関東州取引所令
法令番号: 勅令第四百九十四號
公布年月日: 大正8年12月15日
法令の形式: 勅令
朕關東州取引所令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年十二月十三日
內閣總理大臣 原敬
勅令第四百九十四號
關東州取引所令
第一條 關東州及南滿洲鐵道附屬地ニ於ケル取引所ノ設立ハ關東長官ノ免許ヲ受クヘシ
第二條 取引所ニ於テ賣買取引スル物件ノ種類ハ關東長官之ヲ定ム
第三條 同種ノ物件ヲ賣買取引スル取引所ハ一地區一箇所ニ限リ設立スルコトヲ得但シ其ノ地區ハ關東長官之ヲ定ム
第四條 取引所ノ免許年限ハ十年トス但シ出願ニ依リ關東長官ハ之ヲ更新スルコトヲ得
第五條 株式會社組織ノ取引所ハ資本金ノ十分ノ一ニ相當スル營業保證金ヲ供託スヘシ
取引所ハ前項ノ供託ヲ爲シタル後ニ非サレハ取引所ノ業務ヲ行フコトヲ得ス營業保證金ニ不足ヲ生シタル場合ニ於テ關東長官ノ指定シタル期間內ニ其ノ不足額ヲ供託セサルトキ亦同シ
營業保證金ハ有價證券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得其ノ種類及代用價格ハ關東長官之ヲ指定ス
第六條 取引所ハ會員組織又ハ株式會社組織トス
第七條 取引所ニ於テハ其ノ取引所ノ會員又ハ取引人ニ限リ賣買取引ヲ爲スコトヲ得
會員又ハ取引人ハ其ノ市場代理人ヲ以テスルニ非サレハ取引所ノ市場ニ於テ賣買取引ノ代理ヲ爲サシムルコトヲ得ス
取引所ハ其ノ營業細則ニ市場代理人ニ關スル事項ヲ規定スヘシ
第八條 取引所ハ法人トシテ財產ヲ所有シ及之ヲ處分スルコトヲ得
取引所ノ責任ハ其ノ財產ニ限ルモノトス
第九條 取引所ハ關東長官ノ認可ヲ受ケ其ノ營業部類ニ屬スル商品ノ倉庫ヲ設置シ及預證券、質入證券又ハ倉荷證券ヲ發行スルコトヲ得
取引所ハ其ノ預證券、質入證券又ハ倉荷證券ニ對シ前貸ヲ爲スコト又ハ之ヲ買受クルコトヲ得ス
第十條 取引所ノ定款ハ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第十一條 取引人タラムトスル者ハ關東長官ノ免許ヲ受クヘシ
第十二條 會員ノ資格、除名及脫退竝取引人ノ資格、免許失效及免許取消ニ關シテハ關東長官之ヲ定ム
第十三條 取引人ハ自己ノ計算ヲ以テスルト他人ノ計算ヲ以テスルトヲ問ハス取引所ニ對シ其ノ賣買取引上一切ノ責任ヲ負フヘシ
第十四條 取引人ハ關東長官ノ定ムル所ニ依リ免許料ヲ納ムヘシ
第十五條 會員又ハ取引人ハ身元保證金ヲ其ノ取引所ニ納ムヘシ
身元保證金ノ金額ハ五千圓ヲ下ルコトヲ得ス
身元保證金ハ取引所ノ定ムル所ニ依リ有價證券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得
關東長官必要ト認ムルトキハ前項ノ有價證券ノ種類又ハ其ノ代用價格ヲ變更セシムルコトヲ得
取引所身元保證金ヲ受取リタルトキハ遲滯ナク之ヲ供託スヘシ
第十六條 取引所ハ其ノ秩序ヲ保持スル爲定款ノ規定ニ依リ會員又ハ取引人ニ對シ其ノ營業ヲ停止シ、千圓以內ノ過怠金ヲ之ニ課シ、關東長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ除名スルコトヲ得
第十七條 取引所ハ其ノ定款ヲ以テ會員若ハ取引人ト爲ルニ必要ナル條件ヲ定メ又ハ取引人ノ員數ヲ制限スルコトヲ得
第十八條 取引人ハ廢業後ト雖其ノ取引所ニ於ケル取引ノ結了及監督ノ目的ノ範圍內ニ於テハ取引結了後二週間ヲ經過スル迄仍廢業セサルモノト看做ス
