華族世襲財産法
法令番号: 法律第四十五號
公布年月日: 大正5年9月20日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル華族世襲財產法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正五年九月十九日
內閣總理大臣 侯爵 大隈重信
司法大臣 尾崎行雄
法律第四十五號
華族世襲財產法
第一條 有爵者ハ其ノ家格ヲ維持スルニ必要ナル範圍內ニ於テ世襲財產ヲ設定スルコトヲ得
第二條 世襲財產ノ設定ハ遺言ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第三條 世襲財產ハ家寶、不動產、登錄國債又ハ記名ノ有價證券ニ限ル
第四條 世襲財產ヲ設定セムトスルトキハ其ノ財產ノ目錄ヲ添ヘ宮內大臣ニ認可ヲ申請スヘシ
第五條 有爵者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人、準禁治產者ナルトキハ其ノ保佐人ハ豫メ家政協議員會ノ決議ヲ經テ世襲財產設定ノ認可ヲ申請スルコトヲ得
有爵者カ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ家產ヲ治ムルニ堪ヘス又ハ之ヲ傾クルノ虞アルトキハ家政協議員會ハ本人ニ代リテ前項ノ認可ヲ申請スルコトヲ得
家政協議員會ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
第六條 世襲財產設定ノ認可ノ申請アリタルトキハ宮內大臣ハ其ノ當否ヲ調査スヘシ
前項ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ宮內大臣ハ本人ノ財產ノ狀況ヲ調査スルコトヲ得
第七條 宮內大臣ハ世襲財產設定ノ認可ノ申請ヲ相當ナリト認ムルトキハ其ノ申請アリタル旨ヲ一週間公吿スヘシ
前項ノ公吿ニハ土地ニ付テハ其ノ所在地目及面積、建物ニ付テハ其ノ所在種類構造及建坪其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類箇數其ノ他必要ナル事項ヲ揭クヘシ
第八條 前條ノ規定ニ依リ公吿シタル財產ニ關シ權利ヲ有スル者及債權者ハ前條第一項ノ公吿期間內又ハ其ノ期間滿了後二月內ニ之ヲ宮內大臣ニ申出ツヘシ
世襲財產設定ノ認可ハ前項ニ定メタル期間滿了ノ後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第九條 宮內大臣ハ世襲財產設定ノ認可ノ申請ノ全部又ハ一部ヲ認可スヘカラサル理由アリト認ムルトキハ華族世襲財產審議會ニ諮詢スヘシ
華族世襲財產審議會ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
第十條 宮內大臣ハ世襲財產ノ設定ヲ認可シタルトキハ其ノ旨及第七條第二項ニ揭クル事項ヲ公吿スヘシ
第十一條 前十條ノ規定ハ世襲財產ヲ增加スル場合ニ亦之ヲ適用ス
第十二條 宮內大臣ハ華族世襲財產臺帳ヲ設ケ世襲財產ニ關スル事項ヲ登錄スヘシ
第十三條 世襲財產タル登錄國債ニ付テハ國債登錄簿ニ世襲財產タル旨ヲ登錄シ有價證券ニ付テハ宮內大臣ハ之ニ世襲財產タル旨ヲ記入スヘシ
株券及社債券ニ付テハ前項ノ規定ニ依ルノ外株主名簿又ハ社債原簿ニ世襲財產タル旨ヲ記入スヘシ
登錄國債又ハ有價證券ノ世襲財產タル效力ハ前二項ノ手續ヲ踐ミタル後ニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十四條 世襲財產ノ效力ヲ第三者ニ對抗スルコトヲ得ルニ至リタル日以後ハ其ノ前ノ原因ニ基キ世襲財產ニ付所有權、質權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ確定判決又ハ確定日附アル證書ニ依リテノミ其ノ權利ヲ主張スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ權利ヲ主張セムトスル者ハ其ノ旨ヲ宮內大臣ニ申出ツヘシ
第十五條 世襲財產ハ家督相續ノ特權ニ屬ス
第十六條 世襲財產及其ノ法定果實ヲ收取スル權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ質權若ハ抵當權ノ目的ト爲スコトヲ得ス株券カ世襲財產タル場合ニ於テ利益又ハ利息ノ配當ヲ受クル權利ニ付亦同シ
第十七條 土地カ世襲財產タル場合ニ於テ地上權又ハ永小作權ノ設定又ハ變更ハ宮內大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第十八條 世襲財產及第十六條ニ揭クル權利ハ世襲財產ノ管理ニ因リテ生シタル權利及不法行爲ニ因ル損害賠償ノ請求權ニ基ク場合ヲ除クノ外民事上ノ强制執行ノ目的ヲ以テ之ヲ差押ヘ又ハ一般ノ先取特權ニ基キ之ヲ競賣スルコトヲ得ス
世襲財產ノ果實及第十六條ノ利益又ハ利息カ他ノ財產ト混合セサル間其ノ三分ノ二ニ付亦前項ニ同シ
前二項ノ規定ハ世襲財產ノ效力ヲ第三者ニ對抗スルコトヲ得ルニ至リタル日前ニ爲シタル假差押ニ基キ差押ヲ爲シ又ハ一般ノ先取特權ニ基キ著手シタル競賣ヲ續行スルコトヲ妨ケス
第十九條 世襲財產ハ重大ナル事由アルトキニ限リ其ノ一部ヲ廢止スルコトヲ得
世襲財產ハ他ノ世襲財產ニ換フル爲其ノ全部又ハ一部ヲ廢止スルコトヲ得
第四條、第五條第一項及第六條ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十條 宮內大臣ハ世襲財產ノ廢止ヲ認可スヘキヤ否ヤニ付華族世襲財產審議會ニ諮詢スヘシ
第二十一條 第十九條第二項ノ規定ニ依リ世襲財產ヲ廢止シタル場合ニ於テハ廢止ノ認可ヲ受ケタル者又ハ其ノ家督相續人ハ認可アリタル日ヨリ六月內ニ世襲財產設定ノ認可ヲ申請スヘシ
前項ノ期間內ニ申請ヲ爲ササルトキハ宮內大臣ハ相當ノ期間ヲ定メ其ノ申請ヲ爲スヘキ旨ヲ命スルコトヲ得
第二十二條 世襲財產カ收用、滯納處分、償還、滅失、競賣其ノ他ノ事由ニ因リ他ノ財產ニ代リタルトキハ所有者ハ其ノ財產ヲ以テ世襲財產ヲ補充スヘシ此ノ場合ニ於テハ前條第一項ノ規定ヲ準用ス
世襲財產ニ代リタル財產ニシテ他ノ財產ト混合セサルモノニ付テハ第十八條第一項ノ規定ヲ準用ス
宮內大臣ハ相當ノ事由アリト認ムルトキハ前條第一項ノ認可ノ申請ヲ免除スルコトヲ得
第二十三條 前二條ノ場合ニ於テ宮內大臣ハ必要アリト認ムルトキハ管理人ヲ選任シ世襲財產タリシ財產又ハ前條ノ財產及其ノ財產ノ處分ニ因リテ得タル財產ヲ管理セシムルコトヲ得果實又ハ配當ヲ受ケタル利益若ハ利息ニシテ管理財產ト混合シタルモノニ付亦同シ
宮內大臣ハ管理人ヲ改任シ其ノ他財產ノ管理ニ付必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十四條 管理人ノ選任アリタル場合ニ於テ本人、其ノ法定代理人又ハ保佐人カ世襲財產設定ノ認可ヲ申請セサルトキハ管理人ハ遲滯ナク管理財產ニ付其ノ申請ヲ爲スヘシ
第二十五條 管理財產ハ管理人ニ於テノミ之ヲ處分シ又ハ管理ニ因リテ生シタル權利若ハ不法行爲ニ因ル損害賠償ノ請求權ニ基キテノミ民事上ノ强制執行若ハ競賣ヲ爲スコトヲ得
第十六條及第十八條第二項ノ規定ハ管理財產ノ果實ニ之ヲ準用ス管理財產中株券アル場合ニ於テ利益又ハ利息ニ付亦同シ
第二十六條 有爵者爵ヲ失ヒ又ハ襲爵者ナキコト確定シタルトキハ世襲財產ハ失爵又ハ家督相續開始ノ時ヨリ其ノ效力ヲ失フ
第二十七條 世襲財產ニ付第十四條第二項ノ申出アリタル後二月內ニ主張ニ係ル權利ヲ消滅セシメ又ハ主張ニ對シ訴ヲ提起セサルトキハ其ノ財產ハ初ヨリ世襲財產タル效力ヲ失フ
前項ノ期間內ハ主張ニ係ル權利ニ基キテ競賣ヲ爲スコトヲ得ス
第二十八條 第二十三條乃至第二十五條ノ規定ハ前條第一項ノ規定ニ依リテ世襲財產タル效力ヲ失ヒタル財產アル場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ財產ニ代リ其ノ所有者ニ歸シタル財產アル場合ニ於テハ第二十二條ノ規定ヲ準用ス
