結核予防法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第133号
公布年月日: 平成16年6月23日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

戦後の取り組みにより結核の罹患状況は改善してきたが、依然として最大級の感染症であり、近年は改善傾向が鈍化している。結核を取り巻く環境の変化に対応した新たな対策推進が必要となっている。このため、予防接種前のツベルクリン反応検査の廃止や健康診断の実施方法等の見直しを行うことを目的として、本法律案を提出するものである。

参照した発言:
第159回国会 参議院 厚生労働委員会 第12号

審議経過

第159回国会

参議院
(平成16年4月20日)
(平成16年4月22日)
(平成16年4月23日)
衆議院
(平成16年6月9日)
(平成16年6月11日)
(平成16年6月15日)
結核予防法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十六年六月二十三日
内閣総理大臣 小泉純一郎
法律第百三十三号
結核予防法の一部を改正する法律
結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一章 総則(第一条―第三条)」を
第一章
総則(第一条―第三条の二)
第一章の二
基本指針等(第三条の三・第三条の四)
に、「結核診査協議会」を「結核の診査に関する協議会」に、「第七十一条」を「第七十二条」に改める。
第二条及び第三条を次のように改める。
(国及び地方公共団体の責務)
第二条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動その他の活動を通じた結核に関する正しい知識の普及、結核に関する情報の収集、整理、分析及び提供、結核に関する研究の推進、結核菌の検査能力の向上並びに結核の予防に係る人材の養成及び資質の向上を図るとともに、結核患者が適正な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、結核患者の人権の保護に配慮しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、結核の予防に関する施策を、地域の特性に配慮しつつ、総合的に実施するよう努めるとともに、相互に連携を図らなければならない。
3 国は、結核に関する情報の収集及び研究並びに結核に係る医療のための医薬品の研究開発の推進並びに結核菌の検査の実施を図るための体制を整備し、国際的な連携を確保するよう努めるとともに、地方公共団体に対し前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。
(国民の責務)
第三条 国民は、結核に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、結核患者の人権が損なわれることがないようにしなければならない。
第一章中第三条の次に次の一条を加える。
(医師等の責務)
第三条の二 医師その他の医療関係者は、結核の予防に関し国及び地方公共団体が講ずる施策に協力し、その予防に寄与するよう努めるとともに、結核患者が置かれている状況を深く認識し、適正な医療を行うよう努めなければならない。
2 病院、診療所、老人福祉施設、矯正施設その他の施設の開設者及び管理者は、当該施設において結核が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第一章の次に次の一章を加える。
第一章の二 基本指針等
(基本指針)
第三条の三 厚生労働大臣は、結核の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 結核の予防の推進の基本的な方向
二 結核の予防のための施策に関する事項
三 結核患者に対する適正な医療の提供のための施策に関する事項
四 結核に関する研究の推進に関する事項
五 結核に係る医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項
六 結核の予防に関する人材の養成に関する事項
七 結核に関する啓発及び知識の普及並びに結核患者の人権の配慮に関する事項
八 その他結核の予防の推進に関する重要事項
3 厚生労働大臣は、少なくとも五年ごとに基本指針に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
4 厚生労働大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、厚生科学審議会の意見を聴かなければならない。
5 厚生労働大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(予防計画)
第三条の四 都道府県は、基本指針に即して、結核の予防のための施策の実施に関する計画(以下この条において「予防計画」という。)を定めなければならない。
2 予防計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 地域の実情に即した結核の予防のための施策に関する事項
二 地域の実情に即した結核患者に対する適正な医療の提供のための施策に関する事項
三 結核に関する研究の推進、人材の養成、知識の普及その他地域の実情に即した結核の予防のための施策に関する重要事項
3 都道府県は、基本指針が変更された場合には、予防計画に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
4 都道府県は、予防計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、市町村及び診療に関する学識経験者の団体の意見を聴かなければならない。
5 都道府県は、予防計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを厚生労働大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
6 予防計画は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第十条の規定により定める感染症の予防のための施策の実施に関する計画と一体のものとして定めることができる。
第四条第一項中「除く。)」の下に「であつて政令で定めるもの」を加え、同条第三項中「市町村長」の下に「(特別区の長を含む。以下同じ。)」を、「以外の者」の下に「であつて政令で定めるもの」を加える。
第五条及び第六条を次のように改める。
(定期外の健康診断)
第五条 都道府県知事は、結核の予防上特に必要があると認めるときは、結核にかかつていると疑うに足りる正当な理由のある者に対し結核にかかつているかどうかに関する医師の健康診断を受け、又はその保護者(親権を行う者又は後見人をいう。以下同じ。)に対し結核にかかつていると疑うに足りる正当な理由のある者に健康診断を受けさせるべきことを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該結核にかかつていると疑うに足りる正当な理由のある者について、当該職員に健康診断を行わせることができる。