取引人死亡シ若ハ除名セラレ又ハ其ノ免許カ取消サレ若ハ效力ヲ失ヒタル場合ニ於テハ其ノ取引所ニ於ケル取引ノ結了ニ至ル迄亦前項ニ同シ
前項ノ規定ハ會員ノ死亡、除名及脫退ノ場合ニ之ヲ準用ス
前三項ノ場合ニ於テ會員又ハ取引人ノ行爲ヲ爲ス者ナキトキハ取引所ハ定款ノ定ムル所ニ從ヒ他人ヲシテ其ノ行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第十九條 取引所ノ役員ハ定款ノ規定ニ依リ會員又ハ株主中ヨリ二年內ノ任期ヲ以テ之ヲ選擧シ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
取引所ノ役員左ノ如シ
理事長 一人
理事 二人以上
監査役 若干人
第二十條 取引所ノ取引人トノ間ニ資金ノ供與、損益ノ分配其ノ他取引人ノ營業ニ付特別ノ利害關係ヲ有スル者ハ其ノ取引所又ハ之ト同種ノ物件ヲ取引スル取引所ノ役員タルコトヲ得ス
役員カ取引人タルノ免許ヲ受ケタルトキハ其ノ職ヲ失フ理事長又ハ理事カ他ノ取引所ノ理事長又ハ理事タルノ認可ヲ受ケタルトキ亦同シ
關東長官ハ不正ノ手段ニ依リ役員タルノ認可ヲ受ケタル者又ハ第一項ノ規定ニ違反シテ役員タル者アルコトヲ發見シタルトキハ之ヲ解職スルコトヲ得
第二十一條 關東長官ハ役員ノ職務ヲ行フ者ナキ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ假ニ役員ヲ選任スルコトヲ得
第二十二條 取引所ノ賣買取引ハ現物取引、延取引及定期取引ノ三種トス
第二十三條 現物取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ二日內ニ於テ、延取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ三日以上百五十日內約定ノ日ニ於テ受渡ヲ爲スヘシ但シ株式、國債、地方債、社債其ノ他有價證券ノ延取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ一月內約定ノ日ニ於テ受渡ヲ爲スヘシ
受渡ヲ爲スヘキ日カ休日ニ當ルトキハ其ノ翌日ニ於テ受渡ヲ爲スヘシ
第二十四條 定期取引ハ三月內ニ於テ取引所ノ定メタル限月ニ依ルヘシ
株式、國債、地方債、社債其ノ他有價證券ノ定期取引ノ期間ハ一月內トス
第二十五條 現物取引、延取引及會員組織ノ取引所ノ定期取引ハ競賣買ノ方法ニ依ルコトヲ得ス
轉賣買戾ハ競賣買ノ方法ニ依ル定期取引ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 取引人ハ委託ヲ受ケタル定期取引ニ付其ノ委託者ノ指圖ニ依ラスシテ轉賣又ハ買戾ヲ爲スコトヲ得ス但シ營業細則ノ定ムル所ニ依リ提供スヘキ證據金又ハ受渡物件若ハ受渡代金ヲ取引人ノ請求アルニ拘ラス委託者ニ於テ提供セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十七條 前條ノ規定ニ違反シテ轉賣又ハ買戾ヲ爲シタル取引人ニ對シテハ取引所ハ之ニ三月以上ノ營業停止ヲ命シ又ハ之ヲ除名スヘシ
第二十八條 定期取引ニ付證據金ヲ納メシムル取引所ハ同一取引人ノ賣付ト買付トカ對立スルノ故ヲ以テ證據金ノ減額又ハ免除ヲ爲スコトヲ得ス
第二十九條 賣買取引ハ現物、見本又ハ銘柄ニ依リテ之ヲ爲スヘシ
大豆、高梁又ハ小麥ノ定期取引ニ限リ營業細則ノ定ムル所ニ依リ標準物ヲ定メ格付受渡ノ方法ヲ用井ルコトヲ得
前項ノ標準物ハ之ニ依リテ爲シタル定期取引ノ受渡期日ヲ經過シタル後六月間取引所之ヲ保管スヘシ
第三十條 株式會社組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル賣買取引ノ單位ハ營業細則ノ定ムル所ニ依ル
現物取引、延取引又ハ會員組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル賣買取引ニ付單位ヲ定メムトスルトキハ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三十一條 取引所ハ每日一定ノ時ニ於テ市場ヲ開クヘシ
開市及休業ニ關スル事項ハ營業細則ニ之ヲ規定スヘシ
第三十二條 取引所ハ營業細則ノ定ムル所ニ依リ立會ノ停止又ハ會員若ハ取引人ノ市場ニ於ケル賣買取引ノ差止ヲ爲スコトヲ得
第三十三條 受渡ハ營業細則ノ定ムル所ニ依リ取引所ヲ經テ之ヲ爲スヘシ
受渡場所ハ營業細則ノ定ムル所ニ依ル
第三十四條 取引所ハ營業細則ヲ設ケ賣買取引ノ方法ニ關スル細則ヲ規定スヘシ
營業細則ハ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
關東長官必要ト認ムルトキハ營業細則ヲ變更セシムルコトヲ得
第三十五條 取引所ハ其ノ定款ニ依リ賣買取引ニ付證據金ヲ納メシムルコトヲ得
第三十六條 取引所ハ賣買取引ノ責任ヲ履行セサル者アルトキハ其ノ證據金及身元保證金ヲ以テ損害賠償ノ用ニ供スルコトヲ得
第三十七條 株式會社組織ノ取引所ハ賣買取引ノ違約ヨリ生スル損害ニ付賠償ノ責ニ任スヘシ但シ現物取引又ハ延取引ノ違約ヨリ生スル損害ノ賠償ニ付テハ定款ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ取引所ハ其ノ賠償シタル金額及之ニ關スル諸費ノ追償ヲ違約者ニ要求スルコトヲ得
第三十八條 取引所ハ關東長官ノ認可ヲ受ケ賣買取引高ニ應シ賣買雙方ヨリ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第三十九條 取引所ハ證據金及身元保證金ニ付他ノ債主ニ對シ優先權ヲ有ス
第四十條 取引人ハ委託ヲ受ケタル取引所ノ定期取引ニ付取引所ニ於テ其ノ賣付、買付又ハ受渡ヲ爲サスシテ之ヲ爲シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以テ委託者ニ對シ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シタル取引人ニ對シテハ取引所ハ之ニ三月以上ノ營業停止ヲ命シ又ハ之ヲ除名スヘシ
第四十一條 取引所ハ關東長官ノ定ムル所ニ依リ公定相場ヲ決定シ之ヲ公示スヘシ
取引所ハ關東長官ノ定ムル所ニ依リ各取引人ノ賣買高ヲ公示スヘシ
第四十二條 株式會社組織ノ取引所ニハ賣買手數料ノ收入金額ニ對シ取引所營業稅ヲ課ス
第四十三條 取引所ニ於ケル定期取引ニハ其ノ賣買各約定高ニ對シ取引稅ヲ課ス但シ轉賣買戾ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
賣買ヲ解約スルモ其ノ稅金ハ之ヲ免除セス
第四十四條 取引所營業稅及取引稅ノ課率竝其ノ徵收ニ關シテハ關東長官之ヲ定ム
第四十五條 取引所ハ其ノ會員又ハ取引人ノ取引稅ノ納付ニ付保證ノ責ニ任ス
會員又ハ取引人納期內ニ取引稅ヲ納付セサルトキハ關東長官ハ取引所ヨリ之ヲ徵收スルコトヲ得
第四十六條 關東長官ハ取引所又ハ其ノ役員會員若ハ取引人ノ行爲カ法令ニ違反シタルトキ、公益ヲ害スト認ムルトキ又ハ公衆ノ安寧ニ妨害アリト認ムルトキハ取引所又ハ其ノ役員、會員若ハ取引人ニ對シ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 取引所ノ解散
二 取引所ノ停止
三 取引所ノ一部ノ停止又ハ禁止
四 役員ノ解職又ハ停職
五 會員又ハ取引人ノ營業停止又ハ除名
第四十七條 關東長官ハ必要ト認ムルトキハ官吏吏員ヲシテ取引所又ハ其ノ會員若ハ取引人ノ業務、帳簿、財產其ノ他一切ノ物件ノ檢査ヲ又ハ監督上必要ナル處分ヲ爲サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ取引所ノ役員、會員又ハ取引人ハ物件ヲ提供シ質問ニ應答スヘシ
第四十八條 關東長官ハ必要ト認ムルトキハ取引所ノ定款ヲ改正セシメ又ハ其ノ決議ノ取消若ハ其ノ處分ノ停止禁止取消ヲ爲スコトヲ得
第四十九條 取引所任意ノ解散ハ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第五十條 關東長官ハ本令ニ定ムルモノヲ除クノ外取引所ニ關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
附 則
本令施行ノ期日ハ關東長官之ヲ定ム
從前ノ規定ニ依リ設立シタル取引所ニシテ本令施行ノ際現ニ存スルモノニ付テハ同一地區ニ於テ同種ノ物件ヲ賣買取引スル取引所カ本令ニ依リ設立セラレ其ノ業務ヲ開始スル迄仍從前ノ規定ニ依ル
本令ニ依ル取引所カ其ノ業務ヲ開始シタルトキハ從前ノ規定ニ依ル前項ノ取引所ニ於テハ新ニ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ス但シ其ノ際受渡期限ノ到來セサル定期取引ニ付テハ仍轉賣買戾ヲ爲スコトヲ妨ケス
本令中取引稅ニ關スル規定ハ從前ノ規定ニ依ル取引所ニ於ケル賣買取引ニ之ヲ適用ス
朕関東州取引所令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年十二月十三日
内閣総理大臣 原敬
勅令第四百九十四号
関東州取引所令
第一条 関東州及南満洲鉄道附属地ニ於ケル取引所ノ設立ハ関東長官ノ免許ヲ受クヘシ
第二条 取引所ニ於テ売買取引スル物件ノ種類ハ関東長官之ヲ定ム
第三条 同種ノ物件ヲ売買取引スル取引所ハ一地区一箇所ニ限リ設立スルコトヲ得但シ其ノ地区ハ関東長官之ヲ定ム
第四条 取引所ノ免許年限ハ十年トス但シ出願ニ依リ関東長官ハ之ヲ更新スルコトヲ得
第五条 株式会社組織ノ取引所ハ資本金ノ十分ノ一ニ相当スル営業保証金ヲ供託スヘシ
取引所ハ前項ノ供託ヲ為シタル後ニ非サレハ取引所ノ業務ヲ行フコトヲ得ス営業保証金ニ不足ヲ生シタル場合ニ於テ関東長官ノ指定シタル期間内ニ其ノ不足額ヲ供託セサルトキ亦同シ
営業保証金ハ有価証券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得其ノ種類及代用価格ハ関東長官之ヲ指定ス
第六条 取引所ハ会員組織又ハ株式会社組織トス
第七条 取引所ニ於テハ其ノ取引所ノ会員又ハ取引人ニ限リ売買取引ヲ為スコトヲ得
会員又ハ取引人ハ其ノ市場代理人ヲ以テスルニ非サレハ取引所ノ市場ニ於テ売買取引ノ代理ヲ為サシムルコトヲ得ス
取引所ハ其ノ営業細則ニ市場代理人ニ関スル事項ヲ規定スヘシ
第八条 取引所ハ法人トシテ財産ヲ所有シ及之ヲ処分スルコトヲ得
取引所ノ責任ハ其ノ財産ニ限ルモノトス
