宅地地価修正法
法令番号: 法律第三號
公布年月日: 明治43年3月25日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル宅地地價修正法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年三月二十四日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
法律第三號
宅地地價修正法
第一條 本法ニ於テ宅地ト稱スルハ郡村宅地及市街宅地ヲ謂フ
第二條 本法施行ノ際ニ於ケル宅地ノ地價ハ本法ニ依リ之ヲ修正ス
第三條 宅地ノ修正地價ハ本法ニ依リ定メタル賃貸價格ノ十倍トス但シ賃貸價格ノ十倍カ市街宅地ニ在リテハ現在地價ノ十八倍郡村宅地ニ在リテハ現在地價ノ七倍二割ヲ超ユルトキハ市街宅地ニ在リテハ現在地價ノ十八倍郡村宅地ニ在リテハ現在地價ノ七倍二割ヲ以テ其ノ地價トス
前項ニ依ル修正地價總額カ現在地租總額ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ超ユルトキハ現在地租ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ以テ修正地價總額トシ前項ニ依ル修正地價ニ按分シテ每筆ノ地價ヲ定ム
本法ニ於テ賃貸價格ト稱スルハ貸主カ公課、修繕費其ノ他土地ノ維持ニ必要ナル經費ヲ負擔スル條件ヲ以テ之ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸主ノ收得スヘキ金額ヲ謂フ
第四條 宅地ノ賃貸價格ハ宅地賃貸價格調査委員會ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
政府ハ調査委員會ノ決議ヲ不當ト認ムルトキハ之ヲ再調査ニ付ス
左ノ場合ニ於テハ政府ニ於テ宅地ノ賃貸價格ヲ決定ス
一 調査委員會成立セサルトキ
二 調査委員會ノ調査ニ付シタル日ヨリ六十日以內ニ調査結了セサルトキ
三 調査委員會ノ再議ニ付スルモ其ノ決定仍不當ト認ムルトキ
四 調査委員會ノ再議ニ付シタル日ヨリ二十日以內ニ調査結了セサルトキ
第五條 稅務署長ハ所轄內各市町村ニ於ケル宅地ノ賃貸價格ヲ調査シ宅地賃貸價格調査委員會ニ提出スヘシ
第六條 各稅務署所轄內ニ宅地賃貸價格調査委員會ヲ置ク但シ稅務署所轄內ニ市制ヲ施行スル地方ヲ包含スルトキハ市制ヲ施行スル地方ト其ノ他ノ地方トニ區別シテ之ヲ置ク
調査委員ノ定數ハ十人トス但シ地方ノ狀況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ增減スルコトヲ得
第七條 調査委員ハ調査委員選擧人之ヲ選擧ス調査委員ニ選ハレタル者ハ正當ノ事故ナクシテ之ヲ辭スルコトヲ得ス
調査委員ハ其ノ職務ノ終了ニ因リ解任ス
第八條 調査委員選擧人ノ定數ハ其ノ選擧區域內ニ於テ宅地ノ地租ヲ納ムル義務アル者五十人ニ付一人トス但シ義務者千人以上ナルトキハ二十人ニ止メ義務者五十人未滿ナルトキハ一人トス
第九條 調査委員ノ選擧區域ハ調査委員會ヲ置クヘキ區域ニ依リ調査委員選擧人ノ選擧區域ハ市町村ノ區域ニ依ル
第十條 選擧執行ノ日ニ於テ現ニ地租名寄帳ニ宅地地租納稅者トシテ登錄セラレタル者ハ當該選擧區域內ニ於テ調査委員選擧人ヲ選擧シ又ハ調査委員若ハ調査委員選擧人ニ選擧セラルルコトヲ得但シ左ニ記載スル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 無能力者
二 身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者及家資分散若ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
三 國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者
四 六年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ處セラレタル者又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレ復權ヲ得サル者
五 六年未滿ノ懲役若ハ禁錮ニ處セラレタル者又ハ舊刑法ノ禁錮ニ處セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終ル迄ノ者又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
第十一條 調査委員選擧人及調査委員ノ選擧竝調査委員會ノ會議ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 政府ハ其ノ決定シタル賃貸價格ニ依リ修正地價ヲ定メ之ヲ市町村長ニ通知スヘシ
市町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ市役所又ハ町村役場ニ於テ二十日間其ノ市町村內ニ於テ宅地ノ地租ヲ納ムル義務アル者又ハ其ノ納稅管理人ノ縱覽ニ供スヘシ
第十三條 宅地ノ地租ヲ納ムル義務アル者又ハ其ノ納稅管理人修正地價ニ不服アルトキハ縱覽期間滿了ノ日ヨリ三十日以內ニ政府ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第十四條 前條ノ申立アリタルトキハ政府ハ修正地價ヲ決定シ之ヲ異議申立者ニ通知スヘシ
第十五條 前條ノ決定ニ對シ不服アルトキハ訴願又ハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第十六條 本法中市トアルハ東京市、京都市、大阪市、北海道及沖繩縣ニ在リテハ區トス
戶長ノ職務ヲ行フ區域ハ本法ニ於テハ之ヲ町村ト看做ス
附 則
第十七條 本法ニ依リ地價ヲ修正シタル宅地ニ付テハ明治四十四年分地租ヨリ修正地價ニ依リ地租ヲ徵收ス
第十八條 本法施行後明治四十三年十二月三十一日迄ノ間ニ於テ地租條例ニ依リ地價ヲ設定シ又ハ修正シタル宅地ニ付テハ更ニ本法ニ依リ地價ヲ修正シタル類地ノ比準ニ依リ地價ヲ修正シ明治四十四年分地租ヨリ其ノ修正地價ニ依リ地租ヲ徵收ス
第十九條 荒地免租年期又ハ低價年期ヲ有スル宅地ニ付テハ本法ニ依リ地價ノ修正ヲ爲サス年期明ニ至リ類地ノ比準ニ依リ其ノ地價ヲ修正ス
荒地免租年期ヲ有スル宅地ニシテ低價年期ヲ許可セラレタルトキハ其ノ年期明ニ至リ前項ノ規定ヲ適用ス
第二十條 本法施行前耕地整理法又ハ明治三十年法律第三十九號ニ依リ耕地ノ整理又ハ土地ノ改良ニ著手シ事業成功ニ至ラサル地區內ニ在ル宅地ニ付テハ本法ニ依リ地價ノ修正ヲ爲サス事業成功ニ至リ本法ニ依リ地價ヲ修正シタル類地ノ比準ニ依リ其ノ地價ヲ修正ス
第二十一條 開墾著手後九年ヲ經過セサル宅地又ハ鍬下年期若ハ地價据置年期ヲ有スル宅地ニ付テハ本法ニ依リ地價ノ修正ヲ爲サス開墾著手後十年目又ハ年期明ニ至リタルトキ類地ノ比準ニ依リ其ノ地價ヲ修正ス
第二十二條 前三條ノ場合ニ於テ地租ヲ徵收スヘキ宅地ニ付テハ其ノ修正地價ニ依リ地租ヲ徵收スルニ至ル迄左ノ各號ニ依リ地租ヲ徵收ス
一 北海道ノ宅地ニ在リテハ現地價ニ對スル百分ノ三箇四ノ地租額ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ以テ地價トシ之ニ對スル地租ヲ徵收ス
二 府縣ノ宅地ニ在リテハ現地價ニ對スル百分ノ四箇七ノ地租額ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ以テ地價トシ之ニ對スル地租ヲ徵收ス
前項ノ規定ハ明治四十四年分地租ヨリ之ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル宅地地価修正法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年三月二十四日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
法律第三号
宅地地価修正法
第一条 本法ニ於テ宅地ト称スルハ郡村宅地及市街宅地ヲ謂フ
第二条 本法施行ノ際ニ於ケル宅地ノ地価ハ本法ニ依リ之ヲ修正ス
第三条 宅地ノ修正地価ハ本法ニ依リ定メタル賃貸価格ノ十倍トス但シ賃貸価格ノ十倍カ市街宅地ニ在リテハ現在地価ノ十八倍郡村宅地ニ在リテハ現在地価ノ七倍二割ヲ超ユルトキハ市街宅地ニ在リテハ現在地価ノ十八倍郡村宅地ニ在リテハ現在地価ノ七倍二割ヲ以テ其ノ地価トス
前項ニ依ル修正地価総額カ現在地租総額ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ超ユルトキハ現在地租ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ以テ修正地価総額トシ前項ニ依ル修正地価ニ按分シテ毎筆ノ地価ヲ定ム
本法ニ於テ賃貸価格ト称スルハ貸主カ公課、修繕費其ノ他土地ノ維持ニ必要ナル経費ヲ負担スル条件ヲ以テ之ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸主ノ収得スヘキ金額ヲ謂フ
第四条 宅地ノ賃貸価格ハ宅地賃貸価格調査委員会ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
政府ハ調査委員会ノ決議ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ再調査ニ付ス
左ノ場合ニ於テハ政府ニ於テ宅地ノ賃貸価格ヲ決定ス
一 調査委員会成立セサルトキ
二 調査委員会ノ調査ニ付シタル日ヨリ六十日以内ニ調査結了セサルトキ
三 調査委員会ノ再議ニ付スルモ其ノ決定仍不当ト認ムルトキ
四 調査委員会ノ再議ニ付シタル日ヨリ二十日以内ニ調査結了セサルトキ
第五条 税務署長ハ所轄内各市町村ニ於ケル宅地ノ賃貸価格ヲ調査シ宅地賃貸価格調査委員会ニ提出スヘシ
第六条 各税務署所轄内ニ宅地賃貸価格調査委員会ヲ置ク但シ税務署所轄内ニ市制ヲ施行スル地方ヲ包含スルトキハ市制ヲ施行スル地方ト其ノ他ノ地方トニ区別シテ之ヲ置ク