第二十九條 世襲財產ノ廢止、失效其ノ他ノ異動アリタルトキハ宮內大臣ハ其ノ旨ヲ公吿スヘシ管理人ヲ選任又ハ改任シタルトキ亦同シ
第七條第二項ノ規定ハ前項ノ公吿ニ之ヲ準用ス
登錄國債又ハ有價證券ニ付世襲財產ノ廢止又ハ失效アリタルトキハ第十三條ノ登錄又ハ記入ヲ抹消スヘシ
第三十條 管理財產中登錄國債アルトキハ國債登錄簿ニ管理財產タル旨ヲ登錄シ管理終了シタルトキハ其ノ登錄ヲ抹消スヘシ
第十三條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十一條 世襲財產ニ關スル公吿、登記又ハ登錄ノ費用ハ其ノ名義人ノ負擔トス
第三十二條 宮內大臣ハ必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ世襲財產ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
宮內大臣ハ世襲財產ノ管理ニ付必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第三十三條 本法ノ施行ニ關スル規程ハ宮內大臣之ヲ定ム
附 則
從前ノ規定ニ依ル世襲財產及其ノ附屬物ハ本法ニ依ル世襲財產ト看做ス
本法施行ノ際從前ノ規定ニ依リ世襲財產ノ純收益ニ付他人ノ有スル權利ハ本法施行後ト雖仍其ノ效力ヲ有ス本法施行前著手シタル差押又ハ假差押ニ付亦同シ
不動產登記法第百四條中「創設」ヲ「設定」ニ改メ同條ニ左ノ二項ヲ加ヘ同法第百四十三條中「解除ヲ認可シタルトキ」ヲ「廢止又ハ失效アリタルトキ」ニ、「創設」ヲ「設定」ニ改ム
華族世襲財產法第二十三條又ハ第二十八條ノ規定ニ依ル管理財產中不動產アルトキハ當該官廳ハ遲滯ナク管理財產タル旨ノ登記ヲ登記所ニ囑託シ管理終了シタルトキハ其登記ノ抹消ヲ囑託スルコトヲ要ス
管理人カ其管理中取得シタル不動產ニ付テハ取得ノ登記ト共ニ管理財產タル旨ノ登記ヲ申請シ管理終了シタルトキハ其登記ノ抹消ヲ申請スルコトヲ要ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル華族世襲財産法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正五年九月十九日
内閣総理大臣 侯爵 大隈重信
司法大臣 尾崎行雄
法律第四十五号
華族世襲財産法
第一条 有爵者ハ其ノ家格ヲ維持スルニ必要ナル範囲内ニ於テ世襲財産ヲ設定スルコトヲ得
第二条 世襲財産ノ設定ハ遺言ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第三条 世襲財産ハ家宝、不動産、登録国債又ハ記名ノ有価証券ニ限ル
第四条 世襲財産ヲ設定セムトスルトキハ其ノ財産ノ目録ヲ添ヘ宮内大臣ニ認可ヲ申請スヘシ
第五条 有爵者カ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人、準禁治産者ナルトキハ其ノ保佐人ハ予メ家政協議員会ノ決議ヲ経テ世襲財産設定ノ認可ヲ申請スルコトヲ得
有爵者カ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ家産ヲ治ムルニ堪ヘス又ハ之ヲ傾クルノ虞アルトキハ家政協議員会ハ本人ニ代リテ前項ノ認可ヲ申請スルコトヲ得
家政協議員会ニ関スル規程ハ宮内大臣之ヲ定ム
第六条 世襲財産設定ノ認可ノ申請アリタルトキハ宮内大臣ハ其ノ当否ヲ調査スヘシ
前項ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ宮内大臣ハ本人ノ財産ノ状況ヲ調査スルコトヲ得
第七条 宮内大臣ハ世襲財産設定ノ認可ノ申請ヲ相当ナリト認ムルトキハ其ノ申請アリタル旨ヲ一週間公告スヘシ
前項ノ公告ニハ土地ニ付テハ其ノ所在地目及面積、建物ニ付テハ其ノ所在種類構造及建坪其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類箇数其ノ他必要ナル事項ヲ掲クヘシ
第八条 前条ノ規定ニ依リ公告シタル財産ニ関シ権利ヲ有スル者及債権者ハ前条第一項ノ公告期間内又ハ其ノ期間満了後二月内ニ之ヲ宮内大臣ニ申出ツヘシ
世襲財産設定ノ認可ハ前項ニ定メタル期間満了ノ後ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第九条 宮内大臣ハ世襲財産設定ノ認可ノ申請ノ全部又ハ一部ヲ認可スヘカラサル理由アリト認ムルトキハ華族世襲財産審議会ニ諮詢スヘシ
華族世襲財産審議会ニ関スル規程ハ宮内大臣之ヲ定ム
第十条 宮内大臣ハ世襲財産ノ設定ヲ認可シタルトキハ其ノ旨及第七条第二項ニ掲クル事項ヲ公告スヘシ
第十一条 前十条ノ規定ハ世襲財産ヲ増加スル場合ニ亦之ヲ適用ス
第十二条 宮内大臣ハ華族世襲財産台帳ヲ設ケ世襲財産ニ関スル事項ヲ登録スヘシ
第十三条 世襲財産タル登録国債ニ付テハ国債登録簿ニ世襲財産タル旨ヲ登録シ有価証券ニ付テハ宮内大臣ハ之ニ世襲財産タル旨ヲ記入スヘシ
株券及社債券ニ付テハ前項ノ規定ニ依ルノ外株主名簿又ハ社債原簿ニ世襲財産タル旨ヲ記入スヘシ
登録国債又ハ有価証券ノ世襲財産タル効力ハ前二項ノ手続ヲ践ミタル後ニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第十四条 世襲財産ノ効力ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ルニ至リタル日以後ハ其ノ前ノ原因ニ基キ世襲財産ニ付所有権、質権又ハ抵当権ヲ有スル者ハ確定判決又ハ確定日附アル証書ニ依リテノミ其ノ権利ヲ主張スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ権利ヲ主張セムトスル者ハ其ノ旨ヲ宮内大臣ニ申出ツヘシ
第十五条 世襲財産ハ家督相続ノ特権ニ属ス
第十六条 世襲財産及其ノ法定果実ヲ収取スル権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ質権若ハ抵当権ノ目的ト為スコトヲ得ス株券カ世襲財産タル場合ニ於テ利益又ハ利息ノ配当ヲ受クル権利ニ付亦同シ
第十七条 土地カ世襲財産タル場合ニ於テ地上権又ハ永小作権ノ設定又ハ変更ハ宮内大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第十八条 世襲財産及第十六条ニ掲クル権利ハ世襲財産ノ管理ニ因リテ生シタル権利及不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求権ニ基ク場合ヲ除クノ外民事上ノ強制執行ノ目的ヲ以テ之ヲ差押ヘ又ハ一般ノ先取特権ニ基キ之ヲ競売スルコトヲ得ス
世襲財産ノ果実及第十六条ノ利益又ハ利息カ他ノ財産ト混合セサル間其ノ三分ノ二ニ付亦前項ニ同シ
前二項ノ規定ハ世襲財産ノ効力ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ルニ至リタル日前ニ為シタル仮差押ニ基キ差押ヲ為シ又ハ一般ノ先取特権ニ基キ著手シタル競売ヲ続行スルコトヲ妨ケス
第十九条 世襲財産ハ重大ナル事由アルトキニ限リ其ノ一部ヲ廃止スルコトヲ得
世襲財産ハ他ノ世襲財産ニ換フル為其ノ全部又ハ一部ヲ廃止スルコトヲ得
第四条、第五条第一項及第六条ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十条 宮内大臣ハ世襲財産ノ廃止ヲ認可スヘキヤ否ヤニ付華族世襲財産審議会ニ諮詢スヘシ
第二十一条 第十九条第二項ノ規定ニ依リ世襲財産ヲ廃止シタル場合ニ於テハ廃止ノ認可ヲ受ケタル者又ハ其ノ家督相続人ハ認可アリタル日ヨリ六月内ニ世襲財産設定ノ認可ヲ申請スヘシ
前項ノ期間内ニ申請ヲ為ササルトキハ宮内大臣ハ相当ノ期間ヲ定メ其ノ申請ヲ為スヘキ旨ヲ命スルコトヲ得
第二十二条 世襲財産カ収用、滞納処分、償還、滅失、競売其ノ他ノ事由ニ因リ他ノ財産ニ代リタルトキハ所有者ハ其ノ財産ヲ以テ世襲財産ヲ補充スヘシ此ノ場合ニ於テハ前条第一項ノ規定ヲ準用ス
世襲財産ニ代リタル財産ニシテ他ノ財産ト混合セサルモノニ付テハ第十八条第一項ノ規定ヲ準用ス
宮内大臣ハ相当ノ事由アリト認ムルトキハ前条第一項ノ認可ノ申請ヲ免除スルコトヲ得
第二十三条 前二条ノ場合ニ於テ宮内大臣ハ必要アリト認ムルトキハ管理人ヲ選任シ世襲財産タリシ財産又ハ前条ノ財産及其ノ財産ノ処分ニ因リテ得タル財産ヲ管理セシムルコトヲ得果実又ハ配当ヲ受ケタル利益若ハ利息ニシテ管理財産ト混合シタルモノニ付亦同シ
宮内大臣ハ管理人ヲ改任シ其ノ他財産ノ管理ニ付必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十四条 管理人ノ選任アリタル場合ニ於テ本人、其ノ法定代理人又ハ保佐人カ世襲財産設定ノ認可ヲ申請セサルトキハ管理人ハ遅滞ナク管理財産ニ付其ノ申請ヲ為スヘシ
第二十五条 管理財産ハ管理人ニ於テノミ之ヲ処分シ又ハ管理ニ因リテ生シタル権利若ハ不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求権ニ基キテノミ民事上ノ強制執行若ハ競売ヲ為スコトヲ得
第十六条及第十八条第二項ノ規定ハ管理財産ノ果実ニ之ヲ準用ス管理財産中株券アル場合ニ於テ利益又ハ利息ニ付亦同シ
第二十六条 有爵者爵ヲ失ヒ又ハ襲爵者ナキコト確定シタルトキハ世襲財産ハ失爵又ハ家督相続開始ノ時ヨリ其ノ効力ヲ失フ
第二十七条 世襲財産ニ付第十四条第二項ノ申出アリタル後二月内ニ主張ニ係ル権利ヲ消滅セシメ又ハ主張ニ対シ訴ヲ提起セサルトキハ其ノ財産ハ初ヨリ世襲財産タル効力ヲ失フ
前項ノ期間内ハ主張ニ係ル権利ニ基キテ競売ヲ為スコトヲ得ス
第二十八条 第二十三条乃至第二十五条ノ規定ハ前条第一項ノ規定ニ依リテ世襲財産タル効力ヲ失ヒタル財産アル場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ財産ニ代リ其ノ所有者ニ帰シタル財産アル場合ニ於テハ第二十二条ノ規定ヲ準用ス
第二十九条 世襲財産ノ廃止、失効其ノ他ノ異動アリタルトキハ宮内大臣ハ其ノ旨ヲ公告スヘシ管理人ヲ選任又ハ改任シタルトキ亦同シ
第七条第二項ノ規定ハ前項ノ公告ニ之ヲ準用ス
登録国債又ハ有価証券ニ付世襲財産ノ廃止又ハ失効アリタルトキハ第十三条ノ登録又ハ記入ヲ抹消スヘシ
第三十条 管理財産中登録国債アルトキハ国債登録簿ニ管理財産タル旨ヲ登録シ管理終了シタルトキハ其ノ登録ヲ抹消スヘシ
第十三条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十一条 世襲財産ニ関スル公告、登記又ハ登録ノ費用ハ其ノ名義人ノ負担トス
第三十二条 宮内大臣ハ必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ世襲財産ノ検査ヲ為サシムルコトヲ得
宮内大臣ハ世襲財産ノ管理ニ付必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第三十三条 本法ノ施行ニ関スル規程ハ宮内大臣之ヲ定ム
附 則
従前ノ規定ニ依ル世襲財産及其ノ附属物ハ本法ニ依ル世襲財産ト看做ス
本法施行ノ際従前ノ規定ニ依リ世襲財産ノ純収益ニ付他人ノ有スル権利ハ本法施行後ト雖仍其ノ効力ヲ有ス本法施行前著手シタル差押又ハ仮差押ニ付亦同シ
不動産登記法第百四条中「創設」ヲ「設定」ニ改メ同条ニ左ノ二項ヲ加ヘ同法第百四十三条中「解除ヲ認可シタルトキ」ヲ「廃止又ハ失効アリタルトキ」ニ、「創設」ヲ「設定」ニ改ム
華族世襲財産法第二十三条又ハ第二十八条ノ規定ニ依ル管理財産中不動産アルトキハ当該官庁ハ遅滞ナク管理財産タル旨ノ登記ヲ登記所ニ嘱託シ管理終了シタルトキハ其登記ノ抹消ヲ嘱託スルコトヲ要ス
管理人カ其管理中取得シタル不動産ニ付テハ取得ノ登記ト共ニ管理財産タル旨ノ登記ヲ申請シ管理終了シタルトキハ其登記ノ抹消ヲ申請スルコトヲ要ス