特別和議法
法令番号: 法律第四十一號
公布年月日: 昭和21年10月19日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議會の協贊を經た特別和議法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
法律第四十一號
特別和議法
第一條 この法律は、今囘の戰時補償に關する特別措置に關聯して經濟上多大の損失を受ける債務者のため、その損失を債權者及び債務者間に衡平に分擔させ、以て個人生活の安定又は健全な法人事業の維持を圖ることを目的とする。
第二條 前條に規定する債務者は、破産の原因たる事實のある場合、破産の原因たる事實のある疑のある場合又は破産の原因たる事實の生ずる虞のある場合には、特別和議開始の申立をすることができる。
第三條 特別和議開始の申立及び和議開始又は破産の申立があつたときは、和議手續又は破産手續は、これを中止する。
第四條 特別和議開始の申立があつたときは、特別和議債權につき、債務者の財産に對し、強制執行、假差押、假處分又は競賣法による競賣をなすことができず、又、既になされてゐる強制執行、假差押、假處分又は競賣法による競賣手續については、裁判所は、申立により又は職權を以てその中止を命ずることができる。
特別和議開始前特別和議債權につき債務者の財産に對しなした競賣法による競賣手續については、和議法第四十條第二項の規定を準用する。
第五條 特別和議の條件が各特別和議債權者について平等でないときでも、裁判所は、債權の額、債權發生の時期、擔保權の有無、戰時補償特別措置法の施行に因つて生じた諸般の事情等を斟酌し、債權者間に差等があつても衡平を害しないものと認めるときは、特別和議開始の決定又は特別和議認可の決定をすることができる。
第六條 左の債權は、これを特別和議債權としない。
一 給料その他の定期的給與の債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
二 事務員、雇人等からの預り金その他これに準ずる債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
三 退職金その他の臨時的給與の債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
四 法令の規定に基いてなされる業務上の傷病又は死亡に因る扶助の債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
五 一口千圓未滿の債權
前項の債權は、第十四條において準用する和議法第五十六條の規定の適用については、これを一般の先取特權のある債權とみなす。
第七條 破産の場合において別除權を行ふことのできる權利を有する者の當該權利に係る債權は、その全額につき、これを特別和議債權とする。
第八條 裁判所は、事情により、自ら勸解をなし、又は適當と認める者に勸解をさせることができる。
前項の場合においては、裁判所は、必要と認めるときは、第十四條において準用する和議法第五十九條第二號の期間を伸長することができる。
第一項後段の規定により勸解をなした者には、勅令で定める額の旅費、日當及び止宿料を支給する。
第九條 債務者は、債權者集會において、特別和議債權につき意見を述べなければならない。
裁判所は、債務者の述べた異議を債權表に記載しなければならない。
特別和議債權者は、特別和議認可の決定が確定した後、債務者が債權者集會において異議を述べなかつた債權につき、債務者の財産に對し債權表の記載に基いて強制執行することができる。この場合には、民事訴訟法第六編の規定を準用する。
第十條 裁判所は、必要があると認めるときは、債權者及び債務者の利益を著しく害せず、且つ特別和議の成立を容易ならしめるものと認める場合に限り、債權者集會において、管財人及び整理委員の意見を聽き、職權を以て特別和議の條件を變更することができる。
第十一條 債權者集會において特別和議を可決するには、議決權を行ふことのできる出席特別和議債權者の過半數でその債權額が屆出をした特別和議債權者の總債權の半額を超える者の同意があれば足りる。
債權者集會においては、特別和議債權者は、決議の目的たる特別和議の條件につき、書面を以て同意を表はすことができる。この場合においては、その債權者は、前項の規定の適用については、これを出席特別和議債權者とみなす。
第十二條 裁判所は、特別和議の條件が、衡平で、且つ特別和議債權者の一般の利益に合致するものと認めるときは、債權者集會において特別和議を否決したときでも、管財人及び整理委員の意見を聽き、特別和議認可の決定をすることができる。特別和議の手續又は決議が法律の規定に反し、且つその欠缺が追完することのできない場合、債權者集會が特別和議に關する決議をしなかつた場合及び債權者集會が成立しなかつた場合にも、また同樣である。
第十三條 特別和議認可の決定が確定したときは、第三條の規定により手續を中止した和議又は破産の申立及び第四條の規定により中止した強制執行、假差押、假處分又は競賣法による競賣手續は、その效力を失ふ。
第十四條 特別和議については、この法律に別段の定のない限り、和議法の規定を準用する。但し、同法第九條、第十六條及び第六十四條の規定、同法第五十七條の規定中破産法第三百四十二條の規定を準用する部分竝びに和議法第六十二條の規定中破産法第三百三十條の規定を準用する部分は、この限りでない。
第十五條 この法律は、金融機關經理應急措置法に規定する金融機關、會社經理應急措置法に規定する特別經理會社及び同法第三十九條第一項の特別經理會社以外のものにはこれを適用しない。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
朕は、帝国議会の協賛を経た特別和議法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
法律第四十一号
特別和議法
第一条 この法律は、今回の戦時補償に関する特別措置に関連して経済上多大の損失を受ける債務者のため、その損失を債権者及び債務者間に衡平に分担させ、以て個人生活の安定又は健全な法人事業の維持を図ることを目的とする。
第二条 前条に規定する債務者は、破産の原因たる事実のある場合、破産の原因たる事実のある疑のある場合又は破産の原因たる事実の生ずる虞のある場合には、特別和議開始の申立をすることができる。
第三条 特別和議開始の申立及び和議開始又は破産の申立があつたときは、和議手続又は破産手続は、これを中止する。
第四条 特別和議開始の申立があつたときは、特別和議債権につき、債務者の財産に対し、強制執行、仮差押、仮処分又は競売法による競売をなすことができず、又、既になされてゐる強制執行、仮差押、仮処分又は競売法による競売手続については、裁判所は、申立により又は職権を以てその中止を命ずることができる。
特別和議開始前特別和議債権につき債務者の財産に対しなした競売法による競売手続については、和議法第四十条第二項の規定を準用する。
第五条 特別和議の条件が各特別和議債権者について平等でないときでも、裁判所は、債権の額、債権発生の時期、担保権の有無、戦時補償特別措置法の施行に因つて生じた諸般の事情等を斟酌し、債権者間に差等があつても衡平を害しないものと認めるときは、特別和議開始の決定又は特別和議認可の決定をすることができる。
第六条 左の債権は、これを特別和議債権としない。
一 給料その他の定期的給与の債権(命令で定める限度を超える部分を除く。)
二 事務員、雇人等からの預り金その他これに準ずる債権(命令で定める限度を超える部分を除く。)
三 退職金その他の臨時的給与の債権(命令で定める限度を超える部分を除く。)
四 法令の規定に基いてなされる業務上の傷病又は死亡に因る扶助の債権(命令で定める限度を超える部分を除く。)
五 一口千円未満の債権
前項の債権は、第十四条において準用する和議法第五十六条の規定の適用については、これを一般の先取特権のある債権とみなす。
第七条 破産の場合において別除権を行ふことのできる権利を有する者の当該権利に係る債権は、その全額につき、これを特別和議債権とする。
第八条 裁判所は、事情により、自ら勧解をなし、又は適当と認める者に勧解をさせることができる。
前項の場合においては、裁判所は、必要と認めるときは、第十四条において準用する和議法第五十九条第二号の期間を伸長することができる。
第一項後段の規定により勧解をなした者には、勅令で定める額の旅費、日当及び止宿料を支給する。
第九条 債務者は、債権者集会において、特別和議債権につき意見を述べなければならない。
裁判所は、債務者の述べた異議を債権表に記載しなければならない。
特別和議債権者は、特別和議認可の決定が確定した後、債務者が債権者集会において異議を述べなかつた債権につき、債務者の財産に対し債権表の記載に基いて強制執行することができる。この場合には、民事訴訟法第六編の規定を準用する。
第十条 裁判所は、必要があると認めるときは、債権者及び債務者の利益を著しく害せず、且つ特別和議の成立を容易ならしめるものと認める場合に限り、債権者集会において、管財人及び整理委員の意見を聴き、職権を以て特別和議の条件を変更することができる。
第十一条 債権者集会において特別和議を可決するには、議決権を行ふことのできる出席特別和議債権者の過半数でその債権額が届出をした特別和議債権者の総債権の半額を超える者の同意があれば足りる。
債権者集会においては、特別和議債権者は、決議の目的たる特別和議の条件につき、書面を以て同意を表はすことができる。この場合においては、その債権者は、前項の規定の適用については、これを出席特別和議債権者とみなす。
第十二条 裁判所は、特別和議の条件が、衡平で、且つ特別和議債権者の一般の利益に合致するものと認めるときは、債権者集会において特別和議を否決したときでも、管財人及び整理委員の意見を聴き、特別和議認可の決定をすることができる。特別和議の手続又は決議が法律の規定に反し、且つその欠欠が追完することのできない場合、債権者集会が特別和議に関する決議をしなかつた場合及び債権者集会が成立しなかつた場合にも、また同様である。
第十三条 特別和議認可の決定が確定したときは、第三条の規定により手続を中止した和議又は破産の申立及び第四条の規定により中止した強制執行、仮差押、仮処分又は競売法による競売手続は、その効力を失ふ。
第十四条 特別和議については、この法律に別段の定のない限り、和議法の規定を準用する。但し、同法第九条、第十六条及び第六十四条の規定、同法第五十七条の規定中破産法第三百四十二条の規定を準用する部分並びに和議法第六十二条の規定中破産法第三百三十条の規定を準用する部分は、この限りでない。
第十五条 この法律は、金融機関経理応急措置法に規定する金融機関、会社経理応急措置法に規定する特別経理会社及び同法第三十九条第一項の特別経理会社以外のものにはこれを適用しない。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。