(預金保険機構の業務の特例)
第三条 預金保険機構(以下「機構」という。)は、預金保険法第三十四条に規定する業務のほか、第一条の目的を達成するため、同法附則第七条第一項の規定により同項の協定を締結した銀行と、金融機関等の自己資本充実のための業務の委託に関する協定(以下「協定」という。)を締結し、及び当該協定を実施するための次の業務を行うことができる。
一 協定銀行に対し、第七条第一項の規定による貸付け又は債務の保証を行うこと。
二 協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により生じた損失の補てんを行うこと。
三 次条第一項第八号の規定に基づき協定銀行から納付される金銭の収納を行うこと。
2 前項に規定する「金融機関等の自己資本充実のための業務」とは、次に掲げる業務をいう。
一 金融機関等が発行する優先株式等の引受けを行うこと。
二 金融機関等に対する劣後特約付金銭消費貸借による貸付けを行うこと。
三 第一号の引受けにより取得をした優先株式等(当該優先株式等が優先株式又は劣後特約付社債である場合の当該取得後においては、次に掲げる株式を含む。以下「取得優先株式等」という。)の譲渡その他の処分を行うこと。
イ 当該優先株式が他の種類の株式への転換が可能とされる株式である場合にその転換により発行された他の種類の株式及び当該優先株式又は当該他の種類の株式について商法(明治三十二年法律第四十八号)の規定により分割又は併合された株式
ロ 当該劣後特約付社債が株式への転換が可能とされる社債である場合にその転換により発行された株式及びこれについて商法の規定により分割又は併合された株式
四 第二号の貸付けにより取得をした貸付債権(以下「取得貸付債権」という。)の譲渡その他の処分を行うこと。
3 前項に規定する金融機関等の自己資本充実のための業務のうち、同項第一号及び第二号に掲げる業務は、次の各号のいずれかに該当する場合においてのみ行うものとする。
一 預金保険法第五十九条第一項に規定する資金援助に係る同項の合併等により自己資本の充実の状況が悪化した金融機関について、協定銀行の前項第一号又は第二号の業務による引受け又は貸付けによりその自己資本の充実の状況が改善されなければ、信用秩序の維持と地域経済の安定に大きな支障が生ずることとなる事態を生じさせるおそれがある場合
二 経営の状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関等について、協定銀行の前項第一号又は第二号の業務による引受け又は貸付けによりその自己資本の充実の状況が改善されなければ、我が国における金融の機能に対する内外の信頼が大きく低下するとともに信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずることとなる事態として次に掲げるいずれかの事態を生じさせるおそれがある場合
イ 当該金融機関等が内外の金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、我が国における金融の機能に著しい障害が生ずることとなる事態
ロ 当該金融機関等が破綻し、それが他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させることとなる等により、当該金融機関等及び当該他の金融機関等が業務を行っている地域又は分野において、企業の活動や雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済活動に著しい障害が生ずることとなる事態
(協定)
第四条 協定は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
一 協定銀行は、協定の締結の日から平成十三年三月三十一日までの間に自己資本の充実のため優先株式等の発行又は劣後特約付金銭消費貸借による借入れ(以下この号において「優先株式等の発行等」という。)を行おうとする金融機関等(以下「発行金融機関等」という。)から、優先株式等の発行等に係る申込みを受けたときは、機構に対し、当該発行金融機関等と連名で、協定銀行が当該申込みに係る優先株式等の引受け又は劣後特約付金銭消費貸借による貸付け(以下「優先株式等の引受け等」という。)を行うことについての承認を申請し、その承認を受けること。
二 協定銀行は、第七条第一項に規定する債務の保証の対象となる資金の借入れに関する契約の締結をしようとするときは、機構に対し、当該締結をしようとする契約の内容についての承認を申請し、その承認を受けること。
三 協定銀行は、第一号の規定による承認を受けて優先株式等の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
四 協定銀行は、取得優先株式等及び取得貸付債権については、機構が第十二条に規定する金融危機管理審査委員会(以下この章において「審査委員会」という。)の議決を経て定める取得優先株式等及び取得貸付債権の譲渡その他の処分の基準に従い、できる限り早期に譲渡その他の処分を行うよう努めること。
五 協定銀行は、取得優先株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行おうとするときは、機構に対し、当該処分を行うことについての承認を申請し、その承認を受けること。
六 協定銀行は、前号の規定による承認を受けて同号の取得優先株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
七 協定銀行は、協定の定めによる業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理すること。
八 協定銀行は、毎事業年度、協定の定めによる業務により生じた利益の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、当該利益の額に相当する金額を機構に納付すること。
九 協定銀行は、優先株式等の引受け等を行った金融機関等の経営に不当な関与をしてはならないこと。
2 機構は、協定を締結するときは、あらかじめ審査委員会の議決を経なければならない。
3 機構は、協定を締結したときは、直ちに、その協定の内容を大蔵大臣に報告しなければならない。
(優先株式等の引受け等の承認等)
第五条 機構は、優先株式等の引受け等に係る前条第一項第一号の申請を受けたときは、速やかに、審査委員会における議決を得る手続をとらなければならない。
2 機構は、審査委員会の前項の議決が同項の申請を承認することを決するものであったときは、直ちに、大蔵大臣及び内閣総理大臣(当該申請に係る発行金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては大蔵大臣並びに内閣総理大臣及び労働大臣とし、当該発行金融機関等が第二条第一項第二号から第四号までに掲げるもの(以下「農水産業協同組合連合会等」という。)である場合にあっては大蔵大臣並びに農林水産大臣及び内閣総理大臣とする。次項及び第二十四条第三項において同じ。)の承認を求めなければならない。
3 大蔵大臣及び内閣総理大臣は、機構から前項の規定による承認の求めがあったときは、閣議にかけて、当該承認をするかどうかを決定しなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が信用協同組合(一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合に限る。第六項及び第二十条第一号において同じ。)であるときは、あらかじめ、当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
5 農林水産大臣及び内閣総理大臣は、第三項の規定による承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が農水産業協同組合連合会等(一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等に限る。)であるときは、あらかじめ、当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
6 機構は、協定銀行から、前条第一項第三号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を大蔵大臣及び内閣総理大臣(同号の優先株式等の引受け等に係る金融機関等が信用協同組合である場合にあっては大蔵大臣並びに内閣総理大臣及び当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては大蔵大臣並びに内閣総理大臣及び労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては大蔵大臣並びに農林水産大臣、内閣総理大臣及び当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては大蔵大臣並びに農林水産大臣及び内閣総理大臣とする。次条第二項において同じ。)に報告しなければならない。
(取得優先株式等の処分の承認等)
第六条 機構は、第四条第一項第五号に規定する処分に係る同号の申請の承認をするときは、あらかじめ審査委員会の議決を経なければならない。ただし、当該申請に係る処分が、機構の同項第四号に規定する処分の基準において審査委員会の議決を経ることを要しないものとされた処分に該当するものであるときは、この限りでない。
2 機構は、協定銀行から、第四条第一項第六号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を大蔵大臣及び内閣総理大臣に報告しなければならない。
(資金の貸付け及び債務の保証)
第七条 機構は、協定銀行から、協定の定めによる優先株式等の引受け等のために必要とする資金その他の協定の定めによる業務の円滑な実施のために必要とする資金について、その資金の貸付け又は協定銀行によるその資金の借入れに係る債務の保証の申込みを受けた場合において、必要があると認めるときは、審査委員会の議決を経て、当該貸付け又は債務の保証を行うことができる。
2 機構は、前項の規定により協定銀行との間で同項の貸付け又は債務の保証に係る契約を締結したときは、直ちに、その契約の内容を大蔵大臣に報告しなければならない。
(損失の補てん)
第八条 機構は、協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により協定銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した金額の範囲内において、当該損失の補てんを行うことができる。
(報告の徴求)
第九条 機構は、第三条第一項の規定による機構の業務(以下「金融危機管理業務」という。)を行うため必要があるときは、協定銀行に対し、協定の実施又は財務の状況に関し報告を求めることができる。
(区分経理)
第十条 機構は、金融危機管理業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定(以下「金融危機管理勘定」という。)を設けて整理しなければならない。
(借入金及び預金保険機構債券)
第十一条 機構は、金融危機管理業務を行うため必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、大蔵大臣の認可を受けて、日本銀行若しくは金融機関等から資金の借入れ(借換えを含む。)をし、又は預金保険機構債券(以下この条及び第二十七条において「債券」という。)の発行(債券の借換えのための発行を含む。)をすることができる。
2 日本銀行は、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十三条第一項の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。
3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、機構に対し、第一項の資金の貸付けをすることができる。
4 第一項の規定により発行される債券については、これを預金保険法第四十二条第三項の規定により発行される債券とみなして、同条第四項から第八項までの規定を適用する。