道路運送法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第168号
公布年月日: 昭和28年8月5日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

道路運送法実施後の自動車運送の発達と諸情勢の変化に対応するため、自動車運送事業に対する規定と諮問機関について必要な改正を行い、行政手続きの簡素化を図るものである。主な改正点として、一般乗合旅客自動車運送事業と一般路線貨物自動車運送事業の定義を明確化し、類似行為の発生を防止する。また、免許基準を改正して地方の実情に対応させ、運賃料金制度では最高・最低運賃制度を導入する。さらに、道路運送審議会を廃止し、代わりに自動車運送協議会を設置して行政の民主化を推進する。加えて、自家用乗用車の使用届出制等を廃止し、行政手続きの簡素化を実現する。

参照した発言:
第16回国会 参議院 運輸委員会 第6号

審議経過

第16回国会

参議院
(昭和28年7月3日)
衆議院
(昭和28年7月6日)
(昭和28年7月9日)
(昭和28年7月10日)
(昭和28年7月11日)
(昭和28年7月14日)
(昭和28年7月15日)
参議院
(昭和28年7月15日)
衆議院
(昭和28年7月16日)
参議院
(昭和28年7月20日)
(昭和28年7月23日)
(昭和28年7月24日)
(昭和28年7月27日)
(昭和28年7月29日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
道路運送法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月五日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十八号
道路運送法の一部を改正する法律
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)の一部を次のように改正する。
目次中「第八章 道路運送審議会(第百三条―第百十九条)」を「第八章 自動車運送協議会(第百三条―第百十九条)」に改める。
第三条第二項を次のように改める。
2 一般自動車運送事業(特定自動車運送事業以外の自動車運送事業)の種類は、左に掲げるものとする。
一 一般乗合旅客自動車運送事業(路線を定めて定期に運行する自動車により乗合旅客を運送する一般自動車運送事業)
二 一般貸切旅客自動車運送事業(旅客を運送する一般自動車運送事業であつて、前号及び次号の自動車運送事業以外のもの)
三 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約により乗車定員十人以下の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般自動車運送事業)
四 一般路線貨物自動車運送事業(路線を定めて定期に運行する自動車により積合貨物を運送する一般自動車運送事業)
五 一般区域貨物自動車運送事業(貨物を運送する一般自動車運送事業であつて、前号及び次号の自動車運送事業以外のもの)
六 一般小型貨物自動車運送事業(最大積載量が運輸省令で定めるトン数以下の自動車のみにより貨物を運送する一般自動車運送事業であつて、第四号の自動車運送事業以外のもの)
第六条を次のように改める。
(免許基準)
第六条 運輸大臣は、一般自動車運送事業の免許をしようとするときは、左の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること。
二 当該事業の開始によつて当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること。
三 当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
四 当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。
五 その他当該事業の開始が公益上必要であり、且つ、適切なものであること。
2 運輸大臣は、特定自動車運送事業の免許をしようとするときは、左の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 当該事業の開始が輸送需要に対し必要なものであること。
二 当該輸送需要が一般自動車運送事業によつて満たされることを適切としないものであること。
3 運輸大臣は、免許の申請を審査する場合において、前二項に掲げる基準を適用するに当つては、形式的画一的に流れることなく、当該自動車運送事業の種類及び路線又は事業区域に応じ、実情に沿うように努めなければならない。
第六条の次に次の一条を加える。
(欠格事由)
第六条の二 運輸大臣は、左の各号の場合には、自動車運送事業の免許をしてはならない。
一 免許を受けようとする者が一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過していない者であるとき。
二 免許を受けようとする者が自動車運送事業の免許の取消を受け、取消の日から二年を経過していない者であるとき。
三 免許を受けようとする者が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者である場合において、その法定代理人が前二号の一に該当する者であるとき。
四 免許を受けようとする者が法人である場合において、その法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)が前三号の一に該当する者であるとき。
第七条第一項中「期間内に、」の下に「且つ、運輸省令で定める場合にあつては、当該輸送施設等によつて事業計画に従う業務を行うことができることについて運輸大臣の確認を受け、」を加える。
第八条第二項に次の一号を加える。
五 運賃及び料金が対距離制による場合であつて、運輸大臣がその算定の基礎となる距離を定めたときは、これによるものであること。
第八条第三項を次のように改める。
3 第一項の運賃及び料金は、確定額をもつて定められなければならない。但し、一般乗合旅客自動車運送事業及び一般乗用旅客自動車運送事業以外の自動車運送事業のうち運輸大臣の指定する種類については、最高額及び最低額をもつてこれに代えることができる。
第十三条第一項中「自動車運送事業者」の下に「(一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者を除く。)」を加える。
第十八条第二項を次のように改める。
2 第六条の規定は、前項の認可について準用する。
第二十三条中「一般路線貨物自動車運送事業を経営する者」の下に「(以下「一般路線貨物自動車運送事業者」という。)」を加え、同条中「運輸大臣が事業区域を指定したときは、」及び「その事業区域内において」を削る。
第二十四条を次のように改める。
(禁止行為)
第二十四条 事業区域を定める自動車運送事業を経営する者は、発地及び着地のいずれもがその事業区域外に存する旅容又は貨物の運送をしてはならない。
第二十四条の次に次の一条を加える。
第二十四条の二 一般貸切旅客自動車運送事業を経営する者(以下「一般貸切旅客自動車運送事業者」という。)は、左の場合を除き、乗合旅客の運送をしてはならない。
一 災害の場合その他緊急を要するとき。
二 一般乗合旅客自動車運送事業者によることが困難な場合において、運輸大臣の許可を受けたとき。
2 一般区域貨物自動車運送事業を経営する者(以下「一般区域貨物自動車運送事業者」という。)又は一般小型貨物自動車運送事業を経営する者(以下「一般小型貨物自動車運送事業者」という。)は、左の場合を除き、積合貨物の運送をしてはならない。
一 災害の場合その他緊急を要するとき。
二 一般路線貨物自動車運送事業者又は鉄道により運送される貨物の集貨又は配達のためにするとき。
三 多数の貨物の集散する場所に発着する貨物の運送であつて、運輸省令で定めるものを行うとき。
四 一般路線貨物自動車運送事業者によることが困難な場合において、運輸大臣の許可を受けたとき。
第三十条中「この法律に規定するものの外、」の下に「事業用自動車の運転者、車掌その他旅客又は公衆に接する従業員の選任、」を加える。
第四十三条の見出しを「(免許の取消等)」に改め、同条中「期間を定めて」の下に「輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは」を加え、同条第三号中「第六条第二項」を「第六条の二」に改める。
第四十三条の次に次の一条を加える。
第四十三条の二 運輸大臣は、前条の規定により輸送施設の使用の停止又は事業の停止を命じたときは、当該事業用自動車の道路運送車両法による自動車検査証を陸運局長に返納し、又は当該事業用自動車の同法による自動車登録番号標及びその封印を取りはずした上、その自動車登録番号標について陸運局長の領置を受けるべきことを命ずることができる。
2 陸運局長は、前条に規定する輸送施設の使用の停止又は事業の停止の期間が満了したときは、前項の規定により返納を受けた自動車検査証又は同項の規定により領置した自動車登録番号標を返付しなければならない。
3 前項の自動車登録番号標の返付を受けた者は、当該自動車登録番号標を当該自動車に取りつけ、陸運局長の封印の取りつけを受けなければならない。
第四十四条第三号の次に次の一号を加える。
四 第百二十条の規定により免許に附した期限が満了したとき。
第四十六条中「第二十四条、」の下に「第二十四条の二第二項、」を加え、同条中「及び第四十三条」を「、第四十三条及び第四十三条の二」に改める。
第七十九条中「第四十三条、」の下に「第四十三条の二、」を加える。
第八十九条を次のように改める。
(利用運送の制限)
第八十九条 自動車運送取扱事業者は、左の場合を除き、一般区域貨物自動車運送事業者又は一般小型貨物自動車運送事業者が事業用自動車を貸し切つて行う運送を利用して、積合貨物を運送してはならない。
一 災害の場合その他緊急を要するとき。
二 公衆の利便を増進するため必要である場合において運輸大臣の許可を受けたとき。
第九十五条中「自動車運送取扱事業には、」の下に「第三十条、」を加える。
第九十六条を次のように改める。
第九十六条 削除
第九十八条中「及び第九十一条第一項から第四項まで」及び後段を削る。
第九十九条第一項中「事業用自動車以外の自動車(以下「自家用自動車」という。)」を「事業用自動車以外の自動車(以下「自家用自動車」という。)であつて貨物の輸送の用に供するもの(以下「自家用貨物自動車」という。)」に、「自家用自動車を使用する者」を「自家用貨物自動車を使用する者」に改め、同条第二項中「自家用自動車」を「自家用貨物自動車」に改める。
第百二条第二項の次に次の一項を加える。
3 第四十三条の二の規定は、運輸大臣が第一項の規定により自家用自動車の使用を禁止した場合について準用する。
第八章を次のように改める。
第八章 自動車運送協議会
(自動車運送協議会)
第百三条 自動車運送協議会は、陸運局ごとに、これを置く。
2 自動車運送協議会は、陸運局長の諮問に応じて、自動車運送につき、左に掲げる事項に関する基本的な方針を調査審議する。
一 一定の区域における適正な供給輸送力の策定その他輸送の需要と供給との調整に関すること。
二 輸送施設の改善に関すること。
三 運賃及び料金の基準に関すること。
四 従業員の服務及び養成に関すること。
五 その他輸送に関する重要な事項
