関東州及南満洲鉄道附属地電気通信令
法令番号: 勅令第百九十七號
公布年月日: 昭和8年7月22日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ關東州及南滿洲鐵道附屬地電氣通信令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年七月二十一日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
拓務大臣 永井柳太郞
勅令第百九十七號
關東州及南滿洲鐵道附屬地電氣通信令
第一條 關東州及南滿洲鐵道附屬地ニ於ケル電信、電話、無線電信及無線電話ニ關シテハ條約ニ定ムルモノノ外本令ノ定ムル所ニ依ル但シ軍用ノ電信、電話、無線電信及無線電話ニ關シテハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信及無線電話ハ滿洲電信電話株式會社及關東長官ノ特許ヲ受ケタル者ヲシテ之ヲ經營セシム
第三條 公衆通信ノ用ニ供セザル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ハ左ニ揭グルモノニ限リ關東長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ受ケ之ヲ私設スルコトヲ得但シ關東長官ノ指定シタルモノニ付テハ其ノ許可ヲ受クルコトヲ要セズ
一 一邸宅內又ハ一構內ニ於テ專用ニ供スル目的ヲ以テ施設スルモノ
二 鐵道業、航空業其ノ他電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ專用ヲ必要トスル事業ニ用フル目的ヲ以テ施設スルモノ
三 電報送受ノ爲施設者ノ專用ニ供スル目的ヲ以テ電信局トノ間ニ施設スルモノ但シ無線電信又ハ無線電話ニ付テハ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ連絡ナキ陸地、船舶又ハ航空機ニ施設スルモノニ限ル
四 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ連絡ナク且前號ノ規定ニ依ルヲ不適當トスル陸地ト陸地、船舶又ハ航空機トノ間ニ於テ同一人ノ特定事業ニ專用スル目的ヲ以テ陸地、船舶又ハ航空機ニ施設スルモノ
五 航行ノ安全ニ備フル目的ヲ以テ船舶又ハ航空機ニ施設スルモノ
六 同一人ノ特定事業ニ用フル船舶又ハ航空機相互間ニ於テ其ノ事業ノ專用ニ供スル目的ヲ以テ船舶又ハ航空機ニ施設スルモノ
七 氣象通信又ハ報時通信ニ專用スル目的ヲ以テ施設スルモノ
八 無線電話ニ依ル放送事項聽取ニ專用スル目的ヲ以テ施設スルモノ
九 無線電信又ハ無線電話ニ關スル實驗ニ專用スル目的ヲ以テ施設スルモノ
第四條 關東長官ハ其ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依リ施設シタル電信、電話、無線電信又ハ無線電話(以下專用通信施設ト稱ス)ヲ公衆通信又ハ軍事上必要ナル通信ノ用ニ供セシムルコトヲ得
第五條 專用通信施設ハ其ノ施設ノ目的以外ニ之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ關東長官ノ定ムル所ニ依リ船舶遭難通信、航空機遭難通信、氣象通信、報時通信其ノ他公益上必要ナル通信ニ之ヲ使用スルコトヲ妨ゲズ
第六條 外國ノ船舶又ハ航空機ニ裝置シタル無線電信又ハ無線電話ハ第三條ノ規定ニ依リ施設シタルモノヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ船舶遭難通信、航空機遭難通信及航行中電信局又ハ電話局トノ通信ニ使用スルコトヲ妨ゲズ
第七條 關東長官ハ公衆通信上又ハ軍事上必要ト認ムルトキハ專用通信施設ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ設備ノ變更、使用ノ制限若ハ使用ノ停止ヲ命ズルコトヲ得無線電信又ハ無線電話ノ混信防遏ノ爲必要ト認ムルトキ亦同ジ
第八條 關東長官ハ公安ノ爲必要ト認ムルトキハ區域ヲ定メ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依ル通信ノ制限又ハ停止ヲ命ズルコトヲ得
第九條 關東長官ハ公安ノ爲必要ト認ムルトキハ專用通信施設又ハ外國ノ船舶若ハ航空機ニ裝置シタル無線電信若ハ無線電話ノ使用ノ制限、停止又ハ其ノ機器及附屬具ノ除却ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ關東長官ハ當該官吏ヲシテ機器及附屬具ニ封印シ又ハ之ヲ除却セシムルコトヲ得
第十條 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依ル通信ニシテ公安ヲ害シ又ハ風俗ヲ壞亂スルモノト認ムルトキハ關東長官ノ指定シタル官廳ハ當該電信、電話、無線電信若ハ無線電話ノ施設者又ハ當該通信ヲ發スル者ニ對シ其ノ通信ノ停止ヲ命ズルコトヲ得
第十一條 專用通信施設ノ施設者本令、本令ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ關東長官ハ當該施設ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ施設ノ使用ノ停止ヲ命ズルコトヲ得
第十二條 專用通信施設ノ施設者當該施設ヲ廢止シタルトキハ關東長官ノ命ズル所ニ依リ其ノ機器及工作物ヲ撤去スルコトヲ要ス當該施設ノ許可ノ效力消滅シタルトキ亦同ジ
第十三條 無線電信又ハ無線電話ハ船舶遭難通信又ハ航空機遭難通信ノ取扱ノ依賴ヲ受ケタルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
無線電信又ハ無線電話ハ船舶遭難通信又ハ航空機遭難通信アリタル場合ニ於テハ直ニ應答シ救助上最便宜ノ位置ニ在ル無線電信又ハ無線電話ニ之ヲ通報スベシ
前項ノ場合ニ於テ特定ノ事項ノ通報ヲ求メラレタルトキハ前項ノ規定ニ依ラズ直ニ其ノ通報ヲ爲スコトヲ要ス
第十四條 關東長官ハ不法ニ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ヲ施設スル者アリト認メタルトキハ當該官吏ヲシテ其ノ施設ノ場所ニ立入リ機器及工作物ノ檢查、機器及附屬具ノ除却其ノ他相當ノ措置ヲ爲サシムルコトヲ得
第十五條 關東長官ハ專用通信施設ノ機器、其ノ裝置又ハ運用ニ關シ監督上必要ト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ其ノ施設ノ場所ニ立入リ機器、工作物、運用狀況及關係書類ノ檢查ヲ爲サシムルコトヲ得
第十六條 前二條ノ規定ニ依リ當該官吏電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ施設ノ場所ニ立入ル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
第十七條 第三條ノ規定ニ依リ施設スル無線電信又ハ無線電話ノ機器、其ノ裝置及運用ニ關スル制限竝ニ其ノ通信ニ從事スル者ノ資格及配置定員ハ關東長官ノ定ムル所ニ依ル
第十八條 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ取扱ニ關シテハ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ經營者(以下事業者ト稱ス)ハ關東長官ノ定ムル所ニ依ルノ外損害賠償ノ責ニ任ゼズ
第十九條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ建設、保守又ハ測量ノ爲必要アルトキハ事業者ハ他人ノ土地ニ立入リ又ハ之ニ測量標ヲ設置スルコトヲ得但シ日沒ヨリ日出迄ノ間ニ於テハ急迫ノ場合ニ非ザレバ占有者ノ意ニ反シテ邸宅又ハ構內ニ立入ルコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ依リ邸宅又ハ構內ニ立入ル場合ニハ占有者ニ豫メ之ヲ通知スベシ
前二項ノ規定ニ依リ他人ノ土地、邸宅又ハ構內ニ立入ル者ハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
第二十條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ建設又ハ通信ニ障碍アル竹木其ノ他ノ植物ハ已ムヲ得ザルモノニ限リ關東長官ノ定ムル所ニ依リ事業者其ノ伐除若ハ移植ヲ所有者其ノ他ノ權利者ニ對シ請求シ又ハ自ラ之ヲ伐除スルコトヲ得
第二十一條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ建設又ハ通信ニ障碍アル瓦斯支管、水道支管、電燈線、電力線其ノ他ノ工作物ハ已ムヲ得ザルモノニ限リ關東長官ノ定ムル所ニ依リ事業者其ノ移轉ヲ所有者其ノ他ノ權利者ニ對シ請求シ又ハ自ラ之ヲ移轉スルコトヲ得
第二十二條 事業者ハ必要アルトキハ他人ノ土地ニ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ヲ建設スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ土地ノ所有者又ハ其ノ他ノ權利者ニ豫メ之ヲ通知スベシ
前項ノ規定ニ依リ他人ノ土地ニ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ支持物ヲ建設シタルトキハ事業者ハ請求ニ依リ其ノ支持物一本每ニ一年四錢ノ土地使用料ヲ支拂フベシ
第二十三條 事業者ハ道路、橋梁、溝渠、河川、堤防其ノ他公共ノ用ニ供セラルル土地ニ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ヲ建設スル必要アルトキハ其ノ效用ヲ妨ゲザル限度ニ於テ其ノ管理者ノ許可ヲ受ケテ之ヲ使用スルコトヲ得
管理者正當ノ事由ナクシテ前項ノ許可ヲ拒ミタルトキハ關東長官ハ事業者ノ申請ニ依リ使用ヲ許可スルコトヲ得
第二十四條 左ニ揭グルモノハ事業者之ヲ補償スベシ
一 第十九條ノ規定ニ依ル立入又ハ測量標設置ノ爲現ニ生ジタル損害
二 第二十條ノ規定ニ依リ伐除シタル植物ノ價額又ハ同條ノ規定ニ依ル植物ノ移植ノ費用
三 第二十一條ノ規定ニ依ル工作物ノ移轉ノ費用
前項ノ補償金額ハ當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ關東長官之ヲ裁定ス
第二十五條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ヲ建設シタル土地又ハ其ノ隣接地ノ所有者又ハ占有者ハ關東長官ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ對シ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ位置ノ變更其ノ他土地ノ使用ニ對スル障碍ノ豫防又ハ除却ニ必要ナル方法ヲ施スコトヲ請求スルコトヲ得
第二十六條 不法ニ電信若ハ電話ヲ施設シタル者、不法ニ施設シタル電信若ハ電話ヲ使用シタル者又ハ第三條ノ規定ニ依リ施設シタル電信若ハ電話ノ許可ノ效力消滅シタル後其ノ電信若ハ電話ヲ使用シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
不法ニ無線電信若ハ無線電話ヲ施設シタル者、不法ニ施設シタル無線電信若ハ無線電話ヲ使用シタル者又ハ第三條ノ規定ニ依リ施設シタル無線電信若ハ無線電話ノ許可ノ效力消滅シタル後其ノ無線電信若ハ無線電話ヲ使用シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十七條 第三條ノ規定ニ依リ施設シタル電信又ハ電話ヲ其ノ施設ノ目的以外ニ使用シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三條ノ規定ニ依リ施設シタル無線電信又ハ無線電話ヲ其ノ施設ノ目的以外ニ使用シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十八條 前二條ノ場合ニ於テ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ヲ他人ノ用ニ供シ因テ金錢物品ヲ收得シタルトキハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第二十九條 第四條ノ場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ專用通信施設ノ供用ヲ拒ミタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條 本令ニ依ル電信又ハ電話ノ使用ノ制限若ハ停止又ハ設備ノ變更、除却若ハ撤去ノ命令ニ從ハザル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス電信又ハ電話ノ事務ニ從事スル者使用ノ制限又ハ停止ノ命令ニ違反シテ使用シタルトキハ其ノ從事者ニ付亦同ジ
第六條ノ規定ニ違反シタル者又ハ本令ニ依ル無線電信若ハ無線電話ノ使用ノ制限、停止若ハ設備ノ變更、除却、撤去ノ命令ニ從ハザル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者使用ノ制限又ハ停止ノ命令ニ違反シテ使用シタルトキハ其ノ從事者ニ付亦同ジ
第三十一條 事業者ノ取扱中ニ係ル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ通信ノ祕密ヲ侵シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ通信ノ祕密ヲ漏泄シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
本條ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ズ
第三十二條 無線電信又ハ無線電話ニ依リ知得タル前條ニ該當セザル無線電信又ハ無線電話ノ通信ノ祕密ヲ漏泄シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ズ
第三十三條 自己若ハ他人ニ利益ヲ與ヘ又ハ他人ニ損害ヲ加フル目的ヲ以テ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依リ虛僞ノ通信ヲ發シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ行爲ヲ爲シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條 公益ヲ害スル目的ヲ以テ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依リ虛僞ノ通信ヲ發シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ行爲ヲ爲シタルトキハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第三十五條 船舶遭難又ハ航空機遭難ノ事實ナキニ拘ラズ無線電信又ハ無線電話ニ依リ遭難通信ヲ發シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ行爲ヲ爲シタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
第三十六條 無線電信又ハ無線電話ニ依リ公安ヲ害シ又ハ風俗ヲ壞亂スル通信ヲ發シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者前項ノ行爲ヲ爲シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十七條 公衆通信ノ用ニ供スル電信又ハ無線電信ノ事務ニ從事スル者事業者ノ取扱中ニ係ル電報ヲ正當ノ事由ナクシテ開披、毀損、隱匿若ハ放棄シタルトキ又ハ受取人ニ非ザル者ニ交付シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ刑法第二百五十八條又ハ第二百五十九條ニ該當スル場合ハ刑法ノ例ニ依ル
第三十八條 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者正當ノ事由ナクシテ公衆通信若ハ軍事上必要ナル通信ノ取扱ヲ爲サザルトキ又ハ之ヲ遲延セシメタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條 無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ從事スル者正當ノ事由ナクシテ第十三條ノ規定ニ依ル船舶遭難通信若ハ航空機遭難通信ノ取扱ヲ爲サザルトキ又ハ之ヲ遲延セシメタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
船舶遭難通信又ハ航空機遭難通信ノ取扱ヲ妨害シタル者ハ罰前項ニ同ジ
第四十條 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依ル公衆通信若ハ軍事上必要ナル通信ヲ妨害シ又ハ之ヲ妨害スベキ行爲ヲ爲シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十一條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ測量、建設、保守又ハ巡視ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十二條 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ電氣導體又ハ其ノ支持物ニ物品ヲ懸ケ若ハ擲チ、動物若ハ舟筏ヲ繫ギ又ハ之ヲ汚穢シタル者ハ十圓以下ノ科料ニ處ス
公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ測量標ヲ毀棄又ハ汚穢シタル者ハ罰前項ニ同ジ
第四十三條 關東長官ノ指定シタル水底電信線路若ハ水底電話線路ノ區域內ニ於テ船舶ヲ繫留シ、漁業採藻ヲ爲シ若ハ土砂ヲ掘鑿シ又ハ水底電信線路若ハ水底電話線路ノ號標ニ舟筏ヲ繫ギ若ハ其ノ號標ヲ毀棄シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
水底電信線路若ハ水底電話線路ノ布設若ハ修理ノ爲其ノ位置ヲ示ス浮標又ハ其ノ布設若ハ修理ニ從事スル船舶ヨリ關東長官ノ指定シタル距離內ニ於テ前項ノ行爲ヲ爲シ又ハ航行シタル者ハ罰前項ニ同ジ
第四十四條 第二十六條、第二十七條、第三十條乃至第四十一條及前條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第四十五條 本令ニ基キテ爲ス當該官吏ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ゲ若ハ忌避シ又ハ第十四條若ハ第十五條ノ規定ニ依ル檢查ノ際當該官吏ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四十六條 官署事務ノ專用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ付テハ關東長官ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ヲ除クノ外本令中專用通信施設ニ關スル規定ヲ準用ス
第四十七條 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ非ザル電氣通報信號施設ニ關シテハ關東長官ハ其ノ定ムル所ニ依リ本令ヲ準用スルコトヲ得
第四十八條 關東長官ハ無線電信又ハ無線電話ニ依ル公衆通信又ハ軍事上必要ナル通信ニ及ボス障碍ヲ防止スル爲必要ト認ムルトキハ高周波電流ヲ發生スル設備ニシテ電信、電話、無線電信、無線電話又ハ前條ノ電氣通報信號施設ニ非ザルモノニ關シ其ノ施設者ニ對シ設備ノ變更又ハ特殊ノ設備ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ設備ノ變更又ハ特殊ノ設備ニ要シタル費用ハ關東長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ補償ス
附 則
本令施行ノ期日ハ關東長官之ヲ定ム
明治三十九年勅令第二百二十九號中「關東都督府」ヲ「關東廳」ニ改メ「電信及電話」及「、電信法、無線電信法、電信線電話線建設條例」ヲ削ル
本令施行前明治三十九年勅令第二百二十九號ニ依リ私設シタル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ハ本令ニ依ル專用通信施設ト看做ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ関東州及南満洲鉄道附属地電気通信令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年七月二十一日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
拓務大臣 永井柳太郎
勅令第百九十七号
関東州及南満洲鉄道附属地電気通信令
第一条 関東州及南満洲鉄道附属地ニ於ケル電信、電話、無線電信及無線電話ニ関シテハ条約ニ定ムルモノノ外本令ノ定ムル所ニ依ル但シ軍用ノ電信、電話、無線電信及無線電話ニ関シテハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信及無線電話ハ満洲電信電話株式会社及関東長官ノ特許ヲ受ケタル者ヲシテ之ヲ経営セシム
第三条 公衆通信ノ用ニ供セザル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ハ左ニ掲グルモノニ限リ関東長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ受ケ之ヲ私設スルコトヲ得但シ関東長官ノ指定シタルモノニ付テハ其ノ許可ヲ受クルコトヲ要セズ
一 一邸宅内又ハ一構内ニ於テ専用ニ供スル目的ヲ以テ施設スルモノ
二 鉄道業、航空業其ノ他電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ専用ヲ必要トスル事業ニ用フル目的ヲ以テ施設スルモノ
三 電報送受ノ為施設者ノ専用ニ供スル目的ヲ以テ電信局トノ間ニ施設スルモノ但シ無線電信又ハ無線電話ニ付テハ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ連絡ナキ陸地、船舶又ハ航空機ニ施設スルモノニ限ル
四 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ連絡ナク且前号ノ規定ニ依ルヲ不適当トスル陸地ト陸地、船舶又ハ航空機トノ間ニ於テ同一人ノ特定事業ニ専用スル目的ヲ以テ陸地、船舶又ハ航空機ニ施設スルモノ
五 航行ノ安全ニ備フル目的ヲ以テ船舶又ハ航空機ニ施設スルモノ
六 同一人ノ特定事業ニ用フル船舶又ハ航空機相互間ニ於テ其ノ事業ノ専用ニ供スル目的ヲ以テ船舶又ハ航空機ニ施設スルモノ
七 気象通信又ハ報時通信ニ専用スル目的ヲ以テ施設スルモノ
八 無線電話ニ依ル放送事項聴取ニ専用スル目的ヲ以テ施設スルモノ
九 無線電信又ハ無線電話ニ関スル実験ニ専用スル目的ヲ以テ施設スルモノ
第四条 関東長官ハ其ノ定ムル所ニ依リ前条ノ規定ニ依リ施設シタル電信、電話、無線電信又ハ無線電話(以下専用通信施設ト称ス)ヲ公衆通信又ハ軍事上必要ナル通信ノ用ニ供セシムルコトヲ得
第五条 専用通信施設ハ其ノ施設ノ目的以外ニ之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ関東長官ノ定ムル所ニ依リ船舶遭難通信、航空機遭難通信、気象通信、報時通信其ノ他公益上必要ナル通信ニ之ヲ使用スルコトヲ妨ゲズ
第六条 外国ノ船舶又ハ航空機ニ装置シタル無線電信又ハ無線電話ハ第三条ノ規定ニ依リ施設シタルモノヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ船舶遭難通信、航空機遭難通信及航行中電信局又ハ電話局トノ通信ニ使用スルコトヲ妨ゲズ
第七条 関東長官ハ公衆通信上又ハ軍事上必要ト認ムルトキハ専用通信施設ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ設備ノ変更、使用ノ制限若ハ使用ノ停止ヲ命ズルコトヲ得無線電信又ハ無線電話ノ混信防遏ノ為必要ト認ムルトキ亦同ジ
第八条 関東長官ハ公安ノ為必要ト認ムルトキハ区域ヲ定メ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依ル通信ノ制限又ハ停止ヲ命ズルコトヲ得
第九条 関東長官ハ公安ノ為必要ト認ムルトキハ専用通信施設又ハ外国ノ船舶若ハ航空機ニ装置シタル無線電信若ハ無線電話ノ使用ノ制限、停止又ハ其ノ機器及附属具ノ除却ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ関東長官ハ当該官吏ヲシテ機器及附属具ニ封印シ又ハ之ヲ除却セシムルコトヲ得
第十条 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依ル通信ニシテ公安ヲ害シ又ハ風俗ヲ壊乱スルモノト認ムルトキハ関東長官ノ指定シタル官庁ハ当該電信、電話、無線電信若ハ無線電話ノ施設者又ハ当該通信ヲ発スル者ニ対シ其ノ通信ノ停止ヲ命ズルコトヲ得
第十一条 専用通信施設ノ施設者本令、本令ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ関東長官ハ当該施設ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ施設ノ使用ノ停止ヲ命ズルコトヲ得
第十二条 専用通信施設ノ施設者当該施設ヲ廃止シタルトキハ関東長官ノ命ズル所ニ依リ其ノ機器及工作物ヲ撤去スルコトヲ要ス当該施設ノ許可ノ効力消滅シタルトキ亦同ジ
第十三条 無線電信又ハ無線電話ハ船舶遭難通信又ハ航空機遭難通信ノ取扱ノ依頼ヲ受ケタルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
無線電信又ハ無線電話ハ船舶遭難通信又ハ航空機遭難通信アリタル場合ニ於テハ直ニ応答シ救助上最便宜ノ位置ニ在ル無線電信又ハ無線電話ニ之ヲ通報スベシ
前項ノ場合ニ於テ特定ノ事項ノ通報ヲ求メラレタルトキハ前項ノ規定ニ依ラズ直ニ其ノ通報ヲ為スコトヲ要ス
第十四条 関東長官ハ不法ニ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ヲ施設スル者アリト認メタルトキハ当該官吏ヲシテ其ノ施設ノ場所ニ立入リ機器及工作物ノ検査、機器及附属具ノ除却其ノ他相当ノ措置ヲ為サシムルコトヲ得
第十五条 関東長官ハ専用通信施設ノ機器、其ノ装置又ハ運用ニ関シ監督上必要ト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ其ノ施設ノ場所ニ立入リ機器、工作物、運用状況及関係書類ノ検査ヲ為サシムルコトヲ得
第十六条 前二条ノ規定ニ依リ当該官吏電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ施設ノ場所ニ立入ル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ証明スベキ証票ヲ携帯スベシ
第十七条 第三条ノ規定ニ依リ施設スル無線電信又ハ無線電話ノ機器、其ノ装置及運用ニ関スル制限並ニ其ノ通信ニ従事スル者ノ資格及配置定員ハ関東長官ノ定ムル所ニ依ル
第十八条 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ取扱ニ関シテハ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ経営者(以下事業者ト称ス)ハ関東長官ノ定ムル所ニ依ルノ外損害賠償ノ責ニ任ゼズ
第十九条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ建設、保守又ハ測量ノ為必要アルトキハ事業者ハ他人ノ土地ニ立入リ又ハ之ニ測量標ヲ設置スルコトヲ得但シ日没ヨリ日出迄ノ間ニ於テハ急迫ノ場合ニ非ザレバ占有者ノ意ニ反シテ邸宅又ハ構内ニ立入ルコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ依リ邸宅又ハ構内ニ立入ル場合ニハ占有者ニ予メ之ヲ通知スベシ
前二項ノ規定ニ依リ他人ノ土地、邸宅又ハ構内ニ立入ル者ハ其ノ身分ヲ証明スベキ証票ヲ携帯スベシ
第二十条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ建設又ハ通信ニ障碍アル竹木其ノ他ノ植物ハ已ムヲ得ザルモノニ限リ関東長官ノ定ムル所ニ依リ事業者其ノ伐除若ハ移植ヲ所有者其ノ他ノ権利者ニ対シ請求シ又ハ自ラ之ヲ伐除スルコトヲ得
第二十一条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ建設又ハ通信ニ障碍アル瓦斯支管、水道支管、電灯線、電力線其ノ他ノ工作物ハ已ムヲ得ザルモノニ限リ関東長官ノ定ムル所ニ依リ事業者其ノ移転ヲ所有者其ノ他ノ権利者ニ対シ請求シ又ハ自ラ之ヲ移転スルコトヲ得
第二十二条 事業者ハ必要アルトキハ他人ノ土地ニ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ヲ建設スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ土地ノ所有者又ハ其ノ他ノ権利者ニ予メ之ヲ通知スベシ
前項ノ規定ニ依リ他人ノ土地ニ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ支持物ヲ建設シタルトキハ事業者ハ請求ニ依リ其ノ支持物一本毎ニ一年四銭ノ土地使用料ヲ支払フベシ
第二十三条 事業者ハ道路、橋梁、溝渠、河川、堤防其ノ他公共ノ用ニ供セラルル土地ニ公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ヲ建設スル必要アルトキハ其ノ効用ヲ妨ゲザル限度ニ於テ其ノ管理者ノ許可ヲ受ケテ之ヲ使用スルコトヲ得
管理者正当ノ事由ナクシテ前項ノ許可ヲ拒ミタルトキハ関東長官ハ事業者ノ申請ニ依リ使用ヲ許可スルコトヲ得
第二十四条 左ニ掲グルモノハ事業者之ヲ補償スベシ
一 第十九条ノ規定ニ依ル立入又ハ測量標設置ノ為現ニ生ジタル損害
二 第二十条ノ規定ニ依リ伐除シタル植物ノ価額又ハ同条ノ規定ニ依ル植物ノ移植ノ費用
三 第二十一条ノ規定ニ依ル工作物ノ移転ノ費用
前項ノ補償金額ハ当事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ関東長官之ヲ裁定ス
第二十五条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ヲ建設シタル土地又ハ其ノ隣接地ノ所有者又ハ占有者ハ関東長官ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ対シ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ位置ノ変更其ノ他土地ノ使用ニ対スル障碍ノ予防又ハ除却ニ必要ナル方法ヲ施スコトヲ請求スルコトヲ得
第二十六条 不法ニ電信若ハ電話ヲ施設シタル者、不法ニ施設シタル電信若ハ電話ヲ使用シタル者又ハ第三条ノ規定ニ依リ施設シタル電信若ハ電話ノ許可ノ効力消滅シタル後其ノ電信若ハ電話ヲ使用シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
不法ニ無線電信若ハ無線電話ヲ施設シタル者、不法ニ施設シタル無線電信若ハ無線電話ヲ使用シタル者又ハ第三条ノ規定ニ依リ施設シタル無線電信若ハ無線電話ノ許可ノ効力消滅シタル後其ノ無線電信若ハ無線電話ヲ使用シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十七条 第三条ノ規定ニ依リ施設シタル電信又ハ電話ヲ其ノ施設ノ目的以外ニ使用シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三条ノ規定ニ依リ施設シタル無線電信又ハ無線電話ヲ其ノ施設ノ目的以外ニ使用シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十八条 前二条ノ場合ニ於テ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ヲ他人ノ用ニ供シ因テ金銭物品ヲ収得シタルトキハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第二十九条 第四条ノ場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ専用通信施設ノ供用ヲ拒ミタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十条 本令ニ依ル電信又ハ電話ノ使用ノ制限若ハ停止又ハ設備ノ変更、除却若ハ撤去ノ命令ニ従ハザル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス電信又ハ電話ノ事務ニ従事スル者使用ノ制限又ハ停止ノ命令ニ違反シテ使用シタルトキハ其ノ従事者ニ付亦同ジ
第六条ノ規定ニ違反シタル者又ハ本令ニ依ル無線電信若ハ無線電話ノ使用ノ制限、停止若ハ設備ノ変更、除却、撤去ノ命令ニ従ハザル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者使用ノ制限又ハ停止ノ命令ニ違反シテ使用シタルトキハ其ノ従事者ニ付亦同ジ
第三十一条 事業者ノ取扱中ニ係ル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ通信ノ秘密ヲ侵シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者前項ノ通信ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
本条ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ズ
第三十二条 無線電信又ハ無線電話ニ依リ知得タル前条ニ該当セザル無線電信又ハ無線電話ノ通信ノ秘密ヲ漏泄シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ズ
第三十三条 自己若ハ他人ニ利益ヲ与ヘ又ハ他人ニ損害ヲ加フル目的ヲ以テ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依リ虚偽ノ通信ヲ発シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者前項ノ行為ヲ為シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十四条 公益ヲ害スル目的ヲ以テ電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依リ虚偽ノ通信ヲ発シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者前項ノ行為ヲ為シタルトキハ十年以下ノ懲役ニ処ス
第三十五条 船舶遭難又ハ航空機遭難ノ事実ナキニ拘ラズ無線電信又ハ無線電話ニ依リ遭難通信ヲ発シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス
無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者前項ノ行為ヲ為シタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
