海軍志願兵徴募規則
法令番号: 勅令第六十八號
公布年月日: 明治22年5月22日
法令の形式: 勅令
朕海軍志願兵徵募規則ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年五月二十一日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
勅令第六十八號
海軍志願兵徵募規則
第一條 海軍兵役ヲ志願スル者ハ本則ニ依リ服役セシム
第二條 志願兵ノ職名ハ左ノ如シ
水兵、軍樂生、水雷夫、火夫、工夫、木工、鍛冶、看病夫、㕑夫
第三條 志願兵ニ徵募スルトキノ年齡定限ハ左ノ如シ
一 水兵、火夫ハ滿十七年以上二十一年未滿
二 木工、鍛冶、看病夫、㕑夫ハ滿十七年以上二十六年未滿
三 水雷夫、工夫ハ滿十七年以上三十二年未滿
四 軍樂生ハ滿十四年以上十七年未滿
第四條 左ニ揭クル者ハ志願兵タルコトヲ許サス
一 陸軍ノ豫備役後備役ニ在ル者
二 徵兵令第二十八條ニ當ル者
三 禁錮以上ノ刑ニ處セラレ若クハ賭博犯ニ由リ懲罰ニ處セラレタル者
四 刑事被吿人トナリ裁判未決ノ者
五 身代限リノ處分ヲ受ケ負債ノ義務ヲ免レサル者
第五條 志願兵ノ服役ヲ分テ現役及豫備役トス
現役ハ八箇年ニシテ入營ノ日ヨリ之ニ服シ豫備役ハ四箇年ニシテ現役ヲ終リタル日ヨリ之ニ服ス
水雷夫ハ前項ニ依ラス十二箇年間現役ニ服セシメ豫備役ニ服セシメス但第一年ニ於テハ六箇月以內第二年ヨリ十一箇年間ハ每年二箇月以內在營セシメ其餘ノ時日ハ歸休セシム
第六條 現役中禁錮ノ刑ニ處セラレ若クハ賭博犯ニ由リ懲罰ニ處セラレ又ハ逃亡シタル者其刑期懲罰逃亡中ノ日數ハ服役年期ニ算入セス
第七條 服役期限既ニ滿ルト雖モ戰時或ハ事變ニ際スルトキ若クハ臨時ニ演習ノ擧アルトキ若クハ航海中ハ其期限ヲ延スコトアル可シ
第八條 豫備兵ハ戰時或ハ事變ニ際シ兵員ヲ要スルトキ之ヲ召集ス平時ニ在テハ演習ノ爲メ召集スルコトアル可シ但餘人ヲ以テ代フ可ラサル職務ヲ奉スル官吏及市町村長助役及收入役ハ召集スルコトナシ
法律ヲ以テ設立シタル議會ノ議員其開會中亦同シ
第九條 服役中ハ免役ヲ願フコトヲ許サス但現役中疾病若クハ傷痍ニ依リ現役ニ堪ヘ難キ者ハ其役ヲ免シ現役ヲ通シテ滿十二箇年ニ至ルマテ豫備役ニ服セシム其永久服役ニ堪ヘ難キ者ハ兵役ヲ免ス
第十條 水雷夫、工夫ヲ除クノ外志願兵ノ現役中ハ家族アル者ニ限リ其扶助金トシテ一日金貳錢七厘ヲ給ス
第十一條 志願兵徵募ノ爲メ別表ノ如ク海軍志願兵徵募區ヲ定メ鎭守府ヲシテ之ヲ管セシム
第十二條 志願兵徵募ノ人員ハ每年海軍大臣之ヲ定メ各徵募區ニ配當シ鎭守府ヲシテ徵募セシム
軍樂生、水雷夫、工夫ハ前項ニ依ラス鎭守府又ハ海軍省第一局ヲシテ徵募セシム
附 則
第十三條 舊規則ニ依リ徵募シタル者ノ服役年期ハ舊規則ニ依ル
第十四條 舊規則ニ依リ一箇月金壹圓七拾五錢ノ家族扶助金ヲ給スル者ニハ本年十月以後其現役滿期マテ一日金五錢七厘ノ家族扶助金ヲ給ス