第九条 取引所ハ関東長官ノ認可ヲ受ケ其ノ営業部類ニ属スル商品ノ倉庫ヲ設置シ及預証券、質入証券又ハ倉荷証券ヲ発行スルコトヲ得
取引所ハ其ノ預証券、質入証券又ハ倉荷証券ニ対シ前貸ヲ為スコト又ハ之ヲ買受クルコトヲ得ス
第十条 取引所ノ定款ハ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第十一条 取引人タラムトスル者ハ関東長官ノ免許ヲ受クヘシ
第十二条 会員ノ資格、除名及脱退並取引人ノ資格、免許失効及免許取消ニ関シテハ関東長官之ヲ定ム
第十三条 取引人ハ自己ノ計算ヲ以テスルト他人ノ計算ヲ以テスルトヲ問ハス取引所ニ対シ其ノ売買取引上一切ノ責任ヲ負フヘシ
第十四条 取引人ハ関東長官ノ定ムル所ニ依リ免許料ヲ納ムヘシ
第十五条 会員又ハ取引人ハ身元保証金ヲ其ノ取引所ニ納ムヘシ
身元保証金ノ金額ハ五千円ヲ下ルコトヲ得ス
身元保証金ハ取引所ノ定ムル所ニ依リ有価証券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得
関東長官必要ト認ムルトキハ前項ノ有価証券ノ種類又ハ其ノ代用価格ヲ変更セシムルコトヲ得
取引所身元保証金ヲ受取リタルトキハ遅滞ナク之ヲ供託スヘシ
第十六条 取引所ハ其ノ秩序ヲ保持スル為定款ノ規定ニ依リ会員又ハ取引人ニ対シ其ノ営業ヲ停止シ、千円以内ノ過怠金ヲ之ニ課シ、関東長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ除名スルコトヲ得
第十七条 取引所ハ其ノ定款ヲ以テ会員若ハ取引人ト為ルニ必要ナル条件ヲ定メ又ハ取引人ノ員数ヲ制限スルコトヲ得
第十八条 取引人ハ廃業後ト雖其ノ取引所ニ於ケル取引ノ結了及監督ノ目的ノ範囲内ニ於テハ取引結了後二週間ヲ経過スル迄仍廃業セサルモノト看做ス
取引人死亡シ若ハ除名セラレ又ハ其ノ免許カ取消サレ若ハ効力ヲ失ヒタル場合ニ於テハ其ノ取引所ニ於ケル取引ノ結了ニ至ル迄亦前項ニ同シ
前項ノ規定ハ会員ノ死亡、除名及脱退ノ場合ニ之ヲ準用ス
前三項ノ場合ニ於テ会員又ハ取引人ノ行為ヲ為ス者ナキトキハ取引所ハ定款ノ定ムル所ニ従ヒ他人ヲシテ其ノ行為ヲ為サシムルコトヲ得
第十九条 取引所ノ役員ハ定款ノ規定ニ依リ会員又ハ株主中ヨリ二年内ノ任期ヲ以テ之ヲ選挙シ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
取引所ノ役員左ノ如シ
理事長 一人
理事 二人以上
監査役 若干人
第二十条 取引所ノ取引人トノ間ニ資金ノ供与、損益ノ分配其ノ他取引人ノ営業ニ付特別ノ利害関係ヲ有スル者ハ其ノ取引所又ハ之ト同種ノ物件ヲ取引スル取引所ノ役員タルコトヲ得ス
役員カ取引人タルノ免許ヲ受ケタルトキハ其ノ職ヲ失フ理事長又ハ理事カ他ノ取引所ノ理事長又ハ理事タルノ認可ヲ受ケタルトキ亦同シ
関東長官ハ不正ノ手段ニ依リ役員タルノ認可ヲ受ケタル者又ハ第一項ノ規定ニ違反シテ役員タル者アルコトヲ発見シタルトキハ之ヲ解職スルコトヲ得
第二十一条 関東長官ハ役員ノ職務ヲ行フ者ナキ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ仮ニ役員ヲ選任スルコトヲ得
第二十二条 取引所ノ売買取引ハ現物取引、延取引及定期取引ノ三種トス
