(使用権の設定)
第十七條 鉱業権は、この法律の定めるところに從い、これに使用権を設定することができる。
第十八條 使用権は、特定の鉱床を目的として、これを設定することができる。
2 同一の鉱区中同一の区域においては、二以上の使用権を設定することができない。但し、前項の場合は、この限りでない。
(使用権の内容等)
第十九條 使用権者は、使用権の登録を得た鉱区の区域(以下使用鉱区という。)において石炭を掘採し、及びこれを取得する権利を有する。
(権利義務の移轉)
第二十條 使用権者の権利義務は、使用権とともに移轉する。
2 鉱業法の規定であつて使用権者の鉱業に関して適用又は準用すべきものによる鉱業権者の権利義務は、使用権の設定とともに使用権者に移轉し、当該規定を使用権者の鉱業に関して適用又は準用した場合における当該規定による使用権者の権利義務は、使用権の消滅とともに鉱業権者に移轉する。但し、鉱業権の消滅に因る使用権の消滅の場合は、この限りでない。
(使用権を目的とする権利の制限)
第二十一條 使用権は、相続、讓渡、滯納処分又は強制執行の目的となる外、権利の目的となることができない。
(存続期間)
第二十二條 使用権の存続は、一定期間を限るものとする。
(登録事項)
第二十三條 左に掲げる事項は、これを鉱業原簿に登録する。
一 使用権の設定、変更、移轉、存続期間の更新、消滅及び処分の制限
二 第二十六條第二項及び第三十一條第二項の條件中使用権者の権利の制限に関するもの及びその消滅
(登録の効果)
第二十四條 前條第一項に掲げる事項は、相続及び鉱業権の消滅又は存続期間の満了に因る使用権の消滅の場合を除く外、登録をしなければその効力を生じない。
(抵当権との関係)
第二十五條 使用権は、その登録前当該鉱業権について登録し、又は当該鉱業権の属する鉱業財團について登記した抵当権者に対してもその効力を有する。
2 前項の抵当権があるときは、使用権者は、当該鉱業権者に対して支拂うべき使用料を供託しなければならない。但し、抵当権者の同意を得たときは、この限りでない。
3 前項の場合においては、抵当権者は、供託金に対してもその権利を行うことができる。
(使用権の設定変更等の許可)
第二十六條 使用権の設定、使用鉱区の増減、使用権の移轉(相続に因る場合を除く。)又は存続期間の更新、短縮若しくはその満了前の使用権の消滅については、省令の定めるところにより、石炭局長の許可を受けなければならない。
2 石炭局長は、使用権の設定、使用鉱区の増減又は使用権の移轉の許可をする場合において、必要があると認めるときは、その許可に條件を附すことができる。
3 石炭局長は、第一項の許可をしようとするときは、地方炭鉱管理委員会に諮問しなければならない。
(鉱区の分合等に対する承諾)
第二十七條 鉱業権者は、使用鉱区に該当する部分について、鉱区の分合、減区又は増減区を出願しようとするときは、使用権者の承諾を得なければならない。
2 使用権者は、前項の承諾をしようとするときは、前條第一項の規定による使用鉱区の減区又は存続期間満了前の使用権消滅の許可を受けなければならない。
(使用料の増減)
第二十八條 使用料が石炭の價格の変動その他の事由に因り公正でないと認められるに至つたときは、当事者は、將來に向つてその増減を請求することができる。この場合においては、相手方は、正当な理由がなければその承諾を拒むことができない。
2 前項の承諾を拒まれた者又はその承諾を得ることができない者は、石炭局長の裁定を申請することができる。
3 前項の裁定については、第七條、第九條及び第十一條の規定を準用する。
(使用権の取消)
第二十九條 石炭局長は、左の各号の一に該当する場合においては、地方炭鉱管理委員会に諮問して、使用権を取り消すことができる。
一 使用権者が第二十六條第二項及び第三十一條第二項の條件に違反したとき。
二 使用権者が登録の日から六箇月以内に事業に着手せず、若しくは引き続き六箇月以上休業したとき又は施業案によらないで採掘をしたとき。
三 使用権者が第三十三條において準用する鉱業法第四十三條ノ三、第七十二條又は第七十四條ノ四第三項の命令に從わないとき。
五 第三十一條第一項の規定により使用権を取得し、若しくは使用鉱区を増加した使用権者が、使用料の支拂を一箇月以上遅滯した場合において、鉱業権者が使用権の取消を申請したとき。
六 石炭の増産上使用権の存続が適当でないと認められるとき。
2 石炭局長は、前項の規定による取消処分を取り消そうとするときは、地方炭鉱管理委員会に諮問しなければならない。
(取消の登録)
第三十條 石炭局長は、前條第一項の規定による取消若しくは同條第二項の規定による取消処分の取消又は第二十三條第一項第二号の規定により鉱業原簿に登録しなければならない條件の取消をしたときは、その登録をしなければならない。
(準用規定)
第三十一條 第五條第一項、第三項、第六條、第七條、第九條、第十條及び第十五條(第二号を除く。)の規定は、使用権の設定、使用鉱区の増減及使用権の行使に伴い必要な事業設備の使用にこれを準用する。但し、第十條中「対價」とあるのは「使用料」と、第十五條第三号中「前條」とあるのは「第三十一條第三項」と読み替える。
2 石炭局長は、必要があると認めるときは、前項において準用する第五條第三項の規定による裁定に條件を附すことができる。
3 石炭局長は、第一項において準用する第五條第三項の規定により裁定をしたときは、使用権の設定又は変更の登録をしなければならない。
4 第一項において準用する第五條第三項の申請があつたときは、当該鉱業権者は、その申請を拒否する旨の裁定、前項の規定による登録又は当該事業設備の引渡があるまでは、当該鉱業権を讓渡し、当該鉱区の分合、減区若しくは増減区の出願をし、又は当該事業設備について讓渡その他の処分をし、若しくはその形質を変更することができない。但し、省令の定めるところにより、石炭局長の許可を受けた場合は、この限りでない。
5 第一項の規定による事業設備の使用は、その引渡があつたときは、その後においてその事業設備について物権を取得した者に対しても、その効力を有する。
(事業設備の讓渡)
第三十二條 使用権が消滅したときは、鉱業権者は、使用権者であつた者に対して、その者が使用権の行使に伴い設置した事業設備を時價で賣り渡すべきことを請求することができる。この場合においては、使用権者であつた者は、正当な理由がなければその承諾を拒むことができない。
2 使用権が消滅したときは、使用権者であつた者は、鉱業権者に対して、その同意を得て設置した使用権の存続期間をこえて存続すべき事業設備を、時價で買い取るべきことを請求することができる。但し、鉱業権の消滅に因つて使用権が消滅したときは、この限りでない。
3 第一項の承諾を拒まれ、若しくはその承諾を得ることができないとき又は前項の規定による買取の條件につき協議をすることができず、若しくは協議がととのわないときは、当事者は、石炭局長の裁定を申請することができる。
4 前項の裁定については、第七條、第九條から第十三條まで及び第十六條第二項の規定を準用する。但し、第七條中「の抵当権者」とあるのは「について登記した担保権を有する者」と、第十二條中「抵当権」とあるのは「登記した担保権」と、「抵当権者」とあるのは「担保権者」と読み替える。
5 第三項の申請があつたときは、使用権者であつた者は、その申請を拒否する旨の裁定があるまで、前項において準用する第十三條の規定により裁定がその効力を失うまで又は当該事業設備の引渡があるまでは、当該事業設備について讓渡その他の処分をし、又はその形質を変更することができない。但し、省令で定めるところにより、石炭局長の許可を受けた場合は、この限りでない。
(鉱業法の準用)
第三十三條 鉱業法第五條、第九條第二項本文前段、第十二條、第十五條、第十六條、第三十八條、第三十九條、第四十三條ノ三から第四十六條まで、第四十九條から第七十條まで、第七十二條から第七十四條ノ十五まで、第九十二條第一項から第三項まで及び第九十三條の規定は、使用権者の鉱業に関して、これを準用する。但し、第七十四條第一項及び第七十四條ノ二第一項中「鉱業権消滅」とあるのは「鉱業権消滅に因り使用権消滅」と、第七十四條ノ二第一項中「鉱業権消滅ノ時」とあるのは「鉱業権消滅ニ因ル使用権消滅ノ時」と、第七十四條ノ二第二項中「二以上ノ鉱区ノ鉱業権者」とあるのは「二以上ノ使用鉱区又は二以上ノ鉱区及使用鉱区ノ使用権者又ハ鉱業権者及使用権者」と、第七十四條ノ二第三項中「鉱業権者ソノ鉱業権ヲ讓渡シタルトキハ損害発生ノ時ノ鉱業権者及其ノ後ノ鉱業権者」とあるのは「使用権ノ讓渡、設定又ハ消滅アリタルトキハ損害発生ノ時ノ使用権者又ハ鉱業権者及其ノ後ニ於ケル使用権者又ハ鉱業権者」と、第七十四條ノ三第二項中「鉱業権ヲ讓受ケタル者」とあるのは「使用権讓渡ノ場合ニ在リテハ使用権ノ讓受人、使用権設定ノ場合ニ在リテハ使用権者、使用権消滅ノ場合ニ在リテハ鉱業者」と、「鉱業権者」とあるのは「鉱業権者又ハ使用権者」と、第七十四條ノ六中「鉱業権者其ノ鉱業権ヲ讓渡シ」とあるのは「使用権者其ノ使用権ヲ讓渡シ又ハ消滅セシメ」と、「讓受人」とあるのは「讓受人又は鉱業権者」と読み替える。
2 使用権の設定がある場合においては、鉱業法第四十三條ノ三から第四十六條まで、第五十條から第七十條まで、第七十二條から第七十四條ノ十五まで、第九十二條第一項から第三項まで及び第九十三條の規定は、当該規定が使用権者の鉱業に関して準用される限度において、鉱業権者の鉱業に関してはこれを適用しない。
第三十四條 鉱業権者が、使用権者でない者に鉱業権を使用させたときは、石炭局長は地方炭鉱管理委員会に諮問して、鉱業権を取り消すことができる。