(目的)
第一條 この法律は、国民健康保険の保険者の診療報酬の未払を解消し、国民健康保険事業の再建整備を助成するため、保険者に対し、長期且つ低利の資金を貸し付けることを目的とする。
(用語の意義)
第二條 この法律において、左の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 未収保険料 昭和二十六年度末までに調査決定した保険料(国民健康保険税を含む。以下同じ。)で、昭和二十七年五月三十一日までに収納することができなかつたものをいう。
二 未払診療報酬 昭和二十六年度末までに支払義務が生じた診療報酬債務(診療報酬債務の支払に充てた他からの借入金その他診療報酬債務に代るべき債務を含む。以下同じ。)で、昭和二十七年五月三十一日までに支払うことができなかつたものをいう。
三 一般会計繰入金 保険者が市町村若しくは特別区又はこれらの組合(以下「市町村」という。)である場合においては、その一般会計から当該市町村の国民健康保険特別会計への繰入金を、保険者が国民健康保険組合である場合においては、市町村が当該組合に対して交付する補助金を、保険者が国民健康保険を行う社団法人である場合においては、その一般会計から当該社団法人の国民健康保険特別会計への繰入金及び市町村が当該社団法人に対して交付する補助金をいう。
四 受診率 一年度間における受診件数(国民健康保険の被保険者が、療養の給付又は療養費の支給を受ける場合における診療の件数をいい、診療の期間が二箇月にまたがらないときは、これを一件とし、その期間が二箇月以上にまたがるときは、これを各月ごとに一件とする。)の、当該年度における各月末の被保険者数の平均数に対する割合をいう。但し、一年度間における国民健康保険事業(以下「事業」という。)実施の期間が一年に満たない場合においては、その期間における受診件数の、当該期間における各月末の被保険者数の平均数に対する割合を、当該期間の月数で除し、これに十二を乗じて得た割合をいう。
五 保険料収納割合 調査決定した保険料の額のうち収納した金額の、当該調査決定した保険料の額に対する割合をいう。
(貸付金の貸付)
第三條 政府は、昭和二十七年三月三十一日において事業を実施していた保険者で、未収保険料があるもののうち、左の各号に掲げる要件を具備するものに対し、未払診療報酬の支払に充てさせるため、昭和二十七年度から昭和二十九年度までの間、毎年度予算の範囲内において、貸付金を貸し付けることができる。厚生大臣が必要があると認めるときは、災害その他特別の事由により、左の各号の要件を具備しない保険者に対しても、同様とする。
一 貸付金の貸付を受ける年度(以下「貸付年度」という。)の前年度における調査決定した保険料の額と一般会計繰入金の額との合計額の、療養の給付に要した費用(療養費を含む。以下同じ。)の額に対する割合が、百分の五十五以上であること。
二 貸付年度の前年度における受診率が、百分の五十以上であること。
三 貸付年度の前年度における一部負担金の額の、療養の給付に要した費用の額に対する割合が、百分の五十以下であること。
四 昭和二十七年度における貸付については、昭和二十六年度における保険料収納割合が、百分の七十以上であること。
五 昭和二十八年度における貸付については、昭和二十七年度における保険料収納割合が、百分の八十以上であり、且つ、当該保険者が昭和二十七年度において貸付金の貸付を受けたものであるときは、同年度における保険料収納割合が、昭和二十六年度における保険料収納割合より、第四條第一項に定める級において一級以上向上したこと。
六 昭和二十九年度における貸付については、昭和二十八年度における保険料収納割合が、百分の九十以上であり、且つ、当該保険者が昭和二十八年度において貸付金の貸付を受けたものであるときは、同年度における保険料収納割合が、第四條第一項に定める級において第一級であるか、又は昭和二十七年度における保険料収納割合より、一級以上向上し、当該保険者が昭和二十七年度において貸付金の貸付を受け、昭和二十八年度においてこれを受けなかつたものであるときは、昭和二十八年度における保険料収納割合が、第四條第一項に定める級において第一級であるか、又は昭和二十六年度における保険料収納割合より、二級以上向上したこと。
(貸付金額)
第四條 前條の規定による貸付金の額は、未収保険料のうち、厚生大臣が、厚生省令で定める基準に従い、収納が著しく困難であると認める額の百分の五十に相当する金額(以下「貸付対象額」という。)を基準とし、左表に定めるところによる。
貸付年度の前年度における保険料収納割合 |
級 |
貸付金額 |
昭和二十七年度 |
昭和二十八年度 |
昭和二十九年度 |
百分の七十以上百分の八十未満 |
四 |
貸付対象額の百分の四十に相当する額 |
|
|
百分の八十以上百分の九十未満 |
三 |
貸付対象額の百分の五十に相当する額 |
貸付対象額の百分の三十に相当する額以内で厚生大臣の定める額 |
|
百分の九十以上百分の九十五未満 |
二 |