第二十三条 現物取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ二日内ニ於テ、延取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ三日以上百五十日内約定ノ日ニ於テ受渡ヲ為スヘシ但シ株式、国債、地方債、社債其ノ他有価証券ノ延取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ一月内約定ノ日ニ於テ受渡ヲ為スヘシ
受渡ヲ為スヘキ日カ休日ニ当ルトキハ其ノ翌日ニ於テ受渡ヲ為スヘシ
第二十四条 定期取引ハ三月内ニ於テ取引所ノ定メタル限月ニ依ルヘシ
株式、国債、地方債、社債其ノ他有価証券ノ定期取引ノ期間ハ一月内トス
第二十五条 現物取引、延取引及会員組織ノ取引所ノ定期取引ハ競売買ノ方法ニ依ルコトヲ得ス
転売買戻ハ競売買ノ方法ニ依ル定期取引ニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第二十六条 取引人ハ委託ヲ受ケタル定期取引ニ付其ノ委託者ノ指図ニ依ラスシテ転売又ハ買戻ヲ為スコトヲ得ス但シ営業細則ノ定ムル所ニ依リ提供スヘキ証拠金又ハ受渡物件若ハ受渡代金ヲ取引人ノ請求アルニ拘ラス委託者ニ於テ提供セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十七条 前条ノ規定ニ違反シテ転売又ハ買戻ヲ為シタル取引人ニ対シテハ取引所ハ之ニ三月以上ノ営業停止ヲ命シ又ハ之ヲ除名スヘシ
第二十八条 定期取引ニ付証拠金ヲ納メシムル取引所ハ同一取引人ノ売付ト買付トカ対立スルノ故ヲ以テ証拠金ノ減額又ハ免除ヲ為スコトヲ得ス
第二十九条 売買取引ハ現物、見本又ハ銘柄ニ依リテ之ヲ為スヘシ
大豆、高梁又ハ小麦ノ定期取引ニ限リ営業細則ノ定ムル所ニ依リ標準物ヲ定メ格付受渡ノ方法ヲ用井ルコトヲ得
前項ノ標準物ハ之ニ依リテ為シタル定期取引ノ受渡期日ヲ経過シタル後六月間取引所之ヲ保管スヘシ
第三十条 株式会社組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル売買取引ノ単位ハ営業細則ノ定ムル所ニ依ル
現物取引、延取引又ハ会員組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル売買取引ニ付単位ヲ定メムトスルトキハ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三十一条 取引所ハ毎日一定ノ時ニ於テ市場ヲ開クヘシ
開市及休業ニ関スル事項ハ営業細則ニ之ヲ規定スヘシ
第三十二条 取引所ハ営業細則ノ定ムル所ニ依リ立会ノ停止又ハ会員若ハ取引人ノ市場ニ於ケル売買取引ノ差止ヲ為スコトヲ得
第三十三条 受渡ハ営業細則ノ定ムル所ニ依リ取引所ヲ経テ之ヲ為スヘシ
受渡場所ハ営業細則ノ定ムル所ニ依ル
第三十四条 取引所ハ営業細則ヲ設ケ売買取引ノ方法ニ関スル細則ヲ規定スヘシ
営業細則ハ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
関東長官必要ト認ムルトキハ営業細則ヲ変更セシムルコトヲ得
第三十五条 取引所ハ其ノ定款ニ依リ売買取引ニ付証拠金ヲ納メシムルコトヲ得
第三十六条 取引所ハ売買取引ノ責任ヲ履行セサル者アルトキハ其ノ証拠金及身元保証金ヲ以テ損害賠償ノ用ニ供スルコトヲ得
第三十七条 株式会社組織ノ取引所ハ売買取引ノ違約ヨリ生スル損害ニ付賠償ノ責ニ任スヘシ但シ現物取引又ハ延取引ノ違約ヨリ生スル損害ノ賠償ニ付テハ定款ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ取引所ハ其ノ賠償シタル金額及之ニ関スル諸費ノ追償ヲ違約者ニ要求スルコトヲ得
