新聞紙条例
法令番号: 勅令第七十五號
公布年月日: 明治20年12月29日
法令の形式: 勅令
朕新聞紙條例改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年十二月二十八日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
內務大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
勅令第七十五號
新聞紙條例
第一條 新聞紙ヲ發行セントスル者ハ發行ノ日ヨリ二週日以前ニ發行地ノ管轄廳東京府ハ警視廳ヲ經由シテ內務省ニ屆出ヘシ
第二條 新聞紙發行ノ屆書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 題號
二 記載ノ種類
三 發行ノ時期
四 發行所及印刷所
五 發行人、編輯人及印刷人ノ氏名年齡
編輯人ハ二人以上アルトキハ其主トシテ編輯事務ヲ擔當スル者タルヘシ但紙面ニ部門ヲ分チ其各部門ニ主任編輯人ヲ設クルコトヲ得
第三條 屆出ヲ爲シタル後、題號、記載ノ種類又ハ發行人ヲ變更セントスルトキハ二週日以前ニ第一條ノ手續ニ從ヒ屆出ヘシ
發行ノ時期、發行所、印刷所、編輯人、印刷人ニ變更アリタルトキハ一週日以內ニ第一條ノ手續ニ從ヒ屆出ヘシ
第四條 發行人死去シ又ハ法律上其資格ヲ失ヒタルトキハ一週日以內ニ發行人ヲ定メ第一條ノ手續ニ從ヒ屆出ヘシ其屆出ヲナスマテハ假發行人ノ名義ヲ以テ發行スルコトヲ得
第五條 發行ノ屆出ヲナシタル日又ハ發行休止ノ日ヨリ五十日ヲ過キテ發行セサルトキハ其屆出ノ効ヲ失フモノトス
第六條 內國人ニシテ滿二十歲以上ノ男子ニ非サレハ發行人印刷人トナルコトヲ得ス
公權ヲ剝奪セラレタル者及公權ヲ停止セラレタル者其停止間發行人、編輯人、印刷人トナルコトヲ得ス
第七條 編輯人、印刷人ハ互ニ相兼ヌルコトヲ得ス
第八條 發行人ハ保證トシテ左ノ金額ヲ屆書ト共ニ管轄廳東京府ハ警廳視ニ納ムヘシ
一 東京ニ於テハ千圓
一 京都大阪橫濱兵庫神戶長崎ニ於テハ七百圓
一 其他ノ地方ニ於テハ三百五十圓
一 一月三囘以下發行スルモノハ各前記ノ半額
保證金ハ時價ニ準シタル公債證書又ハ國立銀行ノ預手形ヲ以テ之ヲ納ムルコトヲ得
學術、技藝、統計、官令又ハ物價報吿ニ關スル事項ノミヲ記載スルモノハ本條ノ限ニアラス
第九條 保證金ハ新聞紙ノ發行ヲ廢止シ又ハ其發行ヲ禁止セラレタルトキハ之ヲ還付ス
第十條 第一條第三條第四條ノ屆出ヲ爲サス又ハ保證金ヲ納ムヘキ新聞紙ニシテ保證金ヲ納メスシテ發行スルモノハ正當ノ屆出ヲナシ又ハ保證金ヲ納ムルマテ警視總監又ハ地方長官ニ於テ其發行ヲ差止ヘシ
第十一條 新聞紙ハ每號ニ發行人、編輯人、印刷人ノ氏名發行所ヲ記載スヘシ
發行人、印刷人ノ外何等ノ名義ヲ以テスルニ拘ラス新聞紙又ハ記載ノ條項ニ署名スル者ハ總テ編輯人ト共ニ其責ニ當ラシム
第十二條 新聞紙ハ其發行每ニ先ツ內務省ニ二部管轄廳東京府ハ警視廳及管轄治安裁判所檢事局ニ各一部ヲ納ムヘシ
第十三條 新聞紙ニ記載シタル事項ノ錯誤ニ付キ其事項ニ關スル當人又ハ關係アル者ヨリ正誤又ハ正誤書辨駁書ノ揭載ヲ求メタルトキハ其求ヲ受ケタル後其次囘又ハ第三囘ノ發行ニ於テ正誤ヲナシ又ハ正誤書辨駁書ノ全文ヲ揭載スヘシ若シ正誤書辨駁書ノ字數原文ノ二倍ヲ超過スルトキハ其超過ノ字數ニ付其新聞社ノ定メタル普通廣吿料ト同一ノ代價ヲ要求スルコトヲ得
正誤辨駁ハ原文ト同號ノ活字ヲ用ヒ同一欄內ノ首部ニ揭載スヘシ
正誤辨駁ノ文章若クハ趣旨法律ニ觸ルヽトキ又ハ之ヲ求ムル者其氏名住所ヲ明記セサルトキハ揭載スルヲ要セス
第十四條 官報又ハ他ノ新聞紙ヨリ抄錄セシ事項ニシテ其官報又ハ新聞紙ニ於テ正誤又ハ正誤書辨駁書ヲ揭載シタルトキハ當人又ハ關係アル者ノ求ナシト雖モ其新聞紙ヲ得タル後其次囘又ハ第三囘ノ發行ニ於テ正誤スヘキコト前條ノ例ニ依ル但廣吿料ヲ要求スルコトヲ得ス
第十五條 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ裁判ヲ受ケタルトキハ其新聞紙ノ次囘發行ニ於テ宣吿ノ全文ヲ揭載スヘシ
第十六條 重罪輕罪ノ豫審ニ關スル事項ハ公判ニ附セサル以前ニ於テ之ヲ記載スルコトヲ得ス
傍聽ヲ禁シタル訴訟ニ關スル事項ハ之ヲ記載スルコトヲ得ス
第十七條 刑律ニ觸レタル罪犯ヲ曲庇スルノ論說ヲ記載スルコトヲ得ス
刑事ノ被吿人又ハ刑律ニ觸レタル犯罪人ヲ救護シ又ハ賞恤スル爲ニスル文書ヲ揭載スルコトヲ得ス
第十八條 公ニセサル官ノ文書及上書建白請願書ハ當該官廳ノ許可ヲ得ルニ非サレハ詳略ニ拘ラス之ヲ記載スルコトヲ得ス
官廳ノ議事及法律ニ依リ傍聽ヲ禁シタル公會ノ議事ハ詳略ニ拘ラス之ヲ記載スルコトヲ得ス
第十九條 治安ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ壞亂スルモノト認ムル新聞紙ハ內務大臣ニ於テ其發行ヲ禁止シ若クハ停止スルコトヲ得
第二十條 新聞紙ノ發行ヲ禁止シ若クハ停止シタルトキハ內務大臣ハ其新聞紙ノ發賣頒布ヲ禁シ其新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
第二十一條 外國ニ於テ發行シタル新聞紙ニシテ治安ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ壞亂スルモノト認ムルトキハ內務大臣ハ其新聞紙ノ內國ニ於ケル發賣頒布ヲ禁シ其新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
第二十二條 陸軍大臣海軍大臣ハ特ニ命令ヲ發シテ軍隊軍艦ノ進退又ハ軍機軍略ニ關スル事項ノ記載ヲ禁スルコトヲ得
第二十三條 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ公訴ヲ起ストキハ檢察官ハ假ニ其新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
裁判官ハ犯罪ノ情狀ニ依リ差押ヘタル新聞紙ヲ沒收スルコトヲ得
第二十四條 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ訴訟ヲ起シタルトキ原吿ニ於テ其新聞紙ニ署名シタル編輯人ハ實際主トシテ編輯事務ヲ擔當スル者ニアラスシテ他ニ主任編輯人アルコトヲ證明シタル場合ニ於テハ裁判官ハ其署名シタル編輯人及實際ノ主任編輯人ヲシテ共ニ其責ニ當ラシムヘシ
第二十五條 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ誹毀ノ訴アル場合ニ於テ其私行ニ涉ルモノヲ除クノ外裁判所ニ於テ其人ヲ害スルノ惡意ニ出テス專ラ公益ノ爲ニスルモノト認ムルトキハ被吿人ニ事實ヲ證明スルコトヲ許スコトヲ得若シ其證明ノ確立ヲ得タルトキハ誹毀ノ罪ヲ免ス其損害賠償ノ訴ヲ受ケタルトキモ亦同シ
第二十六條 裁判確定ノ日ヨリ一週日以內ニ裁判費用及罰金ヲ完納セス又ハ損害ヲ賠償セサルトキハ保證金ヲ以テ之ニ充ツヘシ仍ホ足ラサルトキハ刑法徵收處分ニ依ル
保證金ヲ以テ裁判費用賠償及罰金ニ充テタルトキハ發行人ハ管轄廳東京府ハ警視廳ノ通知ヲ得タル日ヨリ一週日以內ニ其缺額ヲ完納スヘシ若シ完納セサルトキハ其之ヲ完納スルニ至ルマテ警視總監又ハ地方長官ニ於テ其發行ヲ差止ヘシ
第二十七條 第一條第三條第四條ノ屆出ヲ爲サス又ハ第六條第七條第十一條第一項第十二條ヲ犯シ又ハ保證金ヲ納ムヘキ新聞紙ニシテ保證金ヲ納メスシテ發行シタルトキハ發行人ヲ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス但詐稱ノ罪ヲ犯スモノハ罰發行人ニ同シ
第一條第三條第四條ノ屆出ヲ爲スモ實ヲ以テセサルトキハ發行人一月以上六月以下ノ輕禁錮又ハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八條ノ末項ニ屬スル新聞紙ニシテ保證金ヲ納ムヘキ新聞紙ノ事項ヲ記載シタルトキハ編輯人罰前項ニ同シ
第二十八條 第十三條第十四條第十五條ニ違フトキハ編輯人ヲ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條 第十六條第十七條第十八條ニ違フトキハ編輯人ヲ一月以上六月以下ノ輕禁錮又ハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條 第二十一條ニ違ヒ發賣頒布ヲ爲ス者ハ罰前條ニ同シ
第三十一條 第二十二條ニ違フトキハ發行人編輯人ヲ一月以上二年以下ノ輕禁錮又ハ二十圓以上三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條 政體ヲ變壞シ朝憲ヲ紊亂セントスルノ論說ヲ記載シタルトキハ發行人、編輯人、印刷人ヲ二月以上二年以下ノ輕禁錮ニ處シ五十圓以上三百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
本條ヲ犯ス者ハ其犯罪ノ用ニ供シタル器械ヲ沒收ス
第三十三條 猥褻ノ新聞紙ヲ發行スルトキハ發行人、編輯人ヲ一月以上六月以下ノ輕禁錮又ハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條 第十三條ノ場合ニ於テ私事ニ係ルモノハ被害者ノ吿訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第三十五條 此條例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ自首減輕再犯加重數罪俱發ノ例ヲ用ヒス
第三十六條 此條例ニ關スル公訴ノ期滿免除ハ六箇月トス
第三十七條 時々ニ發行スル雜誌ノ類ハ出板條例ニ依ルモノヲ除クノ外皆此條例ニ依ル
朕新聞紙条例改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年十二月二十八日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
内務大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
勅令第七十五号
新聞紙条例
第一条 新聞紙ヲ発行セントスル者ハ発行ノ日ヨリ二週日以前ニ発行地ノ管轄庁東京府ハ警視庁ヲ経由シテ内務省ニ届出ヘシ
第二条 新聞紙発行ノ届書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 題号
二 記載ノ種類
三 発行ノ時期
四 発行所及印刷所
五 発行人、編輯人及印刷人ノ氏名年齢
編輯人ハ二人以上アルトキハ其主トシテ編輯事務ヲ担当スル者タルヘシ但紙面ニ部門ヲ分チ其各部門ニ主任編輯人ヲ設クルコトヲ得
第三条 届出ヲ為シタル後、題号、記載ノ種類又ハ発行人ヲ変更セントスルトキハ二週日以前ニ第一条ノ手続ニ従ヒ届出ヘシ
発行ノ時期、発行所、印刷所、編輯人、印刷人ニ変更アリタルトキハ一週日以内ニ第一条ノ手続ニ従ヒ届出ヘシ
第四条 発行人死去シ又ハ法律上其資格ヲ失ヒタルトキハ一週日以内ニ発行人ヲ定メ第一条ノ手続ニ従ヒ届出ヘシ其届出ヲナスマテハ仮発行人ノ名義ヲ以テ発行スルコトヲ得
第五条 発行ノ届出ヲナシタル日又ハ発行休止ノ日ヨリ五十日ヲ過キテ発行セサルトキハ其届出ノ効ヲ失フモノトス
第六条 内国人ニシテ満二十歳以上ノ男子ニ非サレハ発行人印刷人トナルコトヲ得ス
公権ヲ剥奪セラレタル者及公権ヲ停止セラレタル者其停止間発行人、編輯人、印刷人トナルコトヲ得ス
第七条 編輯人、印刷人ハ互ニ相兼ヌルコトヲ得ス
第八条 発行人ハ保証トシテ左ノ金額ヲ届書ト共ニ管轄庁東京府ハ警庁視ニ納ムヘシ
一 東京ニ於テハ千円
一 京都大阪横浜兵庫神戸長崎ニ於テハ七百円
一 其他ノ地方ニ於テハ三百五十円
一 一月三回以下発行スルモノハ各前記ノ半額
保証金ハ時価ニ準シタル公債証書又ハ国立銀行ノ預手形ヲ以テ之ヲ納ムルコトヲ得
学術、技芸、統計、官令又ハ物価報告ニ関スル事項ノミヲ記載スルモノハ本条ノ限ニアラス
第九条 保証金ハ新聞紙ノ発行ヲ廃止シ又ハ其発行ヲ禁止セラレタルトキハ之ヲ還付ス
第十条 第一条第三条第四条ノ届出ヲ為サス又ハ保証金ヲ納ムヘキ新聞紙ニシテ保証金ヲ納メスシテ発行スルモノハ正当ノ届出ヲナシ又ハ保証金ヲ納ムルマテ警視総監又ハ地方長官ニ於テ其発行ヲ差止ヘシ
第十一条 新聞紙ハ毎号ニ発行人、編輯人、印刷人ノ氏名発行所ヲ記載スヘシ
発行人、印刷人ノ外何等ノ名義ヲ以テスルニ拘ラス新聞紙又ハ記載ノ条項ニ署名スル者ハ総テ編輯人ト共ニ其責ニ当ラシム
第十二条 新聞紙ハ其発行毎ニ先ツ内務省ニ二部管轄庁東京府ハ警視庁及管轄治安裁判所検事局ニ各一部ヲ納ムヘシ
第十三条 新聞紙ニ記載シタル事項ノ錯誤ニ付キ其事項ニ関スル当人又ハ関係アル者ヨリ正誤又ハ正誤書弁駁書ノ掲載ヲ求メタルトキハ其求ヲ受ケタル後其次回又ハ第三回ノ発行ニ於テ正誤ヲナシ又ハ正誤書弁駁書ノ全文ヲ掲載スヘシ若シ正誤書弁駁書ノ字数原文ノ二倍ヲ超過スルトキハ其超過ノ字数ニ付其新聞社ノ定メタル普通広告料ト同一ノ代価ヲ要求スルコトヲ得
正誤弁駁ハ原文ト同号ノ活字ヲ用ヒ同一欄内ノ首部ニ掲載スヘシ
正誤弁駁ノ文章若クハ趣旨法律ニ触ルヽトキ又ハ之ヲ求ムル者其氏名住所ヲ明記セサルトキハ掲載スルヲ要セス
第十四条 官報又ハ他ノ新聞紙ヨリ抄録セシ事項ニシテ其官報又ハ新聞紙ニ於テ正誤又ハ正誤書弁駁書ヲ掲載シタルトキハ当人又ハ関係アル者ノ求ナシト雖モ其新聞紙ヲ得タル後其次回又ハ第三回ノ発行ニ於テ正誤スヘキコト前条ノ例ニ依ル但広告料ヲ要求スルコトヲ得ス
第十五条 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ裁判ヲ受ケタルトキハ其新聞紙ノ次回発行ニ於テ宣告ノ全文ヲ掲載スヘシ
第十六条 重罪軽罪ノ予審ニ関スル事項ハ公判ニ附セサル以前ニ於テ之ヲ記載スルコトヲ得ス
傍聴ヲ禁シタル訴訟ニ関スル事項ハ之ヲ記載スルコトヲ得ス
第十七条 刑律ニ触レタル罪犯ヲ曲庇スルノ論説ヲ記載スルコトヲ得ス
刑事ノ被告人又ハ刑律ニ触レタル犯罪人ヲ救護シ又ハ賞恤スル為ニスル文書ヲ掲載スルコトヲ得ス
第十八条 公ニセサル官ノ文書及上書建白請願書ハ当該官庁ノ許可ヲ得ルニ非サレハ詳略ニ拘ラス之ヲ記載スルコトヲ得ス
官庁ノ議事及法律ニ依リ傍聴ヲ禁シタル公会ノ議事ハ詳略ニ拘ラス之ヲ記載スルコトヲ得ス
第十九条 治安ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ壊乱スルモノト認ムル新聞紙ハ内務大臣ニ於テ其発行ヲ禁止シ若クハ停止スルコトヲ得
第二十条 新聞紙ノ発行ヲ禁止シ若クハ停止シタルトキハ内務大臣ハ其新聞紙ノ発売頒布ヲ禁シ其新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
第二十一条 外国ニ於テ発行シタル新聞紙ニシテ治安ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ壊乱スルモノト認ムルトキハ内務大臣ハ其新聞紙ノ内国ニ於ケル発売頒布ヲ禁シ其新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
第二十二条 陸軍大臣海軍大臣ハ特ニ命令ヲ発シテ軍隊軍艦ノ進退又ハ軍機軍略ニ関スル事項ノ記載ヲ禁スルコトヲ得
第二十三条 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ公訴ヲ起ストキハ検察官ハ仮ニ其新聞紙ヲ差押フルコトヲ得
裁判官ハ犯罪ノ情状ニ依リ差押ヘタル新聞紙ヲ没収スルコトヲ得
第二十四条 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ訴訟ヲ起シタルトキ原告ニ於テ其新聞紙ニ署名シタル編輯人ハ実際主トシテ編輯事務ヲ担当スル者ニアラスシテ他ニ主任編輯人アルコトヲ証明シタル場合ニ於テハ裁判官ハ其署名シタル編輯人及実際ノ主任編輯人ヲシテ共ニ其責ニ当ラシムヘシ
第二十五条 新聞紙ニ記載シタル事項ニ付キ誹毀ノ訴アル場合ニ於テ其私行ニ渉ルモノヲ除クノ外裁判所ニ於テ其人ヲ害スルノ悪意ニ出テス専ラ公益ノ為ニスルモノト認ムルトキハ被告人ニ事実ヲ証明スルコトヲ許スコトヲ得若シ其証明ノ確立ヲ得タルトキハ誹毀ノ罪ヲ免ス其損害賠償ノ訴ヲ受ケタルトキモ亦同シ
第二十六条 裁判確定ノ日ヨリ一週日以内ニ裁判費用及罰金ヲ完納セス又ハ損害ヲ賠償セサルトキハ保証金ヲ以テ之ニ充ツヘシ仍ホ足ラサルトキハ刑法徴収処分ニ依ル
保証金ヲ以テ裁判費用賠償及罰金ニ充テタルトキハ発行人ハ管轄庁東京府ハ警視庁ノ通知ヲ得タル日ヨリ一週日以内ニ其欠額ヲ完納スヘシ若シ完納セサルトキハ其之ヲ完納スルニ至ルマテ警視総監又ハ地方長官ニ於テ其発行ヲ差止ヘシ
第二十七条 第一条第三条第四条ノ届出ヲ為サス又ハ第六条第七条第十一条第一項第十二条ヲ犯シ又ハ保証金ヲ納ムヘキ新聞紙ニシテ保証金ヲ納メスシテ発行シタルトキハ発行人ヲ五円以上百円以下ノ罰金ニ処ス但詐称ノ罪ヲ犯スモノハ罰発行人ニ同シ
第一条第三条第四条ノ届出ヲ為スモ実ヲ以テセサルトキハ発行人一月以上六月以下ノ軽禁錮又ハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第八条ノ末項ニ属スル新聞紙ニシテ保証金ヲ納ムヘキ新聞紙ノ事項ヲ記載シタルトキハ編輯人罰前項ニ同シ
第二十八条 第十三条第十四条第十五条ニ違フトキハ編輯人ヲ五円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十九条 第十六条第十七条第十八条ニ違フトキハ編輯人ヲ一月以上六月以下ノ軽禁錮又ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十条 第二十一条ニ違ヒ発売頒布ヲ為ス者ハ罰前条ニ同シ
第三十一条 第二十二条ニ違フトキハ発行人編輯人ヲ一月以上二年以下ノ軽禁錮又ハ二十円以上三百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十二条 政体ヲ変壊シ朝憲ヲ紊乱セントスルノ論説ヲ記載シタルトキハ発行人、編輯人、印刷人ヲ二月以上二年以下ノ軽禁錮ニ処シ五十円以上三百円以下ノ罰金ヲ附加ス
本条ヲ犯ス者ハ其犯罪ノ用ニ供シタル器械ヲ没収ス
第三十三条 猥褻ノ新聞紙ヲ発行スルトキハ発行人、編輯人ヲ一月以上六月以下ノ軽禁錮又ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十四条 第十三条ノ場合ニ於テ私事ニ係ルモノハ被害者ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第三十五条 此条例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ自首減軽再犯加重数罪俱発ノ例ヲ用ヒス
第三十六条 此条例ニ関スル公訴ノ期満免除ハ六箇月トス
第三十七条 時々ニ発行スル雑誌ノ類ハ出板条例ニ依ルモノヲ除クノ外皆此条例ニ依ル