貸付対象額の百分の七十に相当する額 |
貸付対象額の百分の四十に相当する額以内で厚生大臣の定める額 |
貸付対象額の百分の二十に相当する額以内で厚生大臣の定める額 |
百分の九十五以上 |
一 |
貸付対象額の百分の百に相当する額 |
貸付対象額の百分の六十に相当する額以内で厚生大臣の定める額 |
貸付対象額の百分の四十に相当する額以内で厚生大臣の定める額 |
2 同一の保険者が昭和二十七年度から昭和二十九年度までの間において貸付を受ける貸付金の合計額は、貸付対象額をこえることができない。
(分割交付)
第五條 第三條の規定により昭和二十七年度又は昭和二十八年度において貸し付ける貸付金は、貸付金の貸付を受ける保険者の申請により、昭和二十九年度までの各年度において分割して交付することができる。
(申請)
第六條 第三條の規定により貸付金の貸付を受けようとする保険者は、都道府県知事を経て、厚生大臣に申請書を提出しなければならない。
(未払診療報酬の支払)
第七條 保険者は、貸付金の貸付を受けたときは、遅滞なく、当該貸付金の額と、当該貸付金の額から当該年度内において既に支払つた未払診療報酬の額を控除した額との合計額に相当する額以上の未払診療報酬を支払わなければならない。
2 保険者は、前項の規定により、未払診療報酬を支払つたときは、遅滞なく、都道府県知事を経て、その状況を厚生大臣に報告しなければならない。
(貸付條件)
第八條 貸付金の償還期限は、貸付金の貸付を受けた年度の次年度から十年(当該次年度から三年間の据置期間を含む。)以内とし、年利六分五厘の元利均等年賦の方法により、政令の定めるところにより、償還するものとする。但し、貸付を受けた保険者は、いつでも繰上償還をすることができる。
2 貸付金の据置期間は、貸付を受けた年度における貸付の期間及び当該年度の次年度から三年間とし、据置期間中は、無利子とする。
(年賦金の支払猶予)
第九條 政府は、災害その他特別の事由により年賦金の支払が著しく困難となつた保険者に対し、その年賦金の支払を猶予することができる。
2 前項の規定により、年賦金の支払の猶予を受けようとする保険者は、都道府県知事を経て、厚生大臣に申請書を提出しなければならない。
(貸付金の一時償還)
第十條 政府は、貸付金の貸付を受けた保険者が、左の各号の一に該当する場合には、第八條第一項の規定にかかわらず、当該保険者に対し、いつでも貸付金の全部又は一部につき、一時償還を命ずることができる。
二 第七條第一項の規定による未払診療報酬の支払を怠つたとき。
三 第七條第二項又は第十一條の規定による報告を怠り、又は虚偽の報告をしたとき。
五 事業の内容が著しく低下し、又は事業を休止し、若しくは廃止したとき。
六 前各号に掲げる場合の外、正当な理由がなくて契約の條項に違反したとき。
(報告及び検査)
第十一條 厚生大臣は、必要があると認めるときは、貸付金の貸付を受けた保険者に対して報告をさせ、又はその職員をして、保険者の事務所に臨み、貸付金の使途及び償還その他必要な事項につき、実地の検査をさせることができる。
(委任)
第十二條 この法律の施行に関し、厚生大臣の権限に属する事務で、政令で定めるものは、都道府県知事が行う。
(昭和二十七年度に事業を再開し、又は開始した保険者に関する特例)
第十三條 政府は、昭和二十七年四月一日から昭和二十八年三月三十一日までの間に事業を再開した保険者又は事業を廃止した他の保険者の診療報酬支払義務を承継して同期間内に事業を開始した保険者に対し、前各條の規定により、貸付金を貸し付けることができる。但し、昭和二十七年七月一日以降に事業を再開し、又は開始した保険者に対しては、昭和二十八年度及び昭和二十九年度に限り、貸付金を貸し付けることができる。
2 前項の規定により、昭和二十七年四月一日から同年六月三十日までの間又は同年十月二日から昭和二十八年三月三十一日までの間に事業を再開し、又は開始した保険者に対し、貸付金を貸し付ける場合において、第三條及び第四條の適用につき、受診率、保険料収納割合その他第三條各号に掲げる事項に関するそれぞれ昭和二十六年度又は昭和二十七年度における実績によるべきときは、事業を再開し、又は開始した日から六箇月間におけるこれらの事項に関する実績をもつて、それぞれ昭和二十六年度又は昭和二十七年度における実績とみなすものとする。
3 昭和二十七年七月一日から昭和二十八年三月三十一日までの間に事業を再開し、又は開始した保険者に対する貸付金の貸付については、第三條第五号中「百分の八十」とあるのは「百分の七十」と、同條第六号中「百分の九十」とあるのは「百分の八十」と、それぞれ変更して同條の規定を適用するものとし、その貸付金額については、昭和二十八年度における貸付金にあつては、第四條第一項の表中昭和二十七年度の欄を、昭和二十九年度における貸付金にあつては、同表中昭和二十八年度の欄を、それぞれ適用するものとする。
(適用除外)
第十四條 この法律による貸付金については、国民健康保険法(昭和十三年法律第六十号)第二十六條第二項及び第三十七條ノ六第二項の規定は、適用しない。