人身保護法
法令番号: 法律第199号
公布年月日: 昭和23年7月30日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

新憲法下での基本的人権、特に身体の自由の保護を実現するため、憲法第34条後段の趣旨に沿った法整備が必要となった。現行の刑事訴訟手続では、不法な身体拘束からの迅速な救済が困難な場合があり、特に私人や私的団体による不法拘束に対する適切な救済手段が欠如している。そこで、刑事事件の有無や拘束主体の如何を問わず、不法な身体拘束から被害者を簡便かつ迅速に救済することを目的として、英米法を参考に本法案を提案した。請求は地方裁判所または高等裁判所が管轄し、被拘束者の関係者が弁護士を代理人として行う。裁判所による審問を経て、不当な拘束からの解放を図る制度である。

参照した発言:
第2回国会 参議院 司法委員会 第4号

審議経過

第2回国会

参議院
(昭和23年2月20日)
(昭和23年3月23日)
衆議院
(昭和23年3月24日)
参議院
(昭和23年3月29日)
(昭和23年4月26日)
(昭和23年4月27日)
(昭和23年5月20日)
(昭和23年5月25日)
衆議院
(昭和23年5月27日)
(昭和23年6月12日)
(昭和23年6月14日)
(昭和23年6月15日)
(昭和23年6月16日)
参議院
(昭和23年6月26日)
(昭和23年6月28日)
衆議院
(昭和23年6月30日)
(昭和23年7月1日)
参議院
(昭和23年7月3日)
衆議院
(昭和23年7月5日)
人身保護法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月三十日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百九十九号
人身保護法
第一條 この法律は、基本的人権を保障する日本國憲法の精神に從い、國民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、且つ、容易に回復せしめることを目的とする。
第二條 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。
何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。
第三條 前條の請求は、弁護士を代理人として、これをしなければならない。但し、特別の事情がある場合には、請求者がみずからすることを妨げない。
第四條 第二條の請求は、書面又は口頭をもつて、被拘束者、拘束者又は請求者の所在地を管轄する高等裁判所若しくは地方裁判所に、これをすることができる。
第五條 請求には、左の事項を明らかにし、且つ、疏明資料を提供しなければならない。
一 被拘束者の氏名
二 請願の趣旨
三 拘束の事実
四 知れている拘束者
五 知れている拘束の場所
第六條 裁判所は、第二條の請求については、速かに裁判しなければならない。
第七條 裁判所は、請求がその要件又は必要な疏明を欠いているときは、決定をもつてこれを却下することができる。
第八條 第二條の請求を受けた裁判所は、請求者の申立に因り又は職権をもつて、適当と認める他の管轄裁判所に、事件を移送することができる。
第九條 裁判所は、前二條の場合を除く外、審問期日における取調の準備のために、直ちに拘束者、被拘束者、請求者及びその代理人その他事件関係者の陳述を聽いて、拘束の事由その他の事項について、必要な調査をすることができる。
前條の準備調査は、合議体の構成員をしてこれをさせることができる。
第十條 裁判所は、必要があると認めるときは、第十六條の判決をする前に、決定をもつて、仮りに、被拘束者を拘束から免れしめるために、何時でも呼出しに應じて出頭することを誓約させ又は適当と認める條件を附して、被拘束者を釈放し、その他適当な処分をすることができる。
前項の被拘束者が呼出に應じて出頭しないときは、勾引することができる。
第十一條 準備調査の結果、請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもつて請求を棄却する。
前項の決定をなす場合には、裁判所は、さきになした前條の処分を取消し、且つ、被拘束者に出頭を命じ、これを拘束者に引渡す。
第十二條 第七條又は前條第一項の場合を除く外、裁判所は一定の日時及び場所を指定し、審問のために請求者又はその代理人、被拘束者及び拘束者を召喚する。
拘束者に対しては、被拘束者を前項指定の日時、場所に出頭させることを命ずると共に、前項の審問期日までに拘束の日時、場所及びその事由について、答弁書を提出することを命ずる。
前項の命令書には、拘束者が命令に從わないときは、勾引し又は命令に從うまで勾留することがある旨及び遅延一日について、五百円以下の過料に処することがある旨を附記する。
命令書の送達と審問期日との間には、三日の期間をおかなければならない。審問期日は、第二條の請求のあつた日から一週間以内に、これを開かなければならない。但し、特別の事情があるときは、期間は各々これを短縮又は伸長することができる。
第十三條 前條の命令は、拘束に関する令状を発した裁判所及び檢察官に、これを通告しなければならない。
前項の裁判所の裁判官及び檢察官は、審問期日に立会うことができる。
第十四條 審問期日における取調は、被拘束者、拘束者、請求者及びその代理人の出席する公開の法廷において、これを行う。
代理人のないときは、裁判所は弁護士の中から、これを選任せねばならない。
前項の代理人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
第十五條 審問期日においては、請求者の陳述及び拘束者の答弁を聽いた上、疏明資料の取調を行う。
拘束者は、拘束の事由を疏明しなければならない。
第十六條 裁判所は審問の結果、請求を理由なしとするときは、判決をもつてこれを棄却し、被拘束者を拘束者に引渡す。
前項の場合においては、第十一條第二項の規定を準用する。
請求を理由ありとするときは、判決をもつて被拘束者を直ちに釈放する。
第十七條 第七條、第十一條第一項及び前條の裁判において、拘束者又は請求者に対して、手続に要した費用の全部又は一部を負担させることができる。
第十八條 裁判所は、拘束者が第十二條第二項の命令に從わないときは、これを勾引し又は命令に從うまで勾留すること並びに遅延一日について、五百円以下の割合をもつて過料に処することができる。
第十九條 被拘束者から弁護士を依頼する旨の申出があつたときは、拘束者は遅滞なくその旨を、被拘束者の指定する弁護士に通知しなければならない。
第二十條 第二條の請求を受けた裁判所又は移送を受けた裁判所は、直ちに事件を最高裁判所に通知し、且つ事件処理の経過並びに結果を同裁判所に報告しなければならない。
第二十一條 下級裁判所の判決に対しては、三日内に最高裁判所に上訴することができる。
第二十二條 最高裁判所は、特に必要があると認めるときは、下級裁判所に係属する事件が、如何なる程度にあるを問わず、これを送致せしめて、みずから処理することができる。
前項の場合において、最高裁判所は下級裁判所のなした裁判及び処分を取消し又は変更することができる。
第二十三條 最高裁判所は、請求、審問、裁判その他の事項について、必要な規則を定めることができる。
第二十四條 他の法律によつてなされた裁判であつて、被拘束者に不利なものは、この法律に基く裁判と抵触する範囲において、その効力を失う。
第二十五條 この法律によつて救済を受けた者は、裁判所の判決によらなければ、同一の事由によつて重ねて拘束されない。
第二十六條 被拘束者を移動、蔵匿、隠避しその他この法律による救済を妨げる行爲をした者若しくは第十二條第二項の答弁書に、ことさら虚僞の記載をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
附 則
この法律は、公布の後六十日を経過した日から、これを施行する。
法務総裁 鈴木義男
内閣総理大臣 芦田均
人身保護法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月三十日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百九十九号
人身保護法
第一条 この法律は、基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、且つ、容易に回復せしめることを目的とする。
第二条 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。
何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。
第三条 前条の請求は、弁護士を代理人として、これをしなければならない。但し、特別の事情がある場合には、請求者がみずからすることを妨げない。
第四条 第二条の請求は、書面又は口頭をもつて、被拘束者、拘束者又は請求者の所在地を管轄する高等裁判所若しくは地方裁判所に、これをすることができる。
第五条 請求には、左の事項を明らかにし、且つ、疏明資料を提供しなければならない。
一 被拘束者の氏名
二 請願の趣旨
三 拘束の事実
四 知れている拘束者
五 知れている拘束の場所
第六条 裁判所は、第二条の請求については、速かに裁判しなければならない。
第七条 裁判所は、請求がその要件又は必要な疏明を欠いているときは、決定をもつてこれを却下することができる。
第八条 第二条の請求を受けた裁判所は、請求者の申立に因り又は職権をもつて、適当と認める他の管轄裁判所に、事件を移送することができる。
第九条 裁判所は、前二条の場合を除く外、審問期日における取調の準備のために、直ちに拘束者、被拘束者、請求者及びその代理人その他事件関係者の陳述を聴いて、拘束の事由その他の事項について、必要な調査をすることができる。
前条の準備調査は、合議体の構成員をしてこれをさせることができる。
第十条 裁判所は、必要があると認めるときは、第十六条の判決をする前に、決定をもつて、仮りに、被拘束者を拘束から免れしめるために、何時でも呼出しに応じて出頭することを誓約させ又は適当と認める条件を附して、被拘束者を釈放し、その他適当な処分をすることができる。
前項の被拘束者が呼出に応じて出頭しないときは、勾引することができる。
第十一条 準備調査の結果、請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもつて請求を棄却する。
前項の決定をなす場合には、裁判所は、さきになした前条の処分を取消し、且つ、被拘束者に出頭を命じ、これを拘束者に引渡す。
第十二条 第七条又は前条第一項の場合を除く外、裁判所は一定の日時及び場所を指定し、審問のために請求者又はその代理人、被拘束者及び拘束者を召喚する。
拘束者に対しては、被拘束者を前項指定の日時、場所に出頭させることを命ずると共に、前項の審問期日までに拘束の日時、場所及びその事由について、答弁書を提出することを命ずる。
前項の命令書には、拘束者が命令に従わないときは、勾引し又は命令に従うまで勾留することがある旨及び遅延一日について、五百円以下の過料に処することがある旨を附記する。
命令書の送達と審問期日との間には、三日の期間をおかなければならない。審問期日は、第二条の請求のあつた日から一週間以内に、これを開かなければならない。但し、特別の事情があるときは、期間は各々これを短縮又は伸長することができる。
第十三条 前条の命令は、拘束に関する令状を発した裁判所及び検察官に、これを通告しなければならない。
前項の裁判所の裁判官及び検察官は、審問期日に立会うことができる。
第十四条 審問期日における取調は、被拘束者、拘束者、請求者及びその代理人の出席する公開の法廷において、これを行う。
代理人のないときは、裁判所は弁護士の中から、これを選任せねばならない。
前項の代理人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
第十五条 審問期日においては、請求者の陳述及び拘束者の答弁を聴いた上、疏明資料の取調を行う。
拘束者は、拘束の事由を疏明しなければならない。
第十六条 裁判所は審問の結果、請求を理由なしとするときは、判決をもつてこれを棄却し、被拘束者を拘束者に引渡す。
前項の場合においては、第十一条第二項の規定を準用する。
請求を理由ありとするときは、判決をもつて被拘束者を直ちに釈放する。
第十七条 第七条、第十一条第一項及び前条の裁判において、拘束者又は請求者に対して、手続に要した費用の全部又は一部を負担させることができる。
第十八条 裁判所は、拘束者が第十二条第二項の命令に従わないときは、これを勾引し又は命令に従うまで勾留すること並びに遅延一日について、五百円以下の割合をもつて過料に処することができる。
第十九条 被拘束者から弁護士を依頼する旨の申出があつたときは、拘束者は遅滞なくその旨を、被拘束者の指定する弁護士に通知しなければならない。
第二十条 第二条の請求を受けた裁判所又は移送を受けた裁判所は、直ちに事件を最高裁判所に通知し、且つ事件処理の経過並びに結果を同裁判所に報告しなければならない。
第二十一条 下級裁判所の判決に対しては、三日内に最高裁判所に上訴することができる。
第二十二条 最高裁判所は、特に必要があると認めるときは、下級裁判所に係属する事件が、如何なる程度にあるを問わず、これを送致せしめて、みずから処理することができる。
前項の場合において、最高裁判所は下級裁判所のなした裁判及び処分を取消し又は変更することができる。
第二十三条 最高裁判所は、請求、審問、裁判その他の事項について、必要な規則を定めることができる。
第二十四条 他の法律によつてなされた裁判であつて、被拘束者に不利なものは、この法律に基く裁判と抵触する範囲において、その効力を失う。
第二十五条 この法律によつて救済を受けた者は、裁判所の判決によらなければ、同一の事由によつて重ねて拘束されない。
第二十六条 被拘束者を移動、蔵匿、隠避しその他この法律による救済を妨げる行為をした者若しくは第十二条第二項の答弁書に、ことさら虚偽の記載をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
附 則
この法律は、公布の後六十日を経過した日から、これを施行する。
法務総裁 鈴木義男
内閣総理大臣 芦田均