(目的)
第一条 この法律は、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓を促進するための措置を講ずることにより、新たな経済的環境に即応した中小企業の創意ある向上発展を図り、もつて我が国の産業構造の転換の円滑化と国民経済の均衡ある発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号の一に該当する者をいう。
一 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業又はサービス業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が三千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であつて、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
六 事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会であつて、政令で定めるもの
2 この法律において「異分野中小企業者」とは、その行う事業の分野を異にするそれぞれの中小企業者をいう。
3 この法律において「異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓」とは、異分野中小企業者が、協同してその生産、販売若しくは役務の提供の技術又は経営管理に関する知識その他のその事業の分野に関する知識を組み合わせ、一体的に活用して、新たな製品若しくは役務の開発のための試験研究その他の研究開発、その成果の利用又は当該成果の利用のために必要な需要の開拓を行うことにより、新たな事業の分野を開拓することをいう。
(国及び地方公共団体の施策)
第三条 国は、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓を促進することが中小企業の創意ある向上発展を図るために重要であることにかんがみ、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓に必要な情報の提供、異分野中小企業者の交流及びその組織化の推進並びに異分野中小企業者が行う研究開発、その成果の利用及び需要の開拓の円滑化のために必要な施策を総合的に推進するように努めるものとする。
2 地方公共団体は、前項の国の施策に準じて施策を講ずるように努めるものとする。
(知識融合開発事業計画の認定)
第四条 異分野中小企業者を組合員とする事業協同組合(以下「特定組合」という。)は、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓に係る試験研究その他の研究開発の実施若しくはその成果の利用又は需要の開拓(その組合員、二以上のその組合員が合併し又は出資して設立した法人及び当該特定組合員が協業組合にその組織を変更した場合における当該協業組合が行う研究開発の成果の利用又は需要の開拓を含む。以下「知識融合開発事業」という。)に関する計画を作成し、これを行政庁に提出して、その計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 前項の計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
四 知識融合開発事業に必要な資金の額及びその調達方法
3 特定組合が異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓に係る試験研究のための費用に充てるためその組合員に対し負担金の賦課をしようとする場合には、第一項の計画に当該負担金の賦課の基準を記載することができる。
4 特定組合が、試験研究の実施以外の知識融合開発事業(当該特定組合が自ら行うものに限る。)を実施するため準備金を積み立てる必要がある場合において、当該準備金に充てるためその組合員に対し経費を賦課しようとするときは、第一項の計画に当該経費の賦課の基準を記載することができる。ただし、前項に規定する負担金の賦課の基準を記載した第一項の計画について同項の認定(次条第一項の規定による変更の認定を含む。以下この項において同じ。)を受けようとする場合又は当該負担金の賦課の基準を記載した第一項の計画について同項の認定を受けた場合において当該負担金の賦課に係る試験研究を終了していないときは、この限りでない。
5 行政庁は、第一項の認定の申請があつた場合において、当該申請に係る同項の計画が、その組合員が異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓を行うために有効かつ適切なものであることその他の政令で定める基準に該当するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
6 特定組合を設立しようとする発起人は、中小企業協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号。以下「協同組合法」という。)第二十七条の二第一項の認可の申請と同時にその設立しようとする特定組合に係る第一項の計画の認定の申請を行うことができる。この場合において、行政庁は、当該計画に係る同項の認定をするときは、同条第一項の認可の日以後にするものとする。
(知識融合開発事業計画の変更等)
第五条 前条第一項の認定を受けた特定組合(以下「認定特定組合」という。)は、当該認定に係る計画を変更しようとするときは、行政庁の認定を受けなければならない。
2 行政庁は、認定特定組合が前条第一項の認定に係る同項の計画(前項の規定による変更の認定があつたときは、その変更後のもの。以下「知識融合開発事業計画」という。)に従つて知識融合開発事業を実施していないと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
(資金の確保)
第六条 国は、次に掲げる者が知識融合開発事業計画(第二号に掲げる者にあつては、その者に係る認定特定組合の知識融合開発事業計画)に従つて知識融合開発事業を実施するのに必要な資金(以下「知識融合開発事業資金」という。)の確保に努めるものとする。
二 認定特定組合の組合員、認定特定組合の二以上の組合員が合併し又は出資して設立した法人及び認定特定組合が協業組合にその組織を変更した場合における当該協業組合
(中小企業信用保険法の特例)
第七条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条の七第一項に規定する新事業開拓保険(以下単に「新事業開拓保険」という。)の保険関係で、知識融合開発関係保証(同項に規定する債務の保証で知識融合開発事業資金に係るものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項中「一億五千万円」とあるのは「二億円(異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法第六条に規定する知識融合開発事業資金(以下単に「知識融合開発事業資金」という。)以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、一億五千万円)」と、「三億円」とあるのは「四億円(知識融合開発事業資金以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、三億円)」と、同条第二項中「一億五千万円」とあるのは「二億円(知識融合開発事業資金以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、一億五千万円)」とする。
2 信用保証協会が中小企業者について一の無担保保証(知識融合開発関係保証でその保証について担保(保証人の保証を除く。)を提供させないものをいう。以下同じ。)をした場合における当該一の無担保保証に係る無担保保証保険関係(新事業開拓保険の保険関係で無担保保証に係るものをいう。以下同じ。)の保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。ただし、当該中小企業者についての無担保保証保険関係の保険価額の合計額が五千万円を超える場合における当該一の無担保保証に係る無担保証保険関係の保険料の額については、この限りでない。
(課税の特例)
第八条 認定特定組合が、知識融合開発事業計画で定める第四条第三項に規定する賦課の基準に基づいて、その組合員たる中小企業者に対し、当該知識融合開発事業計画に従つて実施する知識融合開発事業に係る試験研究(以下「知識融合開発事業計画に係る試験研究」という。)に必要な機械装置(工具、器具及び備品を含む。)を取得し、又は製作するための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、当該中小企業者が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、当該負担金について特別償却を行うことができる。
2 認定特定組合が知識融合開発事業計画で定める第四条第三項に規定する賦課の基準に基づいてその組合員に対し知識融合開発事業計画に係る試験研究のための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、その組合員が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該負担金について試験研究費の額が増加した場合等の課税の特例の適用があるものとする。
3 認定特定組合が、知識融合開発事業計画で定める第四条第三項に規定する賦課の基準に基づいてその組合員に対し賦課した負担金の全部又は一部をもつて、知識融合開発事業計画に係る試験研究の用に直接供する固定資産を取得し、又は製作したときは、租税特別措置法で定めるところにより、所得の金額の計算について特別の措置を講ずる。
4 認定特定組合が知識融合開発事業計画で定める第四条第四項に規定する賦課の基準に基づいてその組合員に対し経費を賦課した場合において、当該認定特定組合が当該賦課に基づいて納付された金額を中小企業知識融合開発準備金として積み立てたとき、又はその組合員が当該賦課に基づき納付すべき金額を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該認定特定組合又はその組合員に対する法人税又は所得税の課税について特別の措置を講ずる。
(協同組合法の特例)
第九条 認定特定組合は、協同組合法第九条の二第一項の事業のほか、知識融合開発事業計画に定める知識融合開発事業を行うことができる。
2 前項の規定により認定特定組合が知識融合開発事業を行う場合においては、協同組合法第百十五条第一号中「この法律」とあるのは、「この法律又は異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法」とする。
(中小企業団体の組織に関する法律の特例)
第十条 認定特定組合の組合員が知識融合開発事業計画に定める研究開発の成果の利用に係る事業を協業組合の事業として行う場合における中小企業団体の組織に関する法律(昭和三十二年法律第百八十五号)第五条の五及び第五条の七第一項第一号の規定の適用については、当該組合員は、当該研究開発の成果の利用に係る事業を営むものとみなす。
2 認定特定組合が、知識融合開発事業計画に定める研究開発の成果の利用に係る事業を行うため、その組織を変更して協業組合になる場合における中小企業団体の組織に関する法律第九十五条第一項の規定の適用については、同項中「協同組合法第九条の二第一項第一号の事業を行なつている事業協同組合若しくは事業協同小組合又は企業組合」とあるのは「異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法第五条第一項に規定する認定特定組合」と、「当該事業協同組合若しくは事業協同小組合又は企業組合が行なつている事業(事業協同組合及び事業協同小組合にあつては同号の事業であつて主務大臣の定めるものに限る。)」とあるのは「当該認定特定組合に係る同法第五条第二項に規定する知識融合開発事業計画に定める研究開発の成果の利用に係る事業」とする。
(指導及び助言)
第十一条 国及び都道府県は、認定特定組合に対し、知識融合開発事業計画に係る知識融合開発事業の適確な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。
(報告の徴収)
第十二条 行政庁は、認定特定組合に対し、知識融合開発事業計画に係る知識融合開発事業の実施状況について報告を求めることができる。
(所管行政庁についての協同組合法の準用)
第十三条 協同組合法第百十一条第一項(第二号から第六号までを除く。)の規定はこの法律に規定する行政庁について、同条第二項の規定はこの法律に規定する行政庁の権限の委任について準用する。
(罰則)
第十四条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。
2 認定特定組合の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、その認定特定組合の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その認定特定組合に対して同項の刑を科する。