転免役賜金令
法令番号: 勅令第四百九十三號
公布年月日: 昭和13年7月9日
法令の形式: 勅令
朕轉免役賜金令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年七月八日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
海軍大臣 米內光政
大藏大臣 池田成彬
陸軍大臣 板垣征四郞
勅令第四百九十三號
轉免役賜金令
第一條 兵在營期間(應召期間ヲ含ム以下之ニ同ジ)中故意又ハ自己ノ重大ナル過失ニ因ルニ非ズシテ服務ニ關聯シ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之ガ爲在營期間中又ハ在營期間ヨリ引續キ陸海軍ニ於テ官費治療中一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレ又ハ死亡シタルトキハ本令ニ依リ別表ノ轉免役賜金ヲ給ス但シ一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレ引續キ陸海軍ニ於テ官費治療ヲ受クル者ニ在リテハ之ヲ受ケザルニ至リタルトキ又ハ死亡シタルトキ本令ノ賜金ヲ給ス
第二條 本令ニ於テ兵トハ陸軍兵(憲兵上等兵及軍樂上等兵ヲ除ク)及海軍兵ヲ謂フ
第三條 本令ノ賜金ハ左ニ揭グル場合ニハ之ヲ給セズ
一 恩給法ニ依ル增加恩給、傷病年金若ハ傷病賜金又ハ同法第七十五條第一項第二號若ハ第三號ノ扶助料ヲ給セラルベキトキ
二 在營期間一月未滿ニ於テ發生シタル疾病ニ因リ轉役又ハ免役ト爲リタルトキ
三 在營期間中又ハ在營期間ヨリ引續キ陸海軍ニ於テ官費治療中陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ死刑、懲役若ハ一年以上ノ禁錮ノ刑ニ處セラレ、其ノ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ又ハ懲罰ニ依リ免官ト爲リタルトキ
第四條 本令ノ賜金ハ陸軍給與令第十七條ノ二ノ規定ニ依ル退營賜金又ハ海軍給與令第六十五條第一項第二號ノ規定ニ依ル傷病手當ヲ受クベキ者ニハ之ヲ給セズ但シ本令ノ賜金ノ額退營賜金ノ額又ハ傷病手當ノ額ヨリ多キトキハ其ノ差額ヲ給ス
第五條 兵死亡ノ後ニ於テ給スベキ本令ノ賜金ハ之ヲ其ノ遺族ニ給ス
本令ノ賜金ヲ受クベキ遺族ハ兵ノ妻、子、父、母、祖父、祖母、兄弟及姉妹ニシテ兵死亡當時ヨリ引續キ之ト同一戶籍內ニ在ルモノニ限ル但シ兵死亡後分家シタル遺族又ハ分家シタル遺族ニ伴ヒ其ノ家ニ入リタル遺族ハ引續キ兵ト同一戶籍內ニ在ルモノト看做ス
兵死亡當時胎兒タル子出生シタルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ兵死亡當時之ト同一戶籍內ニ在リタルモノト看做ス
第六條 本令ノ賜金ヲ受クベキ遺族ノ順位ハ前條第二項ニ揭グル順序ニ依リ同順序內ニ在リテハ男ハ女ニ、長ハ幼ニ先ツ但シ兵ノ家督相續人ハ同順序內ニ在リテハ最先トス
第七條 第五條ニ揭グル遺族ナキ場合ニ於テハ兵死亡ノ當時實家又ハ本家ニ在ル實父母、兵ノ家督相續人、兵死亡當時ニ於ケル戶主ノ順位ニ依リ同條ニ揭グル遺族ニ給スベキ金額ノ二分ノ一ヲ給スルコトヲ得
第八條 本令ノ賜金ヲ受クベキ順位ニ在ル遺族左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ本令ノ賜金ハ其ノ次順位ノ遺族ニ之ヲ給ス
一 死亡シタルトキ
二 所在不明ナルトキ
三 分家ノ場合ヲ除クノ外同一戶籍內ニ在ラザルニ至リタルトキ
四 死刑又ハ無期若ハ六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキ
五 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ刑ノ執行ヲ終リ又ハ刑ノ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ナルトキ
