(労働者年金保険法施行令ヲ厚生年金保険法施行令ト改メ同令中改正及退職積立金及退職手当法施行令廃止ノ件)
法令番号: 勅令第三百六十三號
公布年月日: 昭和19年5月24日
法令の形式: 勅令
朕勞働者年金保險法施行令中改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年五月二十三日
內閣總理大臣兼軍需大臣 東條英機
厚生大臣 小泉親彥
大藏大臣 石渡莊太郞
運輸通信大臣 五島慶太
勅令第三百六十三號
勞働者年金保險法施行令中左ノ通改正ス
「勞働者年金保險法施行令」ヲ「厚生年金保險法施行令」ニ改ム
第一章乃至第四章中「勞働者年金保險法」ヲ「厚生年金保險法」ニ改ム
第一條中「賃金又ハ給料」ヲ「賃金、給料又ハ俸給」ニ改メ「通勤手當」ノ下ニ「又ハ外勤手當」ヲ加フ
第二條中「賃金又ハ給料」ヲ「賃金、給料又ハ俸給」ニ、「東京府」ヲ「東京都」ニ改ム
第三條 厚生年金保險法第四條第一項ノ標準報酬ハ被保險者ノ報酬月額ニ基キ左ノ區別ニ依リ之ヲ定ム
【表】
第五條第一項第三號及第四號中「作業」ヲ「業務」ニ改ム
第八條第一項第二號中「五圓」ヲ「十圓」ニ改ム
第九條 國ノ事業ニ使用セラルル者及東京都、北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニ使用セラルル者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノハ厚生年金保險ノ被保險者タラザルモノトス
一 官吏及待遇官吏
二 勅令ニ依リ組織セラレタル共濟組合ノ組合員
三 健康保險法第十三條第四號(ヘ)乃至(ヌ)及健康保險法施行令第九條第二號ニ揭グル事業ノ事業所ニ使用セラルル者
四 吏員
五 東京都、北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事務所ニ使用セラルル者
第十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ厚生年金保險法第十六條第三號、第十六條ノ三第二項又ハ第十七條第二項ノ規定ニ依リ被保險者タラザルモノトス但シ第一號(イ)ニ該當スル者所定ノ期間ヲ超エテ引續キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ同號(ロ)若ハ(ハ)ニ該當スル者一月ヲ超エテ引續キ使用セラルルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 臨時ニ使用セラルル者ニシテ左ニ揭グルモノ
(イ) 二月以內ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
(ロ) 使用期間ノ定ナク勞務供給契約ニ基キ使用セラルル者
(ハ) 日日雇入レラルル者
二 神社又ハ宗敎團體法第二條ノ規定ニ依ル法人ノ事務所ニ使用セラルル者
三 事業所ノ所在地ノ一定セザル事業ニ使用セラルル者
四 前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外厚生大臣ノ定ムル者
第十二條第一項中「十四年」ヲ「十年」ニ改ム
第十三條第二號ヲ左ノ如ク改ム
二 厚生年金保險法第十六條ノ規定ニ依ル被保險者(以下强制被保險者ト稱ス)、同法第十六條ノ三ノ規定ニ依ル被保險者(以下任意包括被保險者ト稱ス)又ハ同法第十七條ノ規定ニ依ル被保險者(以下任意單獨被保險者ト稱ス)ト爲リタルトキ
第十五條第二項第四號ヲ左ノ如ク改ム
四 嫡出子及嫡出ニ非ザル子ノ間ニ在リテハ女ト雖モ嫡出子及庶子ヲ先ニス
第十七條 削除
第十八條及第十九條中「第三十八條、第三十九條」ヲ「第三十八條乃至第三十九條ノ二」ニ改ム
