職員健康保険法
法令番号: 法律第七十二號
公布年月日: 昭和14年4月6日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル職員健康保險法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年四月五日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
內務大臣 侯爵 木戶幸一
厚生大臣 廣瀨久忠
大藏大臣 石渡莊太郞
法律第七十二號
職員健康保險法
第一章 總則
第一條 職員健康保險ニ於テハ被保險者ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ關シ保險給付ヲ爲スモノトス
保險者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ被保險者ト同一ノ世帶ニ屬シ被保險者ニ依リ生計ヲ維持スル者(以下世帶員ト稱ス)ノ疾病又ハ負傷ニ關シ保險給付ヲ爲スコトヲ得
第二條 本法ニ於テ報酬ト稱スルハ事業ニ使用セラルル者ガ勞務ノ對償トシテ受クル俸給、給料又ハ賃金及之ニ準ズベキモノヲ謂フ
俸給、給料又ハ賃金ニ準ズベキモノノ範圍及評價ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 報酬ノ額ニ基キ保險料又ハ保險給付ノ額ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬ニ依リ之ヲ算定ス
標準報酬ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ヲ徵收シ又ハ其ノ還付ヲ受クル權利及保險給付ヲ受クル權利ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
前項ノ時效ノ中斷、停止其ノ他ノ事項ニ關シテハ民法ノ時效ニ關スル規定ヲ準用ス
命令ノ定ムル所ニ依リ保險者ノ爲ス保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ノ徵收ノ吿知ハ民法第百五十三條ノ規定ニ拘ラズ時效中斷ノ效力ヲ有ス
第五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定スル期間ノ計算ニ付テハ民法ノ期間ノ計算ニ關スル規定ヲ準用ス
第六條 職員健康保險ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セズ
保險給付トシテ支給ヲ受ケタル金品ヲ標準トシテ租稅其ノ他ノ公課ヲ課セズ
第七條 保險給付ヲ受クル權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第八條 保險者又ハ保險給付ヲ受クベキ者ハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ戶籍ニ關シ戶籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ對シ無償ニテ證明ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ規定ハ第一條第二項ノ保險給付ヲ爲ス場合ニ於テハ世帶員又ハ世帶員タリシ者ノ戶籍ニ關シ之ヲ準用ス
第九條 保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保險者ヲ使用スル事業主ヲシテ其ノ使用スル者ノ異動及報酬ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、文書ヲ提示セシメ其ノ他職員健康保險ノ施行ニ必要ナル事務ヲ行ハシムルコトヲ得
第十條 行政官廳ハ必要アリト認ムルトキハ被保險者ノ異動及報酬竝ニ保險給付ノ決定ニ關シ當該官吏ヲシテ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ勤務場所ニ就キ關係者ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ帳簿書類其ノ他ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
第十一條 主務大臣ハ本法ニ規定スル其ノ職權ノ一部ヲ命令ヲ以テ行政官廳ニ委任スルコトヲ得
第十二條 保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ヲ滯納スル者アルトキハ保險者ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スベシ
前項ノ規定ニ依リ督促ヲ爲シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手數料及延滯金ヲ徵收ス
第十三條 前條ノ規定ニ依ル督促ヲ受ケタル者其ノ指定ノ期限迄ニ保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ヲ納付セザルトキハ保險者ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分シ又ハ滯納者若ハ其ノ者ノ財產ノ在ル市町村ニ對シ之ガ處分ヲ請求スルコトヲ得但シ職員健康保險組合ガ保險者ナル場合ニ於テ國稅滯納處分ノ例ニ依リ處分スルコトヲ得ルハ市町村ニ對シ處分ヲ請求スルモ市町村ガ其ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ其ノ處分ニ著手セズ又ハ九十日以內ニ之ヲ結了セザル場合ニ限ル
前項但書ノ規定ニ依リ職員健康保險組合ガ國稅滯納處分ノ例ニ依リ處分ヲ爲ス場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
保險者ガ第一項ノ規定ニ依リ市町村ニ對シ處分ヲ請求シタルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テハ保險者ハ徵收金額ノ百分ノ四ニ相當スル金額ヲ當該市町村ニ交付スベシ
第十四條 保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徵收金ニ次ギ他ノ公課ニ先ツモノトス
第十五條 保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ニ關スル書類ノ送達ニ付テハ國稅徵收法第四條ノ七及第四條ノ八ノ規定ヲ準用ス
第十六條 本法ハ國、北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事業ニ使用セラルル者ニ之ヲ適用セズ
第十七條 本法中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノトス
第二章 被保險者
第十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル事業ノ事業所ニシテ市又ハ主務大臣ノ指定スル町村(以下指定町村ト稱ス)ニ在ルモノニ使用セラルル者ハ職員健康保險ノ被保險者トス
一 物ノ販賣ニ關スル事業
二 金融又ハ保險ニ關スル事業
三 物ノ保管又ハ賃貸ニ關スル事業
四 媒介周旋ニ關スル事業
五 集金、案內又ハ廣吿ニ關スル事業
六 前各號ニ揭グルモノノ外勅令ヲ以テ指定スル事業
前項第一號乃至第五號ニ揭グル事業ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ニ拘ラズ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ職員健康保險ノ被保險者トセズ
一 第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未滿使用スル事業所ニ使用セラルル者
二 健康保險ノ被保險者及健康保險法第十四條第一項ノ規定ニ依リ健康保險ノ被保險者ト爲ルコトヲ得ル者
三 一年ノ報酬千二百圓ヲ超ユル者
四 前各號ニ揭グル者ノ外勅令ヲ以テ指定スル者
第十九條 健康保險ノ被保險者タル職員ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ職員ヲ事業所每ニ包括シテ職員健康保險ノ被保險者ト爲スコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ト爲ルベキ者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第二十條 前條ノ認可アリタルトキハ其ノ事業所ニ使用セラルル職員ハ職員健康保險ノ被保險者トス
第十八條第三項第三號及第四號ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル事業所ノ事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ事業所ニ使用セラルル者ヲ包括シテ職員健康保險ノ被保險者ト爲スコトヲ得
一 第十八條第一項第一號乃至第六號ニ揭グル事業ノ事業所ニシテ市又ハ指定町村以外ノ地ニ在ルモノ
二 第十八條第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未滿使用スル事業所ニシテ市又ハ指定町村ニ在ルモノ
三 前二號ニ揭グルモノノ外勅令ヲ以テ指定スル事業ノ事業所
第十九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 前條ノ認可アリタルトキハ其ノ事業所ニ使用セラルル者ハ職員健康保險ノ被保險者トス
第十八條第三項第二號乃至第四號ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條 第十八條ニ規定スル事業所ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ事業所ニ付第二十一條ノ認可アリタルモノト看做ス
一 第十八條第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未滿使用スル事業所ト爲ルニ至リタルトキ
二 市又ハ指定町村以外ノ地ニ在ルニ至リタルトキ
三 第二十一條第一項第三號ノ規定ニ依リ指定スル事業ノ事業所ト爲ルニ至リタルトキ
第二十四條 第十八條、第二十條及第二十二條ノ規定ニ依ル被保險者ハ其ノ業務ニ使用セラルルニ至リタル日又ハ第十八條第三項第二號乃至第四號、第二十條第二項若ハ第二十二條第二項ノ規定ニ該當セザルニ至リタル日ヨリ其ノ資格ヲ取得ス
第二十五條 第十八條、第二十條及第二十二條ノ規定ニ依ル被保險者ハ死亡シタル日、其ノ業務ニ使用セラレザルニ至リタル日又ハ第十八條第三項第二號乃至第四號、第二十條第二項若ハ第二十二條第二項ノ規定ニ該當スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス但シ其ノ事實アリタル日ニ更ニ前條ノ規定ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十六條 第二十條又ハ第二十二條ノ規定ニ依ル被保險者ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ被保險者ノ全部ヲシテ其ノ資格ヲ喪失セシムルコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第一項ノ認可アリタルトキハ被保險者ハ認可アリタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十七條 第二十五條ノ規定ニ依リ被保險者ノ資格ヲ喪失シタル者ニシテ喪失ノ日前二月以上引續キ被保險者タリシモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ繼續シテ被保險者ト爲ルコトヲ得
第二十八條 前條ノ規定ニ依ル被保險者ハ前條ノ規定ニ依リ被保險者ト爲リタル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキ其ノ他勅令ヲ以テ定ムル事由ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十五條ノ規定ハ前條ノ規定ニ依ル被保險者ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三章 保險者
第二十九條 職員健康保險ノ保險者ハ政府及職員健康保險組合トス
第三十條 政府ハ職員健康保險組合ノ組合員ニ非ザル被保險者ノ保險ヲ管掌ス
第三十一條 職員健康保險組合ハ其ノ組合員タル被保險者ノ保險ヲ管掌ス
第三十二條 職員健康保險組合ハ事業主及其ノ事業所ニ使用セラルル被保險者ヲ以テ之ヲ組織ス
職員健康保險組合ハ法人トス
第三十三條 一又ハ二以上ノ事業所ニ付被保險者常時三百人以上ヲ使用スル事業主ハ職員健康保險組合ヲ設立スルコトヲ得
被保險者ヲ使用スル二以上ノ事業主ハ共同シテ職員健康保險組合ヲ設立スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ被保險者ノ員數ハ合算シテ常時三百人以上タルコトヲ要ス
第三十四條 職員健康保險組合ヲ設立セントスルトキハ組合員タル資格ヲ有スル被保險者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得規約ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
二以上ノ事業所ニ付職員健康保險組合ヲ設立セントスル場合ニ於テハ前項ノ同意ハ各事業所ニ付之ヲ得ルコトヲ要ス
第三十五條 前二條ノ規定ニ於テ被保險者トアルハ第十九條第一項又ハ第二十一條第一項ノ規定ニ依ル認可ノ申請ト同時ニ職員健康保險組合ノ設立認可ノ申請ヲ爲ス場合ニ在リテハ被保險者ト爲ルベキ者トス
第三十六條 主務大臣ハ一又ハ二以上ノ事業所ニ付第十八條ノ規定ニ依ル被保險者常時五百人以上ヲ使用スル事業主ニ對シ職員健康保險組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
第三十七條 前條ノ規定ニ依リ職員健康保險組合ノ設立ヲ命ゼラレタル事業主ハ規約ヲ作リ設立ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十八條 職員健康保險組合ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時ニ成立ス
第三十九條 職員健康保險組合成立シタルトキハ事業主及其ノ事業所ニ使用セラルル被保險者ハ總テ之ヲ組合員トス
第四十條 職員健康保險組合ノ規約ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第四十一條 主務大臣ハ職員健康保險組合ニ對シ其ノ事業及財產ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、其ノ狀況ヲ檢査シ、規約ノ變更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十二條 職員健康保險組合ノ役員ニ欠缺若ハ故障アルトキ又ハ組合ノ役員ガ保險給付其ノ他其ノ執行スベキ職務ヲ執行セザルトキハ主務大臣ハ官吏其ノ他ノ者ヲ指定シテ其ノ職務ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其ノ職務ノ執行ニ要スル費用ハ職員健康保險組合ノ負擔トス
第四十三條 主務大臣ハ職員健康保險組合ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、規約若ハ主務大臣ノ命令若ハ處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキ又ハ組合ノ事業若ハ財產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ解職シ又ハ組合ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
第四十四條 解散ニ因リテ消滅シタル職員健康保險組合ノ權利義務ハ政府之ヲ承繼ス
第四十五條 本法ニ規定スルモノノ外職員健康保險組合ノ管理、財產ノ保管及利用方法、分合、解散其ノ他職員健康保險組合ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六條 同時ニ二以上ノ事業所ニ使用セラルル被保險者ノ保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第四章 保險給付及保健施設
第四十七條 被保險者ガ其ノ疾病又ハ負傷ニ關シ療養ヲ受ケタルトキハ療養費ヲ支給ス
前項ノ療養費ヲ支給スベキ療養ノ範圍竝ニ療養費ノ額及支給方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
保險者ハ第一項ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ被保險者ノ疾病又ハ負傷ニ關シ療養費ノ支給ニ代ヘテ療養ノ給付ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ者ヨリ費用ノ一部ヲ徵收スルコトヲ得
第四十八條 療養費ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ發シタル疾病ニ關シ其ノ療養ヲ始メタル日ヨリ起算シ六月ヲ經過シタル後ノ療養ニ付テハ之ヲ支給セズ
主務大臣ノ指定スル疾病ニ關シテハ保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ期間ヲ超エ尙六月以內ノ療養ニ付繼續シテ療養費ヲ支給スルコトヲ得但シ其ノ療養ヲ始メタル日前勅令ノ定ムル期間引續キ被保險者タリシ者ニ限ル
第四十九條 被保險者ガ療養ノ爲引續キ勞務ニ服スルコト能ハザルトキハ勞務ニ服スルコト能ハザルニ至リタル日ヨリ起算シ三月ヲ經過シタル日ヨリ其ノ後ニ於ケル勞務ニ服スルコト能ハザル期間傷病手當金トシテ一日ニ付報酬日額ノ百分ノ五十ニ相當スル金額ヲ支給ス但シ日給ヲ受クル被保險者ニ付テハ勞務ニ服スルコト能ハザルニ至リタル日ヨリ起算シ十日ヲ經過シタル日ヨリ之ヲ支給ス
前項ノ傷病手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
保險者ハ第一項ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手當金ノ支給ノ待期ヲ短縮シ又ハ廢スルコトヲ得
第五十條 傷病手當金ノ支給期間ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ發シタル疾病ニ關シテハ三月ヲ以テ限度トス但シ日給ヲ受クル被保險者ニ付テハ六月ヲ以テ限度トス
第四十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
傷病手當金ハ其ノ支給期間ヲ經過セザルトキト雖モ療養費ノ支給ヲ爲シ得ル期間ヲ經過スルニ至リタルトキハ之ヲ支給セズ
第五十一條 被保險者ガ死亡シタルトキハ被保險者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノニ對シ埋葬料トシテ報酬月額ノ一月分ニ相當スル金額ヲ支給ス但シ其ノ金額ガ三十圓ニ滿タザルトキハ之ヲ三十圓トス
被保險者ガ死亡シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クベキ者ナキトキハ埋葬ヲ行ヒタル者ニ對シ前項ノ金額ノ範圍內ニ於テ其ノ埋葬ニ要シタル費用ニ相當スル金額ヲ支給ス
第五十二條 被保險者ガ分娩シタルトキハ分娩費トシテ二十圓ヲ、出產手當金トシテ分娩ノ前後勅令ヲ以テ定ムル期間一日ニ付報酬日額ノ百分ノ五十ニ相當スル金額ヲ支給ス
第五十三條 保險者ハ被保險者ヲ產院ニ收容シ又ハ助產ノ手當ヲ爲スコトヲ得
產院ニ收容シ又ハ助產ノ手當ヲ爲シタル被保險者ニ對シテ支給スベキ分娩費及出產手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
第五十四條 分娩ニ關スル保險給付ニ付テハ勅令ヲ以テ分娩前一定ノ期間被保險者タリシ者ニ非ザレバ之ヲ爲サザルコトヲ定ムルコトヲ得
第五十五條 出產手當金ノ支給ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ期間傷病手當金ハ之ヲ支給セズ
第五十六條 被保險者ノ資格ヲ喪失シタル際疾病、負傷又ハ分娩ニ關シ保險給付ヲ受クル被保險者ハ被保險者トシテ保險給付ヲ受クルコトヲ得ベカリシ期間繼續シテ同一保險者ヨリ其ノ給付ヲ受クルコトヲ得但シ被保險者ノ資格喪失ノ日前勅令ノ定ムル期間引續キ被保險者タリシ場合ニ非ザレバ之ヲ受クルコトヲ得ザルモノト爲スコトヲ得
第五十七條 前條ノ規定ニ依リ保險給付ヲ受クル者ガ死亡シタルトキ、前條ノ規定ニ依リ保險給付ヲ受ケタル者ガ其ノ給付ヲ受ケザルニ至リタル日後三月以內ニ死亡シタルトキ又ハ其ノ他ノ被保險者タリシ者ガ被保險者ノ資格ヲ喪失シタル日後三月以內ニ死亡シタルトキハ被保險者タリシ者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノハ最後ノ保險者ヨリ埋葬料ノ支給ヲ受クルコトヲ得
第五十一條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クル者ナキ場合及前項ノ埋葬料ノ金額ニ之ヲ準用ス
第五十八條 被保險者タリシ者ガ被保險者ノ資格ヲ喪失シタル日後勅令ヲ以テ定ムル期間內ニ分娩シタルトキハ分娩ニ關シ被保險者トシテ受クルコトヲ得ベカリシ保險給付ヲ最後ノ保險者ヨリ受クルコトヲ得
第五十九條 前三條ノ規定ニ拘ラズ被保險者タリシ者ガ健康保險又ハ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ保險給付ヲ爲サズ
第六十條 保險者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本章ニ規定スル保險給付ニ併セテ其ノ他ノ保險給付ヲ爲スコトヲ得
第六十一條 疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分娩シタル場合ニ於テ繼續シテ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコトヲ得ベキ者ニ對シテハ之ヲ受クルコトヲ得ベキ期間勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手當金又ハ出產手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セズ
第六十二條 前條ニ揭グル者ガ其ノ受クルコトヲ得ベカリシ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコト能ハザリシトキハ保險者ハ之ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手當金又ハ出產手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給ス
前項ノ規定ニ依リ保險者ノ支給シタル金額ハ事業主ヨリ之ヲ徵收ス
第六十三條 被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ自己ノ故意ノ犯罪行爲ニ因リ又ハ故意ニ事故ヲ生ゼシメタルトキハ保險給付ヲ爲サズ
第六十四條 被保險者ガ鬪爭、泥醉若ハ著シキ不行跡ニ因リ又ハ故意ニ危害豫防ニ關スル業務上ノ監督者ノ指揮ニ從ハザルニ因リ事故ヲ生ゼシメタルトキハ傷病手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコトヲ得
第六十五條 被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ疾病、負傷又ハ分娩ニ關シ其ノ期間ニ係ル保險給付ハ之ヲ爲サズ
一 陸海軍ニ徵集又ハ召集セラレタルトキ
二 本法施行區域外ニ在ルトキ
三 矯正院其ノ他之ニ準ズベキモノニ入院セシメラレタルトキ
四 監獄、留置場又ハ勞役場ニ拘禁又ハ留置セラレタルトキ
他ノ法令ニ依リ國又ハ公共團體ノ負擔ニ於テ診療所ニ收容セラレタル者ニ對シテハ療養費ヲ支給セズ
第四十九條第二項及第五十三條第二項ノ規定ハ前項ニ揭グル者ニ之ヲ準用ス
保險者ハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ第一項各號ノ一ニ該當スル場合ト雖モ第一條第二項ノ保險給付ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
第六十六條 保險者ハ正當ノ理由ナクシテ療養ニ關スル指揮ニ從ハザル者ニ對シ之ニ支給スベキ傷病手當金ノ一部ヲ支給セザルコトヲ得
第六十七條 保險者ハ詐欺其ノ他不正ノ行爲ニ依リ保險給付ヲ受ケ又ハ受ケントシタル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定メ保險給付ノ全部又ハ一部ヲ爲サザルコトヲ得
第六十八條 保險者ハ必要アリト認ムルトキハ保險給付ヲ受クル者ノ診斷ヲ行フコトヲ得
保險者ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ診斷ヲ受ケザル者ニ對シ保險給付ノ全部又ハ一部ヲ爲サザルコトヲ得
第六十九條 保險者ハ事故ガ第三者ノ行爲ニ因リテ生ジタル場合ニ於テ保險給付ヲ爲シタルトキハ其ノ給付ノ價額ノ限度ニ於テ被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ第三者ニ對シテ有スル損害賠償請求ノ權利ヲ取得ス
第七十條 保險者ハ被保險者ノ健康ヲ保持增進スル爲左ノ施設ヲ爲スコトヲ得
一 疾病又ハ負傷ノ豫防ニ關スル施設
二 健康診斷ニ關スル施設
三 保養ニ關スル施設
四 其ノ他健康ノ保持增進ニ關スル施設
第七十一條 保險者ハ事業ニ支障ナキ場合ニ限リ被保險者ニ非ザル者ヲシテ保險者ノ施設ヲ利用セシムルコトヲ得
保險者ハ其ノ施設ヲ利用スル者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ利用料ヲ請求スルコトヲ得
第七十二條 第六十三條、第六十五條第一項及第二項、第六十八條竝ニ第六十九條ノ規定ハ世帶員ニ之ヲ準用ス
第五十六條ノ規定ハ第一條第二項ノ保險給付ニ之ヲ準用ス
第五章 費用ノ負擔
第七十三條 國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ每年度豫算ノ範圍內ニ於テ職員健康保險事業ニ要スル費用ノ一部ヲ負擔ス
第七十四條 保險者ハ職員健康保險事業ニ要スル費用ニ充ツル爲保險料ヲ徵收ス
保險料ノ算定ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十五條 被保險者及被保險者ヲ使用スル事業主ハ各保險料額ノ二分ノ一ヲ負擔ス但シ第二十七條ノ規定ニ依ル被保險者ハ其ノ全額ヲ負擔ス
第七十六條 少額ノ報酬ヲ受クル被保險者ニ關スル保險料ニ付テハ勅令ヲ以テ事業主ノ負擔スベキ割合ヲ增加スルコトヲ得
第七十七條 職員健康保險組合ハ第七十五條ノ規定又ハ前條ニ基キテ發スル勅令ノ規定ニ拘ラズ其ノ規約ヲ以テ事業主ノ負擔スベキ保險料額ノ負擔ノ割合ヲ增加スルコトヲ得
第七十八條 被保險者ガ第六十五條第一項各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ期間保險料ヲ徵收セズ
第七十九條 事業主ハ其ノ使用スル被保險者ノ負擔スベキ保險料ヲ納付スル義務ヲ負フ但シ第二十七條ノ規定ニ依ル被保險者ノ負擔スル保險料ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八十條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依リ納付スベキ保險料ヲ被保險者ニ支拂フベキ報酬ヨリ控除スルコトヲ得
第六章 審査ノ請求、訴願及訴訟
第八十一條 保險給付ニ關スル決定ニ不服アル者ハ第一次職員健康保險審査會ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ第二次職員健康保險審査會ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ通常裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第八十二條 保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ノ賦課若ハ徵收ノ處分又ハ第十三條ノ規定ニ依ル處分ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル訴願ニ關シテハ職員健康保險組合ヲ訴願法ノ規定ニ依ル行政廳ト看做ス
第八十三條 保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ノ賦課又ハ徵收ノ處分ニ關シ訴願ノ提起アリタルトキハ主務大臣ハ第二次職員健康保險審査會ノ審査ヲ經テ裁決ヲ爲スベシ
第八十四條 本法ニ規定スルモノノ外職員健康保險審査會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十五條 審査ノ請求、訴ノ提起又ハ訴願若ハ行政訴訟ノ提起ハ處分ノ通知又ハ決定書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ之ヲ爲スベシ此ノ場合ニ於テ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八條第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴訟法第百五十八條第二項及第百五十九條ノ規定ヲ準用ス
第七章 罰則
第八十六條 正當ノ理由ナクシテ第十條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十七條 第九條ノ規定ニ依ル保險者ノ請求アリタル場合ニ於テ正當ノ理由ナクシテ報吿ヲ爲サズ、虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ文書ノ提示ヲ爲サザル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十八條 事業主ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第八十九條 第八十七條ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十條 職員健康保險組合ノ設立ヲ命ゼラレタル事業主ガ正當ノ理由ナクシテ主務大臣ノ指定スル期日迄ニ設立ノ認可ヲ申請セザルトキハ其ノ手續ヲ遲延シタル期間其ノ負擔スベキ保險料額ノ二倍ニ相當スル金額以下ノ過料ニ處ス