本令ノ賜金ハ前項第二號又ハ第五號ノ場合ニ於テ其ノ次順位ノ遺族ナキトキハ其ノ所在分明ト爲リタルトキ又ハ刑ノ執行ヲ終リ若ハ刑ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタルトキ其ノ者ニ特ニ之ヲ給スルコトヲ得
第九條 本令ノ賜金ハ第一條ノ規定ニ依リ之ヲ受クベキ事由ノ生ジタル日(前條第二項ノ場合ニ在リテハ所在分明ト爲リタル日又ハ刑ノ執行ヲ終リ若ハ刑ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル日)ヨリ二年以內ニ請求セザルトキハ之ヲ受クルノ資格ヲ失フ但シ恩給法ニ依リ增加恩給、傷病年金若ハ傷病賜金又ハ同法第七十五條第一項第二號若ハ第三號ノ扶助料ヲ請求シ却下セラレタル者ニ在リテハ却下ノ日ヨリ一年以內ニ請求セザルトキハ之ヲ受クルノ資格ヲ失フ
兵本令ノ賜金ヲ請求中死亡シタルトキハ陸軍大臣及海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ請求ハ本令ノ適用ニ付テハ之ヲ遺族ノ爲シタル請求ト看做ス
前項ノ規定ハ遺族本令ノ賜金ヲ請求中前條第一項各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキ其ノ次順位ノ遺族ノ爲スベキ請求ニ之ヲ準用ス
第十條 本令ハ左ニ揭グル者ニ之ヲ準用ス
一 幹部候補生、操縱候補生及陸軍補充令第八十三條第一項ノ下士官候補者
二 在營期間中志願ニ依ルニ非ズシテ兵ヨリ陸軍又ハ海軍ノ下士官ニ任ゼラレタル者ニシテ兵ニ引續キタル在營期間中又ハ該在營期間ヨリ引續キ陸海軍ニ於テ官費治療中ノモノ
第十一條 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ賜金ノ給與ニ關シ必要ナル事項ハ陸軍大臣及海軍大臣之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和十三年四月一日以後轉役若ハ免役ト爲リタル者又ハ死亡シタル者ニ付之ヲ適用ス
別表
【表】
朕転免役賜金令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年七月八日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
海軍大臣 米内光政
大蔵大臣 池田成彬
陸軍大臣 板垣征四郎
勅令第四百九十三号
転免役賜金令
第一条 兵在営期間(応召期間ヲ含ム以下之ニ同ジ)中故意又ハ自己ノ重大ナル過失ニ因ルニ非ズシテ服務ニ関連シ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之ガ為在営期間中又ハ在営期間ヨリ引続キ陸海軍ニ於テ官費治療中一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレ又ハ死亡シタルトキハ本令ニ依リ別表ノ転免役賜金ヲ給ス但シ一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレ引続キ陸海軍ニ於テ官費治療ヲ受クル者ニ在リテハ之ヲ受ケザルニ至リタルトキ又ハ死亡シタルトキ本令ノ賜金ヲ給ス
第二条 本令ニ於テ兵トハ陸軍兵(憲兵上等兵及軍楽上等兵ヲ除ク)及海軍兵ヲ謂フ
第三条 本令ノ賜金ハ左ニ掲グル場合ニハ之ヲ給セズ
一 恩給法ニ依ル増加恩給、傷病年金若ハ傷病賜金又ハ同法第七十五条第一項第二号若ハ第三号ノ扶助料ヲ給セラルベキトキ
二 在営期間一月未満ニ於テ発生シタル疾病ニ因リ転役又ハ免役ト為リタルトキ
三 在営期間中又ハ在営期間ヨリ引続キ陸海軍ニ於テ官費治療中陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ死刑、懲役若ハ一年以上ノ禁錮ノ刑ニ処セラレ、其ノ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ又ハ懲罰ニ依リ免官ト為リタルトキ