第十九條ノ二 第十四條乃至第十六條ノ規定ハ厚生年金保險法第三十條ノ二ノ規定ニ依ル支給金ヲ受クベキ遺族ノ範圍及順位ニ之ヲ準用ス
第十八條及前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ拘ラズ同項ノ規定ニ依ル遺族ノ範圍ニ屬スル遺族ナキ場合ニ於テ厚生年金保險法第三十條ノ二ノ規定ニ依ル支給金ヲ受クベキ遺族ノ範圍及順位ニ之ヲ準用ス
第二十條中「第三十六條」ノ下ニ「又ハ第三十九條ノ二」ヲ、「癈疾」ノ下ニ「又ハ死亡」ヲ加ヘ「一年」ヲ「二年」ニ改ム
第二十一條 厚生年金保險法第三十六條ノ規定ニ依リ障害年金ヲ支給スベキ程度ノ癈疾ノ狀態ハ別表第一ニ該當スルコトヲ要シ障害手當金ヲ支給スベキ程度ノ癈疾ノ狀態ハ別表第二ニ該當スルコトヲ要ス
業務上ノ事由ニ因ル障害年金ノ支給ヲ受クル者ガ更ニ業務上ノ事由ニ因リ障害年金ノ支給ヲ受クベキ程度ノ癈疾ト爲リタルトキハ前後ノ癈疾ノ狀態ヲ合シタルモノニ依リ其ノ程度ヲ査定ス
第二十一條ノ二 養老年金又ハ障害年金ヲ受クル權利ヲ有スル者ガ厚生年金保險法第四十二條ノ二ノ規定ニ該當スル場合ニ於テハ被保險者タリシ全期間ノ平均標準報酬月額ノ三十分ノ一ノ額(以下平均標準報酬日額ト稱ス)ニ別表第三ニ定ムル日數ヲ乘ジテ得タル額ノ一時金ヲ支給ス
第二十二條ノ次ニ左ノ二條ヲ加フ
第二十二條ノ二 被保險者タリシ期間六月以上三年未滿ナル者ガ業務上ノ事由以外ノ事由ニ因リ死亡シタルトキ又ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ厚生年金保險法第四十九條ノ三ノ規定ニ依リ平均標準報酬日額ニ別表第四ニ定ムル日數ヲ乘ジテ得タル額ノ脫退手當金ヲ支給ス
一 被保險者ガ陸海軍ニ徵集又ハ召集セラレタルニ因リ其ノ資格ヲ喪失シタルトキ
二 强制被保險者、任意包括被保險者又ハ任意單獨被保險者ノ資格ヲ取得シタルコトナクシテ五十歲ヲ超エ厚生年金保險法第十六條ノ事業所又ハ同法第十六條ノ二ノ認可アリタル事業所ニ使用セラルルニ至リタル者ガ被保險者ノ資格ヲ喪失シタルトキ
三 女子タル被保險者ガ婚姻ノ爲其ノ資格ヲ喪失シタルトキ
四 前各號ニ揭グル場合ヲ除クノ外厚生大臣ノ定ムル場合
第二十二條ノ三 厚生年金保險法第五十一條ノ三第一項ノ規定ニ該當スル者ガ同法同條同項ノ規定ニ該當スル場合ニ於テハ平均標準報酬日額ニ別表第五ニ定ムル日數ヲ乘ジテ得タル額ノ脫退手當金ヲ支給ス
厚生年金保險法第四十九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條中「國庫」ノ上ニ「厚生年金保險法第五十七條第一項ノ規定ニ依リ」ヲ加ヘ「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ改ム
第二十四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
保險料額ハ厚生年金保險法第二十四條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ計算シタル被保險者タリシ期間ノ各月ニ付被保險者ノ標準報酬月額ニ保險料率ヲ乘ジテ得タル額トス
第二十五條ノ二 前月ヨリ引續キ被保險者タル者ガ厚生年金保險法第五十九條ノ二ノ規定ニ該當スルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ月以後、被保險者ガ其ノ資格ヲ取得シタル月ニ於テ同法同條ノ規定ニ該當スルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ翌月以後同法同條ノ規定ニ該當セザルニ至リタル月ノ前月迄ノ期間保險料ヲ徵收セズ但シ被保險者ガ同法同條ノ規定ニ該當スルニ至リタル月ニ於テ同法同條ノ規定ニ該當セザルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九條中「府縣稅」ヲ「地方稅」ニ改ム
第三十一條 厚生年金保險法第七十二條第一項ノ規定ニ該當スル者ガ同法同條同項ノ規定ニ該當スル場合ニ於テ被保險者タリシ期間一年以上ナリシトキハ被保險者ノ資格ヲ喪失シタル後更ニ被保險者ト爲ルコトナクシテ一年ヲ經過シタル場合ニ非ザルトキト雖モ脫退手當金ヲ支給ス此ノ場合ニ於テ脫退手當金ノ額ハ平均標準報酬日額ニ別表第六ニ定ムル日數ヲ乘ジテ得タル金額トス但シ障害手當金ノ支給ヲ受クル者ニ支給スル額ハ障害手當金ノ額ト合算シテ被保險者タリシ全期間ノ平均標準報酬月額ノ二十四月分ニ相當スル金額(業務上ノ事由ニ因リ癈疾ト爲リタルニ因リ障害手當金ノ支給ヲ受クル者ニ支給スベキ脫退手當金ノ額ニ付テハ障害手當金ノ額ト合算シテ被保險者タリシ全期間ノ平均標準報酬月額ノ二十六月分ニ相當スル金額)ヲ超ユルコトヲ得ズ
厚生年金保險法第四十九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
厚生年金保險法第七十二條第三項ノ規定ニ該當スル者ガ同法同條同項ノ規定ニ該當スル場合ニ於テハ平均標準報酬日額ニ別表第四ニ定ムル日數ヲ乘ジテ得タル額ノ脫退手當金ヲ支給ス
第三十二條ノ二 前條ノ規定ニ依リ指定セラレタル共濟組合ガ左ノ要件ヲ具ヘザルニ至リタルトキハ厚生大臣ハ其ノ共濟組合ニ對シ其ノ指定ヲ將來ニ向ツテ取消スコトヲ得
一 被保險者タル組合員ニ對スル其ノ組合ノ給付ノ種類及程度ガ保險給付ノ種類及程度ニ略同ジナルコト
二 被保險者タル組合員ニ對スル其ノ組合ノ給付ノ中保險給付ニ相當スル給付ニ要スル費用ニ關スル出捐年額ガ其ノ者ヲ被保險者トシタル場合ニ於ケル其ノ者ニ關スル厚生年金保險ノ保險料年額ニ相當スル金額以上ニシテ事業主ガ其ノ出捐年額ノ二分ノ一以上ヲ負擔スルモノナルコト
第三十三條中「前條」ヲ「第三十二條」ニ、「被保險者タラザルモノガ」ヲ「被保險者タラザルモノハ」ニ改メ「共濟組合ノ組合員タラザルニ至リタルトキ」ノ下ニ「又ハ前條ノ規定ニ依リ共濟組合ノ指定ノ取消アリタルトキ」ヲ加フ
第三十四條及第三十六條中「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ改ム
第三十五條中「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ、「勞働者年金保險ノ」ヲ「厚生年金保險ノ」ニ、「千八百圓」ヲ「二百圓」ニ改ム
第三十九條第一項中「勞働者年金保險法第十六條ノ事業所ニ强制被保險者」ヲ「厚生年金保險法第十六條ノ事業所又ハ同法第十六條ノ二ノ認可アリタル事業所ニ强制被保險者又ハ任意包括被保險者」ニ改ム
第四十條第一項中「强制被保險者」ヲ「强制被保險者又ハ任意包括被保險者」ニ、「ニ規定スル」ヲ「ニ規定スル掛金ニ準ズル厚生年金保險ノ保險料ニ相當スル」ニ改メ同條第二項ヲ削ル
第四十一條中「前條第一項第一號」ヲ「前條第一號」ニ、同條第一項中「强制被保險者ト爲ルベキ資格ヲ有スル者トシテ勞働者年金保險法第十六條ノ事業所」ヲ「强制被保險者又ハ任意包括被保險者ト爲ルベキ資格ヲ有スル者トシテ厚生年金保險法第十六條ノ事業所又ハ同法第十六條ノ二ノ認可アリタル事業所」ニ、同條第二項中「百二十圓」ヲ「十圓」ニ、「勞働者年金保險法」ヲ「厚生年金保險法」ニ改ム
第四十二條中「千八百圓」ヲ「二百圓」ニ、同條第一項中「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ、「第四十條第一項第一號」ヲ「第四十條第一號」ニ、「百二十圓」ヲ「十圓」ニ改ム
第四十三條中「第四十條第一項第一號」ヲ「第四十條第一號」ニ改ム
第四十四條 削除
別表第一乃至第四ヲ左ノ如ク改ム
別表第一
【表】
備考
一 各級各號又ハ各號ノ一ニ該當セザルモ之ニ相當スル癈疾ノ狀態ト認メラルベキモノハ其ノ最モ近キ各級各號又ハ各號ノ癈疾ノ狀態ニ該當スルモノト看做ス
二 視力ノ測定ハ萬國式視力表ニ依ル屈折異狀アルモノニ付テハ矯正視力ニ付測定ス
三 指ヲ失ヒタルモノトハ拇指ハ指關節、其ノ他ノ指ハ第一指關節以上ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
四 指ノ用ヲ癈シタルモノトハ指ノ末節ノ半以上ヲ失ヒ又ハ掌指關節若ハ第一指關節(拇指ニ在リテハ指關節)ニ著シキ運動障害ヲ殘スモノヲ謂フ
五 趾ヲ失ヒタルモノトハ其ノ全部ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
六 趾ノ用ヲ癈シタルモノトハ第一趾ハ末節ノ半以上、其ノ他ノ趾ハ末關節以上ヲ失ヒタルモノ又ハ蹠趾關節若ハ第一趾關節(第一趾ニ在リテハ趾關節)ニ著シキ運動障害ヲ殘スモノヲ謂フ
別表第二
【表】
備考 別表第一ノ備考ト同ジ
別表第三
【表】
別表第四
【表】
別表第五
【表】
別表第六
【表】
附 則
第一條 本令ハ昭和十九年六月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ保險給付ニ關スル改正規定(第十八條第一項第二項、第十九條及第二十條ノ改正規定中名稱變更ニ關スル部分竝ニ第二十二條ノ改正規定ヲ除ク)、第二十四條第一項ノ改正規定竝ニ第十九條ノ二、第二十一條ノ二、第二十二條ノ二、第二十二條ノ三、第二十五條ノ二、附則第二條乃至第六條及同第十條ノ規定ハ同年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二條 昭和十九年法律第二十一號附則第二條第一項ノ規定ニ該當スル者ガ同法同條同項ノ規定ニ該當スル場合ニ於テハ被保險者タリシ期間ニ應ジ平均標準報酬日額ニ左ニ揭グル表ニ定ムル日數ヲ乘ジテ得タル額ノ脫退手當金ヲ支給ス
【表】
第三條 第三十一條第一項及第二項ノ改正規定ハ昭和十九年法律第二十一號附則第四條第一項ノ規定ニ該當スル者ガ同法同條同項ノ規定ニ該當スル場合ニ之ヲ準用ス
第四條 昭和十九年法律第二十一號附則第六條ノ規定ニ該當スル者ガ事業主ノ同意ヲ得テ昭和十九年十月一日ヨリ一月以內ニ被保險者タラザラントスル申請ヲ爲ストキハ被保險者ノ資格ヲ取得シタル日ニ遡リテ被保險者タラザルコトヲ得
第五條 强制被保險者ト爲ルベキ資格ヲ有スル者ニシテ前條ノ規定ニ依リ被保險者タラザルモノハ第三十二條第一項ニ規定スル共濟組合ノ組合員タラザルニ至リタルトキ又ハ第三十二條ノ二ノ規定ニ依リ共濟組合ノ指定ノ取消アリタルトキハ爾後被保險者トス
第六條 第三十四條乃至第三十六條、第三十九條第一項、第四十條乃至第四十三條ノ改正規定竝ニ第三十七條、第三十八條、第三十九條第二項及第四十五條ノ規定ハ昭和十九年法律第二十一號附則第七條ニ規定スル郵便年金契約ノ年金受取人タル被保險者ニ之ヲ準用ス
第七條 昭和十九年六月一日前ニ被保險者ノ資格ヲ取得シ同年同月同日迄引續キ被保險者ノ資格ヲ有スル者ノ同年同月同日ニ於ケル標準報酬ノ等級ガ從前ノ第三條ノ規定ニ依ル第十五級ニ該當スル場合ニ於テハ其ノ者ハ第四條第一項ノ規定ノ適用ニ付同年同月同日ニ於テ被保險者ノ資格ヲ取得シタルモノト看做ス
第八條 昭和十九年九月末日迄ハ第二十一條、第二十四條第一項及第三十一條中勞働者年金保險法トアルハ厚生年金保險法トス
第九條 從前ノ第四十條ニ規定スル年金契約ニ付年金契約者ガ第三十八條ニ規定スル掛金ニシテ昭和十九年一月一日ヨリ同年五月末日迄ノ期間ニ係ルモノヲ拂込マズシテ同年七月末日ヲ經過シタルトキハ其ノ者ハ爾後被保險者トス
第十條 退職積立金及退職手當法施行令ハ之ヲ廢止ス但シ退職積立金ノ支拂又ハ退職手當ノ支給ノ完了ニ至ル迄ハ之ニ必要ナル限度ニ於テ同令第六條、第十條乃至第十三條及第十八條乃至第二十三條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有ス
朕労働者年金保険法施行令中改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年五月二十三日
内閣総理大臣兼軍需大臣 東条英機
厚生大臣 小泉親彦
大蔵大臣 石渡荘太郎
運輸通信大臣 五島慶太
勅令第三百六十三号
労働者年金保険法施行令中左ノ通改正ス
「労働者年金保険法施行令」ヲ「厚生年金保険法施行令」ニ改ム
第一章乃至第四章中「労働者年金保険法」ヲ「厚生年金保険法」ニ改ム
第一条中「賃金又ハ給料」ヲ「賃金、給料又ハ俸給」ニ改メ「通勤手当」ノ下ニ「又ハ外勤手当」ヲ加フ
第二条中「賃金又ハ給料」ヲ「賃金、給料又ハ俸給」ニ、「東京府」ヲ「東京都」ニ改ム
第三条 厚生年金保険法第四条第一項ノ標準報酬ハ被保険者ノ報酬月額ニ基キ左ノ区別ニ依リ之ヲ定ム
【表】
第五条第一項第三号及第四号中「作業」ヲ「業務」ニ改ム
第八条第一項第二号中「五円」ヲ「十円」ニ改ム
第九条 国ノ事業ニ使用セラルル者及東京都、北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニ使用セラルル者ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ厚生年金保険ノ被保険者タラザルモノトス
一 官吏及待遇官吏
二 勅令ニ依リ組織セラレタル共済組合ノ組合員
三 健康保険法第十三条第四号(ヘ)乃至(ヌ)及健康保険法施行令第九条第二号ニ掲グル事業ノ事業所ニ使用セラルル者
四 吏員
五 東京都、北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事務所ニ使用セラルル者
第十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ厚生年金保険法第十六条第三号、第十六条ノ三第二項又ハ第十七条第二項ノ規定ニ依リ被保険者タラザルモノトス但シ第一号(イ)ニ該当スル者所定ノ期間ヲ超エテ引続キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ同号(ロ)若ハ(ハ)ニ該当スル者一月ヲ超エテ引続キ使用セラルルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 臨時ニ使用セラルル者ニシテ左ニ掲グルモノ
(イ) 二月以内ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
(ロ) 使用期間ノ定ナク労務供給契約ニ基キ使用セラルル者
(ハ) 日日雇入レラルル者
二 神社又ハ宗教団体法第二条ノ規定ニ依ル法人ノ事務所ニ使用セラルル者
三 事業所ノ所在地ノ一定セザル事業ニ使用セラルル者
四 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外厚生大臣ノ定ムル者
第十二条第一項中「十四年」ヲ「十年」ニ改ム
第十三条第二号ヲ左ノ如ク改ム
二 厚生年金保険法第十六条ノ規定ニ依ル被保険者(以下強制被保険者ト称ス)、同法第十六条ノ三ノ規定ニ依ル被保険者(以下任意包括被保険者ト称ス)又ハ同法第十七条ノ規定ニ依ル被保険者(以下任意単独被保険者ト称ス)ト為リタルトキ
第十五条第二項第四号ヲ左ノ如ク改ム
四 嫡出子及嫡出ニ非ザル子ノ間ニ在リテハ女ト雖モ嫡出子及庶子ヲ先ニス
第十七条 削除
第十八条及第十九条中「第三十八条、第三十九条」ヲ「第三十八条乃至第三十九条ノ二」ニ改ム