第九十一條 職員健康保險組合ガ第四十一條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ處分ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキハ其ノ役員ヲ百圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ保險給付、保健施設及費用ノ負擔ニ關スル規定竝ニ其ノ他ノ規定ニ付各別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル職員健康保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年四月五日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
内務大臣 侯爵 木戸幸一
厚生大臣 広瀬久忠
大蔵大臣 石渡荘太郎
法律第七十二号
職員健康保険法
第一章 総則
第一条 職員健康保険ニ於テハ被保険者ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ関シ保険給付ヲ為スモノトス
保険者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ被保険者ト同一ノ世帯ニ属シ被保険者ニ依リ生計ヲ維持スル者(以下世帯員ト称ス)ノ疾病又ハ負傷ニ関シ保険給付ヲ為スコトヲ得
第二条 本法ニ於テ報酬ト称スルハ事業ニ使用セラルル者ガ労務ノ対償トシテ受クル俸給、給料又ハ賃金及之ニ準ズベキモノヲ謂フ
俸給、給料又ハ賃金ニ準ズベキモノノ範囲及評価ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 報酬ノ額ニ基キ保険料又ハ保険給付ノ額ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬ニ依リ之ヲ算定ス
標準報酬ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ヲ徴収シ又ハ其ノ還付ヲ受クル権利及保険給付ヲ受クル権利ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
前項ノ時効ノ中断、停止其ノ他ノ事項ニ関シテハ民法ノ時効ニ関スル規定ヲ準用ス
命令ノ定ムル所ニ依リ保険者ノ為ス保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ノ徴収ノ告知ハ民法第百五十三条ノ規定ニ拘ラズ時効中断ノ効力ヲ有ス
第五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定スル期間ノ計算ニ付テハ民法ノ期間ノ計算ニ関スル規定ヲ準用ス
第六条 職員健康保険ニ関スル書類ニハ印紙税ヲ課セズ
保険給付トシテ支給ヲ受ケタル金品ヲ標準トシテ租税其ノ他ノ公課ヲ課セズ
第七条 保険給付ヲ受クル権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第八条 保険者又ハ保険給付ヲ受クベキ者ハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ戸籍ニ関シ戸籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ対シ無償ニテ証明ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ規定ハ第一条第二項ノ保険給付ヲ為ス場合ニ於テハ世帯員又ハ世帯員タリシ者ノ戸籍ニ関シ之ヲ準用ス
第九条 保険者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保険者ヲ使用スル事業主ヲシテ其ノ使用スル者ノ異動及報酬ニ関シ報告ヲ為サシメ、文書ヲ提示セシメ其ノ他職員健康保険ノ施行ニ必要ナル事務ヲ行ハシムルコトヲ得
第十条 行政官庁ハ必要アリト認ムルトキハ被保険者ノ異動及報酬並ニ保険給付ノ決定ニ関シ当該官吏ヲシテ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ勤務場所ニ就キ関係者ニ対シ質問ヲ為シ又ハ帳簿書類其ノ他ノ検査ヲ為サシムルコトヲ得
第十一条 主務大臣ハ本法ニ規定スル其ノ職権ノ一部ヲ命令ヲ以テ行政官庁ニ委任スルコトヲ得
第十二条 保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ヲ滞納スル者アルトキハ保険者ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スベシ
前項ノ規定ニ依リ督促ヲ為シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手数料及延滞金ヲ徴収ス
第十三条 前条ノ規定ニ依ル督促ヲ受ケタル者其ノ指定ノ期限迄ニ保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ヲ納付セザルトキハ保険者ハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ処分シ又ハ滞納者若ハ其ノ者ノ財産ノ在ル市町村ニ対シ之ガ処分ヲ請求スルコトヲ得但シ職員健康保険組合ガ保険者ナル場合ニ於テ国税滞納処分ノ例ニ依リ処分スルコトヲ得ルハ市町村ニ対シ処分ヲ請求スルモ市町村ガ其ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ其ノ処分ニ著手セズ又ハ九十日以内ニ之ヲ結了セザル場合ニ限ル
前項但書ノ規定ニ依リ職員健康保険組合ガ国税滞納処分ノ例ニ依リ処分ヲ為ス場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
保険者ガ第一項ノ規定ニ依リ市町村ニ対シ処分ヲ請求シタルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス此ノ場合ニ於テハ保険者ハ徴収金額ノ百分ノ四ニ相当スル金額ヲ当該市町村ニ交付スベシ
第十四条 保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徴収金ニ次ギ他ノ公課ニ先ツモノトス
第十五条 保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ニ関スル書類ノ送達ニ付テハ国税徴収法第四条ノ七及第四条ノ八ノ規定ヲ準用ス
第十六条 本法ハ国、北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事業ニ使用セラルル者ニ之ヲ適用セズ
第十七条 本法中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノトス
第二章 被保険者
第十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル事業ノ事業所ニシテ市又ハ主務大臣ノ指定スル町村(以下指定町村ト称ス)ニ在ルモノニ使用セラルル者ハ職員健康保険ノ被保険者トス
一 物ノ販売ニ関スル事業
二 金融又ハ保険ニ関スル事業
三 物ノ保管又ハ賃貸ニ関スル事業
四 媒介周旋ニ関スル事業
五 集金、案内又ハ広告ニ関スル事業
六 前各号ニ掲グルモノノ外勅令ヲ以テ指定スル事業
前項第一号乃至第五号ニ掲グル事業ノ範囲ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ニ拘ラズ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ職員健康保険ノ被保険者トセズ
一 第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未満使用スル事業所ニ使用セラルル者
二 健康保険ノ被保険者及健康保険法第十四条第一項ノ規定ニ依リ健康保険ノ被保険者ト為ルコトヲ得ル者
三 一年ノ報酬千二百円ヲ超ユル者
四 前各号ニ掲グル者ノ外勅令ヲ以テ指定スル者
第十九条 健康保険ノ被保険者タル職員ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ職員ヲ事業所毎ニ包括シテ職員健康保険ノ被保険者ト為スコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保険者ト為ルベキ者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第二十条 前条ノ認可アリタルトキハ其ノ事業所ニ使用セラルル職員ハ職員健康保険ノ被保険者トス
第十八条第三項第三号及第四号ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル事業所ノ事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ事業所ニ使用セラルル者ヲ包括シテ職員健康保険ノ被保険者ト為スコトヲ得
一 第十八条第一項第一号乃至第六号ニ掲グル事業ノ事業所ニシテ市又ハ指定町村以外ノ地ニ在ルモノ
二 第十八条第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未満使用スル事業所ニシテ市又ハ指定町村ニ在ルモノ
三 前二号ニ掲グルモノノ外勅令ヲ以テ指定スル事業ノ事業所
第十九条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二条 前条ノ認可アリタルトキハ其ノ事業所ニ使用セラルル者ハ職員健康保険ノ被保険者トス
第十八条第三項第二号乃至第四号ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条 第十八条ニ規定スル事業所ガ左ノ各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ事業所ニ付第二十一条ノ認可アリタルモノト看做ス
一 第十八条第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未満使用スル事業所ト為ルニ至リタルトキ
二 市又ハ指定町村以外ノ地ニ在ルニ至リタルトキ
三 第二十一条第一項第三号ノ規定ニ依リ指定スル事業ノ事業所ト為ルニ至リタルトキ
第二十四条 第十八条、第二十条及第二十二条ノ規定ニ依ル被保険者ハ其ノ業務ニ使用セラルルニ至リタル日又ハ第十八条第三項第二号乃至第四号、第二十条第二項若ハ第二十二条第二項ノ規定ニ該当セザルニ至リタル日ヨリ其ノ資格ヲ取得ス
第二十五条 第十八条、第二十条及第二十二条ノ規定ニ依ル被保険者ハ死亡シタル日、其ノ業務ニ使用セラレザルニ至リタル日又ハ第十八条第三項第二号乃至第四号、第二十条第二項若ハ第二十二条第二項ノ規定ニ該当スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス但シ其ノ事実アリタル日ニ更ニ前条ノ規定ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十六条 第二十条又ハ第二十二条ノ規定ニ依ル被保険者ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ被保険者ノ全部ヲシテ其ノ資格ヲ喪失セシムルコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保険者ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第一項ノ認可アリタルトキハ被保険者ハ認可アリタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十七条 第二十五条ノ規定ニ依リ被保険者ノ資格ヲ喪失シタル者ニシテ喪失ノ日前二月以上引続キ被保険者タリシモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ継続シテ被保険者ト為ルコトヲ得
第二十八条 前条ノ規定ニ依ル被保険者ハ前条ノ規定ニ依リ被保険者ト為リタル日ヨリ六月ヲ経過シタルトキ其ノ他勅令ヲ以テ定ムル事由ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十五条ノ規定ハ前条ノ規定ニ依ル被保険者ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三章 保険者
第二十九条 職員健康保険ノ保険者ハ政府及職員健康保険組合トス
第三十条 政府ハ職員健康保険組合ノ組合員ニ非ザル被保険者ノ保険ヲ管掌ス
第三十一条 職員健康保険組合ハ其ノ組合員タル被保険者ノ保険ヲ管掌ス
第三十二条 職員健康保険組合ハ事業主及其ノ事業所ニ使用セラルル被保険者ヲ以テ之ヲ組織ス
職員健康保険組合ハ法人トス
第三十三条 一又ハ二以上ノ事業所ニ付被保険者常時三百人以上ヲ使用スル事業主ハ職員健康保険組合ヲ設立スルコトヲ得
被保険者ヲ使用スル二以上ノ事業主ハ共同シテ職員健康保険組合ヲ設立スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ被保険者ノ員数ハ合算シテ常時三百人以上タルコトヲ要ス
第三十四条 職員健康保険組合ヲ設立セントスルトキハ組合員タル資格ヲ有スル被保険者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得規約ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
二以上ノ事業所ニ付職員健康保険組合ヲ設立セントスル場合ニ於テハ前項ノ同意ハ各事業所ニ付之ヲ得ルコトヲ要ス
第三十五条 前二条ノ規定ニ於テ被保険者トアルハ第十九条第一項又ハ第二十一条第一項ノ規定ニ依ル認可ノ申請ト同時ニ職員健康保険組合ノ設立認可ノ申請ヲ為ス場合ニ在リテハ被保険者ト為ルベキ者トス
第三十六条 主務大臣ハ一又ハ二以上ノ事業所ニ付第十八条ノ規定ニ依ル被保険者常時五百人以上ヲ使用スル事業主ニ対シ職員健康保険組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
第三十七条 前条ノ規定ニ依リ職員健康保険組合ノ設立ヲ命ゼラレタル事業主ハ規約ヲ作リ設立ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十八条 職員健康保険組合ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時ニ成立ス
第三十九条 職員健康保険組合成立シタルトキハ事業主及其ノ事業所ニ使用セラルル被保険者ハ総テ之ヲ組合員トス
第四十条 職員健康保険組合ノ規約ノ変更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第四十一条 主務大臣ハ職員健康保険組合ニ対シ其ノ事業及財産ニ関シ報告ヲ為サシメ、其ノ状況ヲ検査シ、規約ノ変更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第四十二条 職員健康保険組合ノ役員ニ欠欠若ハ故障アルトキ又ハ組合ノ役員ガ保険給付其ノ他其ノ執行スベキ職務ヲ執行セザルトキハ主務大臣ハ官吏其ノ他ノ者ヲ指定シテ其ノ職務ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其ノ職務ノ執行ニ要スル費用ハ職員健康保険組合ノ負担トス
第四十三条 主務大臣ハ職員健康保険組合ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、規約若ハ主務大臣ノ命令若ハ処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキ又ハ組合ノ事業若ハ財産ノ状況ニ依リ其ノ事業ノ継続ヲ困難ナリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ解職シ又ハ組合ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
第四十四条 解散ニ因リテ消滅シタル職員健康保険組合ノ権利義務ハ政府之ヲ承継ス
第四十五条 本法ニ規定スルモノノ外職員健康保険組合ノ管理、財産ノ保管及利用方法、分合、解散其ノ他職員健康保険組合ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六条 同時ニ二以上ノ事業所ニ使用セラルル被保険者ノ保険者ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第四章 保険給付及保健施設
第四十七条 被保険者ガ其ノ疾病又ハ負傷ニ関シ療養ヲ受ケタルトキハ療養費ヲ支給ス
前項ノ療養費ヲ支給スベキ療養ノ範囲並ニ療養費ノ額及支給方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
保険者ハ第一項ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ被保険者ノ疾病又ハ負傷ニ関シ療養費ノ支給ニ代ヘテ療養ノ給付ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ者ヨリ費用ノ一部ヲ徴収スルコトヲ得
第四十八条 療養費ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シ其ノ療養ヲ始メタル日ヨリ起算シ六月ヲ経過シタル後ノ療養ニ付テハ之ヲ支給セズ
主務大臣ノ指定スル疾病ニ関シテハ保険者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ期間ヲ超エ尚六月以内ノ療養ニ付継続シテ療養費ヲ支給スルコトヲ得但シ其ノ療養ヲ始メタル日前勅令ノ定ムル期間引続キ被保険者タリシ者ニ限ル
第四十九条 被保険者ガ療養ノ為引続キ労務ニ服スルコト能ハザルトキハ労務ニ服スルコト能ハザルニ至リタル日ヨリ起算シ三月ヲ経過シタル日ヨリ其ノ後ニ於ケル労務ニ服スルコト能ハザル期間傷病手当金トシテ一日ニ付報酬日額ノ百分ノ五十ニ相当スル金額ヲ支給ス但シ日給ヲ受クル被保険者ニ付テハ労務ニ服スルコト能ハザルニ至リタル日ヨリ起算シ十日ヲ経過シタル日ヨリ之ヲ支給ス
前項ノ傷病手当金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
保険者ハ第一項ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手当金ノ支給ノ待期ヲ短縮シ又ハ廃スルコトヲ得
第五十条 傷病手当金ノ支給期間ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シテハ三月ヲ以テ限度トス但シ日給ヲ受クル被保険者ニ付テハ六月ヲ以テ限度トス
第四十八条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
傷病手当金ハ其ノ支給期間ヲ経過セザルトキト雖モ療養費ノ支給ヲ為シ得ル期間ヲ経過スルニ至リタルトキハ之ヲ支給セズ
第五十一条 被保険者ガ死亡シタルトキハ被保険者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノニ対シ埋葬料トシテ報酬月額ノ一月分ニ相当スル金額ヲ支給ス但シ其ノ金額ガ三十円ニ満タザルトキハ之ヲ三十円トス
被保険者ガ死亡シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クベキ者ナキトキハ埋葬ヲ行ヒタル者ニ対シ前項ノ金額ノ範囲内ニ於テ其ノ埋葬ニ要シタル費用ニ相当スル金額ヲ支給ス
第五十二条 被保険者ガ分娩シタルトキハ分娩費トシテ二十円ヲ、出産手当金トシテ分娩ノ前後勅令ヲ以テ定ムル期間一日ニ付報酬日額ノ百分ノ五十ニ相当スル金額ヲ支給ス
第五十三条 保険者ハ被保険者ヲ産院ニ収容シ又ハ助産ノ手当ヲ為スコトヲ得
産院ニ収容シ又ハ助産ノ手当ヲ為シタル被保険者ニ対シテ支給スベキ分娩費及出産手当金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
第五十四条 分娩ニ関スル保険給付ニ付テハ勅令ヲ以テ分娩前一定ノ期間被保険者タリシ者ニ非ザレバ之ヲ為サザルコトヲ定ムルコトヲ得
第五十五条 出産手当金ノ支給ヲ為ス場合ニ於テハ其ノ期間傷病手当金ハ之ヲ支給セズ
第五十六条 被保険者ノ資格ヲ喪失シタル際疾病、負傷又ハ分娩ニ関シ保険給付ヲ受クル被保険者ハ被保険者トシテ保険給付ヲ受クルコトヲ得ベカリシ期間継続シテ同一保険者ヨリ其ノ給付ヲ受クルコトヲ得但シ被保険者ノ資格喪失ノ日前勅令ノ定ムル期間引続キ被保険者タリシ場合ニ非ザレバ之ヲ受クルコトヲ得ザルモノト為スコトヲ得
第五十七条 前条ノ規定ニ依リ保険給付ヲ受クル者ガ死亡シタルトキ、前条ノ規定ニ依リ保険給付ヲ受ケタル者ガ其ノ給付ヲ受ケザルニ至リタル日後三月以内ニ死亡シタルトキ又ハ其ノ他ノ被保険者タリシ者ガ被保険者ノ資格ヲ喪失シタル日後三月以内ニ死亡シタルトキハ被保険者タリシ者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノハ最後ノ保険者ヨリ埋葬料ノ支給ヲ受クルコトヲ得
第五十一条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クル者ナキ場合及前項ノ埋葬料ノ金額ニ之ヲ準用ス
第五十八条 被保険者タリシ者ガ被保険者ノ資格ヲ喪失シタル日後勅令ヲ以テ定ムル期間内ニ分娩シタルトキハ分娩ニ関シ被保険者トシテ受クルコトヲ得ベカリシ保険給付ヲ最後ノ保険者ヨリ受クルコトヲ得
第五十九条 前三条ノ規定ニ拘ラズ被保険者タリシ者ガ健康保険又ハ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ保険給付ヲ為サズ
第六十条 保険者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本章ニ規定スル保険給付ニ併セテ其ノ他ノ保険給付ヲ為スコトヲ得
第六十一条 疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分娩シタル場合ニ於テ継続シテ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコトヲ得ベキ者ニ対シテハ之ヲ受クルコトヲ得ベキ期間勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手当金又ハ出産手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給セズ
第六十二条 前条ニ掲グル者ガ其ノ受クルコトヲ得ベカリシ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコト能ハザリシトキハ保険者ハ之ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手当金又ハ出産手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給ス
前項ノ規定ニ依リ保険者ノ支給シタル金額ハ事業主ヨリ之ヲ徴収ス
第六十三条 被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ自己ノ故意ノ犯罪行為ニ因リ又ハ故意ニ事故ヲ生ゼシメタルトキハ保険給付ヲ為サズ
第六十四条 被保険者ガ闘争、泥酔若ハ著シキ不行跡ニ因リ又ハ故意ニ危害予防ニ関スル業務上ノ監督者ノ指揮ニ従ハザルニ因リ事故ヲ生ゼシメタルトキハ傷病手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコトヲ得
第六十五条 被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ疾病、負傷又ハ分娩ニ関シ其ノ期間ニ係ル保険給付ハ之ヲ為サズ
一 陸海軍ニ徴集又ハ召集セラレタルトキ
二 本法施行区域外ニ在ルトキ
三 矯正院其ノ他之ニ準ズベキモノニ入院セシメラレタルトキ
四 監獄、留置場又ハ労役場ニ拘禁又ハ留置セラレタルトキ
他ノ法令ニ依リ国又ハ公共団体ノ負担ニ於テ診療所ニ収容セラレタル者ニ対シテハ療養費ヲ支給セズ
第四十九条第二項及第五十三条第二項ノ規定ハ前項ニ掲グル者ニ之ヲ準用ス
保険者ハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ第一項各号ノ一ニ該当スル場合ト雖モ第一条第二項ノ保険給付ヲ為スコトヲ妨ゲズ
第六十六条 保険者ハ正当ノ理由ナクシテ療養ニ関スル指揮ニ従ハザル者ニ対シ之ニ支給スベキ傷病手当金ノ一部ヲ支給セザルコトヲ得
第六十七条 保険者ハ詐欺其ノ他不正ノ行為ニ依リ保険給付ヲ受ケ又ハ受ケントシタル者ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定メ保険給付ノ全部又ハ一部ヲ為サザルコトヲ得
第六十八条 保険者ハ必要アリト認ムルトキハ保険給付ヲ受クル者ノ診断ヲ行フコトヲ得
保険者ハ正当ノ理由ナクシテ前項ノ診断ヲ受ケザル者ニ対シ保険給付ノ全部又ハ一部ヲ為サザルコトヲ得
第六十九条 保険者ハ事故ガ第三者ノ行為ニ因リテ生ジタル場合ニ於テ保険給付ヲ為シタルトキハ其ノ給付ノ価額ノ限度ニ於テ被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ第三者ニ対シテ有スル損害賠償請求ノ権利ヲ取得ス
第七十条 保険者ハ被保険者ノ健康ヲ保持増進スル為左ノ施設ヲ為スコトヲ得
一 疾病又ハ負傷ノ予防ニ関スル施設
二 健康診断ニ関スル施設
三 保養ニ関スル施設
四 其ノ他健康ノ保持増進ニ関スル施設
第七十一条 保険者ハ事業ニ支障ナキ場合ニ限リ被保険者ニ非ザル者ヲシテ保険者ノ施設ヲ利用セシムルコトヲ得
保険者ハ其ノ施設ヲ利用スル者ニ対シ命令ノ定ムル所ニ依リ利用料ヲ請求スルコトヲ得
第七十二条 第六十三条、第六十五条第一項及第二項、第六十八条並ニ第六十九条ノ規定ハ世帯員ニ之ヲ準用ス
第五十六条ノ規定ハ第一条第二項ノ保険給付ニ之ヲ準用ス
第五章 費用ノ負担
第七十三条 国庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年度予算ノ範囲内ニ於テ職員健康保険事業ニ要スル費用ノ一部ヲ負担ス
第七十四条 保険者ハ職員健康保険事業ニ要スル費用ニ充ツル為保険料ヲ徴収ス
保険料ノ算定ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十五条 被保険者及被保険者ヲ使用スル事業主ハ各保険料額ノ二分ノ一ヲ負担ス但シ第二十七条ノ規定ニ依ル被保険者ハ其ノ全額ヲ負担ス
第七十六条 少額ノ報酬ヲ受クル被保険者ニ関スル保険料ニ付テハ勅令ヲ以テ事業主ノ負担スベキ割合ヲ増加スルコトヲ得
第七十七条 職員健康保険組合ハ第七十五条ノ規定又ハ前条ニ基キテ発スル勅令ノ規定ニ拘ラズ其ノ規約ヲ以テ事業主ノ負担スベキ保険料額ノ負担ノ割合ヲ増加スルコトヲ得
第七十八条 被保険者ガ第六十五条第一項各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ期間保険料ヲ徴収セズ
第七十九条 事業主ハ其ノ使用スル被保険者ノ負担スベキ保険料ヲ納付スル義務ヲ負フ但シ第二十七条ノ規定ニ依ル被保険者ノ負担スル保険料ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八十条 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前条ノ規定ニ依リ納付スベキ保険料ヲ被保険者ニ支払フベキ報酬ヨリ控除スルコトヲ得
第六章 審査ノ請求、訴願及訴訟
第八十一条 保険給付ニ関スル決定ニ不服アル者ハ第一次職員健康保険審査会ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ第二次職員健康保険審査会ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ通常裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ審査ノ請求ハ時効ノ中断ニ関シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第八十二条 保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ノ賦課若ハ徴収ノ処分又ハ第十三条ノ規定ニ依ル処分ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル訴願ニ関シテハ職員健康保険組合ヲ訴願法ノ規定ニ依ル行政庁ト看做ス
第八十三条 保険料其ノ他本法ニ依ル徴収金ノ賦課又ハ徴収ノ処分ニ関シ訴願ノ提起アリタルトキハ主務大臣ハ第二次職員健康保険審査会ノ審査ヲ経テ裁決ヲ為スベシ
第八十四条 本法ニ規定スルモノノ外職員健康保険審査会ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十五条 審査ノ請求、訴ノ提起又ハ訴願若ハ行政訴訟ノ提起ハ処分ノ通知又ハ決定書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ之ヲ為スベシ此ノ場合ニ於テ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八条第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴訟法第百五十八条第二項及第百五十九条ノ規定ヲ準用ス
第七章 罰則
第八十六条 正当ノ理由ナクシテ第十条ノ規定ニ依ル当該官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ答弁ヲ為シ又ハ其ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第八十七条 第九条ノ規定ニ依ル保険者ノ請求アリタル場合ニ於テ正当ノ理由ナクシテ報告ヲ為サズ、虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ文書ノ提示ヲ為サザル者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第八十八条 事業主ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第八十九条 第八十七条ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十条 職員健康保険組合ノ設立ヲ命ゼラレタル事業主ガ正当ノ理由ナクシテ主務大臣ノ指定スル期日迄ニ設立ノ認可ヲ申請セザルトキハ其ノ手続ヲ遅延シタル期間其ノ負担スベキ保険料額ノ二倍ニ相当スル金額以下ノ過料ニ処ス
第九十一条 職員健康保険組合ガ第四十一条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ処分ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキハ其ノ役員ヲ百円以下ノ過料ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ保険給付、保健施設及費用ノ負担ニ関スル規定並ニ其ノ他ノ規定ニ付各別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム