船員法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第57号
公布年月日: 昭和60年6月11日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

船員法は船内秩序の維持と船員の労働保護を目的とする法律として、海運・漁業の発展に重要な役割を果たしてきた。本改正は、女子差別撤廃条約の批准に向けた国内法令整備の一環として、女子船員に関する特別規定の見直しと母性保護の充実を図るものである。具体的には、妊娠中の女子の船内就労制限、出産後8週間以内の就労制限、妊産婦の有害作業・時間外労働等の制限を定めるとともに、妊産婦以外の女子船員については夜間労働禁止規定を廃止し、就業制限を妊娠・出産機能に有害な作業に限定するものである。

参照した発言:
第101回国会 衆議院 運輸委員会 第12号

審議経過

第101回国会

衆議院
(昭和59年6月22日)
(昭和59年7月17日)
(昭和59年7月27日)
参議院
(昭和59年7月31日)
衆議院
(昭和59年8月2日)
参議院
(昭和59年8月2日)

第102回国会

参議院
(昭和60年5月21日)
(昭和60年5月24日)
衆議院
(昭和60年5月31日)
(昭和60年6月4日)
参議院
(昭和60年8月7日)
船員法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十年六月十一日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第五十七号
船員法の一部を改正する法律
船員法(昭和二十二年法律第百号)の一部を次のように改正する。
目次中「第九章 年少船員及び女子船員」を
第九章
年少船員
第九章の二
女子船員
に改める。
第四十四条の二第一項中「産前産後の女子が第八十六条」を「女子の船員が第八十七条第一項又は第二項」に、「但し」を「ただし」に改める。
第四十七条中「左の」を「次の」に、「雇入の」を「雇入れの」に改め、「又は女子」を削り、「但し」を「ただし」に、「因り」を「より」に改める。
第九章の章名中「及び女子船員」を削る。
第八十五条の見出しを「(年少船員の就業制限)」に改め、同条第二項中「及び女子の船員」を削り、「これらの船員」を「当該船員」に改める。
第八十六条及び第八十七条を削る。
第八十八条の見出しを「(年少船員の夜間労働の禁止)」に改め、同条第一項中「又は女子の船員」を削り、「但し」を「ただし」に改め、同条第二項中「及び第三号」を「又は第三号」に改め、同条を第八十六条とする。
第九章の次に次の一章を加える。
第九章の二 女子船員
(妊産婦の就業制限)
第八十七条 船舶所有者は、妊娠中の女子を船内で使用してはならない。ただし、次の各号の一に掲げる場合は、この限りでない。
一 命令で定める範囲の航海に関し、妊娠中の女子が船内で作業に従事することを申し出た場合において、その者の母性保護上支障がないと医師が認めたとき。
二 女子の船員が妊娠中であることが航海中に判明した場合において、その者が当該船舶の航海の安全を図るために必要な作業に従事するとき。
船舶所有者は、出産後八週間を経過しない女子を船内で使用してはならない。ただし、出産後六週間を経過した女子が船内で作業に従事することを申し出た場合において、その者の母性保護上支障がないと医師が認めたときは、この限りでない。
船舶所有者は、第一項ただし書の規定に基づき、妊娠中の女子を船内で作業に従事させる場合において、その女子の申出があつたときは、その者を軽易な作業に従事させなければならない。
第八十八条 船舶所有者は、命令で定めるところにより、妊娠中又は出産後一年以内の女子(以下「妊産婦」という。)の船員を命令で定める母性保護上有害な作業に従事させてはならない。
(妊産婦の労働時間の特例)
第八十八条の二 妊産婦の船員の労働時間は、第六章の規定にかかわらず、一日について八時間以内、一週間について四十八時間以内とする。
船舶所有者は、妊産婦の船員を前項に規定する労働時間を超えて作業に従事させてはならない。ただし、出産後八週間を経過した妊産婦の船員がその労働時間を超えて作業に従事することを申し出た場合において、その者の母性保護上支障がないと医師が認めたときは、この限りでない。
第六十七条第二項及び第三項の規定は、前項ただし書の規定に基づき労働時間の制限を超えて海員(第七十二条各号に掲げる者を除く。)が作業に従事する場合について準用する。
(妊産婦の休日の特例)
第八十八条の三 船舶所有者は、妊産婦の船員に一週間について少なくとも一日の休日を与えなければならない。
船舶所有者は、出産後八週間を経過した妊産婦の船員が休日において作業に従事することを申し出た場合において、その者の母性保護上支障がないと医師が認めたときは、前項の規定にかかわらず、当該妊産婦の船員を休日において作業に従事させることができる。ただし、第六十三条第一項に規定する海員の停泊中の休日における作業については、当該海員を必要な作業に従事させることがやむを得ない場合に限る。
第六十三条第二項及び第三項の規定は、妊産婦の海員については、これを適用しない。
(妊産婦の夜間労働の制限)
第八十八条の四 船舶所有者は、妊産婦の船員を午後八時から翌日の午前五時までの間において作業に従事させてはならない。ただし、命令で定める場合において、これと異なる時刻の間において午前零時前後にわたり連続して九時間休息させるときは、この限りでない。
前項の規定は、出産後八週間を経過した妊産婦の船員が同項本文の時刻の間において作業に従事すること又は同項ただし書の規定による休息時間を短縮することを申し出た場合において、その者の母性保護上支障がないと医師が認めたときは、これを適用しない。
(例外規定)
第八十八条の五 前三条の規定は、船舶所有者が妊産婦の船員を第六十八条第一号又は第三号の作業に従事させる場合には、これを適用しない。
(妊産婦以外の女子船員の就業制限)
第八十八条の六 船舶所有者は、妊産婦以外の女子の船員を第八十八条に規定する作業のうち命令で定める女子の妊娠又は出産に係る機能に有害なものに従事させてはならない。
(生理日における就業制限)
第八十八条の七 船舶所有者は、生理日における就業が著しく困難な女子の船員の請求があつたときは、その者を生理日において作業に従事させてはならない。
(適用範囲)
第八十八条の八 この章の規定は、船舶所有者と同一の家庭に属する者のみを使用する船舶については、これを適用しない。
第百二十六条第七号中「第六十七条第三項」の下に「(第八十八条の二第三項において準用する場合を含む。)」を加える。
第百二十九条中「又は第二項」を「若しくは第二項、第八十八条又は第八十八条の六」に改める。
第百三十条中「第六十七条第二項」の下に「(第八十八条の二第三項において準用する場合を含む。)」を加え、「第八十六条、第八十八条」を「第八十六条第一項、第八十七条第一項若しくは第二項、第八十八条の二第二項、第八十八条の三第一項、第八十八条の四第一項」に改める。
第百三十一条第一号中「第八十七条」を「第八十八条の七」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和六十一年四月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に航海中である船舶に乗り組む女子の船員については、改正後の船員法第九章の二の規定にかかわらず、当該航海が終了する日まで(専ら国外各港間の航海に従事する船舶にあつては、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)から起算して三月を経過する日又は施行日以後最初にいずれかの港に入港した日のいずれか遅い日まで)は、なお従前の例による。
(罰則に関する経過措置)
第三条 この法律の施行前にした行為及び前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(船員保険法の一部改正)
第四条 船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)の一部を次のように改正する。
第三十二条第二項中「分娩ノ日前四十二日」を「分娩ノ日前ニ於テ船員法第八十七条ノ規定ニ依リ職務ニ服セザリシ期間」に、「以後四十二日」を「以後五十六日」に改める。
(船員保険法の一部改正に伴う経過措置)
第五条 分べんの日が施行日の前四十二日以前の日である被保険者及び被保険者であつた者については、前条の規定による改正後の船員保険法第三十二条第二項の規定は、適用しない。
2 分べんの日が施行日以後四十二日以内である被保険者及び被保険者であつた者の分べんの日前に係る日数については、前条の規定による改正後の船員保険法第三十二条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
厚生大臣 増岡博之
運輸大臣 山下徳夫
内閣総理大臣 中曽根康弘