調査委員ノ定数ハ十人トス但シ地方ノ状況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ増減スルコトヲ得
第七条 調査委員ハ調査委員選挙人之ヲ選挙ス調査委員ニ選ハレタル者ハ正当ノ事故ナクシテ之ヲ辞スルコトヲ得ス
調査委員ハ其ノ職務ノ終了ニ因リ解任ス
第八条 調査委員選挙人ノ定数ハ其ノ選挙区域内ニ於テ宅地ノ地租ヲ納ムル義務アル者五十人ニ付一人トス但シ義務者千人以上ナルトキハ二十人ニ止メ義務者五十人未満ナルトキハ一人トス
第九条 調査委員ノ選挙区域ハ調査委員会ヲ置クヘキ区域ニ依リ調査委員選挙人ノ選挙区域ハ市町村ノ区域ニ依ル
第十条 選挙執行ノ日ニ於テ現ニ地租名寄帳ニ宅地地租納税者トシテ登録セラレタル者ハ当該選挙区域内ニ於テ調査委員選挙人ヲ選挙シ又ハ調査委員若ハ調査委員選挙人ニ選挙セラルルコトヲ得但シ左ニ記載スル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 無能力者
二 身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者及家資分散若ハ破産ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復権ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
三 国税滞納処分ヲ受ケタル後一年ヲ経サル者
四 六年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ処セラレタル者又ハ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレ復権ヲ得サル者
五 六年未満ノ懲役若ハ禁錮ニ処セラレタル者又ハ旧刑法ノ禁錮ニ処セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終ル迄ノ者又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
第十一条 調査委員選挙人及調査委員ノ選挙並調査委員会ノ会議ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 政府ハ其ノ決定シタル賃貸価格ニ依リ修正地価ヲ定メ之ヲ市町村長ニ通知スヘシ
市町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ市役所又ハ町村役場ニ於テ二十日間其ノ市町村内ニ於テ宅地ノ地租ヲ納ムル義務アル者又ハ其ノ納税管理人ノ縦覧ニ供スヘシ
第十三条 宅地ノ地租ヲ納ムル義務アル者又ハ其ノ納税管理人修正地価ニ不服アルトキハ縦覧期間満了ノ日ヨリ三十日以内ニ政府ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
第十四条 前条ノ申立アリタルトキハ政府ハ修正地価ヲ決定シ之ヲ異議申立者ニ通知スヘシ
第十五条 前条ノ決定ニ対シ不服アルトキハ訴願又ハ行政訴訟ヲ為スコトヲ得
第十六条 本法中市トアルハ東京市、京都市、大阪市、北海道及沖縄県ニ在リテハ区トス
戸長ノ職務ヲ行フ区域ハ本法ニ於テハ之ヲ町村ト看做ス
附 則
第十七条 本法ニ依リ地価ヲ修正シタル宅地ニ付テハ明治四十四年分地租ヨリ修正地価ニ依リ地租ヲ徴収ス
第十八条 本法施行後明治四十三年十二月三十一日迄ノ間ニ於テ地租条例ニ依リ地価ヲ設定シ又ハ修正シタル宅地ニ付テハ更ニ本法ニ依リ地価ヲ修正シタル類地ノ比準ニ依リ地価ヲ修正シ明治四十四年分地租ヨリ其ノ修正地価ニ依リ地租ヲ徴収ス
第十九条 荒地免租年期又ハ低価年期ヲ有スル宅地ニ付テハ本法ニ依リ地価ノ修正ヲ為サス年期明ニ至リ類地ノ比準ニ依リ其ノ地価ヲ修正ス
荒地免租年期ヲ有スル宅地ニシテ低価年期ヲ許可セラレタルトキハ其ノ年期明ニ至リ前項ノ規定ヲ適用ス
第二十条 本法施行前耕地整理法又ハ明治三十年法律第三十九号ニ依リ耕地ノ整理又ハ土地ノ改良ニ著手シ事業成功ニ至ラサル地区内ニ在ル宅地ニ付テハ本法ニ依リ地価ノ修正ヲ為サス事業成功ニ至リ本法ニ依リ地価ヲ修正シタル類地ノ比準ニ依リ其ノ地価ヲ修正ス
第二十一条 開墾著手後九年ヲ経過セサル宅地又ハ鍬下年期若ハ地価据置年期ヲ有スル宅地ニ付テハ本法ニ依リ地価ノ修正ヲ為サス開墾著手後十年目又ハ年期明ニ至リタルトキ類地ノ比準ニ依リ其ノ地価ヲ修正ス
第二十二条 前三条ノ場合ニ於テ地租ヲ徴収スヘキ宅地ニ付テハ其ノ修正地価ニ依リ地租ヲ徴収スルニ至ル迄左ノ各号ニ依リ地租ヲ徴収ス
一 北海道ノ宅地ニ在リテハ現地価ニ対スル百分ノ三箇四ノ地租額ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ以テ地価トシ之ニ対スル地租ヲ徴収ス
二 府県ノ宅地ニ在リテハ現地価ニ対スル百分ノ四箇七ノ地租額ヲ百分ノ二箇半ヲ以テ除シタルモノヲ以テ地価トシ之ニ対スル地租ヲ徴収ス
前項ノ規定ハ明治四十四年分地租ヨリ之ヲ適用ス