漁業登録令
法令番号: 勅令第四百三十號
公布年月日: 明治43年11月12日
法令の形式: 勅令
朕漁業登錄令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年十一月十一日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
勅令第四百三十號
漁業登錄令
第一章 總則
第一條 免許漁業ニ關スル登錄ハ左ニ揭ケタル事項ニ付免許ヲ爲シタル行政官廳ニ於テ免許漁業原簿ニ之ヲ爲ス
一 漁業權及之ヲ目的トスル抵當權、先取特權、賃借權竝入漁權ノ設定、保存、移轉、變更、消滅又ハ處分ノ制限
二 漁業法第二十四條ノ制限若ハ停止又ハ其ノ變更若ハ解除
第二條 假登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
一 登錄ノ申請ニ必要ナル手續上ノ條件カ具備セサルトキ
二 前條第一號ニ揭ケタル權利ノ設定、移轉、變更又ハ消滅ノ請求權ヲ保全セムトスルトキ、其ノ請求權カ始期附又ハ停止條件附ナルトキ其ノ他將來ニ於テ確定スヘキモノナルトキ亦同シ
第二條 豫吿登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
一 登錄原因ノ無效又ハ取消ニ依ル登錄ノ抹消又ハ囘復ノ訴ノ提起アリタルトキ但シ登錄原因ノ取消ニ依ル訴ニ付テハ其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ル場合ニ限ル
二 漁業免許又ハ期間更新ノ免許ニ對シ訴願又ハ行政訴訟ノ提起アリタルトキ
第四條 左ニ揭ケタル事項ノ登錄ハ附記ニ依リテ之ヲ爲ス
一 登錄名義人ノ表示ノ變更
二 入漁權、抵當權及先取特權ノ移轉
第五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル登錄ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ申請書ニ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リテ其ノ登錄ヲ爲ス
一 漁業權ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ變更
二 登錄ノ更正
三 一部抹消登錄ノ囘復
第六條 同一漁業權ニ關シテ登錄シタル權利ノ順位ハ法令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外登錄ノ前後ニ依ル
登錄ノ前後ハ登錄用紙中同區ニ爲シタル登錄ニ付テハ順位番號ニ依リ別區ニ爲シタル登錄ニ付テハ受付番號ニ依ル
第七條 附記登錄ノ順位ハ主登錄ノ順位ニ依リ附記登錄間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第八條 假登錄ヲ爲シタルモノニ付本登錄ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ假登錄ノ順位ニ依ル
第九條 詐欺又ハ脅迫ニ依リテ登錄ノ申請ヲ妨ケタル第三者ハ登錄ノ欠缺ヲ主張スルコトヲ得ス
第十條 他人ノ爲登錄ヲ申請スル義務アル者ハ其ノ登錄ノ欠缺ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ登錄ノ原因カ自己ノ登錄ノ原因ノ後ニ發生シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 漁場圖、共同漁業權者名簿、共同入漁權者名簿及入漁登錄簿ハ免許漁業原簿ノ一部ト看做ス
第十二條 免許漁業原簿其ノ他登錄ニ付必要ナル帳簿ノ種類、樣式及記入ニ關スル手續ハ主務大臣之ヲ定ム
第十三條 何人ト雖手數料ヲ納付シテ免許漁業原簿ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ請求シ又ハ免許漁業原簿若ハ其ノ附屬書類ノ閱覽ヲ請求スルコトヲ得
手數料ノ外郵便料ヲ納付シテ免許漁業原簿ノ謄本又ハ抄本ノ送付ヲ請求スルコトヲ得
第十四條 免許漁業原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テハ其ノ囘復ニ關スル手續ハ主務大臣之ヲ定ム
第二章 登錄手續
第十五條 登錄ハ法令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外申請又ハ囑託アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
囑託ニ依ル登錄ノ手續ニ付テハ法令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外申請ニ依ル登錄ニ關スル規定ヲ準用ス
第十六條 左ノ各號ノ一ニ關スル事項ハ行政官廳職權ヲ以テ之ヲ登錄スヘシ
一 漁業權ノ設定又ハ變更
二 漁業免許ノ取消又ハ期間滿了ニ依ル漁業權ノ消滅
三 第一條第二號ニ揭ケタル事項
四 國又ハ公共團體ノ起業ニシテ登錄官廳ノ主管ニ屬スル場合ニ於テ土地收用法ニ依リ收用シタル漁業權、之ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ移轉
五 登錄官廳ノ爲シタル登錄ニ關スル異議ノ決定又ハ訴願ノ裁決ニ依リ登錄スヘキ事項
第十七條 登錄ノ申請ハ登錄權利者及登錄義務者ヨリ之ヲ爲スヘシ
第十八條 相續、判決又ハ漁業法第五十六條ノ規定ニ依ル裁決若ハ判決ニ基ク登錄ハ登錄權利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得合併又ハ分割ニ因リテ消滅シタル法人ノ權利承繼ノ登錄ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ職權又ハ囑託ニ依リ登錄ヲ爲ス場合ヲ除クノ外土地收用法ニ依リ收用シタル漁業權、之ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ移轉ノ登錄ニ之ヲ準用ス
第十九條 登錄名義人ノ表示ノ變更ノ登錄申請ハ登錄名義人ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得
第二十條 假登錄ハ假登錄義務者ノ承諾アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書ヲ添附シテ假登錄權利者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十一條 假登錄ハ前條ノ場合ヲ除クノ外假登錄權利者ノ申請ニ依リ漁業法第九條ノ市町村又ハ之ニ相當スル行政區劃ヲ管轄スル區裁判所ヨリ遲滯ナク囑託書ニ假處分命令ノ正本ヲ添附シテ之ヲ登錄官廳ニ囑託スヘシ
前項ノ假處分命令ハ假登錄權利者カ假登錄原因ヲ疏明シタルトキハ區裁判所之ヲ發スヘシ
申請ヲ却下シタル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
前項ノ卽時抗吿ニ付テハ非訟事件手續法ノ規定ヲ準用ス
第二十二條 左ノ各號ニ關スル登錄ニ付テハ官廳又ハ公署ヨリ遲滯ナク囑託書ニ登錄原因ヲ證スル書面ヲ添附シテ之ヲ登錄官廳ニ囑託スヘシ
一 處分ノ制限
二 公賣處分ニ依ル權利移轉
三 國又ハ公共團體ノ起業ニシテ登錄官廳ノ主管ニ屬セサル場合ニ於テ土地收用法ニ依リ收用シタル漁業權、之ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ移轉
第二十三條 第三條ノ場合ニ於テ訴訟ヲ受理シタル司法裁判所又ハ行政裁判所ハ職權ヲ以テ遲滯ナク囑託書ニ訴狀ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ其ノ豫吿登錄ヲ登錄官廳ニ囑託スヘシ
前項ノ場合ヲ除クノ外第三條第二號ノ場合ニ於テハ登錄官廳ハ職權ヲ以テ豫吿登錄ヲ爲スヘシ
第二十四條 登錄ノ申請書ニハ本令中別ニ定メタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ署名捺印スヘシ
一 免許番號
二 入漁登錄番號アルトキハ入漁登錄番號
三 申請人ノ氏名又ハ名稱及住所
四 代理人ニ依リテ登錄ヲ申請スルトキハ其ノ氏名又ハ名稱及住所
五 登錄原因及其ノ日附
六 登錄ノ目的
七 年月日
八 登錄官廳ノ表示
入漁權保存ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ登錄原因カ慣行ニシテ日附不明ナルトキハ前項第五號ノ日附ノ記載ヲ要セス
第二十五條 債權者カ民法第四百二十三條ノ規定ニ依リ債務者ニ代位シテ登錄ヲ申請スルニハ申請書ニ前條ニ記載シタル事項ノ外債權者ノ氏名又ハ名稱及住所竝代位原因ヲ記載シ之ニ署名捺印スヘシ
第二十六條 登錄原因ニ買戾ノ特約其ノ他登錄ノ目的タル權利ノ消滅ニ關スル事項ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ事項ヲ記載スヘシ
第二十七條 登錄權利者カ多數ナル場合ニ於テ登錄原因ニ持分ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ持分ヲ記載スヘシ漁業權、之ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ一部移轉ノ登錄ヲ申請スル場合亦同シ
前項ノ場合ニ於テ民法第二百五十六條第一項但書ノ規定ニ依ル定アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第二十八條 登錄ノ申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 登錄原因ヲ證スル書面但シ登錄官廳ノ許可書又ハ認可書ハ此ノ限ニ在ラス
二 登錄原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ證スル書面
三 代理人ニ依リテ登錄ヲ申請スルトキハ其ノ權限ヲ證スル書面但シ農商務大臣ノ定ムル所ニ依リ屆出ヲ爲シ又ハ指定セラレタル代表者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
四 登錄義務者ノ權利ニ關スル登錄濟證
第二十九條 第二十五條ノ規定ニ依リ登錄ヲ申請スルトキハ前條ノ書面ノ外尙其ノ代位原因ヲ證スル書面ヲ添附スヘシ
第三十條 第二十八條第二號ノ書面ニ依リ證明スヘキ事項カ旣ニ登錄ヲ受ケタルモノナルトキハ其ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス此ノ場合ニ於テハ申請書ニ其ノ事由ヲ記載スヘシ
第三十一條 登錄原因ヲ證スル書面カ執行力アル判決ナルトキハ第二十八條第二號及第四號ニ揭ケタル書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第三十二條 同一登錄官廳ニ數箇ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ添附スヘキ書面カ一箇ナルトキハ其ノ一ノ申請書ニ之ヲ添附シ他ノ申請書ニハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
第三十三條 左ノ場合ニ於テハ其ノ事實ヲ證スル戶籍ノ謄本若ハ抄本又ハ之ヲ證スルニ足ルヘキ書面ヲ添附スヘシ
一 登錄原因カ相續ナルトキ
二 申請人カ登錄權利者又ハ登錄義務者ノ相續人ナルトキ
三 登錄名義人ノ表示ノ變更ノ登錄ヲ申請スルトキ
第三十四條 第二十八條第二號ノ書面ハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ署名捺印セシメ之ニ代フルコトヲ得
第二十八條第四號ノ書面カ滅失シタルトキハ其ノ登錄名義人又ハ登錄義務者ノ本人タルコトヲ證スル市町村長又ハ之ニ準スヘキ者ノ證明書ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第三十五條 左ノ場合ニ於テハ登錄ノ申請ハ之ヲ却下ス
一 事件カ其ノ登錄官廳ノ管轄ニ屬セサルトキ
二 事件カ登錄スヘキモノニ非サルトキ
三 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
四 申請書ニ揭ケタル漁業權、之ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ表示カ免許漁業原簿ト牴觸スルトキ
五 第三十三條第二號ノ場合ヲ除クノ外申請書ニ揭ケタル登錄義務者ノ表示カ免許漁業原簿ト符合セサルトキ
六 申請人カ登錄名義人タル場合ニ於テ其ノ表示カ免許漁業原簿ト符合セサルトキ
七 申請書ニ揭ケタル事項カ登錄原因ヲ證スル書面ト牴觸スルトキ
八 申請書ニ必要ナル書面ヲ添附セサルトキ
九 登錄稅ヲ納付セサルトキ
第三十六條 行政區劃、大字、字又ハ其ノ名稱ニ變更アリタルトキハ免許漁業原簿ニ記載シタル行政區劃、大字、字又ハ其ノ名稱ハ當然之ヲ變更シタルモノト看做ス
第三十七條 登錄ヲ完了シタル後其ノ登錄ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ發見シタルトキハ登錄官廳ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ登錄權利者及登錄義務者ニ通知スヘシ
前項ノ通知ハ第二十五條ノ場合ニ於テハ債權者ニ對シテモ之ヲ爲スヘシ
前二項ノ場合ニ於テ登錄權利者、登錄義務者又ハ債權者カ二人以上アルトキハ代表者ニ、代表者ナキトキハ其ノ一人ニ通知スルヲ以テ足ル
第三十八條 抹消シタル登錄ノ囘復ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十九條 入漁權ノ設定又ハ保存ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 入漁スヘキ區域
二 入漁スヘキ漁業ノ種類、漁獲物ノ種類及漁業時期
三 存續期間ノ定アルトキハ其ノ期間
四 入漁料ノ定アルトキハ其ノ事項
五 漁業ノ方法ニ付定アルトキハ其ノ事項
六 漁船、漁具又ハ漁業者ノ數ニ付定アルトキハ其ノ事項
七 入漁者ノ資格ニ付定アルトキハ其ノ事項
八 其ノ他權利義務ノ定アルトキハ其ノ事項
前項ノ申請書ニハ漁場圖二通ヲ添附スヘシ但シ入漁スヘキ區域カ專用漁業權ニ屬スル漁場ノ全部ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十條 漁業法第十四條但書ニ依ル入漁權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ慣行ヲ證スル書面ヲ添附シテ第二十八條第二號ノ書面ニ代フルコトヲ得
第四十一條 先取特權ノ保存ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債權額ヲ記載シ若シ登錄原因ニ辨濟期ノ定アルトキハ之ヲ記載スヘシ
第四十二條 抵當權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ債權額ヲ記載シ若シ登錄原因ニ辨濟期ノ定アルトキ、利息ニ關スル定アルトキ、其ノ發生期若ハ支拂時期ノ定アルトキ、債權ニ條件ヲ附シタルトキ又ハ民法第三百七十條但書ノ定アルトキハ之ヲ記載スヘシ
第四十三條 抵當權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ債務者ノ表示ヲ爲スヘシ
抵當權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ抵當權カ債權ト共ニ移轉スルヤ否ヲ記載スヘシ
第四十四條 一定ノ金額ヲ目的トセサル債權ノ擔保タル先取特權又ハ抵當權ノ保存又ハ設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債權ノ價格ヲ記載スヘシ
第四十五條 債權ノ一部ノ讓渡又ハ代位辨濟ニ依ル先取特權若ハ抵當權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ讓渡又ハ代位辨濟ノ目的タル債權額ヲ記載スヘシ
第四十六條 同一登錄官廳ノ管轄ニ屬スル數箇ノ漁業權ニ關シ先取特權又ハ抵當權ノ保存、設定又ハ移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ登錄原因及登錄ノ目的カ同一ナルトキニ限リ同一ノ申請書ヲ以テ登錄ヲ申請スルコトヲ得
第四十七條 賃借權ノ設定又ハ賃借シタル漁業權ノ轉貸ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ借賃ヲ記載シ登錄原因ニ存續期間若ハ借賃ノ支拂時期ノ定アルトキ又ハ轉貸若ハ賃借權ノ移轉ヲ許シタルトキハ之ヲ記載シ賃貸借ヲ爲ス者カ處分ノ能力又ハ權限ヲ有セサル者ナルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
第四十八條 漁業權、之ヲ目的トスル權利又ハ入漁權ノ抛棄ニ依ル登錄ノ抹消ハ登錄名義人ノミニテ申請スルコトヲ得
第四十九條 先取特權及抵當權ノ登錄アル漁業權ノ取消アリタルトキハ抹消ノ登錄ヲ爲シ漁業法第二十四條第一項及第二十五條ノ場合ノ外競賣ノ目的ノ範圍內ニ於テ仍存續スル旨及競落ノ決定確定シタルトキハ取消ハ其ノ效力ヲ生セサリシモノト看做ス旨ヲ同時ニ記載スヘシ
先取特權者又ハ抵當權者競賣ノ請求ヲ爲ササルトキ又ハ競賣申立ノ登錄アリタル場合ニ於テ其ノ登錄抹消ノ囑託アリタルトキハ其ノ旨ヲ登錄シタル後前項ノ規定ニ依ル記載ヲ抹消スヘシ
第五十條 登錄シタル權利カ或人ノ死亡ニ依リテ消滅シタル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ死亡ヲ證スル戶籍ノ謄本、抄本其ノ他之ニ相當スル書面ヲ添附スルトキハ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十一條 登錄權利者カ登錄義務者ノ行方ノ知レサルニ依リ之ト共ニ登錄ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ從ヒ公示催吿ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除權判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十二條 前條第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債權證書竝債權金額及最後ノ二年分ノ定期金ノ受取證書ヲ添附シタルトキハ登錄權利者ノミニテ先取特權又ハ抵當權ニ關スル登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十三條 登錄ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ抹消ニ付登錄上利害關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第五十四條 假登錄ノ抹消ハ假登錄名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ假登錄名義人ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判又ハ裁決ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登錄上利害ノ關係ヲ有スル者ヨリ假登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十五條 第三條第一號ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ對シ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ遲滯ナク囑託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ證スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ豫吿登錄ノ抹消ヲ登錄官廳ニ囑託スヘシ
第五十六條 第三條第二號ニ揭ケタル訴願若ハ行政訴訟ノ却下若ハ取下アリタルトキ又ハ請求否認ノ裁決若ハ判決アリタルトキハ登錄官廳ハ職權ヲ以テ豫吿登錄ヲ抹消シ行政裁判所ハ其ノ抹消ヲ登錄官廳ニ囑託スヘシ
第三章 異議及訴願
第五十七條 登錄ニ關スル處分ヲ不當トスル者ハ處分ノ了リタル日ヨリ三十日以內ニ登錄官廳ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第五十八條 異議ノ決定ハ理由ヲ附シテ之ヲ爲スヘシ
地方長官ノ爲シタル決定ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願ヲ提起スルコトヲ得
附 則
第五十九條 本令ハ明治四十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第六十條 本令施行前ニ受理シタル申請又ハ屆出ニ付テハ舊漁業法施行規則ニ依リ舊免許漁業原簿ニ之ヲ登錄ス但シ登錄スヘキ事項ハ漁業法又ハ本令ニ依リ登錄スルコトヲ得ヘキモノニ限ル
第六十一條 本令施行前ニ登錄シタル入漁權及本令施行前ニ受理シタル入漁登錄申請又ハ舊漁業法施行前ノ契約若ハ慣行ニ依リテ入漁スル權利ヲ有スル者ノ專用漁業免許後一年內ニ爲シタル入漁登錄申請ニ基キ登錄シタル入漁權相互ノ間ニ於テハ第六條ノ規定ヲ適用セス
前項ノ入漁權ハ他ノ入漁權ニ對シテ先順位ニ在ルモノト看做ス
第六十二條 舊免許漁業原簿ハ之ヲ免許漁業原簿ト看做ス
舊漁業法施行規則ニ依リ登錄セラレタル事項中契約書ヲ援用シタルモノニ付テハ該契約書ハ舊免許漁業原簿ノ一部ト看做ス舊漁業法施行規則ニ依ル入漁漁場圖亦同シ
第六十三條 舊漁業法施行規則ニ基キ下付シタル漁業免許狀又ハ入漁登錄證ハ登錄濟證ト看做ス
第六十四條 舊漁業法施行規則ニ依リ登錄セラレタル權利ニ關シ登錄ノ申請アリタル場合ニ於テハ抹消ヲ除クノ外新免許漁業原簿ニ舊免許漁業原簿中抹消ニ係ラサル登錄ヲ移シ舊免許漁業原簿中新免許漁業原簿ニ移シタル登錄ヲ抹消スヘシ
朕漁業登録令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年十一月十一日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
勅令第四百三十号
漁業登録令
第一章 総則
第一条 免許漁業ニ関スル登録ハ左ニ掲ケタル事項ニ付免許ヲ為シタル行政官庁ニ於テ免許漁業原簿ニ之ヲ為ス
一 漁業権及之ヲ目的トスル抵当権、先取特権、賃借権並入漁権ノ設定、保存、移転、変更、消滅又ハ処分ノ制限
二 漁業法第二十四条ノ制限若ハ停止又ハ其ノ変更若ハ解除
第二条 仮登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
一 登録ノ申請ニ必要ナル手続上ノ条件カ具備セサルトキ
二 前条第一号ニ掲ケタル権利ノ設定、移転、変更又ハ消滅ノ請求権ヲ保全セムトスルトキ、其ノ請求権カ始期附又ハ停止条件附ナルトキ其ノ他将来ニ於テ確定スヘキモノナルトキ亦同シ
第二条 予告登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
一 登録原因ノ無効又ハ取消ニ依ル登録ノ抹消又ハ回復ノ訴ノ提起アリタルトキ但シ登録原因ノ取消ニ依ル訴ニ付テハ其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ル場合ニ限ル
二 漁業免許又ハ期間更新ノ免許ニ対シ訴願又ハ行政訴訟ノ提起アリタルトキ
第四条 左ニ掲ケタル事項ノ登録ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス
一 登録名義人ノ表示ノ変更
二 入漁権、抵当権及先取特権ノ移転
第五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル登録ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ申請書ニ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リテ其ノ登録ヲ為ス
一 漁業権ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ変更
二 登録ノ更正
三 一部抹消登録ノ回復
第六条 同一漁業権ニ関シテ登録シタル権利ノ順位ハ法令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外登録ノ前後ニ依ル
登録ノ前後ハ登録用紙中同区ニ為シタル登録ニ付テハ順位番号ニ依リ別区ニ為シタル登録ニ付テハ受付番号ニ依ル
第七条 附記登録ノ順位ハ主登録ノ順位ニ依リ附記登録間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第八条 仮登録ヲ為シタルモノニ付本登録ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ仮登録ノ順位ニ依ル
第九条 詐欺又ハ脅迫ニ依リテ登録ノ申請ヲ妨ケタル第三者ハ登録ノ欠欠ヲ主張スルコトヲ得ス
第十条 他人ノ為登録ヲ申請スル義務アル者ハ其ノ登録ノ欠欠ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ登録ノ原因カ自己ノ登録ノ原因ノ後ニ発生シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 漁場図、共同漁業権者名簿、共同入漁権者名簿及入漁登録簿ハ免許漁業原簿ノ一部ト看做ス
第十二条 免許漁業原簿其ノ他登録ニ付必要ナル帳簿ノ種類、様式及記入ニ関スル手続ハ主務大臣之ヲ定ム
第十三条 何人ト雖手数料ヲ納付シテ免許漁業原簿ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ請求シ又ハ免許漁業原簿若ハ其ノ附属書類ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得
手数料ノ外郵便料ヲ納付シテ免許漁業原簿ノ謄本又ハ抄本ノ送付ヲ請求スルコトヲ得
第十四条 免許漁業原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テハ其ノ回復ニ関スル手続ハ主務大臣之ヲ定ム
第二章 登録手続
第十五条 登録ハ法令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外申請又ハ嘱託アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
嘱託ニ依ル登録ノ手続ニ付テハ法令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外申請ニ依ル登録ニ関スル規定ヲ準用ス
第十六条 左ノ各号ノ一ニ関スル事項ハ行政官庁職権ヲ以テ之ヲ登録スヘシ
一 漁業権ノ設定又ハ変更
二 漁業免許ノ取消又ハ期間満了ニ依ル漁業権ノ消滅
三 第一条第二号ニ掲ケタル事項
四 国又ハ公共団体ノ起業ニシテ登録官庁ノ主管ニ属スル場合ニ於テ土地収用法ニ依リ収用シタル漁業権、之ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ移転
五 登録官庁ノ為シタル登録ニ関スル異議ノ決定又ハ訴願ノ裁決ニ依リ登録スヘキ事項
第十七条 登録ノ申請ハ登録権利者及登録義務者ヨリ之ヲ為スヘシ
第十八条 相続、判決又ハ漁業法第五十六条ノ規定ニ依ル裁決若ハ判決ニ基ク登録ハ登録権利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得合併又ハ分割ニ因リテ消滅シタル法人ノ権利承継ノ登録ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ職権又ハ嘱託ニ依リ登録ヲ為ス場合ヲ除クノ外土地収用法ニ依リ収用シタル漁業権、之ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ移転ノ登録ニ之ヲ準用ス
第十九条 登録名義人ノ表示ノ変更ノ登録申請ハ登録名義人ノミニテ之ヲ為スコトヲ得
第二十条 仮登録ハ仮登録義務者ノ承諾アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書ヲ添附シテ仮登録権利者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十一条 仮登録ハ前条ノ場合ヲ除クノ外仮登録権利者ノ申請ニ依リ漁業法第九条ノ市町村又ハ之ニ相当スル行政区画ヲ管轄スル区裁判所ヨリ遅滞ナク嘱託書ニ仮処分命令ノ正本ヲ添附シテ之ヲ登録官庁ニ嘱託スヘシ
前項ノ仮処分命令ハ仮登録権利者カ仮登録原因ヲ疏明シタルトキハ区裁判所之ヲ発スヘシ
申請ヲ却下シタル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ即時抗告ニ付テハ非訟事件手続法ノ規定ヲ準用ス
第二十二条 左ノ各号ニ関スル登録ニ付テハ官庁又ハ公署ヨリ遅滞ナク嘱託書ニ登録原因ヲ証スル書面ヲ添附シテ之ヲ登録官庁ニ嘱託スヘシ
一 処分ノ制限
二 公売処分ニ依ル権利移転
三 国又ハ公共団体ノ起業ニシテ登録官庁ノ主管ニ属セサル場合ニ於テ土地収用法ニ依リ収用シタル漁業権、之ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ移転
第二十三条 第三条ノ場合ニ於テ訴訟ヲ受理シタル司法裁判所又ハ行政裁判所ハ職権ヲ以テ遅滞ナク嘱託書ニ訴状ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ其ノ予告登録ヲ登録官庁ニ嘱託スヘシ
前項ノ場合ヲ除クノ外第三条第二号ノ場合ニ於テハ登録官庁ハ職権ヲ以テ予告登録ヲ為スヘシ
第二十四条 登録ノ申請書ニハ本令中別ニ定メタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ署名捺印スヘシ
一 免許番号
二 入漁登録番号アルトキハ入漁登録番号
三 申請人ノ氏名又ハ名称及住所
四 代理人ニ依リテ登録ヲ申請スルトキハ其ノ氏名又ハ名称及住所
五 登録原因及其ノ日附
六 登録ノ目的
七 年月日
八 登録官庁ノ表示
入漁権保存ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ登録原因カ慣行ニシテ日附不明ナルトキハ前項第五号ノ日附ノ記載ヲ要セス
第二十五条 債権者カ民法第四百二十三条ノ規定ニ依リ債務者ニ代位シテ登録ヲ申請スルニハ申請書ニ前条ニ記載シタル事項ノ外債権者ノ氏名又ハ名称及住所並代位原因ヲ記載シ之ニ署名捺印スヘシ
第二十六条 登録原因ニ買戻ノ特約其ノ他登録ノ目的タル権利ノ消滅ニ関スル事項ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ事項ヲ記載スヘシ
第二十七条 登録権利者カ多数ナル場合ニ於テ登録原因ニ持分ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ持分ヲ記載スヘシ漁業権、之ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ一部移転ノ登録ヲ申請スル場合亦同シ
前項ノ場合ニ於テ民法第二百五十六条第一項但書ノ規定ニ依ル定アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第二十八条 登録ノ申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 登録原因ヲ証スル書面但シ登録官庁ノ許可書又ハ認可書ハ此ノ限ニ在ラス
二 登録原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ証スル書面
三 代理人ニ依リテ登録ヲ申請スルトキハ其ノ権限ヲ証スル書面但シ農商務大臣ノ定ムル所ニ依リ届出ヲ為シ又ハ指定セラレタル代表者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
四 登録義務者ノ権利ニ関スル登録済証
第二十九条 第二十五条ノ規定ニ依リ登録ヲ申請スルトキハ前条ノ書面ノ外尚其ノ代位原因ヲ証スル書面ヲ添附スヘシ
第三十条 第二十八条第二号ノ書面ニ依リ証明スヘキ事項カ既ニ登録ヲ受ケタルモノナルトキハ其ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス此ノ場合ニ於テハ申請書ニ其ノ事由ヲ記載スヘシ
第三十一条 登録原因ヲ証スル書面カ執行力アル判決ナルトキハ第二十八条第二号及第四号ニ掲ケタル書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第三十二条 同一登録官庁ニ数箇ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ添附スヘキ書面カ一箇ナルトキハ其ノ一ノ申請書ニ之ヲ添附シ他ノ申請書ニハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
第三十三条 左ノ場合ニ於テハ其ノ事実ヲ証スル戸籍ノ謄本若ハ抄本又ハ之ヲ証スルニ足ルヘキ書面ヲ添附スヘシ
一 登録原因カ相続ナルトキ
二 申請人カ登録権利者又ハ登録義務者ノ相続人ナルトキ
三 登録名義人ノ表示ノ変更ノ登録ヲ申請スルトキ
第三十四条 第二十八条第二号ノ書面ハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ署名捺印セシメ之ニ代フルコトヲ得
第二十八条第四号ノ書面カ滅失シタルトキハ其ノ登録名義人又ハ登録義務者ノ本人タルコトヲ証スル市町村長又ハ之ニ準スヘキ者ノ証明書ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第三十五条 左ノ場合ニ於テハ登録ノ申請ハ之ヲ却下ス
一 事件カ其ノ登録官庁ノ管轄ニ属セサルトキ
二 事件カ登録スヘキモノニ非サルトキ
三 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
四 申請書ニ掲ケタル漁業権、之ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ表示カ免許漁業原簿ト牴触スルトキ
五 第三十三条第二号ノ場合ヲ除クノ外申請書ニ掲ケタル登録義務者ノ表示カ免許漁業原簿ト符合セサルトキ
六 申請人カ登録名義人タル場合ニ於テ其ノ表示カ免許漁業原簿ト符合セサルトキ
七 申請書ニ掲ケタル事項カ登録原因ヲ証スル書面ト牴触スルトキ
八 申請書ニ必要ナル書面ヲ添附セサルトキ
九 登録税ヲ納付セサルトキ
第三十六条 行政区画、大字、字又ハ其ノ名称ニ変更アリタルトキハ免許漁業原簿ニ記載シタル行政区画、大字、字又ハ其ノ名称ハ当然之ヲ変更シタルモノト看做ス
第三十七条 登録ヲ完了シタル後其ノ登録ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ発見シタルトキハ登録官庁ハ遅滞ナク其ノ旨ヲ登録権利者及登録義務者ニ通知スヘシ
前項ノ通知ハ第二十五条ノ場合ニ於テハ債権者ニ対シテモ之ヲ為スヘシ
前二項ノ場合ニ於テ登録権利者、登録義務者又ハ債権者カ二人以上アルトキハ代表者ニ、代表者ナキトキハ其ノ一人ニ通知スルヲ以テ足ル
第三十八条 抹消シタル登録ノ回復ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十九条 入漁権ノ設定又ハ保存ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 入漁スヘキ区域
二 入漁スヘキ漁業ノ種類、漁獲物ノ種類及漁業時期
三 存続期間ノ定アルトキハ其ノ期間
四 入漁料ノ定アルトキハ其ノ事項
五 漁業ノ方法ニ付定アルトキハ其ノ事項
六 漁船、漁具又ハ漁業者ノ数ニ付定アルトキハ其ノ事項
七 入漁者ノ資格ニ付定アルトキハ其ノ事項
八 其ノ他権利義務ノ定アルトキハ其ノ事項
前項ノ申請書ニハ漁場図二通ヲ添附スヘシ但シ入漁スヘキ区域カ専用漁業権ニ属スル漁場ノ全部ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十条 漁業法第十四条但書ニ依ル入漁権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ慣行ヲ証スル書面ヲ添附シテ第二十八条第二号ノ書面ニ代フルコトヲ得
第四十一条 先取特権ノ保存ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債権額ヲ記載シ若シ登録原因ニ弁済期ノ定アルトキハ之ヲ記載スヘシ
第四十二条 抵当権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ債権額ヲ記載シ若シ登録原因ニ弁済期ノ定アルトキ、利息ニ関スル定アルトキ、其ノ発生期若ハ支払時期ノ定アルトキ、債権ニ条件ヲ附シタルトキ又ハ民法第三百七十条但書ノ定アルトキハ之ヲ記載スヘシ
第四十三条 抵当権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ債務者ノ表示ヲ為スヘシ
抵当権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ抵当権カ債権ト共ニ移転スルヤ否ヲ記載スヘシ
第四十四条 一定ノ金額ヲ目的トセサル債権ノ担保タル先取特権又ハ抵当権ノ保存又ハ設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債権ノ価格ヲ記載スヘシ
第四十五条 債権ノ一部ノ譲渡又ハ代位弁済ニ依ル先取特権若ハ抵当権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ譲渡又ハ代位弁済ノ目的タル債権額ヲ記載スヘシ
第四十六条 同一登録官庁ノ管轄ニ属スル数箇ノ漁業権ニ関シ先取特権又ハ抵当権ノ保存、設定又ハ移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ登録原因及登録ノ目的カ同一ナルトキニ限リ同一ノ申請書ヲ以テ登録ヲ申請スルコトヲ得
第四十七条 賃借権ノ設定又ハ賃借シタル漁業権ノ転貸ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ借賃ヲ記載シ登録原因ニ存続期間若ハ借賃ノ支払時期ノ定アルトキ又ハ転貸若ハ賃借権ノ移転ヲ許シタルトキハ之ヲ記載シ賃貸借ヲ為ス者カ処分ノ能力又ハ権限ヲ有セサル者ナルトキハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
第四十八条 漁業権、之ヲ目的トスル権利又ハ入漁権ノ抛棄ニ依ル登録ノ抹消ハ登録名義人ノミニテ申請スルコトヲ得
第四十九条 先取特権及抵当権ノ登録アル漁業権ノ取消アリタルトキハ抹消ノ登録ヲ為シ漁業法第二十四条第一項及第二十五条ノ場合ノ外競売ノ目的ノ範囲内ニ於テ仍存続スル旨及競落ノ決定確定シタルトキハ取消ハ其ノ効力ヲ生セサリシモノト看做ス旨ヲ同時ニ記載スヘシ
先取特権者又ハ抵当権者競売ノ請求ヲ為ササルトキ又ハ競売申立ノ登録アリタル場合ニ於テ其ノ登録抹消ノ嘱託アリタルトキハ其ノ旨ヲ登録シタル後前項ノ規定ニ依ル記載ヲ抹消スヘシ
第五十条 登録シタル権利カ或人ノ死亡ニ依リテ消滅シタル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ死亡ヲ証スル戸籍ノ謄本、抄本其ノ他之ニ相当スル書面ヲ添附スルトキハ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十一条 登録権利者カ登録義務者ノ行方ノ知レサルニ依リ之ト共ニ登録ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ従ヒ公示催告ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除権判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十二条 前条第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債権証書並債権金額及最後ノ二年分ノ定期金ノ受取証書ヲ添附シタルトキハ登録権利者ノミニテ先取特権又ハ抵当権ニ関スル登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十三条 登録ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ抹消ニ付登録上利害関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第五十四条 仮登録ノ抹消ハ仮登録名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ仮登録名義人ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判又ハ裁決ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登録上利害ノ関係ヲ有スル者ヨリ仮登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十五条 第三条第一号ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ対シ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ遅滞ナク嘱託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ証スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ予告登録ノ抹消ヲ登録官庁ニ嘱託スヘシ
第五十六条 第三条第二号ニ掲ケタル訴願若ハ行政訴訟ノ却下若ハ取下アリタルトキ又ハ請求否認ノ裁決若ハ判決アリタルトキハ登録官庁ハ職権ヲ以テ予告登録ヲ抹消シ行政裁判所ハ其ノ抹消ヲ登録官庁ニ嘱託スヘシ
第三章 異議及訴願
第五十七条 登録ニ関スル処分ヲ不当トスル者ハ処分ノ了リタル日ヨリ三十日以内ニ登録官庁ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第五十八条 異議ノ決定ハ理由ヲ附シテ之ヲ為スヘシ
地方長官ノ為シタル決定ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願ヲ提起スルコトヲ得
附 則
第五十九条 本令ハ明治四十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第六十条 本令施行前ニ受理シタル申請又ハ届出ニ付テハ旧漁業法施行規則ニ依リ旧免許漁業原簿ニ之ヲ登録ス但シ登録スヘキ事項ハ漁業法又ハ本令ニ依リ登録スルコトヲ得ヘキモノニ限ル
第六十一条 本令施行前ニ登録シタル入漁権及本令施行前ニ受理シタル入漁登録申請又ハ旧漁業法施行前ノ契約若ハ慣行ニ依リテ入漁スル権利ヲ有スル者ノ専用漁業免許後一年内ニ為シタル入漁登録申請ニ基キ登録シタル入漁権相互ノ間ニ於テハ第六条ノ規定ヲ適用セス
前項ノ入漁権ハ他ノ入漁権ニ対シテ先順位ニ在ルモノト看做ス
第六十二条 旧免許漁業原簿ハ之ヲ免許漁業原簿ト看做ス
旧漁業法施行規則ニ依リ登録セラレタル事項中契約書ヲ援用シタルモノニ付テハ該契約書ハ旧免許漁業原簿ノ一部ト看做ス旧漁業法施行規則ニ依ル入漁漁場図亦同シ
第六十三条 旧漁業法施行規則ニ基キ下付シタル漁業免許状又ハ入漁登録証ハ登録済証ト看做ス
第六十四条 旧漁業法施行規則ニ依リ登録セラレタル権利ニ関シ登録ノ申請アリタル場合ニ於テハ抹消ヲ除クノ外新免許漁業原簿ニ旧免許漁業原簿中抹消ニ係ラサル登録ヲ移シ旧免許漁業原簿中新免許漁業原簿ニ移シタル登録ヲ抹消スヘシ