著作権法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第七十二号
公布年月日: 平成14年6月19日
法令の形式: 法律
著作権法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十四年六月十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎
法律第七十二号
著作権法の一部を改正する法律
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第九十一条」を「第九十条の二」に、「第百条の四」を「第百条の五」に、「第七節 権利の制限、譲渡及び行使等並びに登録(第百二条―第百四条)」を
第七節
実演家人格権の一身専属性等(第百一条の二・第百一条の三)
第八節
権利の制限、譲渡及び行使等並びに登録(第百二条―第百四条)
に改める。
第二条第一項第二十号中「第八十九条第六項」を「第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項」に改め、「(著作者」の下に「又は実演家」を、「したならば著作者人格権」の下に「又は実演家人格権」を加える。
第三条第一項中「同条」を「第四条の二及び第六十三条」に改める。
第四条の次に次の一条を加える。
(レコードの発行)
第四条の二 レコードは、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、第九十六条に規定する権利を有する者又はその許諾(第百三条において準用する第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。第四章第二節及び第三節において同じ。)を得た者によつて作成され、頒布された場合(第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項に規定する権利を有する者の権利を害しない場合に限る。)において、発行されたものとする。
第七条第六号ロ中「次条第四号」を「次条第五号」に改め、同号を同条第七号とし、同条第五号の次に次の一号を加える。
六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに掲げる実演
イ 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)の締約国において行われる実演
ロ 次条第四号に掲げるレコードに固定された実演
第八条第五号を同条第六号とし、同条第四号中「前三号」を「前各号」に改め、同号を同条第五号とし、同条第三号の次に次の一号を加える。
四 前三号に掲げるもののほか、次のいずれかに掲げるレコード
イ 実演・レコード条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)をレコード製作者とするレコード
ロ レコードでこれに固定されている音が最初に実演・レコード条約の締約国において固定されたもの
第八十九条第一項中「実演家は、」の下に「第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに」を加え、同条第四項中「第百条の四」を「第百条の五」に改め、同条第六項中「権利(」の下に「実演家人格権並びに」を加える。
第四章第二節中第九十一条の前に次の二条を加える。
(氏名表示権)
第九十条の二 実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有する。
2 実演を利用する者は、その実演家の別段の意思表示がない限り、その実演につき既に実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示することができる。
3 実演家名の表示は、実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき又は公正な慣行に反しないと認められるときは、省略することができる。
4 第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一 行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演につき既にその実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示するとき。
二 行政機関情報公開法第六条第二項の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演の実演家名の表示を省略することとなるとき。
(同一性保持権)
第九十条の三 実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2 前項の規定は、実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は公正な慣行に反しないと認められる改変については、適用しない。
第九十一条第二項中「(第百三条において準用する第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。以下この節及び次節において同じ。)」を削り、「もつぱら」を「専ら」に改める。
第九十五条第一項中「第五号」を「第六号」に、「及び第三項」を「から第四項まで」に改め、同条第二項中「締約国」の下に「については、当該締約国」を加え、「実演家等保護条約の規定」を「実演家等保護条約第十六条1(a)(i)の規定」に改め、「している」の下に「国以外の」を加え、「については、適用しない」を「について適用する」に改め、同条第十三項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第十四項とし、同条第十二項中「第九項」を「第十項」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十一項中「同条第四項」を「同条第五項」に、「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改め、同項を同条第十二項とし、同条第十項を同条第十一項とし、同条第九項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第九項とし、同条第七項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第八項とし、同条第六項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第七項とし、同条中第五項を第六項とし、第四項を第五項とし、第三項の次に次の一項を加える。
4 第一項の規定は、実演・レコード条約の締約国(実演家等保護条約の締約国を除く。)であつて、実演・レコード条約第十五条(3)の規定により留保を付している国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家については、当該留保の範囲に制限して適用する。
第九十五条の三第四項中「第九十五条第四項から第十三項まで」を「第九十五条第五項から第十四項まで」に、「同条第九項」を「同条第十項」に、「同条第十一項」を「同条第十二項」に改め、同条第五項中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改め、同条第六項中「第九十五条第六項から第十三項まで」を「第九十五条第七項から第十四項まで」に改める。
第九十七条第一項中「第三号」を「第四号」に改め、同条第二項中「第九十五条第二項」の下に「及び第四項」を加え、「及び第三項」を「から第四項までの規定」に、「同項」を「同条第三項」に改め、同条第四項中「第九十五条第五項から第十三項まで」を「第九十五条第六項から第十四項まで」に改める。
第九十七条の三第五項中「第九十五条第五項から第十三項まで」を「第九十五条第六項から第十四項まで」に改め、同条第七項中「第九十五条第五項」を「第九十五条第六項」に、「第九十五条第六項」を「第九十五条第七項」に改める。
第九十九条の次に次の一条を加える。
(送信可能化権)
第九十九条の二 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有する。
第四章第五節中第百条の四を第百条の五とし、第百条の三の次に次の一条を加える。
(送信可能化権)
第百条の四 有線放送事業者は、その有線放送を受信してこれを送信可能化する権利を専有する。
第百一条中「の各号」を削り、「始まり、当該各号の行為が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時をもつて満了する」を「始まる」に改め、同条第一号及び第三号中「行なつた」を「行つた」に改め、同条に次の一項を加える。
2 著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時をもつて満了する。
一 実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
二 レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年(その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して五十年を経過する時までの間に発行されなかつたときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して五十年)を経過した時
三 放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
四 有線放送に関しては、その有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
第四章中第七節を第八節とし、第六節の次に次の一節を加える。
第七節 実演家人格権の一身専属性等
(実演家人格権の一身専属性)
第百一条の二 実演家人格権は、実演家の一身に専属し、譲渡することができない。
(実演家の死後における人格的利益の保護)
第百一条の三 実演を公衆に提供し、又は提示する者は、その実演の実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該実演家の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
第百二条の次に次の一条を加える。
(実演家人格権との関係)
第百二条の二 前条の著作隣接権の制限に関する規定(同条第三項の規定を除く。)は、実演家人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。
第百三条中「又は第九十六条の二」を「、第九十六条の二、第九十九条の二又は第百条の四」に改める。
第百十二条第一項中「出版権者」の下に「、実演家」を加え、「出版権又は」を「出版権、実演家人格権又は」に改め、同条第二項中「出版権者」の下に「、実演家」を加え、「もつぱら」を「専ら」に改める。
第百十三条第一項中「出版権」の下に「、実演家人格権」を加え、同条第三項中「著作権」の下に「、実演家人格権」を加える。
第百十五条中「著作者は」を「著作者又は実演家は」に改め、「著作者人格権」の下に「又は実演家人格権」を、「、著作者」の下に「又は実演家」を、「その他著作者」の下に「若しくは実演家」を加える。
第百十六条の見出し中「著作者」の下に「又は実演家」を加え、同条第一項中「著作者の」を「著作者又は実演家の」に改め、「当該著作者」の下に「又は実演家」を、「について第六十条」の下に「又は第百一条の三」を、「著作者人格権」の下に「又は実演家人格権」を、「又は第六十条」の下に「若しくは第百一条の三」を加え、同条第二項及び第三項中「著作者」の下に「又は実演家」を加える。