3 都道府県知事は、第一項に規定する健康診断の勧告をし、又は前項に規定する健康診断の措置を実施する場合には、同時に、当該勧告をし、又は当該措置を実施する理由その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。ただし、当該事項を書面により通知しないで健康診断の勧告をし、又は健康診断の措置を実施すべき差し迫つた必要がある場合は、この限りでない。
4 都道府県知事は、前項ただし書の場合においては、当該健康診断の勧告又は措置の後相当の期間内に、同項の理由その他の厚生労働省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。
第六条 削除
第七条第二項を削る。
第八条中「又は定期外」を削り、「基く」を「基づく」に、「且つ」を「かつ」に改める。
第十二条中「実施に関する」を「方法及び」に改める。
第十三条第一項から第三項までを削り、同条第四項中「、ツベルクリン反応検査を行い、かつ、その反応が陰性である者に対して」を削り、同項を同条とする。
第十四条中「、第五条各号に掲げる者について」及び「、ツベルクリン反応検査を行い、かつ、その反応が陰性である者に対しては」を削る。
第十五条を次のように改める。
第十五条 削除
第十六条中「第十三条各項」を「第十三条」に改める。
第十七条を次のように改める。
(予防接種を受ける責務)
第十七条 第十三条の予防接種の対象者は、同条の規定により行われる予防接種(同条の規定により指定された期日又は期間満了前三月以内に市町村長以外の者により行われる予防接種であつて、第二十一条の規定に基づく厚生労働省令で定める技術的基準(次項において「予防接種基準」という。)に適合するものを含む。)を受けるよう努めなければならない。
2 第十四条の規定により予防接種の対象者として指定された者は、同条の規定により行われる予防接種(同条の規定により指定があつた日以後当該指定に係る期日又は期間満了の日までの間に、都道府県知事以外の者により行われる予防接種であつて、予防接種基準に適合するものを含む。)を受けるよう努めなければならない。
第十九条の見出し中「ツベルクリン反応検査及び」を削り、同条中「ツベルクリン反応検査又は」を削る。
第二十一条中「ツベルクリン反応検査及び」を削る。
第二十一条の二第一項中「第十七条第二項に規定する予防接種又は同条第三項」を「第十七条」に改める。
第二十五条中「訪問させ、」の下に「処方された薬剤を確実に服用することその他」を加える。
第二十六条中「(親権を行う者又は後見人をいう。以下同じ。)」を削り、「に対して、」の下に「処方した薬剤を確実に服用することその他厚生労働省令で定める患者の治療に必要な事項及び」を加え、「、隔離」を削る。
第二十八条第二項中「結核診査協議会」を「結核の診査に関する協議会」に改める。
第三十条中「、患者の隔離」を削る。
第三十四条第三項中「結核診査協議会」を「結核の診査に関する協議会」に改める。
第七章の章名を次のように改める。
第七章 結核の診査に関する協議会
第四十八条の見出しを「(結核の診査に関する協議会)」に改め、同条第一項中「結核診査協議会」を「結核の診査に関する協議会(以下「協議会」という。)」に改め、同条第二項中「結核診査協議会」を「協議会」に改める。
第四十九条第一項中「結核診査協議会」を「協議会」に、「五人」を「三人以上」に改め、同条第二項中「関係行政庁の職員及び」を削り、「従事する者」の下に「及び医療以外の学識経験を有する者」を加え、同項に次のただし書を加える。
ただし、その過半数は、医師のうちから任命しなければならない。
第四十九条第三項から第五項までを削る。
第五十条を次のように改める。
(条例への委任)
第五十条 この法律に規定するもののほか、協議会に関し必要な事項は、条例で定める。
第五十一条第三号を削り、同条第四号中「ツベルクリン反応検査及び」を削り、同号を同条第三号とし、同条第五号中「行なう」を「行う」に改め、同条中同号を第四号とし、第六号から第十号までを一号ずつ繰り上げる。
第五十二条第三号を削り、同条第四号中「ツベルクリン反応検査及び」を削り、同条中同号を第三号とし、第五号を第四号とする。
第五十四条中「次に掲げる」を「第四条第一項の規定による定期の健康診断に要する」に改め、各号を削る。
第五十五号中「次に掲げる」を「第四条第一項の規定により、学校又は施設の長が行う定期の健康診断に要する」に改め、各号を削る。
第五十五条の二中「第五十二条第五号」を「第五十二条第四号」に改める。
第五十六条中「次に掲げる」を「第五十五条の」に改め、各号を削る。
第五十六条の二第一項第一号中「第五十一条第九号」を「第五十一条第八号」に改め、同項第二号中「第五十一条第十号」を「第五十一条第九号」に改める。
第五十七条第二号中「、第四号から第八項まで及び第十号」を「から第七号まで及び第九号」に改める。
第六十二条中「、ツベルクリン反応検査」を削り、「結核診査協議会」を「協議会」に、「欠陥」を「障害」に、「三十万円」を「百万円」に改める。
第六十三条中「十万円」を「五十万円」に改め、第一号を削り、第二号を第一号とし、第三号から第六号までを一号ずつ繰り上げ、第七号を削る。
第六十三条の二を削る。
第六十四条第二項中「ツベルクリン反応検査(第四条第一項及び第三項並びに第五条に規定する健康診断において行われるものを除く。以下この項において同じ。)又は」及び「ツベルクリン反応検査又は」を削る。
第六十五条第一項中「、第十三条第二項の規定によるツベルクリン反応検査又は同条第一項若しくは第二項の規定による予防接種」及び「、ツベルクリン反応検査又は予防接種」を削り、同条第二項を削る。
第六十六条第四項中「、ツベルクリン反応検査」を削る。
第六十七条中「第十四条」の下に「、第十七条第二項」を加え、「第四号及び第六号、第六十三条第四号」を「第三号及び第五号、第六十三条第三号」に、「第三十七条第二項」を「第三十七条」に、「及び第四号から第十号」を「から第九号」に改める。
本則に次の一条を加える。
(経過措置)
第七十二条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要とされる範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(保健所において執行される事業等に伴う経理事務の合理化に関する特別措置法の一部改正)
第三条 保健所において執行される事業等に伴う経理事務の合理化に関する特別措置法(昭和三十九年法律第百五十五号)の一部を次のように改正する。
第一条第二号中「及び第四号から第七号」を「から第六号」に改める。
(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部改正)
第四条 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)の一部を次のように改正する。
第十条に次の一項を加える。
6 予防計画は、結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)第三条の四の規定により定める結核の予防のための施策の実施に関する計画と一体のものとして定めることができる。
厚生労働大臣 坂口力
内閣総理大臣 小泉純一郎