陸軍武官進級令
法令番号: 勅令第百九十七號
公布年月日: 昭和16年3月8日
法令の形式: 勅令
朕陸軍武官進級令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月七日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
陸軍大臣 東條英機
勅令第百九十七號
陸軍武官進級令
第一章 總則
第一條 陸軍武官ノ進級ハ上級ノ官職ニ堪フル人材ヲ拔擢シテ其ノ官階ヲ進ムルヲ本旨トス
第二條 陸軍武官ハ級ヲ逐ヒ之ヲ歷進セシム但シ本令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第三條 陸軍武官ハ進級ニ必要ナル實役停年ヲ超エタル者ニ非ザレバ之ヲ拔擢スルコトヲ得ズ但シ本令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 陸軍武官ノ拔擢進級候補ハ上官タル將校職權ニ依リ之ヲ選定シ其ノ上官タル將校選定ノ適否ヲ判定スルノ權ヲ有ス
第五條 本令中現役武官ニ關スル規定ハ豫備役武官ニシテ部隊ニ武官ノ職ヲ奉ズルモノ及召集中ノモノニ之ヲ準用ス退役將校ニシテ部隊ニ編入セラレタルモノニ付亦同ジ
第六條 實役停年ハ其ノ官ニ於ケル在職中ノ期間(陸軍將校分限令第六條第三項ノ規定ニ該當スル者ノ待命中ノ期間ヲ含ム)及召集中ノ期間(勤務演習召集中ノ期間ヲ除ク)ヲ通算ス
官ヲ轉ジタル者ノ實役停年ニハ其ノ轉ズル前ニ於ケル同級ノ官ノ實役停年ヲ通算ス
第二章 將校ノ進級
第七條 現役將校ノ進級ニ必要ナル各官ノ實役停年左ノ如シ
中將 四年
少將 三年
大佐 二年
中佐 二年
少佐 二年
大尉 四年
中尉 二年
少尉 一年
戰時又ハ事變ノ際其ノ他補充上特ニ必要アルトキハ前項ノ實役停年ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
第八條 待命、休職又ハ停職中ノ者ハ之ヲ進級セシメザルモノトス但シ待命又ハ休職中ノ者ニシテ危篤ニ陷リタルモノ、第十七條第一項第一號ノ規定ニ該當スルモノ及陸軍將校分限令第六條第三項ノ規定ニ該當スルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 現役將校ハ尉官ノ階級ニ於テ三年以上隊附勤務ニ服シタル者ニ非ザレバ大尉ヨリ少佐ニ、佐官ノ階級ニ於テ二年以上隊附勤務ニ服シタル者ニ非ザレバ大佐ヨリ少將ニ之ヲ進級セシメザルヲ例トス但シ戰時又ハ事變ノ際及其ノ他ノ場合ニ於テ補充上必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 中將ヨリ大將ニ進級セシムルニハ歷戰者又ハ樞要ナル軍務ノ經歷ヲ有スル者ニシテ功績特ニ顯著ナルモノノ中ヨリ特旨ヲ以テ親任スルモノトス
第十一條 將官ヲ進級セシメ及大佐ヲ少將ニ進級セシムルハ上旨ニ出ヅルモノトス此ノ場合ニ於テハ先ヅ內旨ヲ陸軍大臣ニ諭スヲ例トス
第十二條 現役將校ノ拔擢進級候補及其ノ列序ノ決定ハ上裁ニ依ル
第十三條 前條ノ決定アリタルトキハ陸軍大臣ハ上旨ヲ奉ジテ拔擢進級候補決定名簿ヲ調製シ之ヲ上奏スベシ
第十四條 現役佐官(大佐ヲ除ク)及尉官ノ進級ハ拔擢進級候補決定名簿ノ列序ニ從ヒ陸軍大臣進級上奏ヲ爲スベシ
第十五條 前條ノ規定ニ依ル進級ハ各官每ニ之ヲ行フ
第十六條 拔擢進級候補決定者中進級セシムベカラザル者ヲ生ジタルトキハ拔擢進級候補決定名簿ヨリ之ヲ削除ス
第十七條 將校ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノハ第三條本文及第九條ノ規定竝ニ第十四條中拔擢進級候補決定名簿ニ關スル規定ニ拘ラズ其ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得
一 軍事ニ關シ拔群ノ功績アル者又ハ軍人ノ龜鑑トシテ陸軍大臣之ヲ陸軍全般ニ布吿シタル者
二 敵前ニ在リテ殊勳ヲ奏シ首將之ヲ全軍ニ布吿シタル者
三 公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲危篤ニ陷リタル者ニシテ功績特ニ顯著ナルモノ
前項ノ規定ニ依リ同項第一號又ハ第二號ニ該當スル者ヲ進級セシムル場合ニ於テハ第二條本文ノ規定ニ拘ラズ特ニ二階級之ヲ進級セシムルコトヲ得
第十八條 將校ニシテ第七條ニ規定スル實役停年ノ半ヲ超エタルモノ傷痍疾病ノ爲危篤ニ陷リ若ハ公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲現職ニ堪ヘザルニ至リタルトキ又ハ將校ニシテ同條ニ規定スル實役停年ヲ超エ多年軍務ニ服シ功績顯著ナルモノ現職ヲ退カシメラルルトキハ前條第一項ノ規定ニ準ジ其ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得
第十九條 危篤ニ陷リタル際前二條ノ規定ニ該當スルニ至リタル者ニ對シテハ其ノ死歿ノ後ト雖モ特ニ危篤ニ陷リタル時ニ遡リテ之ヲ進級セシムルコトヲ得
第二十條 豫備役ノ中少尉ニシテ二囘以上ノ召集ニ應ジ其ノ勤務ノ成績優秀ナルモノハ特ニ選拔シテ進級ノ爲ニスル勤務演習ニ服セシメ技能ヲ査閱シタル後臨時拔擢シテ之ヲ進級セシムルコトヲ得
第二十一條 召集セラレタル豫備役將校及部隊ニ編入セラレタル退役將校ノ進級ハ必要ニ應ジ召集又ハ編入解除ノ後之ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ハ召集解除ニ依リ豫備役期間ノ延長解止ト爲リ退役ニ入リタル者ノ進級ニ之ヲ準用ス
第二十二條 戰地ニ臨ムノ首將ニハ特ニ進級セシムルノ權ヲ假スコトアルベシ
第二十三條 陸軍大臣ハ每年現役將校實役停年名簿ヲ調製シ之ヲ上奏スベシ
第三章 下士官ノ進級
第二十四條 現役下士官ノ進級ニ必要ナル各官ノ實役停年左ノ如シ
曹長 四年
軍曹 二年
伍長 一年
第七條第二項ノ規定ハ前項ノ實役停年ニ之ヲ準用ス
第二十五條 現役下士官ノ拔擢進級候補及其ノ列序ハ師團長若ハ之ト同等以上ノ權アル長官又ハ陸軍大臣直轄ノ官衙若ハ學校ノ長之ヲ決定シテ拔擢進級候補決定名簿ヲ調製スベシ
第二十六條 現役下士官ノ進級ハ拔擢進級候補決定名簿ノ列序ニ從ヒ各官每ニ(經理部又ハ衞生部ノ下士官ニ在リテハ各部每ニ各階級每ニ)之ヲ行フ
現役下士官ノ進級區域及進級ヲ行フ諸官ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二十七條 第十七條乃至第二十條ノ規定ハ下士官ノ進級ニ之ヲ準用ス
第二十八條 現役下士官又ハ部隊編入中ノ豫備役下士官ニシテ第二十四條ニ規定スル實役停年ヲ超エ成績優秀ナルモノハ第二十六條第一項ノ規定ニ拘ラズ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ現役ヲ退ク際、召集解除ノ際又ハ解職ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十三年勅令第九十七號ハ之ヲ廢止ス
本令中豫備役武官ニ關スル規定ハ昭和十六年三月三十一日迄ハ後備役武官ニモ之ヲ適用ス
朕陸軍武官進級令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月七日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
陸軍大臣 東条英機
勅令第百九十七号
陸軍武官進級令
第一章 総則
第一条 陸軍武官ノ進級ハ上級ノ官職ニ堪フル人材ヲ抜擢シテ其ノ官階ヲ進ムルヲ本旨トス
第二条 陸軍武官ハ級ヲ逐ヒ之ヲ歴進セシム但シ本令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第三条 陸軍武官ハ進級ニ必要ナル実役停年ヲ超エタル者ニ非ザレバ之ヲ抜擢スルコトヲ得ズ但シ本令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四条 陸軍武官ノ抜擢進級候補ハ上官タル将校職権ニ依リ之ヲ選定シ其ノ上官タル将校選定ノ適否ヲ判定スルノ権ヲ有ス
第五条 本令中現役武官ニ関スル規定ハ予備役武官ニシテ部隊ニ武官ノ職ヲ奉ズルモノ及召集中ノモノニ之ヲ準用ス退役将校ニシテ部隊ニ編入セラレタルモノニ付亦同ジ
第六条 実役停年ハ其ノ官ニ於ケル在職中ノ期間(陸軍将校分限令第六条第三項ノ規定ニ該当スル者ノ待命中ノ期間ヲ含ム)及召集中ノ期間(勤務演習召集中ノ期間ヲ除ク)ヲ通算ス
官ヲ転ジタル者ノ実役停年ニハ其ノ転ズル前ニ於ケル同級ノ官ノ実役停年ヲ通算ス
第二章 将校ノ進級
第七条 現役将校ノ進級ニ必要ナル各官ノ実役停年左ノ如シ
中将 四年
少将 三年
大佐 二年
中佐 二年
少佐 二年
大尉 四年
中尉 二年
少尉 一年
戦時又ハ事変ノ際其ノ他補充上特ニ必要アルトキハ前項ノ実役停年ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
第八条 待命、休職又ハ停職中ノ者ハ之ヲ進級セシメザルモノトス但シ待命又ハ休職中ノ者ニシテ危篤ニ陥リタルモノ、第十七条第一項第一号ノ規定ニ該当スルモノ及陸軍将校分限令第六条第三項ノ規定ニ該当スルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第九条 現役将校ハ尉官ノ階級ニ於テ三年以上隊附勤務ニ服シタル者ニ非ザレバ大尉ヨリ少佐ニ、佐官ノ階級ニ於テ二年以上隊附勤務ニ服シタル者ニ非ザレバ大佐ヨリ少将ニ之ヲ進級セシメザルヲ例トス但シ戦時又ハ事変ノ際及其ノ他ノ場合ニ於テ補充上必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十条 中将ヨリ大将ニ進級セシムルニハ歴戦者又ハ枢要ナル軍務ノ経歴ヲ有スル者ニシテ功績特ニ顕著ナルモノノ中ヨリ特旨ヲ以テ親任スルモノトス
第十一条 将官ヲ進級セシメ及大佐ヲ少将ニ進級セシムルハ上旨ニ出ヅルモノトス此ノ場合ニ於テハ先ヅ内旨ヲ陸軍大臣ニ諭スヲ例トス
第十二条 現役将校ノ抜擢進級候補及其ノ列序ノ決定ハ上裁ニ依ル
第十三条 前条ノ決定アリタルトキハ陸軍大臣ハ上旨ヲ奉ジテ抜擢進級候補決定名簿ヲ調製シ之ヲ上奏スベシ
第十四条 現役佐官(大佐ヲ除ク)及尉官ノ進級ハ抜擢進級候補決定名簿ノ列序ニ従ヒ陸軍大臣進級上奏ヲ為スベシ
第十五条 前条ノ規定ニ依ル進級ハ各官毎ニ之ヲ行フ
第十六条 抜擢進級候補決定者中進級セシムベカラザル者ヲ生ジタルトキハ抜擢進級候補決定名簿ヨリ之ヲ削除ス
第十七条 将校ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ第三条本文及第九条ノ規定並ニ第十四条中抜擢進級候補決定名簿ニ関スル規定ニ拘ラズ其ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得
一 軍事ニ関シ抜群ノ功績アル者又ハ軍人ノ亀鑑トシテ陸軍大臣之ヲ陸軍全般ニ布告シタル者
二 敵前ニ在リテ殊勲ヲ奏シ首将之ヲ全軍ニ布告シタル者
三 公務ニ因ル傷痍疾病ノ為危篤ニ陥リタル者ニシテ功績特ニ顕著ナルモノ
前項ノ規定ニ依リ同項第一号又ハ第二号ニ該当スル者ヲ進級セシムル場合ニ於テハ第二条本文ノ規定ニ拘ラズ特ニ二階級之ヲ進級セシムルコトヲ得
第十八条 将校ニシテ第七条ニ規定スル実役停年ノ半ヲ超エタルモノ傷痍疾病ノ為危篤ニ陥リ若ハ公務ニ因ル傷痍疾病ノ為現職ニ堪ヘザルニ至リタルトキ又ハ将校ニシテ同条ニ規定スル実役停年ヲ超エ多年軍務ニ服シ功績顕著ナルモノ現職ヲ退カシメラルルトキハ前条第一項ノ規定ニ準ジ其ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得
第十九条 危篤ニ陥リタル際前二条ノ規定ニ該当スルニ至リタル者ニ対シテハ其ノ死歿ノ後ト雖モ特ニ危篤ニ陥リタル時ニ遡リテ之ヲ進級セシムルコトヲ得
第二十条 予備役ノ中少尉ニシテ二回以上ノ召集ニ応ジ其ノ勤務ノ成績優秀ナルモノハ特ニ選抜シテ進級ノ為ニスル勤務演習ニ服セシメ技能ヲ査閲シタル後臨時抜擢シテ之ヲ進級セシムルコトヲ得
第二十一条 召集セラレタル予備役将校及部隊ニ編入セラレタル退役将校ノ進級ハ必要ニ応ジ召集又ハ編入解除ノ後之ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ハ召集解除ニ依リ予備役期間ノ延長解止ト為リ退役ニ入リタル者ノ進級ニ之ヲ準用ス
第二十二条 戦地ニ臨ムノ首将ニハ特ニ進級セシムルノ権ヲ仮スコトアルベシ
第二十三条 陸軍大臣ハ毎年現役将校実役停年名簿ヲ調製シ之ヲ上奏スベシ
第三章 下士官ノ進級
第二十四条 現役下士官ノ進級ニ必要ナル各官ノ実役停年左ノ如シ
曹長 四年
軍曹 二年
伍長 一年
第七条第二項ノ規定ハ前項ノ実役停年ニ之ヲ準用ス
第二十五条 現役下士官ノ抜擢進級候補及其ノ列序ハ師団長若ハ之ト同等以上ノ権アル長官又ハ陸軍大臣直轄ノ官衙若ハ学校ノ長之ヲ決定シテ抜擢進級候補決定名簿ヲ調製スベシ
第二十六条 現役下士官ノ進級ハ抜擢進級候補決定名簿ノ列序ニ従ヒ各官毎ニ(経理部又ハ衛生部ノ下士官ニ在リテハ各部毎ニ各階級毎ニ)之ヲ行フ
現役下士官ノ進級区域及進級ヲ行フ諸官ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二十七条 第十七条乃至第二十条ノ規定ハ下士官ノ進級ニ之ヲ準用ス
第二十八条 現役下士官又ハ部隊編入中ノ予備役下士官ニシテ第二十四条ニ規定スル実役停年ヲ超エ成績優秀ナルモノハ第二十六条第一項ノ規定ニ拘ラズ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ現役ヲ退ク際、召集解除ノ際又ハ解職ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十三年勅令第九十七号ハ之ヲ廃止ス
本令中予備役武官ニ関スル規定ハ昭和十六年三月三十一日迄ハ後備役武官ニモ之ヲ適用ス