第百十九条第一号中「出版権」の下に「、実演家人格権」を加え、「著作権若しくは」を「著作権、実演家人格権若しくは」に改める。
第百二十条中「第六十条」の下に「又は第百一条の三」を加える。
第百二十条の二第三号中「著作権」の下に「、実演家人格権」を加える。
第百二十四条第一項第一号及び第二号中「著作者人格権」の下に「又は実演家人格権」を加える。
附 則
(施行期日)
1 この法律の規定は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める日から施行する。
一 第七条の改正規定、第八条の改正規定、第九十五条の改正規定、第九十五条の三の改正規定、第九十七条の改正規定、第九十七条の三の改正規定並びに附則第二項から第四項まで、第六項、第七項及び第九項の規定 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)が日本国について効力を生ずる日
二 目次の改正規定(「第百条の四」を「第百条の五」に改める部分に限る。)、第八十九条第四項の改正規定、第九十九条の次に一条を加える改正規定、第四章第五節中第百条の四を第百条の五とし、第百条の三の次に一条を加える改正規定及び第百三条の改正規定 平成十五年一月一日
三 前二号に掲げる規定以外の規定 実演・レコード条約が日本国について効力を生ずる日又は平成十五年一月一日のうちいずれか早い日
(著作隣接権に関する規定の適用)
2 改正後の著作権法(以下「新法」という。)第七条第四号に掲げる実演(同条第一号から第三号までに掲げる実演に該当するものを除く。)で次に掲げるもの又は同条第五号に掲げる実演で次に掲げるものに対する新法中著作隣接権に関する規定(第九十五条並びに第九十五条の三第三項及び第四項の規定を含む。)の適用については、著作権法の一部を改正する法律(昭和六十一年法律第六十四号)附則第三項、著作権法の一部を改正する法律(平成元年法律第四十三号。以下「平成元年改正法」という。)附則第二項及び著作権法の一部を改正する法律(平成三年法律第六十三号。以下「平成三年改正法」という。)附則第二項の規定は、適用しない。
一 実演・レコード条約の締約国において行われた実演
二 次に掲げるレコードに固定された実演
イ 実演・レコード条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)をレコード製作者とするレコード
ロ レコードでこれに固定されている音が最初に実演・レコード条約の締約国において固定されたもの
3 前項各号に掲げる実演に係る実演家で当該実演が行われた際国内に常居所を有しない外国人であったものに対する新法中著作隣接権に関する規定(第九十五条並びに第九十五条の三第三項及び第四項の規定を含む。)の適用については、平成元年改正法附則第四項の規定は、適用しない。
4 次に掲げるレコードに対する新法中著作隣接権に関する規定(第九十七条及び第九十七条の三第三項から第五項までの規定を含む。)の適用については、著作権法の一部を改正する法律(昭和五十三年法律第四十九号)附則第二項、平成元年改正法附則第二項及び第三項並びに平成三年改正法附則第三項の規定は、適用しない。
一 新法第八条第三号に掲げるレコードで次に掲げるもの
イ 実演・レコード条約の締約国の国民をレコード製作者とするレコード
ロ レコードでこれに固定されている音が最初に実演・レコード条約の締約国において固定されたもの
二 新法第八条第四号に掲げるレコードで許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約により我が国が保護の義務を負うもの
(実演家人格権についての経過措置)
5 この法律の施行前にその実演家の許諾を得て作成された録音物又は録画物に固定されている実演については、新法第九十条の二第一項の規定及び第九十条の三第一項の規定は、適用しない。ただし、この法律の施行後、当該実演に表示されていた当該実演に係る実演家名の表示を削除し、若しくは改変した場合若しくは当該実演に新たに実演家名を表示した場合又は当該実演を改変した場合には、この限りでない。
(商業用レコードの二次使用についての経過措置)
6 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(以下この項及び次項において「実演家等保護条約」という。)の締約国であり、かつ実演・レコード条約の締約国である国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演であって、実演家等保護条約が日本国について効力を生じた日より前に当該固定がされた実演に係る実演家についての新法第九十五条第一項の規定の適用については、同条第二項の規定にかかわらず、同条第四項の規定の例による。
7 実演家等保護条約の締約国であり、かつ実演・レコード条約の締約国である国の国民をレコード製作者とするレコードであって、実演家等保護条約が日本国について効力を生じた日より前にその音が最初に固定されたレコードに係るレコード製作者についての新法第九十七条第一項の規定の適用については、同条第二項の規定において準用する新法第九十五条第二項の規定にかかわらず、新法第九十七条第二項の規定において準用する新法第九十五条第四項の規定の例による。
(レコードの保護期間についての経過措置)
8 新法第百一条第二項第二号の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作隣接権が存するレコードについて適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作隣接権が消滅しているレコードについては、なお従前の例による。
(著作権等管理事業法の一部改正)
9 著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
第二十五条第一号中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改める。
文部科学大臣 遠山敦子
内閣総理大臣 小泉純一郎