朕陸軍各兵科現役士官補充條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年七月九日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
陸軍大臣 伯爵 大山巖
勅令第九十二號
陸軍各兵科現役士官補充條例
第一條 陸軍步、騎、砲、工兵科現役士官ノ補充ハ陸軍出身志願ニシテ才能及學力ヲ有スル者ヲ選ンテ士官候補生ト爲シ各自ノ希望ニ依リ各兵科聯(大)隊ニ配賦シ槪ネ一箇年間必要ノ敎育ヲ與ヘタル後一箇年半士官學校ニ分遣シ卒業ノ上原隊ニ復歸セシメ六箇月以上士官ノ勤務ヲ習得セシメ將校會議ニ於テ可決シタル者ヲ以テス但輜重兵科士官ノ補充ハ他兵科ノ士官ヲ轉科セシム又憲兵科及屯田兵科士官ノ補充ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二條 士官候補生ニ採用シ得ヘキ者ハ左ノ如シ
其一 幼年學校生徒ニシテ敎則卒業終末試驗ニ及第セシ者
其二 一年志願兵又ハ其他ノ者年齡十八年以上二十三年以下ニシテ尋常中學卒業證書ヲ所持スル者又ハ之ト同等ノ學力ヲ有スル者
第三條 每年採用スヘキ士官候補生ノ人員ハ其時々陸軍大臣之ヲ定メ監軍ニ移ス
第四條 士官候補生召募ノ試驗格例ハ每年監軍之ヲ定メ陸軍大臣之ヲ吿達ス
第五條 幼年學校生徒ヲ士官候補生ト爲スニハ將校學校監該生徒ノ人名書ニ考科表及終末試驗ノ成蹟ヲ添ヘ監軍ニ進達ス
第六條 一年志願兵ニシテ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歷書ヲ添ヘ尋常中學卒業證書ヲ所持スル者ハ該證書ノ寫ヲ添ヘ順序ヲ經テ都督師團長ニ差出シ都督師團長ハ各志願者ノ本籍ノ地方長官寄留ノ者ハ其地ノ地方長官ニ照會シ身分、財產、敎育、性質、品行等ニ係ル詳細ノ證明書ヲ得之ヲ願書ニ添ヘ監軍ニ進達ス
第七條 華士族平民ニシテ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歷書ヲ添ヘ尋常中學卒業證書ヲ所持スル者ハ該證書ノ寫ヲ添ヘ本籍ノ地方長官寄留ノ者ハ其地ノ地方長官ニ差出シ地方長官ハ各志願者ノ身分、財產、敎育、性質、品行等詳細之ヲ取調ヘ其證明書ヲ作リ之ヲ願書ニ添ヘ其地所管師團長ニ送付シ師團長ハ之ヲ監軍ニ進達ス
第八條 尋常中學卒業證書ヲ所持セサル志願者ハ本條例第六條又ハ第七條ノ手續ヲ爲シタル後試驗ヲ爲ス之カ爲メ監軍ハ試驗ヲ受クヘキ者ノ人名書ヲ將校學校監ニ下シ將校學校監ハ之ヲ陸軍將校生徒試驗委員ニ下付シ該委員ヲ各師管ニ派遣シテ試驗ヲ施行セシム
第九條 師團長ハ試驗前ニ於テ身體檢査ノ時日ヲ定メ之ヲ其部下各隊及管內ノ陸軍諸官衙竝ニ地方長官ニ通達シ志願者ヲ檢査地ニ召集シ其地所在ノ陸軍醫官ヲシテ身體檢査ヲ爲サシメ合格者ノ人名書ヲ陸軍將校生徒試驗委員到著ノ時交付ス
陸軍將校生徒試驗委員ハ試驗ノ上其成蹟ヲ將校學校監ニ上申シ將校學校監ハ之ヲ監軍ニ進達ス
第十條 監軍ハ本條例第五條乃至第七條ノ書類ト第九條ノ試驗成蹟トニ依リ其士官候補生ニ採用スヘキ者ヲ裁定シ之ニ士官候補生ヲ命シ各兵科聯(大)隊ニ配賦ス但候補生ハ本隊ノ定員外トス
第十一條 一年志願兵ニシテ前條ニ該ル者ハ士官候補生ヲ命スルノ日直チニ退營セシメ更ニ一般候補生ト同時ニ原隊ヘ入隊セシム但時宜ニ依リ他ノ隊ニ配賦スルコトアルヘシ
第十二條 士官候補生ヲ各兵科聯(大)隊ニ配賦スルニハ左ノ四項ヲ顧慮スヘシ
其一 本人ノ希望
其二 軍隊ノ必要
其三 學術優等ノ者ハ各兵科聯(大)隊ニ平等ニ配賦スヘキ事
其四 砲、工兵科聯(大)隊ニ配賦スヘキ者ハ數學優等ナル事
第十三條 士官候補生ハ志願兵トシテ入隊ノ日ヨリ兵籍ニ編入シ陸軍一定ノ規則ニ依リ服役セシム
第十四條 士官候補生ハ士官學校分遣前槪ネ一箇年幼年生徒出身ノ者ハ槪ネ六箇月軍隊ニ在テ下士兵卒ノ勤務雜役ヲ除クヲ習得スルコトヲ要ス
第十五條 士官候補生入隊ノ上ハ聯(大)隊長ハ部下聯(大)隊中ノ某中隊ヲ撰ヒ之ニ編入シ該中隊長ヲシテ訓育ヲ掌リ諸勤務ノ訓練ニ任セシム
第十六條 士官候補生軍事學ノ敎授ハ聯(大)隊長部下大尉若クハ中尉ノ內一名ヲシテ之ニ任セシム
第十七條 聯(大)隊長ハ士官候補生ノ敎育上ニ就テ總テ擔保ノ責ニ任ス
第十八條 士官候補生中幼年生徒出身ノ者ハ入隊後直チニ上等兵ノ階級ニ進メ二箇月ノ後ハ二等軍曹ノ階級ニ六箇月ノ後ハ一等軍曹ノ階級ニ其他ノ者ハ入隊後直チニ一等卒ノ階級ニ進メ六箇月ノ後ハ上等兵ノ階級ニ八箇月ノ後ハ二等軍曹ノ階級ニ一箇年ノ後ハ一等軍曹ノ階級ニ進ムルコトヲ得但各階級ニ於テ本官等下士兵卒ノ上位ニ在ルモノトス
第十九條 士官候補生ノ被服裝具等諸給與ハ本人ノ階級ニ應シ總テ下士兵卒同樣ニシテ官給トス其居室ハ一般下士兵卒ト混同スルコトナク別ニ一室ヲ與ヘ數名ノ候補生ヲ同居セシムヘシ但被服ニハ特別ノ徽章ヲ附シ將校ノ公會等ニ於テハ之ニ列席セシムルコトヲ要ス
第二十條 士官候補生ハ室內其他諸物品ノ掃除及馬具、馬匹等掃拭ノ爲メニハ兵卒ヲ使役スルコトヲ得但馬具、馬匹等ノ掃拭ヲ習得スル爲メニハ自ラ之ヲ爲サシムヘシ
第二十一條 士官候補生諸勤務ノ訓練ヲ終レハ之ニ任シタル中隊長ハ士官候補生諸勤務ヲ習得シタル保證書又軍事學ノ敎授ニ任シタル士官ハ其敎授成蹟ノ報吿書ヲ聯(大)隊長ニ進達シ聯(大)隊長ハ之ヲ審閱シ更ニ敎育ノ完全ナルコトヲ確認シ都督師團長步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申ス都督師團長ハ各兵科ノ連名簿ヲ製シ之ニ聯(大)隊長ヨリ出ス所ノ書類ヲ添ヘ將校學校監ニ送付スヘシ
第二十二條 將校學校監ハ前條ノ書類ニ依リ士官候補生ノ士官學校ニ入校セシムヘキ者ヲ定メ都督師團長ヲ經テ之ヲ命スヘシ
第二十三條 士官候補生士官學校修學ヲ終リ將校試驗ニ及第シ歸隊セシ者ハ曹長ノ階級ニ進メ某中隊ニ在テ士官ノ勤務ヲ習得セシム但其位置ハ曹長ノ上位トス之ヲ見習士官ト云フ
第二十四條 見習士官ノ敎育ハ聯(大)隊長自ラ其責ニ任シ殊ニ諸種ノ演習等精密且著實ニ實施セシメ以テ其學力ヲ實際ニ應用進步セシムルコトヲ務ムヘシ
第二十五條 見習士官ノ刀、刀緖、刀帶、背囊、脚袢等ハ士官ト同一ノモノヲ給ス
第二十六條 見習士官ヲ將校ニ選擧スルニハ聯(大)隊長先ツ中隊長ヨリ本人ノ敎育完全ニシテ將校タルヲ得ヘキ保證書ヲ得尙ホ聯(大)隊長モ亦自ラ是認シタル後始メテ聯(大)隊ノ將校會議ニ付ス
第二十七條 將校會議ハ見習士官ヲ將校ト爲スノ可否ヲ議決スル所トス故ニ各將校ハ可否ノ答ヲ自ラ選擧報吿書ニ記入シ自己ノ姓名ヲ署スヘシ
第二十八條 將校會議ニ於テ將校ノ答皆可ナル者ハ聯(大)隊長ハ其選擧報吿書ヲ添ヘ少尉ノ資格ヲ備フルコトヲ都督師團長步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申ス都督師團長ハ之ヲ監軍ニ進達シ監軍ハ之ヲ陸軍大臣ニ移ス
若シ可答多數ナルモ幾分ノ否答アル者ハ其理由ヲ選擧報吿書ニ記入シテ上申スルコト前項ニ同シ
之ニ反シ否答多數ナル者ハ否決ノ報吿書ヲ上申ス但其手續ハ本條例第三十二條ニ依ル
第二十九條 士官候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若クハ疾病ノ爲メ士官學校ヘ分遣シ得サル者又ハ士官學校條例第二十三條其一其四ニ據リ退校歸隊セシ者ニシテ尙ホ望ミアル者ハ一囘限リ次ノ入校期マテ所屬隊ニ止マラシムルコトヲ得但聯(大)隊長ハ其事由ヲ悉シ都督師團長步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申シ其認可ヲ經ヘシ都督師團長ハ狀ヲ具シ監軍ニ申報ス監軍ハ之ヲ陸軍大臣ニ移ス
第三十條 前條ニ該ル者ノ士官學校入校手續ハ本條例第二十一條及第二十二條ニ依ル
第三十一條 士官候補生ハ情願ヲ以テ之ヲ免セサルモノトス
第三十二條 士官候補生ニシテ左ニ揭クル事項ノ一ニ該ル者アル時ハ聯(大)隊長其事由ヲ悉シテ都督師團長步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申シ都督師團長ハ狀ヲ具シ監軍ニ進達シ監軍之ヲ裁定シ其處分ヲ爲ス
其一 品行不正若クハ軍紀ヲ紊リ又ハ屢〻法則ヲ犯ス者
其二 學力乏シクシテ將校生徒ニ適セサル者
其三 將校タルノ才能ニ乏シキ者
其四 上官ヨリ認メラレテ士官候補生タルヲ得ヘカラサル者
其五 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若クハ疾病ノ爲メ士官學校ヘ分遣シ得サルモノニシテ後來望ミナキ者
其六 士官學校條例第二十三條其一其四ニ依リ退校歸隊シテ後來望ミナキ者
其七 士官學校條例第二十三條其二其三ニ依リ退校歸隊セシ者
其八 將校試驗ヲ受クルヲ得スシテ歸隊セシ者
其九 將校試驗ニ落第シテ歸隊セシ者
其十 本條例第二十三條ノモノニシテ本條其一乃至其四ニ該ル者
其十一 本條例第二十八條ノ第三項ニ該ル者
其十二 疾病若クハ傷痍ニ因リ永久服役ニ堪ヘサル者
第三十三條 前條其一乃至其十一ニ該ル者ハ士官候補生ヲ免シ其階級ニ應シ本官ニ任シ又ハ兵卒ト爲シ豫備役ニ編入シ其十二ニ該ル者ハ士官候補生ヲ免ス
附 則
第三十四條 下士兵卒一年志願兵ニアラサル者及敎導團生徒ハ當分士官候補生ヲ志願スルコトヲ得但其志願手續ハ本條例中一年志願兵ノ例ニ依ル
朕陸軍各兵科現役士官補充条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年七月九日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
陸軍大臣 伯爵 大山巌
勅令第九十二号
陸軍各兵科現役士官補充条例
第一条 陸軍歩、騎、砲、工兵科現役士官ノ補充ハ陸軍出身志願ニシテ才能及学力ヲ有スル者ヲ選ンテ士官候補生ト為シ各自ノ希望ニ依リ各兵科連(大)隊ニ配賦シ概ネ一箇年間必要ノ教育ヲ与ヘタル後一箇年半士官学校ニ分遣シ卒業ノ上原隊ニ復帰セシメ六箇月以上士官ノ勤務ヲ習得セシメ将校会議ニ於テ可決シタル者ヲ以テス但輜重兵科士官ノ補充ハ他兵科ノ士官ヲ転科セシム又憲兵科及屯田兵科士官ノ補充ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二条 士官候補生ニ採用シ得ヘキ者ハ左ノ如シ
其一 幼年学校生徒ニシテ教則卒業終末試験ニ及第セシ者
其二 一年志願兵又ハ其他ノ者年齢十八年以上二十三年以下ニシテ尋常中学卒業証書ヲ所持スル者又ハ之ト同等ノ学力ヲ有スル者
第三条 毎年採用スヘキ士官候補生ノ人員ハ其時々陸軍大臣之ヲ定メ監軍ニ移ス
第四条 士官候補生召募ノ試験格例ハ毎年監軍之ヲ定メ陸軍大臣之ヲ告達ス
第五条 幼年学校生徒ヲ士官候補生ト為スニハ将校学校監該生徒ノ人名書ニ考科表及終末試験ノ成蹟ヲ添ヘ監軍ニ進達ス
第六条 一年志願兵ニシテ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歴書ヲ添ヘ尋常中学卒業証書ヲ所持スル者ハ該証書ノ写ヲ添ヘ順序ヲ経テ都督師団長ニ差出シ都督師団長ハ各志願者ノ本籍ノ地方長官寄留ノ者ハ其地ノ地方長官ニ照会シ身分、財産、教育、性質、品行等ニ係ル詳細ノ証明書ヲ得之ヲ願書ニ添ヘ監軍ニ進達ス
第七条 華士族平民ニシテ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歴書ヲ添ヘ尋常中学卒業証書ヲ所持スル者ハ該証書ノ写ヲ添ヘ本籍ノ地方長官寄留ノ者ハ其地ノ地方長官ニ差出シ地方長官ハ各志願者ノ身分、財産、教育、性質、品行等詳細之ヲ取調ヘ其証明書ヲ作リ之ヲ願書ニ添ヘ其地所管師団長ニ送付シ師団長ハ之ヲ監軍ニ進達ス
第八条 尋常中学卒業証書ヲ所持セサル志願者ハ本条例第六条又ハ第七条ノ手続ヲ為シタル後試験ヲ為ス之カ為メ監軍ハ試験ヲ受クヘキ者ノ人名書ヲ将校学校監ニ下シ将校学校監ハ之ヲ陸軍将校生徒試験委員ニ下付シ該委員ヲ各師管ニ派遣シテ試験ヲ施行セシム
第九条 師団長ハ試験前ニ於テ身体検査ノ時日ヲ定メ之ヲ其部下各隊及管内ノ陸軍諸官衙並ニ地方長官ニ通達シ志願者ヲ検査地ニ召集シ其地所在ノ陸軍医官ヲシテ身体検査ヲ為サシメ合格者ノ人名書ヲ陸軍将校生徒試験委員到著ノ時交付ス
陸軍将校生徒試験委員ハ試験ノ上其成蹟ヲ将校学校監ニ上申シ将校学校監ハ之ヲ監軍ニ進達ス
第十条 監軍ハ本条例第五条乃至第七条ノ書類ト第九条ノ試験成蹟トニ依リ其士官候補生ニ採用スヘキ者ヲ裁定シ之ニ士官候補生ヲ命シ各兵科連(大)隊ニ配賦ス但候補生ハ本隊ノ定員外トス
第十一条 一年志願兵ニシテ前条ニ該ル者ハ士官候補生ヲ命スルノ日直チニ退営セシメ更ニ一般候補生ト同時ニ原隊ヘ入隊セシム但時宜ニ依リ他ノ隊ニ配賦スルコトアルヘシ
第十二条 士官候補生ヲ各兵科連(大)隊ニ配賦スルニハ左ノ四項ヲ顧慮スヘシ
其一 本人ノ希望
其二 軍隊ノ必要
其三 学術優等ノ者ハ各兵科連(大)隊ニ平等ニ配賦スヘキ事
其四 砲、工兵科連(大)隊ニ配賦スヘキ者ハ数学優等ナル事
第十三条 士官候補生ハ志願兵トシテ入隊ノ日ヨリ兵籍ニ編入シ陸軍一定ノ規則ニ依リ服役セシム
第十四条 士官候補生ハ士官学校分遣前概ネ一箇年幼年生徒出身ノ者ハ概ネ六箇月軍隊ニ在テ下士兵卒ノ勤務雑役ヲ除クヲ習得スルコトヲ要ス
第十五条 士官候補生入隊ノ上ハ連(大)隊長ハ部下連(大)隊中ノ某中隊ヲ撰ヒ之ニ編入シ該中隊長ヲシテ訓育ヲ掌リ諸勤務ノ訓練ニ任セシム
第十六条 士官候補生軍事学ノ教授ハ連(大)隊長部下大尉若クハ中尉ノ内一名ヲシテ之ニ任セシム
第十七条 連(大)隊長ハ士官候補生ノ教育上ニ就テ総テ担保ノ責ニ任ス
第十八条 士官候補生中幼年生徒出身ノ者ハ入隊後直チニ上等兵ノ階級ニ進メ二箇月ノ後ハ二等軍曹ノ階級ニ六箇月ノ後ハ一等軍曹ノ階級ニ其他ノ者ハ入隊後直チニ一等卒ノ階級ニ進メ六箇月ノ後ハ上等兵ノ階級ニ八箇月ノ後ハ二等軍曹ノ階級ニ一箇年ノ後ハ一等軍曹ノ階級ニ進ムルコトヲ得但各階級ニ於テ本官等下士兵卒ノ上位ニ在ルモノトス
第十九条 士官候補生ノ被服装具等諸給与ハ本人ノ階級ニ応シ総テ下士兵卒同様ニシテ官給トス其居室ハ一般下士兵卒ト混同スルコトナク別ニ一室ヲ与ヘ数名ノ候補生ヲ同居セシムヘシ但被服ニハ特別ノ徽章ヲ附シ将校ノ公会等ニ於テハ之ニ列席セシムルコトヲ要ス
第二十条 士官候補生ハ室内其他諸物品ノ掃除及馬具、馬匹等掃拭ノ為メニハ兵卒ヲ使役スルコトヲ得但馬具、馬匹等ノ掃拭ヲ習得スル為メニハ自ラ之ヲ為サシムヘシ
第二十一条 士官候補生諸勤務ノ訓練ヲ終レハ之ニ任シタル中隊長ハ士官候補生諸勤務ヲ習得シタル保証書又軍事学ノ教授ニ任シタル士官ハ其教授成蹟ノ報告書ヲ連(大)隊長ニ進達シ連(大)隊長ハ之ヲ審閲シ更ニ教育ノ完全ナルコトヲ確認シ都督師団長歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申ス都督師団長ハ各兵科ノ連名簿ヲ製シ之ニ連(大)隊長ヨリ出ス所ノ書類ヲ添ヘ将校学校監ニ送付スヘシ
第二十二条 将校学校監ハ前条ノ書類ニ依リ士官候補生ノ士官学校ニ入校セシムヘキ者ヲ定メ都督師団長ヲ経テ之ヲ命スヘシ
第二十三条 士官候補生士官学校修学ヲ終リ将校試験ニ及第シ帰隊セシ者ハ曹長ノ階級ニ進メ某中隊ニ在テ士官ノ勤務ヲ習得セシム但其位置ハ曹長ノ上位トス之ヲ見習士官ト云フ
第二十四条 見習士官ノ教育ハ連(大)隊長自ラ其責ニ任シ殊ニ諸種ノ演習等精密且著実ニ実施セシメ以テ其学力ヲ実際ニ応用進歩セシムルコトヲ務ムヘシ
第二十五条 見習士官ノ刀、刀緒、刀帯、背囊、脚袢等ハ士官ト同一ノモノヲ給ス
第二十六条 見習士官ヲ将校ニ選挙スルニハ連(大)隊長先ツ中隊長ヨリ本人ノ教育完全ニシテ将校タルヲ得ヘキ保証書ヲ得尚ホ連(大)隊長モ亦自ラ是認シタル後始メテ連(大)隊ノ将校会議ニ付ス
第二十七条 将校会議ハ見習士官ヲ将校ト為スノ可否ヲ議決スル所トス故ニ各将校ハ可否ノ答ヲ自ラ選挙報告書ニ記入シ自己ノ姓名ヲ署スヘシ
第二十八条 将校会議ニ於テ将校ノ答皆可ナル者ハ連(大)隊長ハ其選挙報告書ヲ添ヘ少尉ノ資格ヲ備フルコトヲ都督師団長歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申ス都督師団長ハ之ヲ監軍ニ進達シ監軍ハ之ヲ陸軍大臣ニ移ス
若シ可答多数ナルモ幾分ノ否答アル者ハ其理由ヲ選挙報告書ニ記入シテ上申スルコト前項ニ同シ
之ニ反シ否答多数ナル者ハ否決ノ報告書ヲ上申ス但其手続ハ本条例第三十二条ニ依ル
第二十九条 士官候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若クハ疾病ノ為メ士官学校ヘ分遣シ得サル者又ハ士官学校条例第二十三条其一其四ニ拠リ退校帰隊セシ者ニシテ尚ホ望ミアル者ハ一回限リ次ノ入校期マテ所属隊ニ止マラシムルコトヲ得但連(大)隊長ハ其事由ヲ悉シ都督師団長歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申シ其認可ヲ経ヘシ都督師団長ハ状ヲ具シ監軍ニ申報ス監軍ハ之ヲ陸軍大臣ニ移ス
第三十条 前条ニ該ル者ノ士官学校入校手続ハ本条例第二十一条及第二十二条ニ依ル
第三十一条 士官候補生ハ情願ヲ以テ之ヲ免セサルモノトス
第三十二条 士官候補生ニシテ左ニ掲クル事項ノ一ニ該ル者アル時ハ連(大)隊長其事由ヲ悉シテ都督師団長歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申シ都督師団長ハ状ヲ具シ監軍ニ進達シ監軍之ヲ裁定シ其処分ヲ為ス
其一 品行不正若クハ軍紀ヲ紊リ又ハ屡々法則ヲ犯ス者
其二 学力乏シクシテ将校生徒ニ適セサル者
其三 将校タルノ才能ニ乏シキ者
其四 上官ヨリ認メラレテ士官候補生タルヲ得ヘカラサル者
其五 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若クハ疾病ノ為メ士官学校ヘ分遣シ得サルモノニシテ後来望ミナキ者
其六 士官学校条例第二十三条其一其四ニ依リ退校帰隊シテ後来望ミナキ者
其七 士官学校条例第二十三条其二其三ニ依リ退校帰隊セシ者
其八 将校試験ヲ受クルヲ得スシテ帰隊セシ者
其九 将校試験ニ落第シテ帰隊セシ者
其十 本条例第二十三条ノモノニシテ本条其一乃至其四ニ該ル者
其十一 本条例第二十八条ノ第三項ニ該ル者
其十二 疾病若クハ傷痍ニ因リ永久服役ニ堪ヘサル者
第三十三条 前条其一乃至其十一ニ該ル者ハ士官候補生ヲ免シ其階級ニ応シ本官ニ任シ又ハ兵卒ト為シ予備役ニ編入シ其十二ニ該ル者ハ士官候補生ヲ免ス
附 則
第三十四条 下士兵卒一年志願兵ニアラサル者及教導団生徒ハ当分士官候補生ヲ志願スルコトヲ得但其志願手続ハ本条例中一年志願兵ノ例ニ依ル