漁業財団抵当法
法令番号: 法律第九號
公布年月日: 大正14年3月28日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル漁業財團抵當法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十四年三月二十七日
內閣總理大臣 子爵 加藤高明
農商務大臣 高橋是淸
司法大臣 小川平吉
法律第九號
漁業財團抵當法
第一條 漁業權若ハ其ノ登錄シタル賃借權ヲ有スル者、漁業ノ用ニ供スル登記シタル船舶ヲ有スル者又ハ水產物ノ養殖場ヲ有スル者ハ之ニ付抵當權ノ目的ト爲ス爲漁業財團ヲ設クルコトヲ得
第二條 漁業財團ハ左ニ揭クルモノニシテ同一人ニ屬スルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
一 漁業權又ハ其ノ登錄シタル賃借權
二 船舶竝其ノ屬具及附屬設備
三 土地及工作物
四 地上權及土地若ハ水面ノ使用又ハ引水若ハ排水ニ關スル權利
五 漁具及副漁具
六 機械、器具其ノ他ノ附屬物
七 物ノ賃借權
八 工業所有權
前項ノ權利ニシテ其ノ移轉ニ付行政廳ノ許可又ハ認可ヲ要スルモノニ付テハ其ノ許可又ハ認可ヲ、賃借權ニ付テハ賃貸人ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ之ヲ漁業財團ニ屬セシムルコトヲ得ス
第三條 漁業權又ハ其ノ登錄シタル賃借權カ漁業財團ニ屬スル場合ニ於テハ抵當權ハ其ノ漁場ニ定著シタル工作物ニ及フ
船舶カ漁業財團ニ屬スル場合ニ於テハ抵當權ハ其ノ船舶ノ屬具ニ及フ
前二項ノ規定ハ設定行爲ニ別段ノ定アルトキ又ハ民法第四百二十四條ノ規定ニ依リ債權者カ債務者ノ行爲ヲ取消スコトヲ得ル場合ニハ之ヲ適用セス
第四條 漁業權ニ付漁業財團ヲ設定シタル場合ニ於テ其ノ漁業免許ノ取消アリタルトキハ其ノ處分ヲ爲シタル行政官廳ハ直ニ之ヲ抵當權者ニ通知スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ抵當權者ハ其ノ權利ヲ實行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ抵當權ヲ實行セムトスルトキハ抵當權者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ六月內ニ其ノ手續ヲ爲スヘシ
漁業權ハ前項ノ期間內又ハ抵當權實行ノ終了ニ至ル迄抵當權實行ノ目的ノ範圍內ニ於テ仍存續スルモノト看做ス
競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ漁業免許ノ取消ハ其ノ效力ヲ生セサリシモノト看做ス
前四項ノ規定ハ水產物ノ蕃殖保護、船舶ノ航行碇泊繫留、水底電線ノ敷設若ハ國防其ノ他ノ軍事上必要アル場合、公益上害アル場合又ハ錯誤ニ依リ漁業ノ免許カ與ヘラレタル場合ニ於ケル漁業免許ノ取消ニ關シテハ之ヲ適用セス
第五條 前條第一項ノ規定ハ漁業權ノ登錄シタル賃借權ニ付漁業財團ヲ設定シタル場合ニ於テ其ノ漁業免許ノ取消アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第六條 漁業財團ニ付テハ本法ニ規定スルモノ及罰則ヲ除クノ外工場抵當法中工場財團ニ關スル規定ヲ準用ス但シ工場抵當法第十七條及第四十五條ノ規定ノ準用ニ付テハ漁業權又ハ其ノ登錄シタル賃借權ハ其ノ漁場ニ最近キ沿岸ノ屬スル市町村又ハ之ニ相當スル行政區劃、漁業ノ用ニ供スル登記シタル船舶ハ其ノ船籍港ヲ以テ其ノ所在地ト看做ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル漁業財団抵当法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十四年三月二十七日
内閣総理大臣 子爵 加藤高明
農商務大臣 高橋是清
司法大臣 小川平吉
法律第九号
漁業財団抵当法
第一条 漁業権若ハ其ノ登録シタル賃借権ヲ有スル者、漁業ノ用ニ供スル登記シタル船舶ヲ有スル者又ハ水産物ノ養殖場ヲ有スル者ハ之ニ付抵当権ノ目的ト為ス為漁業財団ヲ設クルコトヲ得
第二条 漁業財団ハ左ニ掲クルモノニシテ同一人ニ属スルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
一 漁業権又ハ其ノ登録シタル賃借権
二 船舶並其ノ属具及附属設備
三 土地及工作物
四 地上権及土地若ハ水面ノ使用又ハ引水若ハ排水ニ関スル権利
五 漁具及副漁具
六 機械、器具其ノ他ノ附属物
七 物ノ賃借権
八 工業所有権
前項ノ権利ニシテ其ノ移転ニ付行政庁ノ許可又ハ認可ヲ要スルモノニ付テハ其ノ許可又ハ認可ヲ、賃借権ニ付テハ賃貸人ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ之ヲ漁業財団ニ属セシムルコトヲ得ス
第三条 漁業権又ハ其ノ登録シタル賃借権カ漁業財団ニ属スル場合ニ於テハ抵当権ハ其ノ漁場ニ定著シタル工作物ニ及フ
船舶カ漁業財団ニ属スル場合ニ於テハ抵当権ハ其ノ船舶ノ属具ニ及フ
前二項ノ規定ハ設定行為ニ別段ノ定アルトキ又ハ民法第四百二十四条ノ規定ニ依リ債権者カ債務者ノ行為ヲ取消スコトヲ得ル場合ニハ之ヲ適用セス
第四条 漁業権ニ付漁業財団ヲ設定シタル場合ニ於テ其ノ漁業免許ノ取消アリタルトキハ其ノ処分ヲ為シタル行政官庁ハ直ニ之ヲ抵当権者ニ通知スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ抵当権者ハ其ノ権利ヲ実行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ抵当権ヲ実行セムトスルトキハ抵当権者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ六月内ニ其ノ手続ヲ為スヘシ
漁業権ハ前項ノ期間内又ハ抵当権実行ノ終了ニ至ル迄抵当権実行ノ目的ノ範囲内ニ於テ仍存続スルモノト看做ス
競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ漁業免許ノ取消ハ其ノ効力ヲ生セサリシモノト看做ス
前四項ノ規定ハ水産物ノ蕃殖保護、船舶ノ航行碇泊繋留、水底電線ノ敷設若ハ国防其ノ他ノ軍事上必要アル場合、公益上害アル場合又ハ錯誤ニ依リ漁業ノ免許カ与ヘラレタル場合ニ於ケル漁業免許ノ取消ニ関シテハ之ヲ適用セス
第五条 前条第一項ノ規定ハ漁業権ノ登録シタル賃借権ニ付漁業財団ヲ設定シタル場合ニ於テ其ノ漁業免許ノ取消アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第六条 漁業財団ニ付テハ本法ニ規定スルモノ及罰則ヲ除クノ外工場抵当法中工場財団ニ関スル規定ヲ準用ス但シ工場抵当法第十七条及第四十五条ノ規定ノ準用ニ付テハ漁業権又ハ其ノ登録シタル賃借権ハ其ノ漁場ニ最近キ沿岸ノ属スル市町村又ハ之ニ相当スル行政区画、漁業ノ用ニ供スル登記シタル船舶ハ其ノ船籍港ヲ以テ其ノ所在地ト看做ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム