第一條 本令ニ於テ官有財產ト稱スルハ國有ノ不動產、船舶及其ノ附屬物ヲ謂フ
第二條 樺太廳長官所轄ノ官有財產ハ本令ニ依リ樺太廳長官之ヲ管理及處分ス
第三條 公用中ノ官有財產ハ賣拂、貸付、讓與又ハ交換スルコトヲ得ス
前項ノ官有財產ハ公用ヲ妨ケサル場合ニ限リ其ノ使用ヲ許可スルコトヲ得
第四條 官有財產ハ其ノ管理又ハ處分ニ關係アル職員ニ對シ之ヲ賣拂、貸付、讓與又ハ交換スルコトヲ得ス
第五條 官有財產ノ賣拂又ハ貸付ハ左ノ場合ニ限リ隨意契約ニ依ルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ニ供スル爲公共團體又ハ其ノ起業者ニ賣拂又ハ貸付スルトキ
二 鑛業、漁業又ハ林業ニ直接附隨シテ必要ナル土地又ハ工作物ヲ其ノ起業者ニ賣拂又ハ貸付スルトキ
三 官設事業ニ直接附隨スル事業ノ爲必要ナル土地又ハ工作物ヲ其ノ起業者ニ貸付スルトキ
四 移住民ニ對シ其ノ居住上必要ナル土地又ハ工作物ヲ賣拂又ハ貸付スルトキ
五 一箇所ニ付二百坪以下ニシテ評定價額五百圓以下ノ土地ヲ賣拂フトキ
六 一箇所ニ付二百坪以下ニシテ一年ノ見積貸付料百圓以下ノ土地ヲ五年內ノ期間ヲ以テ貸付スルトキ
第六條 官有財產ヲ賣拂ヒタルトキハ其ノ代金完納後ニ非サレハ之ヲ引渡スコトヲ得ス
第七條 官有財產ハ無料ニテ貸付シ又ハ使用ヲ許可スルコトヲ得ス但シ左ニ揭クル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 公用ニ供シ又ハ營利ヲ目的トセサル公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ノ爲必要ナルトキ
二 移住民ニ對シ其ノ居住上必要ナル土地又ハ工作物ヲ貸付スルトキ
第八條 官有財產ノ貸付料又ハ使用料ハ每年之ヲ前納セシムヘシ但シ相當ノ保證ヲ立テ又ハ擔保ヲ供シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條 官有財產ノ貸付ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
土地利用ノ爲必要ナル定著物ヲ土地ト共ニ貸付スルトキハ其ノ土地ノ貸付期間之ヲ貸付スルコトヲ得
第十條 官有財產ノ貸付期間中公用ニ供スル必要ヲ生シタルトキハ貸付ノ契約ヲ解除シ之ヲ返還セシムヘシ
前項ノ場合ニ於テ借受人ハ直接ニ受ケタル損害ニ付其ノ賠償ヲ求ムルコトヲ得但シ特別ノ契約アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 官有財產ハ讓與スルコトヲ得ス但シ左ニ揭クル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 公用ニ供シ又ハ營利ヲ目的トセサル公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ニ供スル爲公共團體又ハ其ノ起業者ニ下付スルトキ
二 公園、道路、河川、隄防、溝渠又ハ溜池ヲ開設シタル爲不用ニ歸シタル舊同種類ノ土地ヲ其ノ開設者ニ下付スルトキ
三 公用ヲ廢シタル土地ヲ其ノ公用中維持保存ノ費用ヲ負擔シタル者ニ下付スルトキ
第十二條 官有財產ハ交換スルコトヲ得ス但シ土地建物ハ左ニ揭クル場合ニ限リ其ノ評定價額同一以上ノ土地建物ト交換スルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ノ爲必要ナルトキ
第十三條 左ノ場合ニ於テハ官有財產ノ賣拂、讓與、交換又ハ貸付ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
一 公用ニ供シ又ハ公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ニ供スル爲賣拂、讓與、交換又ハ貸付シタル官有財產ヲ三年內ニ其ノ用途ニ供セサルトキ
二 第五條第二號乃至第四號ノ規定ニ依リ賣拂又ハ貸付シタル官有財產ヲ二年內ニ豫定ノ用途ニ供セサルトキ
三 賣拂代金又ハ貸付料金ヲ指定ノ期間內ニ完納セサルトキ
第十四條 官有水面ハ公用ニ妨ナキ部分ニ限リ著手及成功ノ期限竝一切ノ條件ヲ定メ其ノ埋立ヲ特許スルコトヲ得
第十五條 前條ノ場合ニ於テハ全部成功ノ後道路、溝渠等公用ニ供スル部分ヲ除クノ外其ノ成功地ヲ事業者ニ賣拂、讓與又ハ貸付スヘキコトヲ豫約スルコトヲ得
第十六條 官有水面埋立ノ特許ヲ受ケタル者指定ノ期間內ニ其ノ事業ニ著手又ハ成功セサルトキハ其ノ特許ヲ取消スヘシ但シ天災其ノ他避クヘカラサル事故ニ因リ指定ノ期間內ニ著手又ハ成功セサルトキハ半期間內ノ延期ヲ爲スコトヲ得
第十七條 前條ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場合ニ於テ水面又ハ土地ノ狀況ニ依リ支障ナシト認ムルトキハ成功地ノ一部又ハ全部ヲ其ノ事業者ニ賣拂、讓與又ハ貸付スルコトヲ得
第十八條 樺太廳長官ハ明治四十四年四月一日ヨリ起算シ十年每ニ其ノ年三月三十一日現在ノ官有財產目錄ヲ調製シ六月三十日迄ニ之ヲ主管大臣ニ報吿スヘシ
第十九條 樺太廳長官ハ每年前會計年度ニ於ケル官有財產ノ增減異動報吿書ヲ調製シ六月三十日迄ニ之ヲ主管大臣ニ報吿スヘシ
第二十條 前二條ノ官有財產目錄及官有財產增減異動報吿書ハ主管大臣ニ於テ其ノ調製シタル年開會ノ帝國議會ニ之ヲ報吿スヘシ