第四条 本令ノ賜金ハ陸軍給与令第十七条ノ二ノ規定ニ依ル退営賜金又ハ海軍給与令第六十五条第一項第二号ノ規定ニ依ル傷病手当ヲ受クベキ者ニハ之ヲ給セズ但シ本令ノ賜金ノ額退営賜金ノ額又ハ傷病手当ノ額ヨリ多キトキハ其ノ差額ヲ給ス
第五条 兵死亡ノ後ニ於テ給スベキ本令ノ賜金ハ之ヲ其ノ遺族ニ給ス
本令ノ賜金ヲ受クベキ遺族ハ兵ノ妻、子、父、母、祖父、祖母、兄弟及姉妹ニシテ兵死亡当時ヨリ引続キ之ト同一戸籍内ニ在ルモノニ限ル但シ兵死亡後分家シタル遺族又ハ分家シタル遺族ニ伴ヒ其ノ家ニ入リタル遺族ハ引続キ兵ト同一戸籍内ニ在ルモノト看做ス
兵死亡当時胎児タル子出生シタルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ兵死亡当時之ト同一戸籍内ニ在リタルモノト看做ス
第六条 本令ノ賜金ヲ受クベキ遺族ノ順位ハ前条第二項ニ掲グル順序ニ依リ同順序内ニ在リテハ男ハ女ニ、長ハ幼ニ先ツ但シ兵ノ家督相続人ハ同順序内ニ在リテハ最先トス
第七条 第五条ニ掲グル遺族ナキ場合ニ於テハ兵死亡ノ当時実家又ハ本家ニ在ル実父母、兵ノ家督相続人、兵死亡当時ニ於ケル戸主ノ順位ニ依リ同条ニ掲グル遺族ニ給スベキ金額ノ二分ノ一ヲ給スルコトヲ得
第八条 本令ノ賜金ヲ受クベキ順位ニ在ル遺族左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ本令ノ賜金ハ其ノ次順位ノ遺族ニ之ヲ給ス
一 死亡シタルトキ
二 所在不明ナルトキ
三 分家ノ場合ヲ除クノ外同一戸籍内ニ在ラザルニ至リタルトキ
四 死刑又ハ無期若ハ六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキ
五 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ刑ノ執行ヲ終リ又ハ刑ノ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ナルトキ
本令ノ賜金ハ前項第二号又ハ第五号ノ場合ニ於テ其ノ次順位ノ遺族ナキトキハ其ノ所在分明ト為リタルトキ又ハ刑ノ執行ヲ終リ若ハ刑ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタルトキ其ノ者ニ特ニ之ヲ給スルコトヲ得
第九条 本令ノ賜金ハ第一条ノ規定ニ依リ之ヲ受クベキ事由ノ生ジタル日(前条第二項ノ場合ニ在リテハ所在分明ト為リタル日又ハ刑ノ執行ヲ終リ若ハ刑ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル日)ヨリ二年以内ニ請求セザルトキハ之ヲ受クルノ資格ヲ失フ但シ恩給法ニ依リ増加恩給、傷病年金若ハ傷病賜金又ハ同法第七十五条第一項第二号若ハ第三号ノ扶助料ヲ請求シ却下セラレタル者ニ在リテハ却下ノ日ヨリ一年以内ニ請求セザルトキハ之ヲ受クルノ資格ヲ失フ
兵本令ノ賜金ヲ請求中死亡シタルトキハ陸軍大臣及海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ請求ハ本令ノ適用ニ付テハ之ヲ遺族ノ為シタル請求ト看做ス
前項ノ規定ハ遺族本令ノ賜金ヲ請求中前条第一項各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキ其ノ次順位ノ遺族ノ為スベキ請求ニ之ヲ準用ス
第十条 本令ハ左ニ掲グル者ニ之ヲ準用ス
一 幹部候補生、操縦候補生及陸軍補充令第八十三条第一項ノ下士官候補者
二 在営期間中志願ニ依ルニ非ズシテ兵ヨリ陸軍又ハ海軍ノ下士官ニ任ゼラレタル者ニシテ兵ニ引続キタル在営期間中又ハ該在営期間ヨリ引続キ陸海軍ニ於テ官費治療中ノモノ
第十一条 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ賜金ノ給与ニ関シ必要ナル事項ハ陸軍大臣及海軍大臣之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和十三年四月一日以後転役若ハ免役ト為リタル者又ハ死亡シタル者ニ付之ヲ適用ス
別表
【表】