建設業法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第百二十五号
公布年月日: 昭和31年6月2日
法令の形式: 法律
建設業法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年六月二日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百二十五号
建設業法の一部を改正する法律
建設業法(昭和二十四年法律第百号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三章 建設工事の請負契約(第十八条―第二十五条)」を
第三章
建設工事の請負契約(第十八条―第二十四条)
第三章の二
建設工事の請負契約に関する紛争の処理(第二十五条―第二十五条の二十四)
に、「建設業審議会」を「中央建設業審議会及び都道府県建設業審議会」に、「第三十九条」を「第三十九条の二」に改める。
第二十四条を削り、第二十五条を第二十四条とする。
第三章の次に次の一章を加える。
第三章の二 建設工事の請負契約に関する紛争の処理
(建設工事紛争審査会の設置)
第二十五条 建設工事の請負契約に関する紛争の解決を図るため、建設工事紛争審査会を設置する。
2 建設工事紛争審査会(以下「審査会」という。)は、この法律の規定により、建設工事の請負契約に関する紛争(以下「紛争」という。)につきあつせん、調停及び仲裁(以下「紛争処理」という。)を行う権限を有する。
3 審査会は、中央建設工事紛争審査会(以下「中央審査会」という。)及び都道府県建設工事紛争審査会(以下「都道府県審査会」という。)とし、中央審査会は、建設省に、都道府県審査会は、都道府県に置く。
(審査会の組織)
第二十五条の二 審査会は、委員十五人以内をもつて組織する。
2 委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、中央審査会にあつては建設大臣が、都道府県審査会にあつては都道府県知事が任命する。
3 中央審査会及び都道府県審査会にそれぞれ会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者がその職務を代理する。
(委員の任期等)
第二十五条の三 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員は、後任の委員が任命されるまでその職務を行う。
4 委員は、非常勤とする。
(委員の欠格条項)
第二十五条の四 次の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終り、又はその執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
(委員の解任)
第二十五条の五 建設大臣又は都道府県知事は、それぞれその任命に係る委員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その委員を解任しなければならない。
2 建設大臣又は都道府県知事は、それぞれその任命に係る委員が次の各号の一に該当するときは、その委員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められるとき。
(会議及び議決)
第二十五条の六 審査会の会議は、会長が招集する。
2 審査会は、会長又は第二十五条の二第五項の規定により会長を代理する者のほか、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 審査会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、会長が決する。
(特別委員)
第二十五条の七 紛争処理に参与させるため、審査会に、特別委員を置くことができる。
2 特別委員の任期は、一年とする。
3 第二十五条の二第二項、第二十五条の三第二項及び第四項、第二十五条の四並びに第二十五条の五の規定は、特別委員について準用する。
4 この法律に規定するもののほか、特別委員に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県審査会の委員等の一般職に属する地方公務員たる性質)
第二十五条の八 都道府県審査会の委員及び特別委員は、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十四条、第六十条第二号及び第六十二条の規定の適用については、同法第三条第二項に規定する一般職に属する地方公務員とみなす。
(管轄)
第二十五条の九 中央審査会は、第二十五条の十五第二項に規定するもののほか、次の各号に掲げる場合における紛争処理について管轄する。
一 当事者の双方が建設大臣の登録を受けた建設業者であるとき。
二 当事者の双方が建設業者であつて、登録をした行政庁を異にするとき。
三 当事者の一方のみが建設業者であつて、建設大臣の登録を受けたものであるとき。
2 都道府県審査会は、次の各号に掲げる場合における紛争処理について管轄する。
一 当事者の双方が当該都道府県の知事の登録を受けた建設業者であるとき。
二 当事者の一方のみが建設業者であつて、当該都道府県の知事の登録を受けたものであるとき。
3 前二項の規定にかかわらず、当事者は、双方の合意によつて管轄審査会を定めることができる。
(紛争処理の申請)
第二十五条の十 審査会に対する紛争処理の申請は、政令の定めるところにより、書面をもつて、中央審査会に対するものにあつては建設大臣を、都道府県審査会に対するものにあつては当該都道府県知事を経由してこれをしなければならない。
(あつせん又は調停の開始)
第二十五条の十一 審査会は、紛争が生じた場合において、次の各号の一に該当するときは、あつせん又は調停を行う。
一 当事者の双方又は一方から、審査会に対しあつせん又は調停の申請がなされたとき。
二 公共性のある施設又は工作物で政令で定めるものに関する紛争につき、審査会が職権に基き、あつせん又は調停を行う必要があると決議したとき。
(あつせん)
第二十五条の十二 審査会によるあつせんは、あつせん委員がこれを行う。
2 あつせん委員は、委員又は特別委員のうちから、事件ごとに、審査会の会長が指名する。
3 あつせん委員は、当事者間をあつせんし、双方の主張の要点を確かめ、事件が解決されるように努めなければならない。
(調停)
第二十五条の十三 審査会による調停は、三人の調停委員がこれを行う。
2 調停委員は、委員又は特別委員のうちから、事件ごとに、審査会の会長が指名する。
3 審査会は、調停のため必要があると認めるときは、当事者の出頭を求め、その意見をきくことができる。
4 審査会は、調停案を作成し、当事者に対しその受諾を勧告することができる。
5 前項の調停案は、調停委員の過半数の意見で作成しなければならない。
(あつせん又は調停をしない場合)
第二十五条の十四 審査会は、紛争がその性質上あつせん若しくは調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりにあつせん若しくは調停の申請をしたと認めるときは、あつせん又は調停をしないものとする。
(仲裁の開始)
第二十五条の十五 審査会は、紛争が生じた場合において、次の各号の一に該当するときは、仲裁を行う。
一 当事者の双方から、審査会に対し仲裁の申請がなされたとき。
二 この法律による仲裁に付する旨の合意に基き、当事者の一方から、審査会に対し仲裁の申請がなされたとき。
2 中央審査会は、前項の規定により仲裁を行うほか、第二十五条の十九第一項の規定により異議の申立があつたときは、中央審査会に対し仲裁の申請があつたものとみなして、当該異議の申立に係る事件につき仲裁を行う。
(仲裁)
第二十五条の十六 審査会による仲裁は、三人の仲裁委員がこれを行う。
2 仲裁委員は、委員又は特別委員のうちから当事者が合意によつて選定した者につき、審査会の会長が指名する。ただし、当事者の合意による選定がなされなかつたときは、委員又は特別委員のうちから審査会の会長が指名する。
3 仲裁委員のうち少くとも一人は、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二章の規定により、弁護士となる資格を有する者でなければならない。
4 審査会の行う仲裁については、この法律に別段の定がある場合を除いて、仲裁委員を仲裁人とみなして、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第八編(仲裁手続)の規定を適用する。
(文書及び物件の提出)
第二十五条の十七 審査会は、仲裁を行う場合において必要があると認めるときは、当事者の申出により、相手方の所持する当該請負契約に関する文書又は物件を提出させることができる。
2 審査会は、相手方が正当な理由なく前項に規定する文書又は物件を提出しないときは、当該文書又は物件に関する申立人の主張を真実と認めることができる。
(立入検査)
第二十五条の十八 審査会は、仲裁を行う場合において必要があると認めるときは、当事者の申出により、相手方の占有する工事現場その他事件に関係のある場所に立ち入り、紛争の原因たる事実関係につき検査をすることができる。
2 審査会は、前項の規定により検査をする場合においては、当該仲裁委員の一人をして当該検査を行わせることができる。
3 審査会は、相手方が正当な理由なく第一項に規定する検査を拒んだときは、当該事実関係に関する申立人の主張を真実と認めることができる。
(異議の申立)
第二十五条の十九 都道府県審査会の行つた仲裁判断に対しては、当事者は、書面をもつて当該都道府県審査会に対し異議の申立をすることができる。
2 前項の規定による異議の申立は、当事者が仲裁判断の送達を受けた日から二週間以内にしなければならない。
3 前項に規定する期間内に異議の申立があつたときは、第一項の仲裁判断は、その効力を失う。
4 第二項に規定する期間内に異議の申立がないときは、第一項の仲裁判断は、確定判決と同一の効力を有する。
5 都道府県審査会は、第一項の規定による異議の申立があつたときは、当該異議の申立の書面及び仲裁判断の記録を中央審査会に送付するとともに、異議の申立のあつた旨を相手方に対し通知しなければならない。
(調停又は仲裁の手続の非公開)
第二十五条の二十 審査会の行う調停又は仲裁の手続は、公開しない。ただし、審査会は、相当と認める者に傍聴を許すことができる。
(紛争処理の手続に要する費用)
第二十五条の二十一 紛争処理の手続に要する費用は、当事者が当該費用の負担につき別段の定をしないときは、各自これを負担する。
2 審査会は、当事者の申立に係る費用を要する行為については、当事者に当該費用を予納させるものとする。
3 審査会が前項の規定により費用を予納させようとする場合において、当事者が当該費用の予納をしないときは、審査会は、前項の行為をしないことができる。
(申請手数料)
第二十五条の二十二 紛争処理の申請をする者は、政令の定めるところにより、申請手数料を納めなければならない。
2 前項の規定による申請手数料は、紛争処理を中央審査会が行う場合においては国の収入とし、都道府県審査会が行う場合においては当該都道府県の収入とする。
(紛争処理状況の報告)
第二十五条の二十三 中央審査会は、建設大臣に対し、都道府県審査会は、当該都道府県知事に対し、建設省令の定めるところにより、紛争処理の状況について報告しなければならない。
(政令への委任)
第二十五条の二十四 この章に規定するもののほか、紛争処理の手続及びこれに要する費用に関し必要な事項は、政令で定める。
第二十八条第二項及び第二十九条中「中央建設業審議会又は都道府県建設業審議会にはかつて、」を削る。
「第六章 建設業審議会」を「第六章 中央建設業審議会及び都道府県建設業審議会」に改める。
第三十三条を次のように改める。
(中央建設業審議会の設置及び目的)
第三十三条 他の法律によりその権限に属させられた事項を処理するほか、建設大臣の諮問に応じ建設業の改善に関する重要事項を調査審議させるため、建設省に、中央建設業審議会を設置する。
第三十四条第一項中「建設業審議会」を「中央建設業審議会」に改める。
第三十五条の見出しを「(中央建設業審議会の組織)」に改め、同条第一項中「委員二十五人以内」を「委員三十人以内」に改め、「、都道府県建設業審議会は委員二十人以内をもつて、」を削り、同条第二項中「建設業審議会」を「中央建設業審議会」に改め、「中央建設業審議会にあつては、」を削り、「、都道府県建設業審議会にあつては、都道府県知事が建設大臣の承認を得て、命じ、又は委嘱する。」を「任命する。」に改め、同条第三項中「命じ、又は委嘱する」を「任命する」に改める。
第三十六条を次のように改める。
(準用規定)
第三十六条 第二十五条の三第一項、第二項及び第四項並びに第二十五条の四の規定は、中央建設業審議会の委員について準用する。この場合において、第二十五条の三第一項又は第二項中「委員」とあるのは、「関係各庁の職員のうちから任命された委員を除く他の委員」と読み替えるものとする。
第三十七条を次のように改める。
第三十七条 削除
第三十八条の見出しを「(中央建設業審議会の会長)」に改め、同条第一項中「及び都道府県建設業審議会」及び「各々」を削る。
第三十九条中「建設業審議会」を「中央建設業審議会」に改める。
第六章中第三十九条の次に次の一条を加える。
(都道府県建設業審議会)
第三十九条の二 都道府県知事の諮問に応じ建設業の改善に関する重要事項を調査審議させるため、都道府県は、条例で、都道府県建設業審議会を設置することができる。
2 都道府県建設業審議会に関し必要な事項は、条例で定める。
第四十四条中「第二十四条第二項及び」を削る。
第四十九条第二号中「第二十四条第二項」を「第二十五条の十三第三項」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(建設省設置法の改正)
2 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第十条第一項の表中
中央建設業審議会
建設大臣の諮問に応じて建設業に関する重要事項を調査審議し、当該事項について関係行政庁に建議し、その他建設業法(昭和二十四年法律第百号)に基く権限を行うこと。
中央建設業審議会
建設大臣の諮問に応じて建設業に関する重要事項を調査審議し、当該事項について関係行政庁に建議し、その他建設業法(昭和二十四年法律第百号)に基く権限を行うこと。
中央建設工事紛争審査会
建設工事の請負契約に関する紛争につきあつせん、調停及び仲裁を行うこと。
に改める。
内閣総理大臣 鳩山一郎
法務大臣 牧野良三
建設大臣 馬場元治