3 陸運局長は、前項の規定により自動車運送協議会の答申を受けたときは、その所掌事務の遂行上、これを尊重しなければならない。
4 自動車運送協議会は、第二項の事項に関し必要と認めるときは、関係行政庁に建議することができる。
5 自動車運送協議会は、自動車運送に関する苦情について調査し、陸運局長に意見を述べることができる。
(組織)
第百四条 自動車運送協議会は、委員九人以内をもつて組織する。
2 自動車運送協議会の委員は、関係行政庁の職員、学識経験のある者、自動車運送事業者及び自動車運送事業を利用する者のうちから、運輸大臣が関係者の意見を徴して任命する。
3 自動車運送協議会が特定の都道府県の区域内の自動車運送に直接関係ある事項を審議する場合には、特にこれを審議させるため、自動車運送協議会に臨時委員を置くものとする。
4 第二項の規定は、臨時委員の任命について準用する。
5 委員及び臨時委員は、非常勤とする。
(委員の任期)
第百五条 委員(関係行政庁の職員のうちから任命された委員を除く。)の任期は、一年とする。
2 委員は、再任されることができる。
(庶務)
第百六条 自動車運送協議会の庶務は、陸運局において処理する。
(省令への委任)
第百七条 この法律に規定するものの外、自動車運送協議会に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第百八条から第百十九条まで 削除
第百二十条中「条件」の下に「又は期限」を加える。
第百二十二条第一項第一号中「第二章、」の下に「第四章、」を加え、同条中第二項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。
2 第四十三条の二に規定する陸運局長の職権は、政令で定めるところにより、都道府県知事に委任することができる。
第百二十二条の次に次の一条を加える。
(聴聞)
第百二十二条の二 陸運局長は、その権限に属する左に掲げる事項について、必要があると認めるときは、利害関係人又は参考人の出頭を求めて聴聞することができる。
一 自動車運送事業の免許
二 自動車運送事業の停止及び免許の取消
三 自動車運送事業における基本的な運賃及び料金に関する認可
2 陸運局長は、その権限に属する前項各号に掲げる事項について利害関係人の申請があつたとき、又は運輸大臣の権限に属する前項各号に掲げる事項について運輸大臣の指示があつたときは、利害関係人又は参考人の出頭を求めて聴聞しなければならない。
3 前二項の聴聞に際しては、利害関係人に対し、意見を述べ、及び証拠を提出する機会が与えられなければならない。
4 第一項及び第二項の聴聞に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第百二十五条中「道路運送の振興を図るため組織する団体」を「左に掲げる事業の全部又は一部を行うことを目的として組織する団体」に改め、同条に次の十号を加える。
一 構成員の行う道路運送に関する指導、調査及び研究
二 構成員の行う道路運送に必要な物資の共同購入、共同設備の設置その他構成員の行う道路運送に関する共同施設
三 構成員に対する道路運送に関し必要な資金の貸付(手形の割引を含む。)及び構成員のためにするその借入
四 構成員の道路運送に関する債務の保証
五 構成員の行う道路運送に関し必要な資金の融通のあつ旋
六 構成員の行う道路運送の用に供する物資の購入のあつ旋
七 団体としての意見の公表又は適当な行政庁に対する申出
八 この法律の規定により構成員が提出する報告書等の取りまとめ
九 前号に掲げるものの外、行政庁が構成員に対して発する通知の構成員への伝達その他行政庁の行うこの法律の施行のためにする措置に対する協力
十 この法律の違反行為の予防
第百二十五条の次に次の一条を加える。
(自動車運送の総合的発達のためにする措置)
第百二十五条の二 運輸大臣は、自動車運送の総合的な発達をはかるために、自動車運送相互の調整をはかるとともに、自動車運送に関する資金の融通のあつ旋、自動車運送の用に供する物資の確保及び自動車事故による損害賠償を保障する制度の確立に努めなければならない。
第百二十九条第三号中「事業」を「輸送施設の使用の停止又は事業」に改める。
第百三十条第一号中「第二十四条第一項、」を削り、同条第二号中「第三十四条第一項、」の下に「第四十三条の二第一項(第百二条第三項において準用する場合を含む。)、」を加え、同条第三号中「第十五条、」の下に「第四十三条の二第三項(第百二条第三項において準用する揚合を含む。)」を加え、同条第七号を削り、同条中第八号を第七号とし、第九号を第八号とする。
第百三十八条第二号中「(第九十八条において準用する場合を含む。)」を削る。
附 則
1 この法律は、昭和二十八年十月一日から施行する。
2 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第五十五条を次のように改める。
(自動車運送協議会)
第五十五条 陸運局に、附属機関として自動車運送協議会を置く。
2 自動車運送協議会については、道路運送法の定めるところによる。
3 この法律の施行前にした改正前の道路運送法及び道路運送法施行法(昭和二十六年法律第百八十四号)第十一条の規定による一般自動車運送事業の免許又は道路運送法第四十六条の規定による種類若しくは事業区域の指定は、運輸省令で定めるところにより、改正後の同法の規定に基いてしたものとみなす。
4 この法律の施行前にした改正前の道路運送法の規定による一般自動車運送事業の免許の申請は、運輸省令で定めるところにより、改正後の同法の規定に基いてしたものとみなす。
5 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
運輸大臣 石井光次郎
建設大臣 戸塚九一郎
内閣総理大臣 吉田茂