樺太官有財産管理規則
法令番号: 勅令第二百八十九號
公布年月日: 明治44年12月23日
法令の形式: 勅令
朕樺太官有財產管理規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年十二月二十二日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
大藏大臣 山本達雄
勅令第二百八十九號
樺太官有財產管理規則
第一條 本令ニ於テ官有財產ト稱スルハ國有ノ不動產、船舶及其ノ附屬物ヲ謂フ
第二條 樺太廳長官所轄ノ官有財產ハ本令ニ依リ樺太廳長官之ヲ管理及處分ス
第三條 公用中ノ官有財產ハ賣拂、貸付、讓與又ハ交換スルコトヲ得ス
前項ノ官有財產ハ公用ヲ妨ケサル場合ニ限リ其ノ使用ヲ許可スルコトヲ得
第四條 官有財產ハ其ノ管理又ハ處分ニ關係アル職員ニ對シ之ヲ賣拂、貸付、讓與又ハ交換スルコトヲ得ス
第五條 官有財產ノ賣拂又ハ貸付ハ左ノ場合ニ限リ隨意契約ニ依ルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ニ供スル爲公共團體又ハ其ノ起業者ニ賣拂又ハ貸付スルトキ
二 鑛業、漁業又ハ林業ニ直接附隨シテ必要ナル土地又ハ工作物ヲ其ノ起業者ニ賣拂又ハ貸付スルトキ
三 官設事業ニ直接附隨スル事業ノ爲必要ナル土地又ハ工作物ヲ其ノ起業者ニ貸付スルトキ
四 移住民ニ對シ其ノ居住上必要ナル土地又ハ工作物ヲ賣拂又ハ貸付スルトキ
五 一箇所ニ付二百坪以下ニシテ評定價額五百圓以下ノ土地ヲ賣拂フトキ
六 一箇所ニ付二百坪以下ニシテ一年ノ見積貸付料百圓以下ノ土地ヲ五年內ノ期間ヲ以テ貸付スルトキ
第六條 官有財產ヲ賣拂ヒタルトキハ其ノ代金完納後ニ非サレハ之ヲ引渡スコトヲ得ス
第七條 官有財產ハ無料ニテ貸付シ又ハ使用ヲ許可スルコトヲ得ス但シ左ニ揭クル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 公用ニ供シ又ハ營利ヲ目的トセサル公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ノ爲必要ナルトキ
二 移住民ニ對シ其ノ居住上必要ナル土地又ハ工作物ヲ貸付スルトキ
第八條 官有財產ノ貸付料又ハ使用料ハ每年之ヲ前納セシムヘシ但シ相當ノ保證ヲ立テ又ハ擔保ヲ供シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條 官有財產ノ貸付ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 土地ハ二十年
二 其ノ他ノ物件ハ三年
土地利用ノ爲必要ナル定著物ヲ土地ト共ニ貸付スルトキハ其ノ土地ノ貸付期間之ヲ貸付スルコトヲ得
第十條 官有財產ノ貸付期間中公用ニ供スル必要ヲ生シタルトキハ貸付ノ契約ヲ解除シ之ヲ返還セシムヘシ
前項ノ場合ニ於テ借受人ハ直接ニ受ケタル損害ニ付其ノ賠償ヲ求ムルコトヲ得但シ特別ノ契約アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 官有財產ハ讓與スルコトヲ得ス但シ左ニ揭クル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 公用ニ供シ又ハ營利ヲ目的トセサル公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ニ供スル爲公共團體又ハ其ノ起業者ニ下付スルトキ
二 公園、道路、河川、隄防、溝渠又ハ溜池ヲ開設シタル爲不用ニ歸シタル舊同種類ノ土地ヲ其ノ開設者ニ下付スルトキ
三 公用ヲ廢シタル土地ヲ其ノ公用中維持保存ノ費用ヲ負擔シタル者ニ下付スルトキ
第十二條 官有財產ハ交換スルコトヲ得ス但シ土地建物ハ左ニ揭クル場合ニ限リ其ノ評定價額同一以上ノ土地建物ト交換スルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ノ爲必要ナルトキ
二 官有地整理ノ爲必要ナルトキ
第十三條 左ノ場合ニ於テハ官有財產ノ賣拂、讓與、交換又ハ貸付ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ニ供スル爲賣拂、讓與、交換又ハ貸付シタル官有財產ヲ三年內ニ其ノ用途ニ供セサルトキ
二 第五條第二號乃至第四號ノ規定ニ依リ賣拂又ハ貸付シタル官有財產ヲ二年內ニ豫定ノ用途ニ供セサルトキ
三 賣拂代金又ハ貸付料金ヲ指定ノ期間內ニ完納セサルトキ
第十四條 官有水面ハ公用ニ妨ナキ部分ニ限リ著手及成功ノ期限竝一切ノ條件ヲ定メ其ノ埋立ヲ特許スルコトヲ得
第十五條 前條ノ場合ニ於テハ全部成功ノ後道路、溝渠等公用ニ供スル部分ヲ除クノ外其ノ成功地ヲ事業者ニ賣拂、讓與又ハ貸付スヘキコトヲ豫約スルコトヲ得
第十六條 官有水面埋立ノ特許ヲ受ケタル者指定ノ期間內ニ其ノ事業ニ著手又ハ成功セサルトキハ其ノ特許ヲ取消スヘシ但シ天災其ノ他避クヘカラサル事故ニ因リ指定ノ期間內ニ著手又ハ成功セサルトキハ半期間內ノ延期ヲ爲スコトヲ得
第十七條 前條ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場合ニ於テ水面又ハ土地ノ狀況ニ依リ支障ナシト認ムルトキハ成功地ノ一部又ハ全部ヲ其ノ事業者ニ賣拂、讓與又ハ貸付スルコトヲ得
第十八條 樺太廳長官ハ明治四十四年四月一日ヨリ起算シ十年每ニ其ノ年三月三十一日現在ノ官有財產目錄ヲ調製シ六月三十日迄ニ之ヲ主管大臣ニ報吿スヘシ
第十九條 樺太廳長官ハ每年前會計年度ニ於ケル官有財產ノ增減異動報吿書ヲ調製シ六月三十日迄ニ之ヲ主管大臣ニ報吿スヘシ
第二十條 前二條ノ官有財產目錄及官有財產增減異動報吿書ハ主管大臣ニ於テ其ノ調製シタル年開會ノ帝國議會ニ之ヲ報吿スヘシ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
樺太國有土地管理規則ハ之ヲ廢止ス但シ同令ニ依リ貸付シタル土地ニ付テハ仍從前ノ規定ニ依ル
官有財產目錄ハ第十八條ノ規定ニ依リ調製スルノ外本令施行ノ日ヨリ三年內ニ第一囘ノ調製ヲ爲スヘシ
朕樺太官有財産管理規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年十二月二十二日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
大蔵大臣 山本達雄
勅令第二百八十九号
樺太官有財産管理規則
第一条 本令ニ於テ官有財産ト称スルハ国有ノ不動産、船舶及其ノ附属物ヲ謂フ
第二条 樺太庁長官所轄ノ官有財産ハ本令ニ依リ樺太庁長官之ヲ管理及処分ス
第三条 公用中ノ官有財産ハ売払、貸付、譲与又ハ交換スルコトヲ得ス
前項ノ官有財産ハ公用ヲ妨ケサル場合ニ限リ其ノ使用ヲ許可スルコトヲ得
第四条 官有財産ハ其ノ管理又ハ処分ニ関係アル職員ニ対シ之ヲ売払、貸付、譲与又ハ交換スルコトヲ得ス
第五条 官有財産ノ売払又ハ貸付ハ左ノ場合ニ限リ随意契約ニ依ルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト為ルヘキ事業ニ供スル為公共団体又ハ其ノ起業者ニ売払又ハ貸付スルトキ
二 鉱業、漁業又ハ林業ニ直接附随シテ必要ナル土地又ハ工作物ヲ其ノ起業者ニ売払又ハ貸付スルトキ
三 官設事業ニ直接附随スル事業ノ為必要ナル土地又ハ工作物ヲ其ノ起業者ニ貸付スルトキ
四 移住民ニ対シ其ノ居住上必要ナル土地又ハ工作物ヲ売払又ハ貸付スルトキ
五 一箇所ニ付二百坪以下ニシテ評定価額五百円以下ノ土地ヲ売払フトキ
六 一箇所ニ付二百坪以下ニシテ一年ノ見積貸付料百円以下ノ土地ヲ五年内ノ期間ヲ以テ貸付スルトキ
第六条 官有財産ヲ売払ヒタルトキハ其ノ代金完納後ニ非サレハ之ヲ引渡スコトヲ得ス
第七条 官有財産ハ無料ニテ貸付シ又ハ使用ヲ許可スルコトヲ得ス但シ左ニ掲クル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 公用ニ供シ又ハ営利ヲ目的トセサル公共ノ利益ト為ルヘキ事業ノ為必要ナルトキ
二 移住民ニ対シ其ノ居住上必要ナル土地又ハ工作物ヲ貸付スルトキ
第八条 官有財産ノ貸付料又ハ使用料ハ毎年之ヲ前納セシムヘシ但シ相当ノ保証ヲ立テ又ハ担保ヲ供シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九条 官有財産ノ貸付ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 土地ハ二十年
二 其ノ他ノ物件ハ三年
土地利用ノ為必要ナル定著物ヲ土地ト共ニ貸付スルトキハ其ノ土地ノ貸付期間之ヲ貸付スルコトヲ得
第十条 官有財産ノ貸付期間中公用ニ供スル必要ヲ生シタルトキハ貸付ノ契約ヲ解除シ之ヲ返還セシムヘシ
前項ノ場合ニ於テ借受人ハ直接ニ受ケタル損害ニ付其ノ賠償ヲ求ムルコトヲ得但シ特別ノ契約アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 官有財産ハ譲与スルコトヲ得ス但シ左ニ掲クル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 公用ニ供シ又ハ営利ヲ目的トセサル公共ノ利益ト為ルヘキ事業ニ供スル為公共団体又ハ其ノ起業者ニ下付スルトキ
二 公園、道路、河川、隄防、溝渠又ハ溜池ヲ開設シタル為不用ニ帰シタル旧同種類ノ土地ヲ其ノ開設者ニ下付スルトキ
三 公用ヲ廃シタル土地ヲ其ノ公用中維持保存ノ費用ヲ負担シタル者ニ下付スルトキ
第十二条 官有財産ハ交換スルコトヲ得ス但シ土地建物ハ左ニ掲クル場合ニ限リ其ノ評定価額同一以上ノ土地建物ト交換スルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト為ルヘキ事業ノ為必要ナルトキ
二 官有地整理ノ為必要ナルトキ
第十三条 左ノ場合ニ於テハ官有財産ノ売払、譲与、交換又ハ貸付ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト為ルヘキ事業ニ供スル為売払、譲与、交換又ハ貸付シタル官有財産ヲ三年内ニ其ノ用途ニ供セサルトキ
二 第五条第二号乃至第四号ノ規定ニ依リ売払又ハ貸付シタル官有財産ヲ二年内ニ予定ノ用途ニ供セサルトキ
三 売払代金又ハ貸付料金ヲ指定ノ期間内ニ完納セサルトキ
第十四条 官有水面ハ公用ニ妨ナキ部分ニ限リ著手及成功ノ期限並一切ノ条件ヲ定メ其ノ埋立ヲ特許スルコトヲ得
第十五条 前条ノ場合ニ於テハ全部成功ノ後道路、溝渠等公用ニ供スル部分ヲ除クノ外其ノ成功地ヲ事業者ニ売払、譲与又ハ貸付スヘキコトヲ予約スルコトヲ得
第十六条 官有水面埋立ノ特許ヲ受ケタル者指定ノ期間内ニ其ノ事業ニ著手又ハ成功セサルトキハ其ノ特許ヲ取消スヘシ但シ天災其ノ他避クヘカラサル事故ニ因リ指定ノ期間内ニ著手又ハ成功セサルトキハ半期間内ノ延期ヲ為スコトヲ得
第十七条 前条ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場合ニ於テ水面又ハ土地ノ状況ニ依リ支障ナシト認ムルトキハ成功地ノ一部又ハ全部ヲ其ノ事業者ニ売払、譲与又ハ貸付スルコトヲ得
第十八条 樺太庁長官ハ明治四十四年四月一日ヨリ起算シ十年毎ニ其ノ年三月三十一日現在ノ官有財産目録ヲ調製シ六月三十日迄ニ之ヲ主管大臣ニ報告スヘシ
第十九条 樺太庁長官ハ毎年前会計年度ニ於ケル官有財産ノ増減異動報告書ヲ調製シ六月三十日迄ニ之ヲ主管大臣ニ報告スヘシ
第二十条 前二条ノ官有財産目録及官有財産増減異動報告書ハ主管大臣ニ於テ其ノ調製シタル年開会ノ帝国議会ニ之ヲ報告スヘシ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
樺太国有土地管理規則ハ之ヲ廃止ス但シ同令ニ依リ貸付シタル土地ニ付テハ仍従前ノ規定ニ依ル
官有財産目録ハ第十八条ノ規定ニ依リ調製スルノ外本令施行ノ日ヨリ三年内ニ第一回ノ調製ヲ為スヘシ