果樹保険臨時措置法
法令番号: 法律第93号
公布年月日: 昭和42年7月28日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

果樹農業は国民生活の高度化による需要増大と農業者の生産意欲により急速に発展し、農業における比重が増大している。これに伴い適切な災害対策の必要性が高まっているが、保険制度樹立に必要な資料が十分整備されていない。そこで、果樹保険の全面的な制度化に向けた準備として、試験的に事業を実施し、保険料率算定のための基礎資料収集や損害評価等の事業運営上の諸問題を検討し、その成果に基づいて適切な損失補償制度の確立を図るため、本法案を提出することとした。

参照した発言:
第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第26号

審議経過

第55回国会

参議院
(昭和42年6月1日)
衆議院
(昭和42年6月27日)
(昭和42年7月5日)
(昭和42年7月11日)
(昭和42年7月12日)
(昭和42年7月13日)
(昭和42年7月14日)
参議院
(昭和42年7月20日)
(昭和42年7月21日)
(昭和42年7月21日)
(昭和42年7月21日)
果樹保険臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十二年七月二十八日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第九十三号
果樹保険臨時措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
農業共済組合連合会の果樹保険事業(第三条―第十七条)
第三章
政府の再保険事業(第十八条―第二十二条)
第四章
雑則(第二十三条―第二十六条)
第五章
罰則(第二十七条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、農業者がその営む果樹農業につき災害によつて受けることのある損失を適切に補てんする制度の確立に資するため、試験的に農業共済組合連合会が果樹保険事業を行なうことができることとするとともに、当該果樹保険事業による保険責任についての政府の再保険その他必要な措置を定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において「指定果樹」とは、主要な種類の果樹として政令で定めるものをいう。
第二章 農業共済組合連合会の果樹保険事業
(果樹保険事業の実施)
第三条 農業共済組合連合会は、農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)第百二十一条の規定による保険事業及び同法第百三十二条の二第一項の規定による共済事業のほか、農林大臣の認可を受けて、この法律の規定による果樹保険事業を行なうことができる。
2 農業共済組合連合会は、前項の認可を受けようとするときは、農林省令で定めるところにより、次に掲げる事項を内容とする果樹保険事業計画(以下「事業計画」という。)を定め、これを申請書に添えて、都道府県知事を経由して農林大臣に提出しなければならない。
一 果樹保険に係る指定果樹の種類
二 果樹保険の種類
三 果樹保険の実施地域及び事業規模
四 保険契約の締結の要件、保険金額の制限及び保険金の削減に関する事項
五 政府との再保険契約の締結に関する事項
3 農業共済組合連合会は、第一項の認可の申請をするには、あらかじめ、その事業計画につき、総会の議決を経なければならない。
4 第一項の認可は、全国を通ずる指定果樹に係る生産事情及び災害の発生状況に照らしこの法律の規定による果樹保険事業が第一条に規定する制度の確立に資することとなるように効率的に行なわれることを旨としてしなければならない。
(事業計画の遵守)
第四条 前条第一項の認可を受けた農業共済組合連合会(以下「指定連合会」という。)は、その事業計画に従つて果樹保険事業を行なわなければならない。
(事業計画の変更)
第五条 指定連合会は、その事業計画を変更しようとするときは、その変更につき、農林大臣の認可を受けなければならない。
2 第三条第二項から第四項までの規定は、前項の認可について準用する。
(認可の取消し)
第六条 農林大臣は、指定連合会が果樹保険事業に係る業務又は会計につき法令、法令に基づいてする行政庁の処分又は定款に違反したときは、第三条第一項の認可を取り消すことができる。
(果樹保険の種類及び内容)
第七条 果樹保険は、収穫保険及び樹体保険とする。
2 収穫保険においては、指定連合会は、被保険者の栽培する指定果樹につき、果実の減収又は品質の低下によつて生じた損害であつて風水害、干害、寒害、雪害その他気象上の原因(地震及び噴火を含む。)による災害、病害(農林大臣の指定するものに限る。)、鳥獣害又は火災(次項において「指定災害」と総称する。)によるものについて、被保険者に保険金を支払うものとする。
3 樹体保険においては、指定連合会は、被保険者の栽培する指定果樹(当該指定果樹の支持物で農林省令で定めるものを含む。)につき、その枯死、流失若しくは滅失又はこれらに準ずるものとして農林省令で定める事由によつて生じた損害であつて指定災害によるものについて、被保険者に保険金を支払うものとする。
(被保険者の資格)
第八条 果樹保険の被保険者たる資格を有する者は、指定連合会の果樹保険の実施地域内において指定果樹を栽培している農業者であつて、当該指定連合会の定款で定めるものとする。
(保険契約の成立及び保険料の支払)
第九条 果樹保険の保険契約は、収穫保険にあつては指定果樹の種類(農林大臣が指定連合会を指定して特定の種類の指定果樹につき特定の品種に限定し又は品種に応じて区分を定めたときは、その指定連合会のその種類の指定果樹についての果樹保険にあつては、その限定した品種又はその定めた区分。以下この項並びに次条及び第十二条において「指定果樹の種類等」という。)ごと及び果実の年産ごと、樹体保険にあつては指定果樹の種類等ごとに、被保険者たる資格を有する者が指定連合会の定款で定めるところにより申込みをし、指定連合会がこれを承諾することによつて成立する。
2 指定連合会と果樹保険の保険契約を締結した者は、指定連合会の定款で定めるところにより、指定連合会に保険料を支払わなければならない。
(保険期間)
第十条 収穫保険の保険期間は、指定果樹の種類等ごとに、花芽の形成期から果実の収穫期までの期間(農林大臣が指定果樹の種類等のうち特定の種類又は品種の指定果樹につきこれと異なる期間を定めたときは、その種類又は品種の指定果樹にあつては、その農林大臣の定めた期間)を基準として、指定連合会が定款で定める期間とする。
2 樹体保険の保険期間は、一年間とする。
(保険金額)
第十一条 収穫保険の保険金額は、政令で定めるところにより、果実の単位当たり価額に基準収穫量を乗じて得た金額(以下「基準収穫金額」という。)をこえない範囲内において、保険契約で定める金額とする。
2 前項の果実の単位当たり価額及び基準収穫量は、農林大臣が定める準則に従い、果実の単位当たり価額にあつては過去一定年間における当該都道府県産の当該果実の平均価格として農林大臣が定める価格を基礎とし、基準収穫量にあつては過去一定年間における当該被保険者の当該果実の収穫量を基礎として、指定連合会が定める。
3 樹体保険の保険金額は、政令で定めるところにより、保険価額をこえない範囲内において、保険契約で定める金額とする。
4 前項の保険価額は、農林大臣が定める準則に従い、保険期間の開始時における当該被保険者の栽培する当該指定果樹(当該指定果樹に係る第七条第三項の農林省令で定める支持物を含む。)の価額として、指定連合会が定める。
(純保険料率)
第十二条 果樹保険の純保険料率は、各指定連合会につきその行なう果樹保険の種類ごと及び指定果樹の種類等ごとに農林大臣が定める基準保険料率を下らない範囲内において、指定連合会が定款で定める割合とする。
2 指定連合会は、前項の規定にかかわらず、指定果樹の種類等ごとに、果樹保険の実施地域を二以上の地域に分けて、その地域ごとに純保険料率を定めることができる。この場合には、その地域ごとの純保険料率は、その地域ごとの保険金額の合計額の見込額を重みとするその算術平均が同項の基準保険料率を下らないように定款で定めるものとする。
(保険金)
第十三条 収穫保険の保険金は、保険契約ごとに、第七条第二項に規定する損害(指定連合会がてん補する責めを負わないものを除く。)に係る損害額の総額が基準収穫金額に政令で定める割合を乗じて得た金額をこえる場合に支払うものとし、その金額は、保険金額にその損害額の総額の基準収穫金額に対する割合に応じて政令で定める割合を乗じて得た金額とする。
2 樹体保険の保険金は、保険契約ごとに、第七条第三項に規定する損害(指定連合会がてん補する責めを負わないものを除く。次項において同じ。)に係る損害額の総額に保険金額の保険価額に対する割合を乗じて得た金額とする。
3 樹体保険の保険金については、保険契約ごとに、第七条第三項に規定する損害に係る損害額の総額が農林省令で定める金額に満たない場合には、指定連合会は、その支払の責めを負わない。
(事務の委託)
第十四条 指定連合会は、その行なう果樹保険に係る事務のうち、保険契約の申込みの受理、果実の生産数量の調査その他農林省令で定める事項に係るものを農業共済組合、農業災害補償法第八十五条の六第一項の共済事業を行なう市町村、農業協同組合又は農業協同組合連合会に委託することができる。
2 農業共済組合は、農業災害補償法第八十三条各号に掲げる共済事業のほか、前項の規定による委託を受けて同項に規定する事務を行なうことができる。
3 農業協同組合及び農業協同組合連合会は、農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条の規定にかかわらず、第一項の規定による委託を受けて同項に規定する事務を行なうことができる。
(経理の区分)
第十五条 指定連合会は、農業災害補償法第百三十条の規定によるほか、果樹保険事業については、他の事業と区分して経理しなければならない。
(資料の提供に関する協力)
第十六条 指定連合会は、果樹保険の保険金額の決定又は支払うべき果樹保険の保険金に係る損害額の認定に関し必要があるときは、被保険者又は被保険者となる者が直接又は間接の構成員となつている農業協同組合その他の団体でこれらの者からその生産した果実の加工若しくは販売の委託を受け又は当該果実の売渡しを受けたものに対し、当該委託又は売渡しに係る果実の数量又は品質に関する資料の提供につき、その協力を求めることができる。
(農業災害補償法及び商法の準用等)
第十七条 農業災害補償法第四十七条、第九十一条、第九十二条、第九十三条第二項、第三項及び第五項、第九十四条から第九十八条の二まで、第九十九条(同条第一項第四号、第六号及び第七号を除く。)、第百条並びに第百一条並びに商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百四十条から第六百四十五条まで、第六百四十九条、第六百六十二条及び第六百六十三条の規定は、果樹保険について準用する。
2 この法律の規定による果樹保険事業は、農業災害補償法第三十条第一項の規定の適用については、同項第五号の二に規定する保険事業であるものとする。
3 指定連合会がこの法律の規定による果樹保険事業を行なう場合における農業災害補償法第百四十二条の五第二項の規定の適用については、同項中「又は保険事業」とあるのは、「若しくは保険事業又は果樹保険臨時措置法(昭和四十二年法律第九十三号)の規定による果樹保険事業」とする。
第三章 政府の再保険事業
(再保険契約の締結)
第十八条 政府は、指定連合会を相手方として、指定果樹の種類その他の政令で定める区分(以下「再保険区分」という。)ごとに、当該指定連合会が果樹保険の保険契約(政令で定めるものを除く。)によつて被保険者に対して負う保険責任を一体として、これにつき再保険契約を締結することができる。
(再保険金額)
第十九条 政府の再保険金額は、再保険区分ごと及び指定連合会ごとに、その保険金額の合計額のうちその合計額に果樹保険の保険責任に係る危険の態様を勘案して農林大臣の定める率を乗じて得た金額をこえる部分の金額を算出し、これにさらに政令で定める割合を乗じて得た金額とする。
(再保険料)
第二十条 政府の再保険料の金額は、再保険区分ごと及び指定連合会ごとに、その純保険料の合計額のうち、政府の再保険責任に係る危険に対応するものとして農林大臣の定めるところにより算定される部分の金額とする。
(再保険金)
第二十一条 政府の再保険金は、再保険区分ごと及び指定連合会ごとに、その支払うべき保険金の合計額がその保険金額の合計額に第十九条の農林大臣の定める率を乗じて得た金額をこえる場合に支払うものとし、その金額は、当該保険金の合計額のうちそのこえる部分の金額に同条の政令で定める割合を乗じて得た金額とする。
(農業災害補償法及び商法の準用)
第二十二条 農業災害補償法第百三十八条から第百四十条まで並びに商法第六百四十二条から第六百四十五条まで、第六百六十二条及び第六百六十三条の規定は、果樹保険に係る政府の再保険について準用する。
第四章 雑則
(国の助成)
第二十三条 国は、毎会計年度予算の範囲内において、政令で定めるところにより、指定連合会が果樹保険事業を行なうのに要する事務費を補助するものとする。
2 国は、前項の規定による補助のほか、指定連合会の果樹保険事業の実施を円滑にするため、毎会計年度予算の範囲内において、政令で定めるところにより、果樹保険の保険契約者に対し、交付金を交付することができる。
3 前項の交付金に相当する金額は、毎会計年度予算で定めるところにより、一般会計から農業共済再保険特別会計に繰り入れる。
4 第二項の交付金で政令で定めるものは、保険契約者に交付するのに代えて、当該保険契約者が指定連合会に支払うべき保険料の一部を充てるため当該指定連合会に交付し、又は指定連合会が政府に支払うべき果樹保険に係る再保険料の全部若しくは一部に充てて農業共済再保険特別会計の再保険料収入に計上することができる。
(農業共済基金からの資金の貸付け)
第二十四条 農業共済基金は、農業共済基金法(昭和二十七年法律第二百二号)第三十三条の規定にかかわらず、指定連合会に対し、当該指定連合会が果樹保険の保険金の支払に関して必要とする資金を貸し付けることができる。
2 農業共済基金から貸付けを受けた前項に規定する資金は、同項に規定する保険金の支払以外の目的に使用してはならない。
3 農業共済基金法第三十六条第二項の規定は、前項の規定に違反して資金を他の目的に使用した場合に準用する。
(報告の徴収)
第二十五条 農林大臣は、この法律の施行の状況を明らかにするため必要があると認めるときは、指定連合会から報告を徴収することができる。
(印紙税の非課税)
第二十六条 果樹保険に関する文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。
一 保険証券
二 第十四条第一項の規定による委託に関する契約書
三 第二十四条第一項の規定により指定連合会が農業共済基金から資金の貸付けを受ける場合において作成される消費貸借に関する契約書
第五章 罰則
(罰則)
第二十七条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした指定連合会の役員は、一万円以下の過料に処する。
一 第十五条の規定に違反したとき。
二 第十七条第一項において準用する農業災害補償法第九十一条、第百条又は第百一条の規定に違反したとき。
附 則
1 この法律は、昭和四十三年四月一日から施行する。
2 この法律は、施行の日から起算して五年をこえない範囲内において別に法律で定める日にその効力を失う。
3 この法律の失効に伴い必要な経過規定は、別に法律で定める。
4 農業共済再保険特別会計法(昭和十九年法律第十一号)の一部を次のように改正する。
第二十二条の次に次の六条を加える。
第二十三条 果樹保険臨時措置法(昭和四十二年法律第九十三号)ニ依ル果樹保険ニ係ル再保険事業ノ経理ハ第一条ノ規定ニ拘ラズ之ヲ本会計ニ於テ行フモノトシ其ノ歳入ヲ以テ其ノ歳出ニ充ツ
第二十四条 本会計ニ前条ノ再保険事業ノ経理ヲ明確ニスル為第二条ニ規定スル各勘定ノ外臨時果樹勘定ヲ設ク
第二十五条 再保険金支払基金勘定ニ於テハ第二条ノ二第一項ノ規定ニ依ルモノノ外臨時果樹勘定ヨリノ受入金及其ノ運用ニ伴ヒ生ズル利子収入ヲ以テ其ノ歳入トシ同勘定へノ繰入金ヲ以テ其ノ歳出トス
第二条ノ二第一項ニ規定スル一般会計ヨリノ受入金ハ同条第二項ノ規定ニ依ルモノノ外予算ノ定ムル所ニ依リ果樹保険ニ関スル異常災害ノ発生ニ伴フ臨時果樹勘定ニ於ケル再保険金ノ支払財源ノ不足ニ充ツル為ノ財源トシテ之ヲ繰入ルルモノトス
第二条ノ二第三項ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依ル臨時果樹勘定へノ繰入金ニ付之ヲ準用ス
第二十六条 臨時果樹勘定ニ於テハ果樹保険ニ関スル再保険事業経営上ノ再保険料、一般会計及再保険金支払基金勘定ヨリノ受入金、積立金ヨリ生ズル収入、借入金並ニ附属雑収入ヲ以テ其ノ歳入トシ同事業経営上ノ再保険金、果樹保険臨時措置法第二十三条第二項ノ交付金、再保険料ノ還付金、借入金ノ償還金及利子、一時借入金ノ利子其ノ他ノ諸費ヲ以テ其ノ歳出トス
第二十七条 業務勘定ニ於テハ第五条ノ規定ニ依ルモノノ外果樹保険ニ関スル再保険事業ノ業務取扱ニ関スル諸費ニ充ツル為ノ一般会計ヨリノ受入金及同事業ノ業務取扱ニ関シ生ズル収入ヲ以テ其ノ歳入トシ同事業ノ業務取扱ニ関スル諸費ヲ以テ其ノ歳出トス
第二十八条 第六条第二項及第四項、第六条ノ二第一項、第八条乃至第十条並ニ第十二条ノ規定ハ臨時果樹勘定ニ付之ヲ準用ス
法務大臣 田中伊三次
大蔵大臣 水田三喜男
農林大臣 倉石忠雄
内閣総理大臣 佐藤栄作