輸出入植物取締法
法令番号: 法律第十一號
公布年月日: 大正3年3月26日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル輸出入植物取締法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月二十五日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
農商務大臣 山本達雄
法律第十一號
輸出入植物取締法
第一條 植物ヲ輸入移入輪出又ハ移出スル者ハ其ノ植物及其ノ容器包裝ニ使用シタル物ニ付植物檢査官吏ノ檢査ヲ受クルコトヲ要ス
前項ノ檢査ハ取締止必要ナシト認ムル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ省略スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ違反シテ輸入又ハ移入シタル物ハ之ヲ收受スルコトヲ得ス
第一項ノ規定ニ依リ檢査ヲ受クヘキ植物ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 植物檢査官吏ハ前條ノ檢査ヲ爲ス場合ニ於テ病菌又ハ害蟲ノ附著セル虞アリト認ムルトキハ前條ニ揭ケサル物ニ付テモ檢査ヲ爲スコトヲ得
第三條 病菌又ハ害蟲ハ主務大臣ノ許可ヲ得且植物檢査官吏ノ檢査ヲ受クルニ非サレハ之ヲ輸入又ハ移入スルコトヲ得ス
第四條 檢査ハ勅令ヲ以テ指定スル海港ニ於テ之ヲ行フ
檢査ノ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 植物檢査官吏ハ檢査ノ結果病菌又ハ害蟲附著スト認メタル植物其ノ他ノ物ヲ消毒又ハ燒棄シ、其ノ輸入移入輪出又ハ移出ヲ禁止シ其ノ他必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得但シ當事者ニ於テ病菌又ハ害蟲傳播ノ虞ナキ方法ニ依リ處置セムコトヲ請フトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
第六條 植物檢査官吏ハ本法ノ檢査ヲ受クヘキ植物其ノ他ノ物ヲ積載シ又ハ積載セル疑アル船舶ニ臨檢スルコトヲ得
植物檢査官吏ハ檢査ノ爲必要アリト認ムルトキハ前項ノ物ノ陸揚又ハ轉載ヲ停止スルコトヲ得
第七條 主務大臣ハ病菌又ハ害蟲ノ傳播ヲ防止スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ヲ以テ特定ノ地ヨリ發送シ又ハ之ヲ經由シタル植物又ハ病菌若ハ害蟲ノ附著セル虞アル物ノ輸入移入又ハ收受ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得
第八條 植物檢査官吏、稅關官吏又ハ警察官吏本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反スル者アリト認ムルトキハ臨檢尋問搜索若ハ差押ヲ爲シ又ハ其ノ違反ニ係ル物ヲ消毒若ハ燒棄シ其ノ他必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
臨檢尋問搜索又ハ差押ニ關シテハ間接國稅犯則者處分法ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ於テ病菌又ハ害蟲傳播ノ虞ナキ方法ニ依リ處置セラレタル物ニ付テハ第一條第三項ノ規定ヲ適用セス
第九條 第五條及前條第一項ノ處分ニ必要ナル費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ當事者ヲシテ其ノ一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第十條 本法ニ於テ病菌又ハ害蟲ト稱スルハ植物ヲ害スル菌類又ハ蟲類ヲ謂フ
病菌又ハ害蟲ニ非サル動植物ト雖主務大臣ニ於テ植物ヲ害シ又ハ害スル虞アリト認ムルモノハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ病菌又ハ害蟲ト看做ス
第十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 詐僞ノ行爲ヲ以テ檢査ヲ免レタル者
二 檢査ヲ受クルニ當リ詐僞ノ行爲アリタル者
三 第五條但書ノ場合ニ於テ許可ノ條件ニ違反シタル者
四 第六條ノ停止又ハ第七條ノ禁止若ハ制限ニ違反シタル者
第十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第一條第一項又ハ第三項ノ規定ニ違反シタル者
二 許可又ハ檢査ヲ受ケスシテ病菌又ハ害蟲ヲ輸入又ハ移入シタル者
三 第三條ノ許可ノ條件ニ違反シタル者
第十三條 本法ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避シタル者又ハ臨檢搜索ノ爲ニスル尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十四條 輸入者移入者輸出者移出者又ハ收受者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スヘキ罰則ハ其ノ業務ニ關スル行爲ニ付テハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 輸入者移入者輸出者移出者收受者又ハ船長ハ其ノ代理人戶主家族同居者雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第十六條 明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ第七條及其ノ罰則ニ關スル規定ハ全部ノ施行ニ先チ之ヲ施行スルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル輸出入植物取締法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月二十五日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
農商務大臣 山本達雄
法律第十一号
輸出入植物取締法
第一条 植物ヲ輸入移入輪出又ハ移出スル者ハ其ノ植物及其ノ容器包装ニ使用シタル物ニ付植物検査官吏ノ検査ヲ受クルコトヲ要ス
前項ノ検査ハ取締止必要ナシト認ムル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ省略スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ違反シテ輸入又ハ移入シタル物ハ之ヲ収受スルコトヲ得ス
第一項ノ規定ニ依リ検査ヲ受クヘキ植物ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 植物検査官吏ハ前条ノ検査ヲ為ス場合ニ於テ病菌又ハ害虫ノ附著セル虞アリト認ムルトキハ前条ニ掲ケサル物ニ付テモ検査ヲ為スコトヲ得
第三条 病菌又ハ害虫ハ主務大臣ノ許可ヲ得且植物検査官吏ノ検査ヲ受クルニ非サレハ之ヲ輸入又ハ移入スルコトヲ得ス
第四条 検査ハ勅令ヲ以テ指定スル海港ニ於テ之ヲ行フ
検査ノ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 植物検査官吏ハ検査ノ結果病菌又ハ害虫附著スト認メタル植物其ノ他ノ物ヲ消毒又ハ焼棄シ、其ノ輸入移入輪出又ハ移出ヲ禁止シ其ノ他必要ナル処分ヲ為スコトヲ得但シ当事者ニ於テ病菌又ハ害虫伝播ノ虞ナキ方法ニ依リ処置セムコトヲ請フトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
第六条 植物検査官吏ハ本法ノ検査ヲ受クヘキ植物其ノ他ノ物ヲ積載シ又ハ積載セル疑アル船舶ニ臨検スルコトヲ得
植物検査官吏ハ検査ノ為必要アリト認ムルトキハ前項ノ物ノ陸揚又ハ転載ヲ停止スルコトヲ得
第七条 主務大臣ハ病菌又ハ害虫ノ伝播ヲ防止スル為必要アリト認ムルトキハ命令ヲ以テ特定ノ地ヨリ発送シ又ハ之ヲ経由シタル植物又ハ病菌若ハ害虫ノ附著セル虞アル物ノ輸入移入又ハ収受ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得
第八条 植物検査官吏、税関官吏又ハ警察官吏本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反スル者アリト認ムルトキハ臨検尋問捜索若ハ差押ヲ為シ又ハ其ノ違反ニ係ル物ヲ消毒若ハ焼棄シ其ノ他必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
臨検尋問捜索又ハ差押ニ関シテハ間接国税犯則者処分法ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ於テ病菌又ハ害虫伝播ノ虞ナキ方法ニ依リ処置セラレタル物ニ付テハ第一条第三項ノ規定ヲ適用セス
第九条 第五条及前条第一項ノ処分ニ必要ナル費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ当事者ヲシテ其ノ一部ヲ負担セシムルコトヲ得
第十条 本法ニ於テ病菌又ハ害虫ト称スルハ植物ヲ害スル菌類又ハ虫類ヲ謂フ
病菌又ハ害虫ニ非サル動植物ト雖主務大臣ニ於テ植物ヲ害シ又ハ害スル虞アリト認ムルモノハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ病菌又ハ害虫ト看做ス
第十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 詐偽ノ行為ヲ以テ検査ヲ免レタル者
二 検査ヲ受クルニ当リ詐偽ノ行為アリタル者
三 第五条但書ノ場合ニ於テ許可ノ条件ニ違反シタル者
四 第六条ノ停止又ハ第七条ノ禁止若ハ制限ニ違反シタル者
第十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第一条第一項又ハ第三項ノ規定ニ違反シタル者
二 許可又ハ検査ヲ受ケスシテ病菌又ハ害虫ヲ輸入又ハ移入シタル者
三 第三条ノ許可ノ条件ニ違反シタル者
第十三条 本法ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避シタル者又ハ臨検捜索ノ為ニスル尋問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十四条 輸入者移入者輸出者移出者又ハ収受者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ適用スヘキ罰則ハ其ノ業務ニ関スル行為ニ付テハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五条 輸入者移入者輸出者移出者収受者又ハ船長ハ其ノ代理人戸主家族同居者雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第十六条 明治三十三年法律第五十二号ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ第七条及其ノ罰則ニ関スル規定ハ全部ノ施行ニ先チ之ヲ施行スルコトヲ得