(目的)
第一条 この法律は、流通食品への毒物の混入等を防止するための措置等を定めるとともに、流通食品に毒物を混入する等の行為を処罰することにより、国民の生命又は身体に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の平穏と安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「流通食品」とは、公衆に販売される飲食物(薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品及び医薬部外品を除く。)をいう。
2 この法律において「毒物」とは、次の各号に掲げる物をいう。
一 毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)別表第一及び第二に掲げる物(薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品を除く。)
二 薬事法第四十四条第一項又は第二項の規定により厚生大臣が指定した医薬品
三 前二号に掲げる物以外の物で、その毒性又は劇性が前二号に掲げる物の毒性又は劇性に類似するもの
(国の施策等)
第三条 国は、流通食品に毒物が故意により混入され、添加され、若しくは塗布されること又は毒物が混入され、添加され、若しくは塗布された飲食物が故意により流通食品と混在させられること(以下「流通食品への毒物の混入等」という。)を防止するため必要な施策を総合的に講ずるよう努めなければならない。
2 地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずるよう努めなければならない。
3 流通食品の製造(採取及び加工を含む。)、輸入又は販売を業とする者(以下「製造業者等」という。)は、流通食品への毒物の混入等の防止に努めるとともに、国又は地方公共団体が講ずる施策に協力するものとする。
(警察官等への届出)
第四条 製造業者等は、その営業に係る流通食品につき、流通食品への毒物の混入等があつたことを知つたときは、直ちにその旨を警察官又は海上保安官に届け出なければならない。
(捜査機関への協力)
第五条 製造業者等は、その事業に係る流通食品についての流通食品への毒物の混入等に関する犯罪の捜査が円滑に行われるよう、捜査機関に対し、必要な協力をしなければならない。
(関係行政機関への通報)
第六条 警察官又は海上保安官は、流通食品への毒物の混入等があつた場合(その疑いがある場合を含む。以下同じ。)又は流通食品への毒物の混入等のおそれがある場合において、必要があると認めるときは、その旨を関係行政機関に通報するものとする。
(流通食品への毒物の混入等の防止のための指導又は助言等)
第七条 主務大臣は、流通食品への毒物の混入等のおそれがあると認めるときは、製造業者等に対し、当該流通食品への毒物の混入等の防止のためとるべき措置に関し必要な指導又は助言をすることができる。
2 主務大臣は、流通食品への毒物の混入等があつた場合において特に必要があると認めるときは、製造業者等に対し、当該流通食品又は飲食物につき必要な措置をとることを求めることができる。
3 関係行政機関は、前二項の規定の実施について、主務大臣に協力するものとする。
4 前三項の主務大臣は、当該流通食品の流通を所掌する大臣とする。
(流通食品の適切かつ円滑な流通の維持等のための措置)
第八条 国又は地方公共団体は、流通食品への毒物の混入等があつた場合又は流通食品への毒物の混入等のおそれがある場合においては、流通食品の適切かつ円滑な流通の維持を図り、又は製造業者等の経営の安定に資するため、製造業者等に対し、必要な指導、助言、資金のあつせんその他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(罰則)
第九条 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 流通食品に、毒物を混入し、添加し、又は塗布した者
二 毒物が混入され、添加され、又は塗布された飲食物を流通食品と混在させた者
2 前項の罪を犯し、よつて人を死傷させた者は、無期又は一年以上の懲役に処する。
4 前三項の罪に当たる行為が刑法(明治四十年法律第四十五号)の罪に触れるときは、その行為者は、同法の罪と比較して、重きに従つて処断する。
5 第一項又は第三項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽する。
第十条 第四条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。