東亜海運株式会社法
法令番号: 法律第六十八號
公布年月日: 昭和16年3月14日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル東亞海運株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十三日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 河田烈
遞信大臣 村田省藏
法律第六十八號
東亞海運株式會社法
第一章 總則
第一條 東亞海運株式會社ハ支那ヲ中心トスル本邦海運業ノ振興發展ヲ圖ルヲ目的トスル株式會社トス
第二條 東亞海運株式會社ノ資本ハ一億圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條 政府ハ東亞海運株式會社ニ對シ出資ヲ爲スコトヲ得
政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四條 東亞海運株式會社ノ株金ノ第一囘拂込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ其ノ所有スル株式ノ第二囘以後ノ株金拂込ニ充ツルコトヲ得
第五條 政府第三條第二項又ハ前條第二項ノ規定ニ依リ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲シ又ハ其ノ所有スル株式ノ株金拂込ニ充ツル場合ニ於テハ其ノ財產ノ價格竝ニ之ニ對シテ與フル株式ノ種類及數ニ付東亞海運株式會社政府出資財產評價委員會ノ議ヲ經ベシ
東亞海運株式會社政府出資財產評價委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
商法第三百五十三條ノ規定ハ東亞海運株式會社ニハ之ヲ適用セズ
第六條 東亞海運株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
政府ノ許可ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ拘ラズ東亞海運株式會社ノ株式ヲ所有スルコトヲ得
第七條 東亞海運株式會社ニ非ザルモノハ東亞海運株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第二章 役員
第八條 東亞海運株式會社ニ社長副社長各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
第九條 社長ハ東亞海運株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ從ヒ東亞海運株式會社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ東亞海運株式會社ノ業務ヲ監査ス
第十條 社長及副社長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
東亞海運株式會社ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ退職後五年間ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ東亞海運株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ
第十一條 社長、副社長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 業務
第十二條 東亞海運株式會社ハ支那各港間、日本支那間支那第三國間ニ於ケル海運業ヲ營ムモノトス
東亞海運株式會社ハ政府ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本會社ノ目的達成上必要ナル附帶事業ヲ營ムコトヲ得
第四章 政府ノ監督及助成
第十三條 政府ハ東亞海運株式會社ノ業務ヲ監督ス
第十四條 東亞海運株式會社社債ヲ募集セントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五條 定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十六條 東亞海運株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第十七條 政府ハ東亞海運株式會社ノ業務ニ關シ監督上又ハ公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十八條 政府ハ何時ニテモ當該官吏ヲシテ東亞海運株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
政府必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ東亞海運株式會社ニ命ジテ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
第十九條 政府ハ東亞海運株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十條 政府ハ其ノ指定スル定期航路ヲ經營セシムル爲東亞海運株式會社ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第二十一條 東亞海運株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十二條 東亞海運株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達セザルトキハ政府ハ初營業年度及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ相當スル額及當該年度ニ於テ支拂ヒタル社債ノ利息額ノ合計ヲ超ユルコトヲ得ズ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
東亞海運株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ヨリ前項ノ規定ニ依ル償還金額ヲ控除シタル殘額ノ二分ノ一以上ヲ配當準備ノ爲別ニ積立ツベシ
前項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益金額ト看做ス
第二十三條 東亞海運株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第二十四條 東亞海運株式會社ハ商法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ三倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十五條 政府ハ東亞海運株式會社ノ社債ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第二十六條 東亞海運株式會社ノ社債ノ所有者ハ東亞海運株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特權ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第五章 罰則
第二十七條 東亞海運株式會社本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
第二十八條 東亞海運株式會社ノ社長、副社長及業務ヲ分掌スル理事第十一條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第二十九條 第七條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第三十條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十一條 昭和十四年八月五日設立セラレタル東亞海運株式會社(以下暫定會社ト稱ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三條ニ定ムル株主總會ノ決議ヲ以テ東亞海運株式會社ト爲ルコトヲ得
暫定會社前項ノ決議ヲ爲シタルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十二條 前條ノ認可ヲ爲シタルトキハ政府ハ設立委員ヲ命ジ暫定會社ヲ東亞海運株式會社ト爲ス爲ニ必要ナル事務ヲ處理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ暫定會社ノ取締役ノ中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ暫定會社ノ取締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ會社ノ常務ニ屬セザル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第三十三條 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十四條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總株式ヨリ暫定會社ノ株式ニ引當テラルベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十五條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事項記ヲ載スベシ
第三十六條 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第三十七條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各新株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
第三十八條 前條ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
創立總會ノ決議ハ新株ノ引受人及新株ノ引受ヲ爲サザル暫定會社ノ株主ノ合計ノ半數以上ニシテ資本ノ半額以上ニ當ル者出席シ其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ爲ス
第三十九條 創立總會ニ於テハ第十條ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ東亞海運株式會社社長ニ引渡スベシ
第四十一條 商法第百六十七條、第百八十一條及第百八十五條ノ規定ハ東亞海運株式會社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第四十二條 東亞海運株式會社ノ成立ニ因リ暫定會社ハ之ニ吸收セラルルモノトシ暫定會社ノ權利義務ハ東亞海運株式會社ニ於テ之ヲ承繼ス
第四十三條 前條ノ規定ニ依リ暫定會社ガ東亞海運株式會社ト爲リタルトキハ法人稅法及營業稅法ノ適用ニ關シテハ暫定會社ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ト看做シ東亞海運株式會社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人ト看做ス
東亞海運株式會社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ拂込株金額中暫定會社ノ拂込株金額ニ相當スル部分ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ東亞海運株式會社ガ前條ノ規定ニ依リ暫定會社ヨリ不動產又ハ船舶ニ關スル權利ヲ承繼スル場合ニ於ケル其ノ取得ニ付登記ヲ受クルトキ亦同ジ
前條ノ規定ニ依ル暫定會社ヨリ東亞海運株式會社ヘノ有價證券ノ移轉ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ課セズ
第四十四條 第三十一條乃至前條ニ規定スルモノヲ除クノ外暫定會社ガ東亞海運株式會社ト爲ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五條 第三十一條第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ效力ヲ生ゼザル場合ニ於テハ東亞海運株式會社ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六條 本法施行ノ際現ニ東亞海運株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ本法施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第七條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前項ニ揭グル者ニ適用セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル東亜海運株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十三日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 河田烈
逓信大臣 村田省蔵
法律第六十八号
東亜海運株式会社法
第一章 総則
第一条 東亜海運株式会社ハ支那ヲ中心トスル本邦海運業ノ振興発展ヲ図ルヲ目的トスル株式会社トス
第二条 東亜海運株式会社ノ資本ハ一億円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 政府ハ東亜海運株式会社ニ対シ出資ヲ為スコトヲ得
政府ハ金銭以外ノ財産ヲ以テ出資ノ目的ト為スコトヲ得
政府所有ノ株式ノ株金払込ハ其ノ他ノ株式ノ株金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四条 東亜海運株式会社ノ株金ノ第一回払込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
政府ハ金銭以外ノ財産ヲ以テ其ノ所有スル株式ノ第二回以後ノ株金払込ニ充ツルコトヲ得
第五条 政府第三条第二項又ハ前条第二項ノ規定ニ依リ金銭以外ノ財産ヲ以テ出資ノ目的ト為シ又ハ其ノ所有スル株式ノ株金払込ニ充ツル場合ニ於テハ其ノ財産ノ価格並ニ之ニ対シテ与フル株式ノ種類及数ニ付東亜海運株式会社政府出資財産評価委員会ノ議ヲ経ベシ
東亜海運株式会社政府出資財産評価委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
商法第三百五十三条ノ規定ハ東亜海運株式会社ニハ之ヲ適用セズ
第六条 東亜海運株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上、資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人若ハ外国法人ニ属セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
政府ノ許可ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ拘ラズ東亜海運株式会社ノ株式ヲ所有スルコトヲ得
第七条 東亜海運株式会社ニ非ザルモノハ東亜海運株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第二章 役員
第八条 東亜海運株式会社ニ社長副社長各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
第九条 社長ハ東亜海運株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ従ヒ東亜海運株式会社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ東亜海運株式会社ノ業務ヲ監査ス
第十条 社長及副社長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
東亜海運株式会社ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ退職後五年間ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ東亜海運株式会社ノ役員ト為ルコトヲ得ズ
第十一条 社長、副社長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 業務
第十二条 東亜海運株式会社ハ支那各港間、日本支那間支那第三国間ニ於ケル海運業ヲ営ムモノトス
東亜海運株式会社ハ政府ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本会社ノ目的達成上必要ナル附帯事業ヲ営ムコトヲ得
第四章 政府ノ監督及助成
第十三条 政府ハ東亜海運株式会社ノ業務ヲ監督ス
