科学技術基本法
法令番号: 法律第130号
公布年月日: 平成7年11月15日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

我が国は科学技術のキャッチアップ時代を終え、フロントランナーとして未開分野に挑戦する時期を迎えている。天然資源に乏しく高齢化が進む中、産業空洞化や活力喪失を回避し、環境・食糧・エネルギー問題など人類の課題解決に貢献するには、独創的な科学技術開発が不可欠である。しかし現状は、基礎研究の水準が欧米に劣り、研究環境も劣悪で、研究者間の連携も不十分である。そこで科学技術創造立国を目指し、振興方針と基本方策を明確にして、関連施策を総合的・計画的に推進するため、本法案を提案する。

参照した発言:
第134回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号

審議経過

第134回国会

衆議院
(平成7年10月31日)
(平成7年10月31日)
参議院
(平成7年11月8日)
科学技術基本法をここに公布する。
御名御璽
平成七年十一月十五日
内閣総理大臣 村山富市
法律第百三十号
科学技術基本法
目次
第一章
総則(第一条―第八条)
第二章
科学技術基本計画(第九条)
第三章
研究開発の推進等(第十条―第十七条)
第四章
国際的な交流等の推進(第十八条)
第五章
科学技術に関する学習の振興等(第十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)の振興に関する施策の基本となる事項を定め、科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国における科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的とする。
(科学技術の振興に関する方針)
第二条 科学技術の振興は、科学技術が我が国及び人類社会の将来の発展のための基盤であり、科学技術に係る知識の集積が人類にとっての知的資産であることにかんがみ、研究者及び技術者(以下「研究者等」という。)の創造性が十分に発揮されることを旨として、人間の生活、社会及び自然との調和を図りつつ、積極的に行われなければならない。
2 科学技術の振興に当たっては、広範な分野における均衡のとれた研究開発能力の涵養、基礎研究、応用研究及び開発研究の調和のとれた発展並びに国の試験研究機関、大学(大学院を含む。以下同じ。)、民間等の有機的な連携について配慮されなければならず、また、自然科学と人文科学との相互のかかわり合いが科学技術の進歩にとって重要であることにかんがみ、両者の調和のとれた発展について留意されなければならない。
(国の責務)
第三条 国は、科学技術の振興に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、科学技術の振興に関し、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(国及び地方公共団体の施策の策定等に当たっての配慮)
第五条 国及び地方公共団体は、科学技術の振興に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、基礎研究が新しい現象の発見及び解明並びに独創的な新技術の創出等をもたらすものであること、その成果の見通しを当初から立てることが難しく、また、その成果が実用化に必ずしも結び付くものではないこと等の性質を有するものであることにかんがみ、基礎研究の推進において国及び地方公共団体が果たす役割の重要性に配慮しなければならない。
(大学等に係る施策における配慮)
第六条 国及び地方公共団体は、科学技術の振興に関する施策で大学及び大学共同利用機関(以下「大学等」という。)に係るものを策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学等における研究活動の活性化を図るよう努めるとともに、研究者等の自主性の尊重その他の大学等における研究の特性に配慮しなければならない。
(法制上の措置等)
第七条 政府は、科学技術の振興に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告)
第八条 政府は、毎年、国会に、政府が科学技術の振興に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。
第二章 科学技術基本計画
第九条 政府は、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、科学技術の振興に関する基本的な計画(以下「科学技術基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 科学技術基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 研究開発(基礎研究、応用研究及び開発研究をいい、技術の開発を含む。以下同じ。)の推進に関する総合的な方針
二 研究施設及び研究設備(以下「研究施設等」という。)の整備、研究開発に係る情報化の促進その他の研究開発の推進のための環境の整備に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
三 その他科学技術の振興に関し必要な事項
3 政府は、科学技術基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ、科学技術会議の議を経なければならない。
4 政府は、科学技術の進展の状況、政府が科学技術の振興に関して講じた施策の効果等を勘案して、適宜、科学技術基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。この場合においては、前項の規定を準用する。
5 政府は、第一項の規定により科学技術基本計画を策定し、又は前項の規定によりこれを変更したときは、その要旨を公表しなければならない。
6 政府は、科学技術基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第三章 研究開発の推進等
(多様な研究開発の均衡のとれた推進等)
第十条 国は、広範な分野における多様な研究開発の均衡のとれた推進に必要な施策を講ずるとともに、国として特に振興を図るべき重要な科学技術の分野に関する研究開発の一層の推進を図るため、その企画、実施等に必要な施策を講ずるものとする。
(研究者等の確保等)
第十一条 国は、科学技術の進展等に対応した研究開発を推進するため、大学院における教育研究の充実その他の研究者等の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、研究者等の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、研究者等の適切な処遇の確保に必要な施策を講ずるものとする。
3 国は、研究開発に係る支援のための人材が研究開発の円滑な推進にとって不可欠であることにかんがみ、その確保、養成及び資質の向上並びにその適切な処遇の確保を図るため、前二項に規定する施策に準じて施策を講ずるものとする。
(研究施設等の整備等)
第十二条 国は、科学技術の進展等に対応した研究開発を推進するため、研究開発機関(国の試験研究機関、大学等及び民間等における研究開発に係る機関をいう。以下同じ。)の研究施設等の整備に必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、研究開発の効果的な推進を図るため、研究材料の円滑な供給等研究開発に係る支援機能の充実に必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発に係る情報化の促進)
第十三条 国は、研究開発の効率的な推進を図るため、科学技術に関する情報処理の高度化、科学技術に関するデータベースの充実、研究開発機関等の間の情報ネットワークの構築等研究開発に係る情報化の促進に必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発に係る交流の促進)
第十四条 国は、研究開発機関又は研究者等相互の間の交流により研究者等の多様な知識の融合等を図ることが新たな研究開発の進展をもたらす源泉となるものであり、また、その交流が研究開発の効率的な推進にとって不可欠なものであることにかんがみ、研究者等の交流、研究開発機関による共同研究開発、研究開発機関の研究施設等の共同利用等研究開発に係る交流の促進に必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発に係る資金の効果的使用)
第十五条 国は、研究開発の円滑な推進を図るため、研究開発の展開に応じて研究開発に係る資金を効果的に使用できるようにする等その活用に必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発の成果の公開等)
第十六条 国は、研究開発の成果の活用を図るため、研究開発の成果の公開、研究開発に関する情報の提供等その普及に必要な施策及びその適切な実用化の促進等に必要な施策を講ずるものとする。
(民間の努力の助長)
第十七条 国は、我が国の科学技術活動において民間が果たす役割の重要性にかんがみ、民間の自主的な努力を助長することによりその研究開発を促進するよう、必要な施策を講ずるものとする。
第四章 国際的な交流等の推進
第十八条 国は、国際的な科学技術活動を強力に展開することにより、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすとともに、我が国における科学技術の一層の進展に資するため、研究者等の国際的交流、国際的な共同研究開発、科学技術に関する情報の国際的流通等科学技術に関する国際的な交流等の推進に必要な施策を講ずるものとする。
第五章 科学技術に関する学習の振興等
第十九条 国は、青少年をはじめ広く国民があらゆる機会を通じて科学技術に対する理解と関心を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における科学技術に関する学習の振興並びに科学技術に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
内閣総理大臣 村山富市
外務大臣 河野洋平
大蔵大臣 武村正義
文部大臣 島村宜伸
厚生大臣 森井忠良
農林水産大臣 野呂田芳成
通商産業大臣 橋本龍太郎
運輸大臣 平沼赳夫
郵政大臣 井上一成
労働大臣 青木薪次
建設大臣 森喜朗
自治大臣 深谷隆司