第一條 本法ハ戰時事變其ノ他ノ場合ニ於テ帝國ノ通商航海ニ脅威ヲ受ケ又ハ受クルノ虞アルトキ敵襲其ノ他ノ軍事的危害ニ對シ船舶ヲ保護スルヲ以テ目的トス
第二條 海軍官憲ハ戰時事變其ノ他ノ場合ニ於テ船舶保護上必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ運航業者、船舶所有者又ハ船長(船長ニ代リテ其ノ職務ヲ行フ者ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ對シ船舶ノ航海、碇泊、通信、裝備、乘組員、乘客、積荷其ノ他ニ關シ臨機必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得
第三條 海軍大臣ハ戰時事變其ノ他ノ場合ニ於ケル船舶保護ノ爲必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ運航業者又ハ船舶所有者(船舶製造ノ注文者ヲ含ム以下第四條第一項ヲ除クノ外之ニ同ジ)ニ對シ船舶ノ設備又ハ乘組員ノ整備ニ關シ必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得
海軍大臣前項ノ命令ヲ發シ又ハ同項ノ指示ヲ爲サントスルトキハ關係各大臣(朝鮮總督、臺灣總督及樺太廳長官ヲ含ム)ニ協議スベシ
第四條 海軍官憲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第二條ノ指示ニ係ル事項ニ關シ必要アルトキハ運航業者、船舶所有者若ハ船長ニ對シ報吿ヲ爲サシメ又ハ船舶其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ檢査ヲ爲スコトヲ得
海軍大臣ハ前條第一項ノ指示ニ係ル事項ニ關シ必要アルトキハ運航業者若ハ船舶所有者ニ對シ報吿ヲ爲サシメ又ハ當該官憲ヲシテ船舶其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
第五條 第二條又ハ第三條第一項ノ指示ニ從ハザル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第六條 船長ガ第二條ノ指示ニ依リテ爲ス職務ノ遂行ヲ妨ゲタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ同條ノ規定ニ依ル臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ノ罰亦前項ニ同ジ
第七條 運航業者又ハ船舶所有者ハ支配人其ノ他ノ代理人又ハ船長其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第五條又ハ前條第二項前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第八條 第五條及第六條第二項前段ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第十條 第五條及第六條第二項前段ノ罰則ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ付亦同ジ
第十一條 本法中運航業者又ハ船舶所有者ニ關スル罰則ハ國又ハ道府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ニハ之ヲ適用セズ
第十二條 本法ハ陸海軍ニ屬スル船舶ニ付テハ之ヲ適用セズ