第一條 負債ノ整理ニ依リ誠實ナル債務者ヲ更生セシムル爲債權者債務者ノ互讓ヲ必要トスルトキハ當事者ハ本法ニ依リ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二條 調停ノ申立ハ昭和七年七月三十一日以前ニ發生シタル私法上ノ金錢債務ニシテ金額千圓ヲ超過セザルモノニ付之ヲ爲スコトヲ但得シ小作料其ノ他小作關係ヨリ生ジタルモノ及地代、家賃其ノ他借地借家關係ヨリ生ジタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ金額ニハ附帶ノ利息、違約金、費用又ハ手數料ノ額ヲ算入セズ既ニ元本ニ組入レタル此等ノモノニ付亦同ジ
第一項ノ金額ヲ超過スル債務ニ付調停ノ申立アリタル場合ト雖モ裁判所調停ヲ爲スヲ相當ト認メ且相手方ニ異議ナキトキハ調停ヲ爲スコトヲ得相手方期日ニ出頭シテ事件ノ內容ニ付陳述ヲ始メタルトキハ異議ナキモノト看做ス
第三條 調停ノ申立ハ相手方ノ住所、居所、營業所若ハ事務所ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リテ定ムル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
調停ノ申立ヲ受ケタル裁判所相當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ區裁判所ニ移送スルコトヲ得管轄權ナキ裁判所ガ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同ジ
第四條 本法ノ調停ニ關シテハ借地借家調停法第二條、第四條ノ二、第六條乃至第二十三條及第二十六條乃至第三十二條ノ規定ヲ準用ス
第五條 事件ガ性質上調停ヲ爲スニ適セズ又ハ當事者不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ調停ノ申立ヲ却下ス第七條第二項ニ該當スルトキ其ノ他調停ヲ爲スニ適當ナラザル事情存スルトキ亦同ジ
調停委員會前項ノ事由アリト認ムルトキハ調停ヲ爲サズ
第六條 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟ガ繫屬スルトキ又ハ裁判所ノ職權ヲ以テ事件ガ調停ニ付セラレタルトキハ受訴裁判所ハ決定ヲ以テ調停ノ終了又ハ第七條ノ規定ニ依ル裁判確定ニ至ル迄訴訟手續ヲ中止スルコトヲ得
調停事件ノ繫屬スル裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ供セシメズシテ强制執行手續又ハ競賣法ニ依ル競賣手續ヲ一時停止スルコトヲ得
民事訴訟法第百十二條、第百十三條、第百十五條及第百十六條ノ規定ハ前項ノ擔保ニ之ヲ準用ス
第一項及第二項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
第七條 調停委員會ニ於テ調停成ラザル場合ニ裁判所相當ト認ムルトキハ職權ヲ以テ調停委員ノ意見ヲ聽キ當事者雙方ノ利益ヲ衡平ニ考慮シ其ノ資力、業務ノ性質、旣ニ債務者ノ支拂ヒタル利息手數料內入金等ノ額其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シテ調停ニ代ヘ利息、期限其ノ他債務關係ノ變更ヲ命ズル裁判ヲ爲スコトヲ得此ノ裁判ニ於テハ債務ノ履行其ノ他財產上ノ給付ヲ命ズルコトヲ得
銀行其ノ他官廳ノ監督ヲ受ケテ金融業務ヲ取扱フ者ノ債權ニ付テハ其ノ業務ノ機構ヲ害スル虞アルトキハ前項ノ裁判ヲ爲スコトヲ得ズ
第八條 前條ノ規定ニ依ル裁判ハ調停事件ノ繫屬スル裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
第九條 第七條ノ規定ニ依ル裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間トス
第十條 第七條ノ規定ニ依ル裁判確定シタルトキハ其ノ裁判ハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第十一條 調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク評議ノ顚末又ハ調停主任、調停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ數ヲ漏泄シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス