(目的)
第一条 この法律は、美術品について登録制度を実施し、登録美術品の美術館における公開を促進することによって、国民の美術品を鑑賞する機会の拡大を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 美術品 絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産をいう。
二 美術館 博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)第二条第一項に規定する博物館又は同法第二十九条の規定により博物館に相当する施設として指定された施設のうち、美術品の公開及び保管を行うものをいう。
三 登録美術品 次条第一項の登録を受けた美術品をいう。
四 登録美術品公開契約 登録美術品の所有者が美術館の設置者に対して登録美術品を引き渡すことを約し、美術館の設置者が美術館において当該登録美術品を公開することを約する契約であって、次の要件を満たすものをいう。
ロ 当事者が解約の申入れをすることができない旨の定めがあること。
(美術品の登録)
第三条 美術品の所有者は、その美術品について文化庁長官の登録を受けることができる。
2 文化庁長官は、前項の登録の申請があった場合において、当該申請に係る美術品が次の各号のいずれかに該当するものであり、かつ、当該美術品に係る登録美術品公開契約が確実に締結される見込みがあると認めるときは、登録をしなければならない。
一 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七条第一項の規定により重要文化財に指定されたものであること。
二 前号に掲げるもののほか、世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学術上特に優れた価値を有するものであること。
3 文化庁長官は、前項の規定により登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない。
4 前三項に規定するもののほか、登録の申請その他登録に関し必要な事項は、文部省令で定める。
(契約美術館の設置者の義務)
第四条 登録美術品公開契約を締結した美術館の設置者(以下「契約美術館の設置者」という。)は、登録美術品を積極的に公開し、かつ、善良な管理者の注意をもってその保管を行わなければならない。
(承継)
第五条 登録美術品の所有者について相続又は合併があったときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人は、その登録美術品の所有者の地位を承継する。
2 前項の規定により登録美術品の所有者の地位を承継した者は、遅滞なく、その旨を文化庁長官に届け出なければならない。
(登録の取消し)
第六条 文化庁長官は、次の各号のいずれかに該当するとき又は登録美術品の所有者から第三条第一項の登録の取消しの申請があったときは、登録美術品についてその登録を取り消さなければならない。
一 登録美術品が第三条第二項各号のいずれかに該当しなくなったと認められるとき。
二 登録美術品の所有者が、第三条第三項の規定による通知を受けた日から三月以内に、当該登録美術品について美術館の設置者との間で登録美術品公開契約を締結せず、又は当該登録美術品に係る契約美術館の設置者に当該登録美術品を引き渡さないとき。
三 登録美術品が美術館において公開されていないと認められるとき。
四 登録美術品公開契約が終了したとき(その終了に際し、登録美術品の所有者が、当該登録美術品について、美術館の設置者との間で登録美術品公開契約を締結し、かつ、当該登録美術品を当該美術館の設置者に引き渡したときを除く。)。
五 登録美術品の所有者が不正の手段により第三条第一項の登録を受けたとき。
2 文化庁長官は、前項の規定により登録を取り消したときは、遅滞なく、その旨を登録美術品の所有者及び契約美術館の設置者に通知しなければならない。
(登録美術品の所有者の報告)
第七条 登録美術品の所有者は、次の各号のいずれかに該当するときは、文部省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を文化庁長官に報告しなければならない。
一 登録美術品(第三条第二項第一号に該当するものを除く。)を契約美術館の設置者に引き渡す前に、当該登録美術品の全部若しくは一部が滅失し、若しくはき損し、又はこれを亡失し、若しくは盗み取られたとき。
(契約美術館の設置者の報告等)
第八条 契約美術館の設置者は、次の各号のいずれかに該当するときは、文部省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を文化庁長官に報告しなければならない。
二 登録美術品の引渡しを受けた後に、当該登録美術品の全部若しくは一部が滅失し、若しくはき損し、又はこれを亡失し、若しくは盗み取られたとき。
2 契約美術館の設置者は、文部省令で定めるところにより、毎年度、登録美術品の公開及び保管の計画を作成し、文化庁長官に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。
3 契約美術館の設置者は、文部省令で定めるところにより、毎年度、登録美術品の公開及び保管の状況を文化庁長官に報告しなければならない。
(美術館の設置者のあっせん)
第九条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、登録美術品公開契約が締結されるよう、登録美術品の所有者に対し、美術館の設置者のあっせんに努めなければならない。
(情報の提供等)
第十条 文化庁長官は、国民の登録美術品を鑑賞する機会の拡大を図るため、登録美術品の所在に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(登録美術品の公開等に関する指導等)
第十一条 文化庁長官は、契約美術館の設置者に対し、登録美術品の公開又は保管に関し必要な指導又は助言を行うことができる。
(国が所有権を取得した登録美術品の公開)
第十二条 国は、登録美術品の所有権を取得したときは、当該美術品を美術館において積極的に公開するよう努めるものとする。
(文化財保護法の特例)
第十三条 第八条第二項の規定により届け出た公開及び保管の計画(同項後段の規定による変更の届出があったときは、その変更後のもの。次項において同じ。)に従って契約美術館の設置者が行う登録美術品(第三条第二項第一号に該当するものに限る。次項において同じ。)の公開に関する文化財保護法の規定の適用については、当該計画又はその変更の届出があったことをもって、同法第五十三条第一項本文の許可があったものとみなす。この場合において、同条第三項中「第一項の許可を与える場合において、その許可の条件として、許可に」とあるのは「契約美術館の設置者(美術品の美術館における公開の促進に関する法律(平成十年法律第九十九号)第四条に規定する契約美術館の設置者をいう。次項において同じ。)が同法第八条第二項の規定による登録美術品の公開及び保管の計画の届出(同項後段の規定による計画の変更の届出を含む。)をした場合において、当該届出に」と、同条第四項中「第一項の許可を受けた者が前項の許可の条件に」とあるのは「契約美術館の設置者が前項の指示に」と、「許可に係る公開の停止を命じ、又は許可を取り消すこと」とあるのは「公開の停止を命ずること」とする。
2 契約美術館が文化財保護法第五十三条第一項ただし書に規定する公開承認施設である場合において、第八条第二項の規定により届け出た公開及び保管の計画に従って当該契約美術館の設置者が当該契約美術館において行う登録美術品の公開については、同法第五十三条第二項の規定は適用しない。