第十九条ノ二 第十四条乃至第十六条ノ規定ハ厚生年金保険法第三十条ノ二ノ規定ニ依ル支給金ヲ受クベキ遺族ノ範囲及順位ニ之ヲ準用ス
第十八条及前条ノ規定ハ前項ノ規定ニ拘ラズ同項ノ規定ニ依ル遺族ノ範囲ニ属スル遺族ナキ場合ニ於テ厚生年金保険法第三十条ノ二ノ規定ニ依ル支給金ヲ受クベキ遺族ノ範囲及順位ニ之ヲ準用ス
第二十条中「第三十六条」ノ下ニ「又ハ第三十九条ノ二」ヲ、「廃疾」ノ下ニ「又ハ死亡」ヲ加ヘ「一年」ヲ「二年」ニ改ム
第二十一条 厚生年金保険法第三十六条ノ規定ニ依リ障害年金ヲ支給スベキ程度ノ廃疾ノ状態ハ別表第一ニ該当スルコトヲ要シ障害手当金ヲ支給スベキ程度ノ廃疾ノ状態ハ別表第二ニ該当スルコトヲ要ス
業務上ノ事由ニ因ル障害年金ノ支給ヲ受クル者ガ更ニ業務上ノ事由ニ因リ障害年金ノ支給ヲ受クベキ程度ノ廃疾ト為リタルトキハ前後ノ廃疾ノ状態ヲ合シタルモノニ依リ其ノ程度ヲ査定ス
第二十一条ノ二 養老年金又ハ障害年金ヲ受クル権利ヲ有スル者ガ厚生年金保険法第四十二条ノ二ノ規定ニ該当スル場合ニ於テハ被保険者タリシ全期間ノ平均標準報酬月額ノ三十分ノ一ノ額(以下平均標準報酬日額ト称ス)ニ別表第三ニ定ムル日数ヲ乗ジテ得タル額ノ一時金ヲ支給ス
第二十二条ノ次ニ左ノ二条ヲ加フ
第二十二条ノ二 被保険者タリシ期間六月以上三年未満ナル者ガ業務上ノ事由以外ノ事由ニ因リ死亡シタルトキ又ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ厚生年金保険法第四十九条ノ三ノ規定ニ依リ平均標準報酬日額ニ別表第四ニ定ムル日数ヲ乗ジテ得タル額ノ脱退手当金ヲ支給ス
一 被保険者ガ陸海軍ニ徴集又ハ召集セラレタルニ因リ其ノ資格ヲ喪失シタルトキ
二 強制被保険者、任意包括被保険者又ハ任意単独被保険者ノ資格ヲ取得シタルコトナクシテ五十歳ヲ超エ厚生年金保険法第十六条ノ事業所又ハ同法第十六条ノ二ノ認可アリタル事業所ニ使用セラルルニ至リタル者ガ被保険者ノ資格ヲ喪失シタルトキ
三 女子タル被保険者ガ婚姻ノ為其ノ資格ヲ喪失シタルトキ
四 前各号ニ掲グル場合ヲ除クノ外厚生大臣ノ定ムル場合
第二十二条ノ三 厚生年金保険法第五十一条ノ三第一項ノ規定ニ該当スル者ガ同法同条同項ノ規定ニ該当スル場合ニ於テハ平均標準報酬日額ニ別表第五ニ定ムル日数ヲ乗ジテ得タル額ノ脱退手当金ヲ支給ス
厚生年金保険法第四十九条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条中「国庫」ノ上ニ「厚生年金保険法第五十七条第一項ノ規定ニ依リ」ヲ加ヘ「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ改ム
第二十四条第一項ヲ左ノ如ク改ム
保険料額ハ厚生年金保険法第二十四条第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ計算シタル被保険者タリシ期間ノ各月ニ付被保険者ノ標準報酬月額ニ保険料率ヲ乗ジテ得タル額トス
第二十五条ノ二 前月ヨリ引続キ被保険者タル者ガ厚生年金保険法第五十九条ノ二ノ規定ニ該当スルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ月以後、被保険者ガ其ノ資格ヲ取得シタル月ニ於テ同法同条ノ規定ニ該当スルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ翌月以後同法同条ノ規定ニ該当セザルニ至リタル月ノ前月迄ノ期間保険料ヲ徴収セズ但シ被保険者ガ同法同条ノ規定ニ該当スルニ至リタル月ニ於テ同法同条ノ規定ニ該当セザルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九条中「府県税」ヲ「地方税」ニ改ム
第三十一条 厚生年金保険法第七十二条第一項ノ規定ニ該当スル者ガ同法同条同項ノ規定ニ該当スル場合ニ於テ被保険者タリシ期間一年以上ナリシトキハ被保険者ノ資格ヲ喪失シタル後更ニ被保険者ト為ルコトナクシテ一年ヲ経過シタル場合ニ非ザルトキト雖モ脱退手当金ヲ支給ス此ノ場合ニ於テ脱退手当金ノ額ハ平均標準報酬日額ニ別表第六ニ定ムル日数ヲ乗ジテ得タル金額トス但シ障害手当金ノ支給ヲ受クル者ニ支給スル額ハ障害手当金ノ額ト合算シテ被保険者タリシ全期間ノ平均標準報酬月額ノ二十四月分ニ相当スル金額(業務上ノ事由ニ因リ廃疾ト為リタルニ因リ障害手当金ノ支給ヲ受クル者ニ支給スベキ脱退手当金ノ額ニ付テハ障害手当金ノ額ト合算シテ被保険者タリシ全期間ノ平均標準報酬月額ノ二十六月分ニ相当スル金額)ヲ超ユルコトヲ得ズ
厚生年金保険法第四十九条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
厚生年金保険法第七十二条第三項ノ規定ニ該当スル者ガ同法同条同項ノ規定ニ該当スル場合ニ於テハ平均標準報酬日額ニ別表第四ニ定ムル日数ヲ乗ジテ得タル額ノ脱退手当金ヲ支給ス
第三十二条ノ二 前条ノ規定ニ依リ指定セラレタル共済組合ガ左ノ要件ヲ具ヘザルニ至リタルトキハ厚生大臣ハ其ノ共済組合ニ対シ其ノ指定ヲ将来ニ向ツテ取消スコトヲ得
一 被保険者タル組合員ニ対スル其ノ組合ノ給付ノ種類及程度ガ保険給付ノ種類及程度ニ略同ジナルコト
二 被保険者タル組合員ニ対スル其ノ組合ノ給付ノ中保険給付ニ相当スル給付ニ要スル費用ニ関スル出捐年額ガ其ノ者ヲ被保険者トシタル場合ニ於ケル其ノ者ニ関スル厚生年金保険ノ保険料年額ニ相当スル金額以上ニシテ事業主ガ其ノ出捐年額ノ二分ノ一以上ヲ負担スルモノナルコト
第三十三条中「前条」ヲ「第三十二条」ニ、「被保険者タラザルモノガ」ヲ「被保険者タラザルモノハ」ニ改メ「共済組合ノ組合員タラザルニ至リタルトキ」ノ下ニ「又ハ前条ノ規定ニ依リ共済組合ノ指定ノ取消アリタルトキ」ヲ加フ
第三十四条及第三十六条中「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ改ム
第三十五条中「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ、「労働者年金保険ノ」ヲ「厚生年金保険ノ」ニ、「千八百円」ヲ「二百円」ニ改ム
第三十九条第一項中「労働者年金保険法第十六条ノ事業所ニ強制被保険者」ヲ「厚生年金保険法第十六条ノ事業所又ハ同法第十六条ノ二ノ認可アリタル事業所ニ強制被保険者又ハ任意包括被保険者」ニ改ム
第四十条第一項中「強制被保険者」ヲ「強制被保険者又ハ任意包括被保険者」ニ、「ニ規定スル」ヲ「ニ規定スル掛金ニ準ズル厚生年金保険ノ保険料ニ相当スル」ニ改メ同条第二項ヲ削ル
第四十一条中「前条第一項第一号」ヲ「前条第一号」ニ、同条第一項中「強制被保険者ト為ルベキ資格ヲ有スル者トシテ労働者年金保険法第十六条ノ事業所」ヲ「強制被保険者又ハ任意包括被保険者ト為ルベキ資格ヲ有スル者トシテ厚生年金保険法第十六条ノ事業所又ハ同法第十六条ノ二ノ認可アリタル事業所」ニ、同条第二項中「百二十円」ヲ「十円」ニ、「労働者年金保険法」ヲ「厚生年金保険法」ニ改ム
第四十二条中「千八百円」ヲ「二百円」ニ、同条第一項中「平均標準報酬年額」ヲ「平均標準報酬月額」ニ、「第四十条第一項第一号」ヲ「第四十条第一号」ニ、「百二十円」ヲ「十円」ニ改ム
第四十三条中「第四十条第一項第一号」ヲ「第四十条第一号」ニ改ム
第四十四条 削除
別表第一乃至第四ヲ左ノ如ク改ム
別表第一
【表】
備考
一 各級各号又ハ各号ノ一ニ該当セザルモ之ニ相当スル廃疾ノ状態ト認メラルベキモノハ其ノ最モ近キ各級各号又ハ各号ノ廃疾ノ状態ニ該当スルモノト看做ス
二 視力ノ測定ハ万国式視力表ニ依ル屈折異状アルモノニ付テハ矯正視力ニ付測定ス
三 指ヲ失ヒタルモノトハ拇指ハ指関節、其ノ他ノ指ハ第一指関節以上ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
四 指ノ用ヲ廃シタルモノトハ指ノ末節ノ半以上ヲ失ヒ又ハ掌指関節若ハ第一指関節(拇指ニ在リテハ指関節)ニ著シキ運動障害ヲ残スモノヲ謂フ
五 趾ヲ失ヒタルモノトハ其ノ全部ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
六 趾ノ用ヲ廃シタルモノトハ第一趾ハ末節ノ半以上、其ノ他ノ趾ハ末関節以上ヲ失ヒタルモノ又ハ蹠趾関節若ハ第一趾関節(第一趾ニ在リテハ趾関節)ニ著シキ運動障害ヲ残スモノヲ謂フ
別表第二
【表】
備考 別表第一ノ備考ト同ジ
別表第三
【表】
別表第四
【表】
別表第五
【表】
別表第六
【表】
附 則
第一条 本令ハ昭和十九年六月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ保険給付ニ関スル改正規定(第十八条第一項第二項、第十九条及第二十条ノ改正規定中名称変更ニ関スル部分並ニ第二十二条ノ改正規定ヲ除ク)、第二十四条第一項ノ改正規定並ニ第十九条ノ二、第二十一条ノ二、第二十二条ノ二、第二十二条ノ三、第二十五条ノ二、附則第二条乃至第六条及同第十条ノ規定ハ同年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二条 昭和十九年法律第二十一号附則第二条第一項ノ規定ニ該当スル者ガ同法同条同項ノ規定ニ該当スル場合ニ於テハ被保険者タリシ期間ニ応ジ平均標準報酬日額ニ左ニ掲グル表ニ定ムル日数ヲ乗ジテ得タル額ノ脱退手当金ヲ支給ス
【表】
第三条 第三十一条第一項及第二項ノ改正規定ハ昭和十九年法律第二十一号附則第四条第一項ノ規定ニ該当スル者ガ同法同条同項ノ規定ニ該当スル場合ニ之ヲ準用ス
第四条 昭和十九年法律第二十一号附則第六条ノ規定ニ該当スル者ガ事業主ノ同意ヲ得テ昭和十九年十月一日ヨリ一月以内ニ被保険者タラザラントスル申請ヲ為ストキハ被保険者ノ資格ヲ取得シタル日ニ遡リテ被保険者タラザルコトヲ得
第五条 強制被保険者ト為ルベキ資格ヲ有スル者ニシテ前条ノ規定ニ依リ被保険者タラザルモノハ第三十二条第一項ニ規定スル共済組合ノ組合員タラザルニ至リタルトキ又ハ第三十二条ノ二ノ規定ニ依リ共済組合ノ指定ノ取消アリタルトキハ爾後被保険者トス
第六条 第三十四条乃至第三十六条、第三十九条第一項、第四十条乃至第四十三条ノ改正規定並ニ第三十七条、第三十八条、第三十九条第二項及第四十五条ノ規定ハ昭和十九年法律第二十一号附則第七条ニ規定スル郵便年金契約ノ年金受取人タル被保険者ニ之ヲ準用ス
第七条 昭和十九年六月一日前ニ被保険者ノ資格ヲ取得シ同年同月同日迄引続キ被保険者ノ資格ヲ有スル者ノ同年同月同日ニ於ケル標準報酬ノ等級ガ従前ノ第三条ノ規定ニ依ル第十五級ニ該当スル場合ニ於テハ其ノ者ハ第四条第一項ノ規定ノ適用ニ付同年同月同日ニ於テ被保険者ノ資格ヲ取得シタルモノト看做ス
第八条 昭和十九年九月末日迄ハ第二十一条、第二十四条第一項及第三十一条中労働者年金保険法トアルハ厚生年金保険法トス
第九条 従前ノ第四十条ニ規定スル年金契約ニ付年金契約者ガ第三十八条ニ規定スル掛金ニシテ昭和十九年一月一日ヨリ同年五月末日迄ノ期間ニ係ルモノヲ払込マズシテ同年七月末日ヲ経過シタルトキハ其ノ者ハ爾後被保険者トス
第十条 退職積立金及退職手当法施行令ハ之ヲ廃止ス但シ退職積立金ノ支払又ハ退職手当ノ支給ノ完了ニ至ル迄ハ之ニ必要ナル限度ニ於テ同令第六条、第十条乃至第十三条及第十八条乃至第二十三条ノ規定ハ仍其ノ効力ヲ有ス