商法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第56号
公布年月日: 平成9年5月21日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

会社をめぐる最近の社会経済情勢を踏まえ、ストックオプション制度を整備し、株式会社の取締役及び使用人の意欲や士気を高め、優秀な人材確保の手段として企業の業績向上や国際競争力の増大に資するとともに、自己の株式の消却に関する手続を緩和することにより、資本市場の効率化、活性化を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている。このため、株式会社について、株式及び新株引受権によるストックオプション制度の整備を図るための商法改正と、上場会社等の自己株式取得・消却手続に関する特例法の制定を行うものである。

参照した発言:
第140回国会 衆議院 法務委員会 第6号

審議経過

第140回国会

衆議院
(平成9年5月7日)
(平成9年5月8日)
参議院
(平成9年5月13日)
(平成9年5月15日)
(平成9年5月16日)
商法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成九年五月二十一日
内閣総理大臣 橋本龍太郎
法律第五十六号
商法の一部を改正する法律
商法(明治三十二年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三節ノ二 新株ノ発行」を
第三節ノ二
新株ノ発行
第三節ノ三
取締役又ハ使用人ニ対スル新株ノ引受権ノ付与
に改める。
第百七十五条第二項第四号ノ二の次に次の一号を加える。
四ノ三 取締役又ハ使用人ニ新株ノ引受権ヲ与フベキコトヲ定メタルトキハ其ノ規定
第二百十条ノ二第一項中「使用人」を「取締役又ハ使用人」に、「百分ノ三」を「十分ノ一」に改め、同条第二項中「使用人」を「取締役又ハ使用人」に改め、同項に次の一号を加える。
三 特定ノ取締役又ハ使用人ニ対シ予メ定メタル価額ヲ以テ会社ヨリ其ノ株式ヲ自己ニ譲渡スベキ旨ヲ請求スル権利ヲ与フル契約ニ基キ株式ヲ譲渡ス為ニ買受クルトキハ其ノ取締役又ハ使用人ノ氏名、其ノ者ニ譲渡スベキ株式ノ種類、数及譲渡ノ価額並ニ其ノ権利ヲ行使スルコトヲ得べキ期間並ニ其ノ権利ノ行使ニ付テノ条件
第二百十条ノ二第三項中「百分ノ三」を「十分ノ一」に改める。
第二百十条ノ二第八項に次のただし書を加える。
但シ株式ノ買取ヲ公告シテ為ス取引ニ依ルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二百十条ノ二第三項の次に次の二項を加える。
第二項第三号ノ期間ノ終期ハ同項ノ決議ノ日ヨリ十年ヲ経過スル日後ノ日ト為スコトヲ得ズ
第二項第三号ニ定ムル場合ニ於ケル同項ノ決議ハ第二百八十条ノ十九第二項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ノ引受権ニシテ未ダ行使サレザルモノアルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ
第二百十条ノ二に次の一項を加える。
第二項第三号ニ定ムル場合ニ於テ取締役又ハ使用人ニ同号ノ権利ヲ与フルコトヲ得ベキ期間ハ同項第一号ニ定ムル時迄トス
第二百十一条中「六月内ニ使用人ニ株式ヲ譲渡ス」を「六月内(同条第二項第三号ニ定ムル場合ニ在リテハ同号ノ権利ヲ行使スルコトヲ得ベキ期間内)ニ取締役又ハ使用人ニ譲渡サザリシトキハ相当ノ時期ニ株式ノ処分ヲ為ス」に改める。
第二百十二条ノ二第二項中「第二百十条ノ二第二項各号」を「第二百十条ノ二第二項第一号及第二号」に改め、同条第四項中「第二百十条ノ二第四項乃至第八項」を「第二百十条ノ二第六項乃至第十項」に改め、同項ただし書を削る。
第二編第四章第三節ノ二の次に次の一節を加える。
第三節ノ三 取締役又ハ使用人ニ対スル新株ノ引受権ノ付与
第二百八十条ノ十九 会社ハ定款ニ定アル場合ニ限り正当ノ理由アルトキハ取締役又ハ使用人ニ新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ定款ニ之ニ関スル定アルトキト雖モ新株ノ引受権ヲ与フベキ取締役又ハ使用人ノ氏名、其ノ者ニ与フベキ新株ノ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及発行価額並ニ新株ノ引受権ヲ行使スルコトヲ得ベキ期間並ニ新株ノ引受権ノ行使ニ付テノ条件ニ付第三百四十三条ニ定ムル決議アルコトヲ要ス前項ノ決議ニ依リ定ムル新株ノ引受権ノ目的タル株式ノ総数ハ其ノ決議ヨリ前ノ同項ノ決議ニ依リ定メタル新株ノ引受権ノ目的タル株式ニシテ未ダ発行サレザルモノノ数ト併セテ発行済株式ノ総数ノ十分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二項ノ期間ノ終期ハ同項ノ決議ノ日ヨリ十年ヲ経過スル日後ノ日ト為スコトヲ得ズ
第二項ノ決議ハ第二百十条ノ二第二項第三号ニ定ムル場合ニ於ケル同項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル譲渡スベキ株式ニシテ未ダ取締役又ハ使用人ニ譲渡サザルモノアルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ
第二項ノ決議ハ決議後一年内ニ与フル新株ノ引受権ニ付テノミ其ノ効力ヲ有ス
第二百十条ノ二第二項後段及第八項前段ノ規定ハ第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二百八十条ノ二十 新株ノ引受権ハ之ヲ譲渡スコトヲ得ズ
第二百八十条ノ二十一 第二百八十条ノ十九第二項ノ決議ヲ為シタルトキハ本店ノ所在地ニ於テハ二週間、支店ノ所在地ニ於テハ三週間内ニ新株ノ引受権ノ行使ニ因リ発行スベキ株式ノ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一 新株ノ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及発行価額
二 新株ノ引受権ヲ行使スルコトヲ得ベキ期間
第六十七条ノ規定ハ第一項ノ登記ニ之ヲ準用ス
第二百八十条ノ二十二 新株ノ引受権ヲ行使スル者ハ請求書ヲ会社ニ提出シ且新株ノ発行価額ノ全額ノ払込ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ払込ハ会社ガ払込ヲ取扱フベキモノトシテ定メタル銀行又ハ信託会社ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第一項ノ規定ニ依リ新株ノ引受権ヲ行使シタル者ハ同項ノ払込ノ時ニ株主トナル
第百七十五条第一項ノ規定ハ第一項ノ請求書ニ、第百八十九条ノ規定ハ第二項ノ払込ヲ取扱フ銀行又ハ信託会社ニ、第二百二十二条ノ二第三項ノ規定ハ第二百八十条ノ十九第二項ノ決議ヲ為シタル場合ニ、第二百二十二条ノ七及第三百四十一条ノ六ノ規定ハ新株ノ引受権ノ行使アリタル場合ニ、第二百八十条ノ二第一項第四号ノ規定ハ新株ノ引受権ヲ与フル場合ニ之ヲ準用ス
第四百十四条第二項中「転換社債又ハ新株引受権付社債」を「転換社債、新株引受権付社債又ハ第二百八十条ノ十九第一項ノ新株ノ引受権ニ係ル義務」に、「又ハ新株引受権付社債ノ登記」を「、新株引受権付社債ノ登記又ハ同条第一項ノ新株ノ引受権ノ行使ニ因リ発行スベキ株式ノ登記」に改める。
第四百九十八条第一項第十一号ノ二中「第二百十条ノ二第七項」を「第二百十条ノ二第九項」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成九年六月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 目次の改正規定、第百七十五条の改正規定、第二編第四章第三節ノ二の次に一節を加える改正規定及び第四百十四条の改正規定並びに附則第六条及び第七条の規定 平成九年十月一日
二 附則第八条から第十一条までの規定 平成十年四月一日
(経過措置)
第二条 この法律の施行前に定時総会の招集の手続が開始された場合におけるその定時総会の決議に係る自己の株式の取得については、なお従前の例による。
(罰則の適用に関する経過措置)
第三条 この法律の施行前にした行為及び前条の規定により従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(有限会社法の一部改正)
第四条 有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。
第二十四条第四項中「第二百十条ノ二第二項前段第六項前段」を「第二百十条ノ二第二項前段第八項前段」に改め、同条第五項中「第二百十条ノ二第四項」を「第二百十条ノ二第六項」に改める。
(証券取引法の一部改正)
第五条 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の一部を次のように改正する。
第二十七条の二十二の二第一項中「商法第二百十二条ノ二第一項又は」を「商法第二百十条ノ二第二項又は同法第二百十二条ノ二第一項若しくは」に改め、「株式の消却のための」を削る。
(商業登記法の一部改正)
第六条 商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)の一部を次のように改正する。
第八十二条の二第二号中「前条第四号」を「第八十二条第四号」に改め、同条を第八十二条の三とし、第八十二条の次に次の一条を加える。
(取締役等に与えられた新株の引受権の行使による変更の登記)
第八十二条の二 商法第二百八十条ノ十九第一項の新株の引受権の行使による変更の登記の申請書には、次の書類を添付しなければならない。
一 商法第二百八十条ノ二十二第一項の請求書の提出を証する書面
二 前条第四号に掲げる書面
(登録免許税法の一部改正)
第七条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第一第十九号(一)チ中「若しくは新株引受権付社債」を「、新株引受権付社債若しくは新株の引受権の行使により発行すべき株式」に改める。
(特定新規事業実施円滑化臨時措置法の一部改正)
第八条 特定新規事業実施円滑化臨時措置法(平成元年法律第五十九号)の一部を次のように改正する。
第八条の見出し中「新株発行」を「新株の引受権の付与」に改め、同条第一項前段中「特に有利な発行価額で新株を発行するには、その新株の発行を受ける者ごとに、次に掲げる事項について」を削り、「第三百四十三条に定める決議がなければならない」を「第二百八十条ノ十九第一項に規定する新株の引受権を与える場合における同条第三項の規定の適用については、同項中「十分ノ一」とあるのは、「三分ノ一」とする」に改め、同項後段及び各号を削り、同条第二項中「決議」を「規定」に、「する場合であって、その定款にこの条の規定による新株の発行をすることができる旨の定めのある場合に限り、することができる」を「商法第二百八十条ノ十九第二項の決議をする場合に限り、適用する」に改め、同条第三項から第六項までを削る。
第九条から第十一条までを次のように改める。
第九条から第十一条まで 削除
第十三条第一項を次のように改める。
前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
第十三条第二項を削り、同条第三項中「第一項第四号」を「前項」に改め、同項を同条第二項とする。
第十四条を削る。
(特定新規事業実施円滑化臨時措置法の一部改正に伴う経過措置)
第九条 前条の規定の施行前に特定新規事業実施円滑化臨時措置法(以下この条において「新規事業法」という。)第四条第一項に規定する実施計画(前条の規定による改正前の新規事業法第八条の新株発行の特例に係るものに限る。)の認定を受けた株式会社については、前条の規定による改正前の新規事業法第八条から第十一条まで、第十三条(第一項第四号及び第三項を除く。)及び第十四条の規定は、前条の規定の施行後も、なおその効力を有する。
2 前項の場合における前条の規定による改正前の新規事業法第八条第一項の決議は、商法第二百十条ノ二第二項第三号に定める場合における同項の決議があった場合において、その決議に係る譲り渡すべき株式であって取締役又は使用人に譲り渡していないものがあるときは、することができない。
3 第一項の場合における商法第二百十条ノ二第五項、前条の規定による改正後の新規事業法第八条第一項及び前条の規定による改正前の新規事業法第八条第三項の規定の適用については、商法第二百十条ノ二第五項中「第二百八十条ノ十九第二項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ノ引受権ニシテ未ダ行使サレザルモノ」とあるのは「第二百八十条ノ十九第二項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ノ引受権ニシテ未ダ行使サレザルモノ又ハ商法の一部を改正する法律(平成九年法律第五十六号)附則第八条ノ規定ニ依ル改正前ノ特定新規事業実施円滑化臨時措置法第八条第一項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ニシテ未ダ発行サレザルモノ」と、前条の規定による改正後の新規事業法第八条第一項中「十分ノ一」とあるのは「ト併セテ発行済株式ノ総数ノ十分ノ一」と、「三分ノ一」とあるのは「及商法の一部を改正する法律(平成九年法律第五十六号)附則第八条ノ規定ニ依ル改正前ノ特定新規事業実施円滑化臨時措置法第八条第一項ノ決議ニ係ル新株ニシテ未ダ発行サレザルモノノ数ト併セテ発行済株式ノ総数ノ三分ノ一」と、前条の規定による改正前の新規事業法第八条第三項中「と合わせて」とあるのは「及び商法第二百八十条ノ十九第二項の決議により定めた新株の引受権の目的たる株式であって発行されていないものの数と合わせて」とする。
(特定通信・放送開発事業実施円滑化法の一部改正)
第十条 特定通信・放送開発事業実施円滑化法(平成二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
第八条の見出し中「新株発行に係る株主総会決議」を「新株の引受権の付与」に改め、同条第一項前段中「特に有利な発行価額で新株を発行するには、その新株の発行を受ける者ごとに、次に掲げる事項について」を削り、「第三百四十三条に定める決議がなければならない」を「第二百八十条ノ十九第一項に規定する新株の引受権を与える場合における同条第三項の規定の適用については、同項中「十分ノ一」とあるのは、「五分ノ一」とする」に改め、同項後段及び各号を削り、同条第二項中「決議」を「規定」に、「する場合であって、その定款にこの条の規定による新株の発行をすることができる旨の定めのある場合に限り、することができる」を「商法第二百八十条ノ十九第二項の決議をする場合に限り、適用する」に改め、同条第三項から第六項までを削る。
第九条から第十一条までを削り、第十二条を第九条とし、第十三条を第十条とする。
第十四条第一項を次のように改める。
前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
第十四条を第十一条とする。
第十五条を削る。
(特定通信・放送開発事業実施円滑化法の一部改正に伴う経過措置)
第十一条 前条の規定の施行前に特定通信・放送開発事業実施円滑化法(以下この条において「通信・放送開発法」という。)第四条第一項の認定又は第五条第一項の変更の認定を受けた実施計画(前条の規定による改正前の通信・放送開発法第八条の新株発行に係る株主総会決議の特例に係るものに限る。)に係る通信・放送新規事業を実施する株式会社については、前条の規定による改正前の通信・放送開発法第八条から第十一条まで、第十四条(第一項第四号を除く。)及び第十五条の規定は、前条の規定の施行後も、なおその効力を有する。
2 前項の場合における前条の規定による改正前の通信・放送開発法第八条第一項の決議は、商法第二百十条ノ二第二項第三号に定める場合における同項の決議があった場合において、その決議に係る譲り渡すべき株式であって取締役又は使用人に譲り渡していないものがあるときは、することができない。
3 第一項の場合における商法第二百十条ノ二第五項、前条の規定による改正後の通信・放送開発法第八条第一項及び前条の規定による改正前の通信・放送開発法第八条第三項の規定の適用については、商法第二百十条ノ二第五項中「第二百八十条ノ十九第二項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ノ引受権ニシテ未ダ行使サレザルモノ」とあるのは「第二百八十条ノ十九第二項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ノ引受権ニシテ未ダ行使サレザルモノ又ハ商法の一部を改正する法律(平成九年法律第五十六号)附則第十条ノ規定ニ依ル改正前ノ特定通信・放送開発事業実施円滑化法第八条第一項ノ決議アリタル場合ニ於テ其ノ決議ニ係ル新株ニシテ未ダ発行サレザルモノ」と、前条の規定による改正後の通信・放送開発法第八条第一項中「十分ノ一」とあるのは「ト併セテ発行済株式ノ総数ノ十分ノ一」と、「五分ノ一」とあるのは「及商法の一部を改正する法律(平成九年法律第五十六号)附則第十条ノ規定ニ依ル改正前ノ特定通信・放送開発事業実施円滑化法第八条第一項ノ決議ニ係ル新株ニシテ未ダ発行サレザルモノノ数ト併セテ発行済株式ノ総数ノ五分ノ一」と、前条の規定による改正前の通信・放送開発法第八条第三項中「と合わせて」とあるのは「及び商法第二百八十条ノ十九第二項の決議により定めた新株の引受権の目的たる株式であって発行されていないものの数と合わせて」とする。
法務大臣 松浦功
大蔵大臣 三塚博
通商産業大臣 佐藤信二
郵政大臣 堀之内久男
内閣総理大臣 橋本龍太郎