第十四条 東亜海運株式会社社債ヲ募集セントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五条 定款ノ変更、利益金ノ処分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第十六条 東亜海運株式会社ハ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第十七条 政府ハ東亜海運株式会社ノ業務ニ関シ監督上又ハ公益上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十八条 政府ハ何時ニテモ当該官吏ヲシテ東亜海運株式会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査セシムルコトヲ得
政府必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ東亜海運株式会社ニ命ジテ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
第十九条 政府ハ東亜海運株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十条 政府ハ其ノ指定スル定期航路ヲ経営セシムル為東亜海運株式会社ニ対シ予算ノ範囲内ニ於テ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第二十一条 東亜海運株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第二十二条 東亜海運株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達セザルトキハ政府ハ初営業年度及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ相当スル額及当該年度ニ於テ支払ヒタル社債ノ利息額ノ合計ヲ超ユルコトヲ得ズ
毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
東亜海運株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ヨリ前項ノ規定ニ依ル償還金額ヲ控除シタル残額ノ二分ノ一以上ヲ配当準備ノ為別ニ積立ツベシ
前項ノ規定ニ依ル積立金ハ後営業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配当シ得ベキ利益金額ト看做ス
第二十三条 東亜海運株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額及政府ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第二十四条 東亜海運株式会社ハ商法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ総額ハ払込ミタル株金額ノ三倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十五条 政府ハ東亜海運株式会社ノ社債ノ元本ノ償還及利息ノ支払ニ付保証スルコトヲ得
第二十六条 東亜海運株式会社ノ社債ノ所有者ハ東亜海運株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特権ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第五章 罰則
第二十七条 東亜海運株式会社本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
第二十八条 東亜海運株式会社ノ社長、副社長及業務ヲ分掌スル理事第十一条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第二十九条 第七条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第三十条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十一条 昭和十四年八月五日設立セラレタル東亜海運株式会社(以下暫定会社ト称ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三条ニ定ムル株主総会ノ決議ヲ以テ東亜海運株式会社ト為ルコトヲ得
暫定会社前項ノ決議ヲ為シタルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十二条 前条ノ認可ヲ為シタルトキハ政府ハ設立委員ヲ命ジ暫定会社ヲ東亜海運株式会社ト為ス為ニ必要ナル事務ヲ処理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ暫定会社ノ取締役ノ中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ暫定会社ノ取締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ会社ノ常務ニ属セザル行為ヲ為スコトヲ得ズ
第三十三条 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十四条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総株式ヨリ暫定会社ノ株式ニ引当テラルベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十五条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ規定スル事項記ヲ載スベシ
第三十六条 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ政府ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第三十七条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各新株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
第三十八条 前条ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
創立総会ノ決議ハ新株ノ引受人及新株ノ引受ヲ為サザル暫定会社ノ株主ノ合計ノ半数以上ニシテ資本ノ半額以上ニ当ル者出席シ其ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス
第三十九条 創立総会ニ於テハ第十条ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ東亜海運株式会社社長ニ引渡スベシ
第四十一条 商法第百六十七条、第百八十一条及第百八十五条ノ規定ハ東亜海運株式会社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第四十二条 東亜海運株式会社ノ成立ニ因リ暫定会社ハ之ニ吸収セラルルモノトシ暫定会社ノ権利義務ハ東亜海運株式会社ニ於テ之ヲ承継ス
第四十三条 前条ノ規定ニ依リ暫定会社ガ東亜海運株式会社ト為リタルトキハ法人税法及営業税法ノ適用ニ関シテハ暫定会社ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ト看做シ東亜海運株式会社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人ト看做ス
東亜海運株式会社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ払込株金額中暫定会社ノ払込株金額ニ相当スル部分ニ付テハ登録税ヲ課セズ東亜海運株式会社ガ前条ノ規定ニ依リ暫定会社ヨリ不動産又ハ船舶ニ関スル権利ヲ承継スル場合ニ於ケル其ノ取得ニ付登記ヲ受クルトキ亦同ジ
前条ノ規定ニ依ル暫定会社ヨリ東亜海運株式会社ヘノ有価証券ノ移転ニ付テハ有価証券移転税ヲ課セズ
第四十四条 第三十一条乃至前条ニ規定スルモノヲ除クノ外暫定会社ガ東亜海運株式会社ト為ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五条 第三十一条第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ効力ヲ生ゼザル場合ニ於テハ東亜海運株式会社ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六条 本法施行ノ際現ニ東亜海運株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ本法施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第七条ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ前項ニ掲グル者ニ適用セズ