第三十八条 取引所ハ関東長官ノ認可ヲ受ケ売買取引高ニ応シ売買双方ヨリ手数料ヲ徴収スルコトヲ得
第三十九条 取引所ハ証拠金及身元保証金ニ付他ノ債主ニ対シ優先権ヲ有ス
第四十条 取引人ハ委託ヲ受ケタル取引所ノ定期取引ニ付取引所ニ於テ其ノ売付、買付又ハ受渡ヲ為サスシテ之ヲ為シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以テ委託者ニ対シ其ノ決済ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シタル取引人ニ対シテハ取引所ハ之ニ三月以上ノ営業停止ヲ命シ又ハ之ヲ除名スヘシ
第四十一条 取引所ハ関東長官ノ定ムル所ニ依リ公定相場ヲ決定シ之ヲ公示スヘシ
取引所ハ関東長官ノ定ムル所ニ依リ各取引人ノ売買高ヲ公示スヘシ
第四十二条 株式会社組織ノ取引所ニハ売買手数料ノ収入金額ニ対シ取引所営業税ヲ課ス
第四十三条 取引所ニ於ケル定期取引ニハ其ノ売買各約定高ニ対シ取引税ヲ課ス但シ転売買戻ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
売買ヲ解約スルモ其ノ税金ハ之ヲ免除セス
第四十四条 取引所営業税及取引税ノ課率並其ノ徴収ニ関シテハ関東長官之ヲ定ム
第四十五条 取引所ハ其ノ会員又ハ取引人ノ取引税ノ納付ニ付保証ノ責ニ任ス
会員又ハ取引人納期内ニ取引税ヲ納付セサルトキハ関東長官ハ取引所ヨリ之ヲ徴収スルコトヲ得
第四十六条 関東長官ハ取引所又ハ其ノ役員会員若ハ取引人ノ行為カ法令ニ違反シタルトキ、公益ヲ害スト認ムルトキ又ハ公衆ノ安寧ニ妨害アリト認ムルトキハ取引所又ハ其ノ役員、会員若ハ取引人ニ対シ左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 取引所ノ解散
二 取引所ノ停止
三 取引所ノ一部ノ停止又ハ禁止
四 役員ノ解職又ハ停職
五 会員又ハ取引人ノ営業停止又ハ除名
第四十七条 関東長官ハ必要ト認ムルトキハ官吏吏員ヲシテ取引所又ハ其ノ会員若ハ取引人ノ業務、帳簿、財産其ノ他一切ノ物件ノ検査ヲ又ハ監督上必要ナル処分ヲ為サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ取引所ノ役員、会員又ハ取引人ハ物件ヲ提供シ質問ニ応答スヘシ
第四十八条 関東長官ハ必要ト認ムルトキハ取引所ノ定款ヲ改正セシメ又ハ其ノ決議ノ取消若ハ其ノ処分ノ停止禁止取消ヲ為スコトヲ得
第四十九条 取引所任意ノ解散ハ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第五十条 関東長官ハ本令ニ定ムルモノヲ除クノ外取引所ニ関シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
附 則
本令施行ノ期日ハ関東長官之ヲ定ム
従前ノ規定ニ依リ設立シタル取引所ニシテ本令施行ノ際現ニ存スルモノニ付テハ同一地区ニ於テ同種ノ物件ヲ売買取引スル取引所カ本令ニ依リ設立セラレ其ノ業務ヲ開始スル迄仍従前ノ規定ニ依ル
本令ニ依ル取引所カ其ノ業務ヲ開始シタルトキハ従前ノ規定ニ依ル前項ノ取引所ニ於テハ新ニ売買取引ヲ為スコトヲ得ス但シ其ノ際受渡期限ノ到来セサル定期取引ニ付テハ仍転売買戻ヲ為スコトヲ妨ケス
本令中取引税ニ関スル規定ハ従前ノ規定ニ依ル取引所ニ於ケル売買取引ニ之ヲ適用ス