スル共同所有権ヲ得タルトキハ会社ハ其中ノ株券ヲ現有スル者ヲ以テ其専有者ト視做スコトヲ得可シ
第百六十二条　株金ノ払込全額ニ充タサル間ハ会社ハ仮株券ノミヲ交付スルコトヲ得全額完納ニ至リ之ヲ本株券ト交換ス可シ
第百六十三条　仮株券及本株券トモ会社ノ登記以前ニ之ヲ交付スルコトヲ得ス
第百六十四条　株金額ノ四分一以上ヲ払込サル前ニ於テハ請取証書、株式又ハ利札ノ譲渡シ売渡シヲ無効トス
有効ナル譲渡売渡ノ時ト雖トモ其譲渡人又ハ売渡人ハ常ニ会社ニ対シテ株金ノ半額ニ充ツル迄払込ノ義務ヲ免カレサルモノトス
第百六十五条　株券ノ譲渡又ハ売渡ハ会社ノ承諾ヲ得其譲受人又ハ買受人ノ氏名ヲ株券及株主名簿ニ記載スルマテハ無効トス
第百六十六条　会社ハ名簿及計算整理ノ為メニ年々公告ヲ以テ十五日ヲ踰ヘサル日数間株券ノ譲渡売渡ヲ停止スルコトヲ得可シ
第百六十七条　株金ノ払込全額ニ充タサル間ハ退社シタル株主ハ会社ノ負債ニ対シ其残額ニ至ルマテノ義務ヲ免カレサルモノトス
第百六十八条　株式ノ所有権ニ就キ数人間又ハ一人若クハ数人ト会社トノ間ニ争論ノ起ルトキハ裁判上ノ判決ヲ以テ之ヲ決ス可シ
第百六十九条　払込タル株金額及其払込ノ為ニ得タル会社財産中ノ持分ハ会社解散前ニ於テ其払戻ヲ要求スルコトヲ得ス
第六節　取締役及検査役
第百七十条　総会ハ株主中ヨリ三名ヨリ少カラサル取締役ヲ遅クモ其執務ノ一ケ月前ニ選挙ス可シ又取締役ハ同役中ヨリ業務ヲ担当スル者一名又ハ数名ヲ選定スルヲ得可シ其他会社ヲ代表スル者及役員ヲ選定スルト否トハ会社ノ便宜ニ任ス
第百七十一条　取締役ノ選挙政府ノ認可ヲ受ク可キトキハ其認可ヲ受タル後ニ非サレハ職務ヲ執行スルコトヲ得ス
第百七十二条　取締役ノ執務マテハ会社ノ発起人ニ於テ其職務ヲ担当スルモノトス
第百七十三条　会社ハ特ニ取締役ノ所業ヲ以テ直接ニ権利ヲ得義務ヲ負フモノトス
取締役ノ代表権執行ノ方法ハ会社ノ定款ニ於テ之ヲ定ム可シ
取締役ノ代表権ヲ制限スルモ善意ノ第三者ニ対シテハ無効ト為ス
第百七十四条　株主ノ取締役ニ選ハルヽ為メ所有ス可キ株数ヲ会社定款ニ於テ定ム可シ取締役在任中ハ其株式ノ譲渡、売渡、質入、書入、其他株式ノ利益ヲ他人ニ移ス可キ処置ヲ為スコトヲ得ス
第百七十五条　取締役ノ任期ハ三ケ年ニ越ユ可カラス但再選スルハ妨ナシ
第百七十六条　取締役其職務ノ為メ給料又ハ其他ノ報酬ヲ受ク可キトキハ定款又ハ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ確定ス可シ
第百七十七条　会社ハ何時ニテモ取締役ヲ解任スルコトヲ得可シ其解任セラレタル者ハ之カ為メ会社ニ対シテ賠償ヲ要求スルコトヲ得ス
第百七十八条　取締役ハ其職掌義務ヲ尽スコト並ニ定款及会社ノ決議ヲ確守スルコトニ就キ会社ニ対シ全財産ヲ以テ責任ヲ負フモノトス
第百七十九条　会社ノ負債ニ対スル取締役ノ責任ハ各株主ト異ナルコトナシ然レトモ其在任中ニ生シタル負債ニ対シ解任後尚一年間全財産ヲ以テ連帯責任ヲ負フ可キコトヲ定款ニ於テ定ムルコトヲ得可シ
第百八十条　取締役更迭スル毎ニ之レヲ商業登録簿ニ登記シ且ツ公告ス可シ新任取締役ハ其登記公告前ニ職務ヲ執行スルコトヲ得ス
第百八十一条　定款ニ預定シタルトキ或ハ会社ニ於テ便宜ト認ムルトキハ株主中ヨリ三名乃至五名ノ検査役ヲ撰挙ス可シ其任期ハ二ケ年トス満期後再選スルモ妨ナシ
第百八十二条　検査役ハ左ノ件々ヲ担当ス可シ
一　会社ノ発起及設立ノ際法律ニ定メタル条款ヲ厳密ニ遵守シタルヤ並ニ発起人ノ業務取扱法律並ニ定款ノ箇条及会社ノ決議ニ適合スルヤヲ監視シ且総テ其取扱上ノ過誤不整ヲ検査スル事
二　毎年ノ精算帳、貸借対照表及利足並ニ分配金ノ配当案ヲ検査シ株主総会ニ其報告ヲ為ス事
三　会社ノ利害上ニ於テ必要又ハ有益ト認ムルトキハ総会ヲ招集スル事
第百八十三条　検査役ノ執労ニ対シ定款又ハ総会ノ決議ヲ以テ年々報労金ヲ与フルコトヲ得可シ
第百八十四条　検査役ハ担当ノ事務ヲ分掌スルコトヲ得可シト雖トモ取締役又ハ会社ニ対シテハ共同一体ナルモノトス
検査役中協議ノ調ハサルトキハ少数ノ意見及申立ヲ多数ノ意見及申立ト共ニ必ス提出ス可シ
第百八十五条　検査役ハ何時ニテモ会社業務ノ実況ヲ尋問シ会社ノ商業帳簿及其他ノ書類ヲ展閲シ会社ノ金庫及其全財産ノ現況ヲ検査スルノ権アルモノトス
第百八十六条　検査役ハ取締役ノ業務取扱及其結果ニ就テ責任ヲ有セス然レトモ自己ノ義務ニ背キ会社又ハ其債主ニ加ヘタル損害ニ就テハ其責ニ任セサル可カラス
第七節　総会
第百八十七条　株主総会ハ取締役検査役其他本条例ニ従ヒ招集ノ権ヲ有スル者之ヲ招集ス可シ
第百八十八条　招集ヲ為スニハ会日ヨリ遅クトモ十四日前ニ会議ノ目的ト事項トヲ報知シ且定款ニ定メタル方法ニ依ル可シ
第百八十九条　通常総会ハ毎年少クトモ一度定款ニ定メタル時期ニ於テ之ヲ開キ前期ノ計算書、此較表、業務ノ結果及分配金ノ配当案ヲ株主ニ報告シ且其諸件ニ関スル総会ノ決議ヲ取ルモノトス
検査役ノ報告書ハ取締役ノ提出スル書類ト共ニ之ヲ総会ニ差出ス可シ
第百九十条　臨時総会ハ第百八十七条ニ記載シタル者何時ニテモ之ヲ招集スルヲ得可シ其他総株金ノ少クモ五分一ニ当ル株主ヨリ事由ヲ挙ケテ申立ルトキハ之ヲ招集セサル可カラス
第百九十一条　総会ニ於テハ定款又ハ本条例ニ定メタル員数ノ株主出席スルニアラサレハ決議スルコトヲ得ス
此等ノ規定ナキ場合ニ於テハ総株金ノ四分一ニ当ル員数以上ノ株主自己或ハ代理ノ出席シタル時ニ限リ決議スルコトヲ得
第百九十二条　左ノ件々ニ就キ有効ノ決議ヲ為スニハ少クモ総株金ノ半額ニ当ル株主ノ出席ヲ必要トス
一　社名ノ変更
二　会社住所ノ移転及支店ノ設置
三　記名株券ヲ無記名株券ニ変更スル事
四　総株金額又ハ各株金額ノ増減
五　定款ノ変更
六　定款ニ定メタル期限前ニ会社ヲ解散シ其他任意ノ決議ニ依テ之ヲ解散スル事
第百九十三条　総会ニ於テハ議長ヲ選挙シ議事ハ通例出席人ノ過半数ニ決スルモノトス但シ第百九十二条ノ場合ニ於テハ四分三ノ多数ニ決ス可シ
第百九十四条　適則ニ招集シタル総会ニ於テ定款又ハ本条例ニ定メタル員数ノ株主出席セサルトキ其出席人員中ノ多数（第百九十三条）ニ依テ為シタル決議ハ爾後三週日ヲ過キ適則ニ招集シタル第二回ノ出席株主過半数ノ認可ヲ以テ其効力ヲ得ルモノトス
第百九十五条　株主ノ参決権ハ一株毎ニ一個ヲ以テ通則ト為ス然レトモ十株以上ヲ有スル株主ノ参決権ハ定款ニ於テ制限スルコトヲ得可シ
第八節　社名ノ変更及会社住所ノ移転
第百九十六条　社名ノ変更及会社住所ノ移転ハ総会ニ於テ完全ノ理由ヲ以テ之ヲ決議（第百九十二条）スルコトヲ得可シト雖トモ此決議ハ裁判上ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス其許可ハ会社ノ決議ヲ公告シ債主又ハ其他ノ関係人ニ於テ異議アルトキハ之ヲ申出可キコトヲ示シ異議スル者ナキカ或ハ其異議ノ不理ト決シタル後ニアラサレハ之ヲ与ルコトヲ得ス
第百九十七条　社名ノ変更ハ許可ヲ得タル後其許可ヲ得タル旨ヲ付シ之ヲ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其登記及公告前ニ在テハ新社名ヲ用フルコトヲ得ス
第百九十八条　住所ノ移転ハ許可ヲ得タル後前条ニ同シク従前ノ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其新住地ノ裁判所従前ト異ナルトキハ新設ノ会社ト同様ノ手続（第百四十七条以下）ヲ以テ登記及公告ヲ為スヘシ其登記及公告以前ニハ新住地ニ於テ会社ノ営業ヲ始ルヲ得ス又此登記ニモ第百九十六条ノ許可ヲ得タル旨ヲ附ス可シ
第百九十九条　第百九十六条ニ記載シタル決議ノ為ニ会社ニ存立スル権利義務ハ決シテ変更セサルモノトス
第九節　記名株券ヲ無記名株券ニ変更スル事
第二百条　総株金払込ノ済タル後総会ハ其記名株券ヲ無記名株券ニ変更スルノ決議ヲ為スヲ得可シ（第百九十二条）
第二百一条　前条ノ決議ハ第百九十二条乃至第百九十四条ノ規定ニ従フタル旨ヲ附シテ十日以内ニ商業登録簿ニ登記シ且公告ス可シ
第二百二条　株主ノ記名ニ関スル第百六十条ノ規則及第百五十五条乃至第百五十八条第百六十五条第百六十六条ノ規則ハ前条登記ノ日ヨリ適用セサルモノトス
第二百三条　無記名株券ハ自由ニ譲渡売渡シ又ハ遺物ト為スコトヲ得可キ動産トス会社ハ預メ告知ヲ得タル場合ノ外現有者ノ所有権原ヲ取糾スノ義務ナキモノトス
第二百四条　紛失若クハ廃滅シタル無記名株券ハ之ヲ無効トシ新券ヲ交付スルコトヲ得可シ
第十節　総資本額又ハ株金額ノ増減
第二百五条　会社ハ定款ニ預定シタルトキ又ハ総会ノ決議（第百九十二条）ニ依リ総資本額又ハ株金額ヲ増減スルコトヲ得可シ然レトモ其増減ハ裁判所ノ許可ヲ得タル上之ヲ商業登録簿ニ登記シ及公告シタル後ニアラサレハ之ヲ為スコトヲ得ス
其資本ヲ増加スルニハ株金ヲ増額シ或ハ新株券又ハ負債証券ヲ発行スルコトヲ得ヘシ
第二百六条　総資本ハ其四分一以下ニ減少スルコトヲ得ス
第二百七条　総資本又ハ株金額ヲ減少セント欲スルトキハ其意見ヲ各債主ニ通知シテ其承諾ヲ求メサル可ラス
第二百八条　会社前条ノ手続ヲ為シタル後裁判所ノ許可ヲ要ムル為メ承諾シタルト否トヲ書加ヘタル債主ノ全名簿ヲ添ヘ願書ヲ差出ス可シ裁判所ハ之ニ対シ異議アル者ハ必ス六十日以内ニ申出可キ旨ヲ公告ス可シ
第二百九条　承諾セサル債主アルトキハ其要求ヲ満足セシムルカ或ハ之ニ対シ抵保ヲ備ルニ非サレハ其異議ヲ消除スルコトヲ得ス会社其要求ヲ拒ムトキハ裁判所ハ之ヲ判決シ且抵保ノ額ヲ裁定ス可シ
第二百十条　総債主ノ異議ヲ消除シタル後裁判所ヨリ減額ノ許可ヲ与フ可シ
第二百十一条　会社ノ債主中過失ニ非スシテ減額ノ事ヲ知ラサルカ為メニ異議ヲ申立サリシ者ニ対シテハ減額ノトキ株主名簿（第百五十五条）ニ記入シアリタル株主其債主ノ之ヲ聞知シ得タル日ヨリ起算シテ一ケ年間減少セシ額ニ至ル迄ノ責任ヲ自己ニ負ハサル可ラス
第十一節　定款ノ変更
第二百十二条　第八節第九節及第十節ニ掲ケタル事項ノ外他ノ事項ニ付会社ノ定款ヲ変更スルトキハ其変更ノ件ヲ直ニ商業登録薄ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其登記公告前ニ於テハ効力ヲ有セサルモノトス
第十二節　株金払込
第二百十三条　各株主ハ会社ヨリ定款ニ従テ要求スルニ応シ所有ノ株券ニ係ル金額ヲ払込ムノ義務アルモノトス但会社ノ承諾（第百四十四条）ヲ得金円ニアラサル供資ヲ以テ株券ヲ受ル者ハ此限ニ在ラス
第二百十四条　払込ノ要求ハ取締役ヨリ払込期限ト不払ニ依テ蒙ルヘキ損害トヲ記載セル公告ヲ以テ為ス可キモノトス
第二百十五条　株主期限ニ払込ヲ為サヽルトキハ百分ノ七ノ延滞利足ト其延滞ニ由テ生シタル費用トヲ払フノ義務アルモノトス取締役ヨリ期限ヲ定メ本人ニ宛テ催促ヲ為スモ株主尚ホ払込サルトキハ其株式ヲ没収シ会社ノ所有ニ帰スルコトヲ得可シ
第二百十六条　株券ヲ没収セラルヽト雖トモ其旧所有主ハ其時マテニ催促ヲ受ケテ払込サル一切ノ金額ハ猶ホ会社ニ対シテ払込ムノ義務ヲ負フモノトス
第十三節　会社ノ義務
第二百十七条　会社ハ株主ニ株金ノ全額又ハ幾分ヲ払戻スコトヲ得ス又株主ニ在テモ之ヲ会社ヨリ取戻スコトヲ得ス若シ取戻シタルトキハ其半額ヲ罰金トシテ会社ニ払フ可シ
払戻シ又ハ取戻シタル金額ハ会社又ハ直接ニ会社ノ債主之ヲ償還セシムルヲ得
第二百十八条　会社ハ自己ノ株券ヲ所有ト為スコトヲ得ス又質ニ取ルコトヲ得ス没収シタル株券及ヒ負債弁償ノ為ニ会社ニ交付セラレ若クハ其引受トナリタル株券ハ四週日以内ニ株式取引所ニ於テ之ヲ売却シ其代金ヲ会社ノ金庫ニ納ム可シ
第二百十九条　株式会社ハ半年毎ニ総勘定ヲ為シ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ製シテ検査役ノ検査ヲ受ケ且総会ノ承諾ヲ経タル後之ヲ公告スルノ義務アルモノトス其公告書ニハ取締役及検査役之ニ署名ス可シ
第二百二十条　利足及配当金ハ会社資本ノ損失ニ依テ減少セサル時ニ非レハ之ヲ計算シ又ハ払渡スコトヲ得ス益金ハ先ツ減少シタル資本ノ補填ニ充ツ可シ
第二百二十一条　利足又ハ配当金ヲ払渡スニ先チ準備金会社資本ノ四分一ニ至ル迄ハ毎年益金ノ内少クトモ二十分一ヲ積置ク可シ
第二百二十二条　第二百十九条乃至第二百二十一条ノ規則ニ依ラスシテ払出シタル利足及配当金ハ其払出後三年間ハ何時ニテモ之ヲ償還セシムルコトヲ得可シ
第二百二十三条　利足及配当金ハ各株式ニ就テ払込タル金額ニ応シ平均ニ各株主ニ払渡ス可シ
第二百二十四条　会社ハ其本店及各支店ニ株主名簿、起業目論見書、定款、免許証書、登記証書、総会ノ決議書、毎半年ノ総勘定書並ニ貸借対照表及書入契約アル債主ノ名簿ヲ備ヘ置第二百二十五条ノ場合ノ外通常ノ業務取扱時間ハ望ノ者ニ其展閲ヲ許ス可シ但株主ニ非サル者ニハ弐拾銭ヲ超ヘサル手数料ヲ出サシムルコトヲ得ヘシ
第二百二十五条　諸帳簿調査ノ為メ半年毎ニ一度三十日ヲ超ヘサル間前条ニ記載シタル展閲ヲ停止スルコトヲ得可シ其停止ノ旨ハ社店ノ戸外ニ掲示ス可シ
第十四節　会社ノ検査
第二百二十六条　相当ノ理由ヲ以テ少クトモ総株金ノ五分一ニ当ル株主ノ申立アルトキハ会社住所地方ノ裁判所ハ官吏一名又ハ数名ヲ派遣シテ会社ノ業務及財産ノ実況ヲ検査セシムルコトアル可シ
第二百二十七条　前条ノ検査官吏ハ会社ノ帳簿及一切ノ書類ヲ検閲シ取締役其他ノ役員ヲシテ誓ヲ為シテ供述セシムルノ権アルモノトス
第二百二十八条　検査官吏ハ検査ノ次第及役員ノ供述ヲ筆記書トナシ其検査ヲ命シタル裁判所ニ差出シ且其写ヲ会社ニ下付ス可シ株主又ハ其他ノ人ニテモ望ノ者ニハ之ヲ下付スルコトヲ得可シ
第二百二十九条　主務ノ省ハ何時ニテモ其職権ヲ以テ第二百二十七条第二百二十八条ニ記載シタル検査ヲ為スコトヲ得可シ
第十五節　取締役及検査役ニ対スル訴訟
第二百三十条　総会ハ検査役又ハ特ニ選任シタル代理委員ヲ以テ取締役又ハ場合ニ依リ検査役ニ対シ訴訟ヲ起スコトヲ得可シ
第二百三十一条　会社資本ノ少クモ二十分一ニ当ル株主ハ又代理委員ヲ選任シテ取締役又ハ検査役ニ係ル訴訟ノ原告又ハ被告タラシムルコトヲ得可シ但各株主ハ自己ノ名義ヲ以テスルカ又ハ間入者トナリテ裁判所ニ於テ其権利ヲ保衛スルニ妨アルコトナシ
第十六節　会社ノ解散
第二百三十二条　株式会社ハ左ノ事項ニ依テ解散スルモノトス
一　定款ニ規定シタル場合
二　総会任意ノ決議
三　株主ノ員数七名ヨリ少数ニ減シタル事
四　会社資本四分一ヨリ少額ニ減シタル事
五　破産
六　裁判上ノ処分
第二百三十三条　会社不法ノ事業ヲ営ミ又ハ其業務上公ケノ秩序及風教ヲ紊乱スルトキハ裁判所ハ官庁ノ申立ニ依リ又ハ其職権ヲ以テ解散セシムルコトアル可シ
第二百三十四条　会社ノ解散ハ何レノ場合ニ在テモ総会ノ決議ヲ取ル可シ其決議ハ十日以内ニ各株主ニ報知シ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ公告スヘシ会社此決議ヲ為サヽルトキハ債主又ハ株主ノ申立ニ依リ又ハ裁判所ノ職権ニ依リ裁判上ノ処分ヲ以テ此決議ニ代フルコトヲ得可シ然ル時ハ其処分ヲ登記公告シ且株主ニ報知ス可シ
第二百三十五条　会社解散ス可キ場合ニ於テ取締役第二百三十四条ニ記載シタル決議ヲ為サンカ為メ速ニ総会ヲ招集スルコトヲ怠リ或ハ其決議ヲ株主ニ報知スルコトヲ怠リ或ハ登記スルコトヲ怠ルトキハ其怠慢ノ為メニ会社又ハ第三者ニ生セシメタル損害ニ就キ自己ノ全財産ヲ以テ責任ヲ負フ者トス
第二百三十六条　前条ノ場合ニ至リタルトキハ仕懸リノ取引ヲ完結シ或ハ在来ノ会社義務ヲ尽スノ外直ニ業務ヲ停止ス可キモノトス
取締役ニ於テ仍ホ営業ヲ保続スルコトアルトキハ之ニ対シテハ自己ノ全財産ヲ以テ責任ヲ負ハサル可カラス
第二百三十七条　第二百三十二条第三項ノ場合ニ於テ会社其営業ヲ保続シ六ケ月ヲ超ユルトキハ株主ハ其間ニ生シタル会社ノ総テノ負債ニ対シテ自己ノ全財産ヲ以テ連帯ノ責任ヲ負ハサル可カラス然レトモ七名未満ニ減少セシヲ知ラサルコトヲ証明スル株主ハ此責任ヲ免カルヽモノトス
第二百三十八条　第二百三十四条ニ記載シタル総会ニ於テ解散ノ決議ヲ為シタル後ハ直ニ清算人一名又ハ数名ヲ選挙ス可シ若シ之ヲ選挙セサル時及第二百三十二条第五項及六項ノ場合ニ於テハ会社住所地方ノ裁判所ニ於テ清算人又ハ破産管財人ヲ任ス可シ
第二百三十九条　清算人ノ氏名ハ遅滞ナク裁判所ニ届出テ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ
第二百四十条　清算人ノ氏名ヲ商業登録簿ニ登記シタルトキハ即チ取締役ノ代表権ハ清算人ニ移ルモノトス但取締役ハ清算人ノ請求アルトキハ清算事務ニ就テ之ヲ補助スルノ義務アルモノトス
第二百四十一条　解散及清算ノ費用ハ他ノ支払ニ先チ現在ノ会社財産ヨリ支出ス可シ
第二百四十二条　第二百三十二条第六項ヲ除クノ外株式会社解散ノ場合ニ於テハ取締役ヨリ其旨ヲ裁判所ニ届出可シ裁判所ハ解散及清算ノ実況ヲ監視スルノ権アルモノトス
第二百四十三条　解散決議（第二百三十四条）ヲ登記シタル後ハ総テ清算ノ為ニスルニ非サル財産処分及総テ株式ノ移転ハ無効ト為ス但特別ノ理由アリテ裁判所ノ許可ヲ得タルモノハ此限ニ在ラス
第十七節　会社ノ清算
第二百四十四条　第百一条乃至第百七条ノ規定ハ株式会社ノ清算ニモ亦適用スルモノトス
第二百四十五条　清算人ニハ其職務執行ニ関シ会社ヨリ訓示ヲ与ヘ又株主若クハ債主ノ申立アルトキハ裁判所ヨリ之ヲ与フルコトヲ得可シ清算人ハ此訓示及法律ノ規定ヲ遵守スルノ責任ヲ負フモノトス
第二百四十六条　至当ノ理由アル債主ノ申立アルトキハ総会又ハ時宜ニ依リ裁判所ヨリ債主ノ利益ヲ監護スル為メニ其代理者一名又ハ数名ヲ清算人ニ参加セシムルコトアルヘシ
第二百四十七条　清算人其事務ヲ執行スルニハ社名ニ清算中ナル語ヲ附記シテ之ヲ用ユ可シ
第二百四十八条　清算人ハ其任ヲ受タルヨリ六十日以内ニ会社ノ負債主及債主ノ全名簿ヲ製シ某期限内ニ負債主ハ其負債ヲ会社ニ弁償シ債主ハ其要求ヲ申込ム可キ旨ヲ広告ヲ以テ催促シ此広告中ニハ債主徒ラニ期限ヲ経過シタル時ハ其要求ヲ清算中ヨリ取除ク可キ旨ヲ附記ス可シ
第二百四十九条　清算人ハ清算ノ為メニ株金ノ未納額ヲ其株主ヨリ徴収スルノ権アルモノトス
第二百五十条　清算人ハ債主トノ示談其他ノ措置及考案ニ就テ何時ニテモ総会ヲ招集スルコトヲ得可シ
総会ノ決議ニ依テ予定シアルカ或ハ総株金五分一以上ニ当ル株主ノ申立アルトキハ総会ヲ招集スルノ義務アルモノトス
第二百五十一条　清算人ハ其所為ニ付総会ニ対シテノミ責任ヲ負フモノトス然レトモ株主各個ノ権利ヲ傷害シタル所為又ハ怠慢アルトキハ清算人ニ対シ株主ハ裁判所ニ訴ヘ其権利ノ認定及損害ノ賠償ヲ要ムルコトヲ得可シ
第二百五十二条　第百三条ニ規定シタル計算書ノ呈示ハ之ヲ総会ニ為ス可キモノトス
第二百五十三条　会社ノ負債ヲ完償シテ残余ノ財産アルトキハ各株主ノ所有株式ニ応シ金円ヲ以テ平等ニ配当ス可シ
株主ハ総会ニ於テ決議シタルトキト雖トモ従前ノ会社ニ代リ又ハ之ヲ保続スヘキ他ノ会社ノ株券或ハ債券ヲ其配当金トシテ請取ル可キ義務ナキモノトス
第二百五十四条　清算結了シタル時ハ清算人ハ総計算書及処務ノ概報ヲ総会ニ差出シ卸責ヲ求ム可シ
第二百五十五条　計算上総会ト清算人トノ間ニ争論ノ起リタルトキハ裁判上ノ判決ヲ受ク可シ
第二百五十六条　卸責ヲ受タル時ハ清算人ハ清算結了ノ旨ヲ商業登録簿ニ登記シ且之ヲ公告ス可シ其公告ニハ清算ニ関シテ会社ニ対シ要求権利アル者ハ三ケ月以内ニ申込ムニ非ラサレハ其効ナキ旨ヲ附記ス可シ右ノ要求アルトキハ仍ホ清算人ニ於テ之ヲ処分スルモノトス
第二百五十七条　清算ノ際会社現在ノ財産会社ノ総債主ニ完償スルニ足ラサルコト出来シタルトキハ清算人ハ破産処分ノ開始ヲ為ス可シ此場合ニ於テ清算人善意ヲ以テ会社ノ債主又ハ株主ニ支払タルモノハ無効トシ其領収者ヨリ之ヲ返還セシムルコトヲ得可シ貸方借方ノ割合如此ヲ査明シタル後支払フタルモノニ就テハ清算人自己ノ全財産ヲ以テ会社債主ニ対シ責任ヲ負フモノトス破産処分開始ノ上申ハ之ヲ広告シ其会社ノ取引先ヘ通知ス可シ
第二百五十八条　総会ノ決議ヲ以テ会社帳簿及書類ノ保存ヲ委託セラレタル者ノ氏名ハ清算人ヨリ裁判所ニ届出ヘシ此届出ヲ為サヽル間ハ清算人其保存ノ責任ヲ負フモノトス
第二百五十九条　清算ノ結了即チ左ノ件々ハ之ヲ清算人ヨリ裁判所ニ届出且三度以上引続キ新聞紙ヲ以テ広告シ並ニ会社ノ取引先ヘ通知ス可シ其広告通知ニハ既ニ結了シ総テ会社株券及債券ハ無効トナリタル旨ヲ明示セサル可ラス
一　支払又ハ示談ニ依リ総債主ニ全部又ハ一部ヲ以テ済方ヲ為ス事
二　会社ノ残余財産配当ノ物件及額ヲ定メ並ニ之ヲ株主ニ配当スル事
三　清算費用ヲ支払ヒ及清算ニ関スル要求ヲ処分スル事
四　総会又ハ裁判上ノ処分ニ依リ総結算ノ卸責ヲ与フル事
五　会社ノ帳簿及書類保存ニ関スル処置ヲ為ス事