陸軍各兵科現役士官補充条例
法令番号: 勅令第二十七號
公布年月日: 明治20年6月16日
法令の形式: 勅令
朕陸軍各兵科現役士官補充條例制定ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年六月十五日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
陸軍大臣 伯爵 大山巖
勅令第二十七號
陸軍各兵科現役士官補充條例
第一條 陸軍步、騎、砲、工、兵科現役士官ノ補充ハ陸軍出身志願ニシテ才能及學力ヲ有スル者ヲ撰ンテ士官候補生トナシ各自ノ希望ニヨリ各種兵隊ニ配賦シ少ナクモ一箇年間特別ノ敎育ヲ與ヘ然ル後士官學校ニ分遣シ卒業ノ上原隊ニ復歸セシメ見習士官トナシ六箇月以上士官勤務ニ服シタル者ヲ以テス但輜重兵科士官ノ補充ハ他兵科ノ士官ヲ轉科セシム又憲兵科及屯田兵科士官ノ補充ハ別ニ定ムル所ノ規則ニ據ル
第二條 士官候補生ニ採用シ得可キ者ハ左ノ如シ
其一 幼年學校生徒ニシテ敎則卒業終末試驗ニ及第セシ者
其二 一年志願兵又ハ其他ノ者年齡十八年以上二十三年以下ニシテ尋常中學卒業證書ヲ所持スル者又ハ之ニ同シキ學力ヲ有スル者
第三條 士官候補生召募ノ檢査格例ハ監軍之ヲ定メ每年吿達スルモノトス
第四條 幼年學校生徒ヲ士官候補生トナスハ該校長其人名書ニ考科書ヲ添ヘ將校學校監ヲ經由シ監軍ニ進達シ監軍之ヲ軍事參議官ニ移ス
第五條 一年志願兵ノ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歷書ヲ添ヘ尋常中學卒業證書ヲ所持スル者ハ該證書ノ寫ヲ添ヘ順序ヲ經テ鎭臺司令官ニ差出シ司令官ハ各志願者ノ本籍府縣知事寄留ノ者ハ其地ノ府縣知事ニ照會シ身分、財產、敎育、性質、品行等ニ係ル詳細ノ證明書ヲ得之ヲ願書ニ添ヘ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事參議官ニ移ス
第六條 華士族平民ノ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歷書ヲ添ヘ尋常中學卒業證書ヲ所持スル者ハ該證書ノ寫ヲ添ヘ本籍府縣知事寄留ノ者ハ其地ノ府縣知事ニ差出シ府縣知事ハ各志願者ノ身分、財產、敎育、性質、品行等詳細之ヲ取調ヘ其證明書ヲ作リ之ヲ願書ニ添ヘ其地所管鎭臺司令官ニ送付シ司令官ハ之ヲ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事參議官ニ移ス
第七條 總テ尋常中學卒業證書ヲ所持セサル士官候補生志願者ハ本條例第六條ノ手續ヲナシタル後檢査ヲ爲ス其檢査ハ試驗委員ヲ各軍管ニ派遣シ行フモノニシテ試驗委員ハ其成績ヲ將校學校監ニ上申シ學校監之ヲ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事參議官ニ移ス
第八條 軍事參議官ハ幼年學校生徒ハ本條例第四條其他ノ者ハ第五條及第六條ノ書類ニ依リ又第七條ニ依リ檢査ヲナシタル者ハ第五條若クハ第六條ノ書類ト檢査ノ成績トニ依リ其士官候補生ニ採用スヘキ者ヲ裁定シ監軍ニ移ス監軍之ニ士官候補生ヲ命シ直ニ各種兵隊ニ配賦ス但候補生ハ本隊ノ定員外トス
第九條 前條士官候補生ヲ各種兵隊ニ配賦スルニハ左ノ四項ヲ顧慮ス可シ
其一 本人ノ希望
其二 軍隊ノ必要
其三 學術優等ノ者ヲ各種兵隊ニ平等ニ配賦スルコト
其四 砲、工、兵ニ配賦スルモノハ普通算學ノ豫備學アル者
第十條 幼年學校生徒ヨリ士官候補生トナス者ノ內學術品行共ニ優等ナル者ハ軍隊ニ配賦スルトキ直ニ二等軍曹ニ任スルコトアル可シ
第十一條 一年志願兵ニシテ士官候補生ヲ命スル者ハ本人所屬ノ兵隊ニ置ク但時宜ニ依リ他ノ隊ニ配賦スルコトアル可シ
第十二條 士官候補生ハ士官學校分遣前一箇年幼年生徒ハ六箇月軍隊ニ在テ諸勤務雜役ノ勤務ハ除クニ服シ野外ノ演習ヲ終リ且下士ノ勤務ヲモ識得スルヲ要ス
第十三條 士官候補生入隊ノ上ハ聯「大」隊長ハ部下聯「大」隊中ノ某中隊ヲ撰ヒ之ニ編入シ該中隊長ヲシテ敎育ヲ掌トリ諸勤務ノ訓練ニ任セシム
第十四條 士官候補生軍事學ノ敎授ハ聯「大」隊長部下大尉若クハ中尉ノ內一名ヲシテ之ヲ任セシム
第十五條 聯「大」隊長ハ士官候補生ノ敎育及軍事學敎授ノ事ニ就テハ擔保ノ責ニ任ス
第十六條 士官候補生ハ志願兵トシテ入隊ノ日ヨリ常備兵籍ニ編入シ陸軍一定ノ規則ニヨリ服役セシム而シテ被服、裝具等ハ總テ下士兵卒同樣ニシテ官給トス
第十七條 士官候補生ノ起居及其諸給與ハ本人ノ階級ニ應スルモノトス然レトモ其居室ハ一般兵卒ト混同スルコトナク別ニ一室ヲ與ヘ數名ノ候補生ヲ同居セシムヘシ但被服ニハ特別ノ徽章ヲ附シ食事ハ將校會食所ニ於テ隊中將校ト會食セシムルヲ要ス
第十八條 士官候補生ハ室內其他諸物品ノ掃除及馬具、馬匹等掃拭ノ爲メニハ兵卒ヲ使役スルコトヲ得但馬具、馬匹等ノ掃拭ヲ習得スル爲メニハ自ラ之ヲ爲サシム
第十九條 士官候補生ハ生兵勤務ヲ終レハ上等兵トナシ而シテ入隊ノ日ヨリ起算シ幼年生徒ヨリスル者ハ入隊前六箇月ヲ通算ス八箇月ノ後ハ二等軍曹ニ全一箇年ヲ終レハ一等軍曹ニ任スルコトヲ得
第二十條 士官候補生勤務中左ニ揭クル事項ニ該ル者ハ士官候補生ヲ免シ各階級ニ在テ定期ノ服役年限ヲ終ラシム然レトモ費用ヲ支辨スルコトヲ得ル者ハ本人ノ請願ニ依リ一年志願兵トナリ服役スルコトヲ許ス但服役計算ノ法ハ入隊ノ日ヨリ之ヲ起算ス
其一 品行不正若クハ軍紀ヲ紊リ又ハ屢〻法則ヲ犯ス者
其二 學力乏シクシテ士官生徒ニ適セサル者
其三 將校タルノ才能ニ乏シキ者
其四 上官ヨリ認メラレテ士官候補生タルヲ得ヘカラサル者
第二十一條 前條ノ其一其二其三及其四ニ揭クル者アルトキハ聯「大」隊長ハ其事由ヲ悉シテ司令官步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申シ司令官ハ狀ヲ具シ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事參議官ニ移シ參議官ノ裁定ニ依リ監軍之ヲ處分ス
第二十二條 士官學校生徒ニシテ卒業ノ目途ナク退校歸隊セシ者及將校試驗ヲ受クルヲ得スシテ歸隊セシ者ハ本條例第二十條及第二十一條ニ準シテ之ヲ處分ス
第二十三條 士官候補生諸勤務ノ訓練ヲ終レハ之ニ任スル所ノ中隊長ハ士官候補生定規ノ如ク諸勤務ニ習熟スル保證書ヲ聯「大」隊長ニ進達スヘシ聯「大」隊長ハ之ヲ審閱シ更ニ敎育及軍事學ノ敎授ヲ受ケタルコトヲ保證シ鎭臺司令官步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申ス又聯「大」隊長ニ於テ前條ニ依リ處分セラレタル者ニシテ再ヒ入校ヲ命セラルルヲ適當ナリト認ムル者アルトキハ之ト同時ニ其事由ヲ上申ス可シ
第二十四條 鎭臺司令官ハ更ニ各兵科ノ連名簿ヲ製シ之ニ聯「大」隊長ヨリ出ス所ノ保證書ヲ添ヘ將校學校監ニ送付ス可シ
第二十五條 將校學校監ハ前條ノ書類ニ依リ士官候補生ノ士官學校ニ入校セシムヘキ者ヲ定メ鎭臺司令官ヲ經テ之ヲ命ス可シ
第二十六條 士官候補生士官學校修學ヲ終リ將校試驗ニ及第シ歸隊セシ者ハ見習士官トナシ中隊ニ在テ士官勤務ニ服セシム而シテ其位置ハ定員外ニシテ曹長ノ上位トス
第二十七條 見習士官ノ敎育ハ聯「大」隊長自ラ其責ニ任シ殊ニ諸種ノ演習等精密且著實ニ實施セシメ以テ學事上ノ敎育ヲ進步セシムルヲ務ム可シ
第二十八條 見習士官ノ諸給與ハ隊附曹長ト異ナルコトナシト雖トモ劍、劍緖、帶革、背囊、脚袢等ハ士官ト同一トス
第二十九條 見習士官ヲ將校ニ撰擧スルハ聯「大」隊長先ツ大隊長及中隊長ヨリ本人ノ學事上及軍事上ノ敎育完全ニシテ將校タルヲ得ヘキ保證書ヲ得尙ホ聯「大」隊長モ亦自ラ是認シタル後始メテ聯「大」隊ノ將校會議ニ付ス
第三十條 將校會議ハ見習士官ヲ將校トナスノ可否ヲ議決スル所トス故ニ各將校ハ可否ノ答ヲ自ラ撰擧報吿ニ記入シ自己ノ姓名ヲ署ス可シ
第三十一條 將校會議ニ於テ將校ノ答皆可ナルトキハ其撰擧報吿書ヲ添ヘ少尉ニ補任ノコトヲ鎭臺司令官ニ上申ス司令官ハ監軍ニ進達シ監軍之ヲ軍事參議官ニ移ス
若シ答多數可ナルモ幾分ノ否答アル者ハ其理由ヲ撰擧報吿書ニ記入シテ上申スルコト前項ニ同シ
之ニ反シ將校ノ答多數否ナルトキハ否決ノ報吿書ヲ鎭臺司令官ニ上申シ司令官ハ之ヲ監軍ニ進達シ監軍之ヲ軍事參議官ニ移シ參議官ハ其報吿書ニ依リ見習士官タルノ分限ヲ除クコトヲ裁定シ監軍ニ移ス監軍之ヲ處分ス但此處分ヲ受ケタル者ハ曹長ニ任シ豫備役ニ編入ス
第三十二條 士官學校ニ於テ品行方正將校試驗ノ成績最モ優等ニシテ褒賞ヲ賜リタル者ハ補任ノトキ其首位ヲ與フ
第三十三條 砲、工、兵科少尉ハ少クモ二箇年間軍隊ニ在テ實地勤務及軍紀ニ習熟シタル後特別ノ學校ニ於テ特科ノ學術ヲ學ハシム
第三十四條 陸軍各兵科下士及兵卒一年志願兵ニアラサル者ハ當分ノ內特例ヲ以テ士官候補生ヲ志願セシムルコトヲ得但其手續ハ本條例中一年志願兵ノ例ニ準ス
朕陸軍各兵科現役士官補充条例制定ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年六月十五日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
陸軍大臣 伯爵 大山巌
勅令第二十七号
陸軍各兵科現役士官補充条例
第一条 陸軍歩、騎、砲、工、兵科現役士官ノ補充ハ陸軍出身志願ニシテ才能及学力ヲ有スル者ヲ撰ンテ士官候補生トナシ各自ノ希望ニヨリ各種兵隊ニ配賦シ少ナクモ一箇年間特別ノ教育ヲ与ヘ然ル後士官学校ニ分遣シ卒業ノ上原隊ニ復帰セシメ見習士官トナシ六箇月以上士官勤務ニ服シタル者ヲ以テス但輜重兵科士官ノ補充ハ他兵科ノ士官ヲ転科セシム又憲兵科及屯田兵科士官ノ補充ハ別ニ定ムル所ノ規則ニ拠ル
第二条 士官候補生ニ採用シ得可キ者ハ左ノ如シ
其一 幼年学校生徒ニシテ教則卒業終末試験ニ及第セシ者
其二 一年志願兵又ハ其他ノ者年齢十八年以上二十三年以下ニシテ尋常中学卒業証書ヲ所持スル者又ハ之ニ同シキ学力ヲ有スル者
第三条 士官候補生召募ノ検査格例ハ監軍之ヲ定メ毎年告達スルモノトス
第四条 幼年学校生徒ヲ士官候補生トナスハ該校長其人名書ニ考科書ヲ添ヘ将校学校監ヲ経由シ監軍ニ進達シ監軍之ヲ軍事参議官ニ移ス
第五条 一年志願兵ノ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歴書ヲ添ヘ尋常中学卒業証書ヲ所持スル者ハ該証書ノ写ヲ添ヘ順序ヲ経テ鎮台司令官ニ差出シ司令官ハ各志願者ノ本籍府県知事寄留ノ者ハ其地ノ府県知事ニ照会シ身分、財産、教育、性質、品行等ニ係ル詳細ノ証明書ヲ得之ヲ願書ニ添ヘ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事参議官ニ移ス
第六条 華士族平民ノ士官候補生タランコトヲ志願スル者ハ願書ニ履歴書ヲ添ヘ尋常中学卒業証書ヲ所持スル者ハ該証書ノ写ヲ添ヘ本籍府県知事寄留ノ者ハ其地ノ府県知事ニ差出シ府県知事ハ各志願者ノ身分、財産、教育、性質、品行等詳細之ヲ取調ヘ其証明書ヲ作リ之ヲ願書ニ添ヘ其地所管鎮台司令官ニ送付シ司令官ハ之ヲ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事参議官ニ移ス
第七条 総テ尋常中学卒業証書ヲ所持セサル士官候補生志願者ハ本条例第六条ノ手続ヲナシタル後検査ヲ為ス其検査ハ試験委員ヲ各軍管ニ派遣シ行フモノニシテ試験委員ハ其成績ヲ将校学校監ニ上申シ学校監之ヲ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事参議官ニ移ス
第八条 軍事参議官ハ幼年学校生徒ハ本条例第四条其他ノ者ハ第五条及第六条ノ書類ニ依リ又第七条ニ依リ検査ヲナシタル者ハ第五条若クハ第六条ノ書類ト検査ノ成績トニ依リ其士官候補生ニ採用スヘキ者ヲ裁定シ監軍ニ移ス監軍之ニ士官候補生ヲ命シ直ニ各種兵隊ニ配賦ス但候補生ハ本隊ノ定員外トス
第九条 前条士官候補生ヲ各種兵隊ニ配賦スルニハ左ノ四項ヲ顧慮ス可シ
其一 本人ノ希望
其二 軍隊ノ必要
其三 学術優等ノ者ヲ各種兵隊ニ平等ニ配賦スルコト
其四 砲、工、兵ニ配賦スルモノハ普通算学ノ予備学アル者
第十条 幼年学校生徒ヨリ士官候補生トナス者ノ内学術品行共ニ優等ナル者ハ軍隊ニ配賦スルトキ直ニ二等軍曹ニ任スルコトアル可シ
第十一条 一年志願兵ニシテ士官候補生ヲ命スル者ハ本人所属ノ兵隊ニ置ク但時宜ニ依リ他ノ隊ニ配賦スルコトアル可シ
第十二条 士官候補生ハ士官学校分遣前一箇年幼年生徒ハ六箇月軍隊ニ在テ諸勤務雑役ノ勤務ハ除クニ服シ野外ノ演習ヲ終リ且下士ノ勤務ヲモ識得スルヲ要ス
第十三条 士官候補生入隊ノ上ハ連「大」隊長ハ部下連「大」隊中ノ某中隊ヲ撰ヒ之ニ編入シ該中隊長ヲシテ教育ヲ掌トリ諸勤務ノ訓練ニ任セシム
第十四条 士官候補生軍事学ノ教授ハ連「大」隊長部下大尉若クハ中尉ノ内一名ヲシテ之ヲ任セシム
第十五条 連「大」隊長ハ士官候補生ノ教育及軍事学教授ノ事ニ就テハ担保ノ責ニ任ス
第十六条 士官候補生ハ志願兵トシテ入隊ノ日ヨリ常備兵籍ニ編入シ陸軍一定ノ規則ニヨリ服役セシム而シテ被服、装具等ハ総テ下士兵卒同様ニシテ官給トス
第十七条 士官候補生ノ起居及其諸給与ハ本人ノ階級ニ応スルモノトス然レトモ其居室ハ一般兵卒ト混同スルコトナク別ニ一室ヲ与ヘ数名ノ候補生ヲ同居セシムヘシ但被服ニハ特別ノ徽章ヲ附シ食事ハ将校会食所ニ於テ隊中将校ト会食セシムルヲ要ス
第十八条 士官候補生ハ室内其他諸物品ノ掃除及馬具、馬匹等掃拭ノ為メニハ兵卒ヲ使役スルコトヲ得但馬具、馬匹等ノ掃拭ヲ習得スル為メニハ自ラ之ヲ為サシム
第十九条 士官候補生ハ生兵勤務ヲ終レハ上等兵トナシ而シテ入隊ノ日ヨリ起算シ幼年生徒ヨリスル者ハ入隊前六箇月ヲ通算ス八箇月ノ後ハ二等軍曹ニ全一箇年ヲ終レハ一等軍曹ニ任スルコトヲ得
第二十条 士官候補生勤務中左ニ掲クル事項ニ該ル者ハ士官候補生ヲ免シ各階級ニ在テ定期ノ服役年限ヲ終ラシム然レトモ費用ヲ支弁スルコトヲ得ル者ハ本人ノ請願ニ依リ一年志願兵トナリ服役スルコトヲ許ス但服役計算ノ法ハ入隊ノ日ヨリ之ヲ起算ス
其一 品行不正若クハ軍紀ヲ紊リ又ハ屡々法則ヲ犯ス者
其二 学力乏シクシテ士官生徒ニ適セサル者
其三 将校タルノ才能ニ乏シキ者
其四 上官ヨリ認メラレテ士官候補生タルヲ得ヘカラサル者
第二十一条 前条ノ其一其二其三及其四ニ掲クル者アルトキハ連「大」隊長ハ其事由ヲ悉シテ司令官歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申シ司令官ハ状ヲ具シ監軍ニ進達ス監軍之ヲ軍事参議官ニ移シ参議官ノ裁定ニ依リ監軍之ヲ処分ス
第二十二条 士官学校生徒ニシテ卒業ノ目途ナク退校帰隊セシ者及将校試験ヲ受クルヲ得スシテ帰隊セシ者ハ本条例第二十条及第二十一条ニ準シテ之ヲ処分ス
第二十三条 士官候補生諸勤務ノ訓練ヲ終レハ之ニ任スル所ノ中隊長ハ士官候補生定規ノ如ク諸勤務ニ習熟スル保証書ヲ連「大」隊長ニ進達スヘシ連「大」隊長ハ之ヲ審閲シ更ニ教育及軍事学ノ教授ヲ受ケタルコトヲ保証シ鎮台司令官歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申ス又連「大」隊長ニ於テ前条ニ依リ処分セラレタル者ニシテ再ヒ入校ヲ命セラルルヲ適当ナリト認ムル者アルトキハ之ト同時ニ其事由ヲ上申ス可シ
第二十四条 鎮台司令官ハ更ニ各兵科ノ連名簿ヲ製シ之ニ連「大」隊長ヨリ出ス所ノ保証書ヲ添ヘ将校学校監ニ送付ス可シ
第二十五条 将校学校監ハ前条ノ書類ニ依リ士官候補生ノ士官学校ニ入校セシムヘキ者ヲ定メ鎮台司令官ヲ経テ之ヲ命ス可シ
第二十六条 士官候補生士官学校修学ヲ終リ将校試験ニ及第シ帰隊セシ者ハ見習士官トナシ中隊ニ在テ士官勤務ニ服セシム而シテ其位置ハ定員外ニシテ曹長ノ上位トス
第二十七条 見習士官ノ教育ハ連「大」隊長自ラ其責ニ任シ殊ニ諸種ノ演習等精密且著実ニ実施セシメ以テ学事上ノ教育ヲ進歩セシムルヲ務ム可シ
第二十八条 見習士官ノ諸給与ハ隊附曹長ト異ナルコトナシト雖トモ剣、剣緒、帯革、背囊、脚袢等ハ士官ト同一トス
第二十九条 見習士官ヲ将校ニ撰挙スルハ連「大」隊長先ツ大隊長及中隊長ヨリ本人ノ学事上及軍事上ノ教育完全ニシテ将校タルヲ得ヘキ保証書ヲ得尚ホ連「大」隊長モ亦自ラ是認シタル後始メテ連「大」隊ノ将校会議ニ付ス
第三十条 将校会議ハ見習士官ヲ将校トナスノ可否ヲ議決スル所トス故ニ各将校ハ可否ノ答ヲ自ラ撰挙報告ニ記入シ自己ノ姓名ヲ署ス可シ
第三十一条 将校会議ニ於テ将校ノ答皆可ナルトキハ其撰挙報告書ヲ添ヘ少尉ニ補任ノコトヲ鎮台司令官ニ上申ス司令官ハ監軍ニ進達シ監軍之ヲ軍事参議官ニ移ス
若シ答多数可ナルモ幾分ノ否答アル者ハ其理由ヲ撰挙報告書ニ記入シテ上申スルコト前項ニ同シ
之ニ反シ将校ノ答多数否ナルトキハ否決ノ報告書ヲ鎮台司令官ニ上申シ司令官ハ之ヲ監軍ニ進達シ監軍之ヲ軍事参議官ニ移シ参議官ハ其報告書ニ依リ見習士官タルノ分限ヲ除クコトヲ裁定シ監軍ニ移ス監軍之ヲ処分ス但此処分ヲ受ケタル者ハ曹長ニ任シ予備役ニ編入ス
第三十二条 士官学校ニ於テ品行方正将校試験ノ成績最モ優等ニシテ褒賞ヲ賜リタル者ハ補任ノトキ其首位ヲ与フ
第三十三条 砲、工、兵科少尉ハ少クモ二箇年間軍隊ニ在テ実地勤務及軍紀ニ習熟シタル後特別ノ学校ニ於テ特科ノ学術ヲ学ハシム
第三十四条 陸軍各兵科下士及兵卒一年志願兵ニアラサル者ハ当分ノ内特例ヲ以テ士官候補生ヲ志願セシムルコトヲ得但其手続ハ本条例中一年志願兵ノ例ニ準ス