第三十六条 無線電信又ハ無線電話ニ依リ公安ヲ害シ又ハ風俗ヲ壊乱スル通信ヲ発シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者前項ノ行為ヲ為シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十七条 公衆通信ノ用ニ供スル電信又ハ無線電信ノ事務ニ従事スル者事業者ノ取扱中ニ係ル電報ヲ正当ノ事由ナクシテ開披、毀損、隠匿若ハ放棄シタルトキ又ハ受取人ニ非ザル者ニ交付シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス但シ刑法第二百五十八条又ハ第二百五十九条ニ該当スル場合ハ刑法ノ例ニ依ル
第三十八条 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者正当ノ事由ナクシテ公衆通信若ハ軍事上必要ナル通信ノ取扱ヲ為サザルトキ又ハ之ヲ遅延セシメタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十九条 無線電信又ハ無線電話ノ事務ニ従事スル者正当ノ事由ナクシテ第十三条ノ規定ニ依ル船舶遭難通信若ハ航空機遭難通信ノ取扱ヲ為サザルトキ又ハ之ヲ遅延セシメタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
船舶遭難通信又ハ航空機遭難通信ノ取扱ヲ妨害シタル者ハ罰前項ニ同ジ
第四十条 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ依ル公衆通信若ハ軍事上必要ナル通信ヲ妨害シ又ハ之ヲ妨害スベキ行為ヲ為シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十一条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ測量、建設、保守又ハ巡視ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第四十二条 公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ電気導体又ハ其ノ支持物ニ物品ヲ懸ケ若ハ擲チ、動物若ハ舟筏ヲ繋ギ又ハ之ヲ汚穢シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
公衆通信ノ用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ノ線路ノ測量標ヲ毀棄又ハ汚穢シタル者ハ罰前項ニ同ジ
第四十三条 関東長官ノ指定シタル水底電信線路若ハ水底電話線路ノ区域内ニ於テ船舶ヲ繋留シ、漁業採藻ヲ為シ若ハ土砂ヲ掘鑿シ又ハ水底電信線路若ハ水底電話線路ノ号標ニ舟筏ヲ繋ギ若ハ其ノ号標ヲ毀棄シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
水底電信線路若ハ水底電話線路ノ布設若ハ修理ノ為其ノ位置ヲ示ス浮標又ハ其ノ布設若ハ修理ニ従事スル船舶ヨリ関東長官ノ指定シタル距離内ニ於テ前項ノ行為ヲ為シ又ハ航行シタル者ハ罰前項ニ同ジ
第四十四条 第二十六条、第二十七条、第三十条乃至第四十一条及前条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第四十五条 本令ニ基キテ為ス当該官吏ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ゲ若ハ忌避シ又ハ第十四条若ハ第十五条ノ規定ニ依ル検査ノ際当該官吏ノ尋問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第四十六条 官署事務ノ専用ニ供スル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ付テハ関東長官ニ於テ別段ノ定ヲ為シタル場合ヲ除クノ外本令中専用通信施設ニ関スル規定ヲ準用ス
第四十七条 電信、電話、無線電信又ハ無線電話ニ非ザル電気通報信号施設ニ関シテハ関東長官ハ其ノ定ムル所ニ依リ本令ヲ準用スルコトヲ得
第四十八条 関東長官ハ無線電信又ハ無線電話ニ依ル公衆通信又ハ軍事上必要ナル通信ニ及ボス障碍ヲ防止スル為必要ト認ムルトキハ高周波電流ヲ発生スル設備ニシテ電信、電話、無線電信、無線電話又ハ前条ノ電気通報信号施設ニ非ザルモノニ関シ其ノ施設者ニ対シ設備ノ変更又ハ特殊ノ設備ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ設備ノ変更又ハ特殊ノ設備ニ要シタル費用ハ関東長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ補償ス
附 則
本令施行ノ期日ハ関東長官之ヲ定ム
明治三十九年勅令第二百二十九号中「関東都督府」ヲ「関東庁」ニ改メ「電信及電話」及「、電信法、無線電信法、電信線電話線建設条例」ヲ削ル
本令施行前明治三十九年勅令第二百二十九号ニ依リ私設シタル電信、電話、無線電信又ハ無線電話ハ本令ニ依ル専用通信施設ト看做ス