別表
【表】
朕海軍志願兵徴募規則ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年五月二十一日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
海軍大臣 伯爵 西郷従道
勅令第六十八号
海軍志願兵徴募規則
第一条 海軍兵役ヲ志願スル者ハ本則ニ依リ服役セシム
第二条 志願兵ノ職名ハ左ノ如シ
水兵、軍楽生、水雷夫、火夫、工夫、木工、鍛冶、看病夫、㕑夫
第三条 志願兵ニ徴募スルトキノ年齢定限ハ左ノ如シ
一 水兵、火夫ハ満十七年以上二十一年未満
二 木工、鍛冶、看病夫、㕑夫ハ満十七年以上二十六年未満
三 水雷夫、工夫ハ満十七年以上三十二年未満
四 軍楽生ハ満十四年以上十七年未満
第四条 左ニ掲クル者ハ志願兵タルコトヲ許サス
一 陸軍ノ予備役後備役ニ在ル者
二 徴兵令第二十八条ニ当ル者
三 禁錮以上ノ刑ニ処セラレ若クハ賭博犯ニ由リ懲罰ニ処セラレタル者
四 刑事被告人トナリ裁判未決ノ者
五 身代限リノ処分ヲ受ケ負債ノ義務ヲ免レサル者
第五条 志願兵ノ服役ヲ分テ現役及予備役トス
現役ハ八箇年ニシテ入営ノ日ヨリ之ニ服シ予備役ハ四箇年ニシテ現役ヲ終リタル日ヨリ之ニ服ス
水雷夫ハ前項ニ依ラス十二箇年間現役ニ服セシメ予備役ニ服セシメス但第一年ニ於テハ六箇月以内第二年ヨリ十一箇年間ハ毎年二箇月以内在営セシメ其余ノ時日ハ帰休セシム
第六条 現役中禁錮ノ刑ニ処セラレ若クハ賭博犯ニ由リ懲罰ニ処セラレ又ハ逃亡シタル者其刑期懲罰逃亡中ノ日数ハ服役年期ニ算入セス
第七条 服役期限既ニ満ルト雖モ戦時或ハ事変ニ際スルトキ若クハ臨時ニ演習ノ挙アルトキ若クハ航海中ハ其期限ヲ延スコトアル可シ
第八条 予備兵ハ戦時或ハ事変ニ際シ兵員ヲ要スルトキ之ヲ召集ス平時ニ在テハ演習ノ為メ召集スルコトアル可シ但余人ヲ以テ代フ可ラサル職務ヲ奉スル官吏及市町村長助役及収入役ハ召集スルコトナシ
法律ヲ以テ設立シタル議会ノ議員其開会中亦同シ
第九条 服役中ハ免役ヲ願フコトヲ許サス但現役中疾病若クハ傷痍ニ依リ現役ニ堪ヘ難キ者ハ其役ヲ免シ現役ヲ通シテ満十二箇年ニ至ルマテ予備役ニ服セシム其永久服役ニ堪ヘ難キ者ハ兵役ヲ免ス
第十条 水雷夫、工夫ヲ除クノ外志願兵ノ現役中ハ家族アル者ニ限リ其扶助金トシテ一日金弐銭七厘ヲ給ス
第十一条 志願兵徴募ノ為メ別表ノ如ク海軍志願兵徴募区ヲ定メ鎮守府ヲシテ之ヲ管セシム
第十二条 志願兵徴募ノ人員ハ毎年海軍大臣之ヲ定メ各徴募区ニ配当シ鎮守府ヲシテ徴募セシム
軍楽生、水雷夫、工夫ハ前項ニ依ラス鎮守府又ハ海軍省第一局ヲシテ徴募セシム
附 則
第十三条 旧規則ニ依リ徴募シタル者ノ服役年期ハ旧規則ニ依ル
第十四条 旧規則ニ依リ一箇月金壱円七拾五銭ノ家族扶助金ヲ給スル者ニハ本年十月以後其現役満期マテ一日金五銭七厘ノ家族扶助金ヲ給ス
別表
【表】