帝国鉄道会計規則
法令番号: 勅令第五十五號
公布年月日: 明治42年3月30日
法令の形式: 勅令
朕帝國鐵道會計規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年三月二十九日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
勅令第五十五號
帝國鐵道會計規則
第一章 豫算
第一條 本會計ニ於ケル歲入歲出豫算ハ之ヲ資本、收益及積立金ノ三勘定ニ分チ各勘定中ニ於テ之ヲ款項ニ區分スヘシ
第二條 歲入歲出ノ豫定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ前年度八月三十一日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
前項ノ豫定計算書ニハ前前年度ニ於ケル貸借對照表、損益計算表竝資本及固定財產價額增減表ヲ添附スヘシ
第三條 歲入歲出ノ豫定計算書ハ科目ヲ分チ歲入ノ性質歲出ノ用途ヲ明示スヘシ
第四條 歲入歲出ノ豫算ハ決定ノ後所管大臣鐵道院總裁ヲシテ之ヲ執行セシムヘシ但シ部長、局長又ハ所長ヲシテ其ノ一部ヲ執行セシムルコトヲ得
所管大臣歲出豫算ヲ執行セシメムトスルトキハ仕拂豫算ヲ以テ之ヲ命スヘシ
第五條 積立金勘定ノ支出ヲ爲シタルトキハ鐵道院總裁其ノ計算書ヲ添附シ所管大臣ヲ經テ之ヲ大藏大臣ニ通知スヘシ
大藏大臣前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ會計檢査院ニ通知スヘシ
第六條 積立金勘定ヨリ他勘定ニ於ケル歲出ノ不足ニ對シ補塡ヲ爲シタル場合ニ於テハ會計規則第二十四條ノ規定ヲ準用ス
第二章 收入支出
第七條 本會計ニ於ケル各勘定ノ歲入金、歲出金及歲入歲出外現金ハ交互振替及繰替受拂ヲ爲スコトヲ得
第八條 本會計ニ於テハ資本勘定ニ屬スル現金ノ持越高、當該年度ノ收入濟歲入額及帝國鐵道會計法第十二條ニ依ル借入金ヲ以テ仕拂元受高トシ歲出ヲ支出スルハ此ノ仕拂元受高ヲ超過スルコトヲ得ス
第九條 鐵道院總裁ハ繰替拂ヲ爲サシムル爲大藏大臣ノ承認ヲ經前條ノ仕拂元受高ヲ超過セサル範圍內ニ於テ之カ資金ヲ出納官吏ニ交付スヘキ旨金庫ニ請求スルコトヲ得
前項ニ依リ交付ヲ受ケタル金額ハ當該年度內ニ於テ之カ戾入ヲ爲スヘシ
第十條 鐵道院總裁、部長、局長又ハ所長ハ歲出ヲ支出スル爲金庫ニ向テ仕拂請求書ヲ發スヘシ
第十一條 仕拂請求書ノ發行及其ノ執行ニ關シテハ第十二條ニ依リ特ニ定ムルモノヲ除クノ外會計規則第四章第一款及第二款ノ規定ヲ準用ス
第十二條 歲入金、歲出金、歲入歲出外現金ノ出納竝其ノ交互振替及繰替受拂ニ關スル手續ハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ム
公債募集金、借入金又ハ融通證券ニ依ル收入金取扱ノ手續、餘裕金運用ノ手續及出納官吏ノ保管ニ屬スル現金預入ノ手續ハ大藏大臣之ヲ定ム
第十三條 帝國鐵道會計法第十一條第二項ニ依ル豫算殘額ノ繰越ニ關シテハ會計規則第六章第一款ノ規定ヲ準用ス
第十四條 每年度所屬歲入歲出金ヲ出納スルハ翌年度五月三十一日限トス但シ左ニ揭クル場合ニ於テハ翌年度六月三十日迄之カ出納ヲ爲スコトヲ得
一 出納官吏ノ領收シタル歲入金ヲ金庫ニ拂込ムトキ
二 繰替拂ヲ爲シタル金額ニ對シ仕拂請求書ヲ發スルトキ
三 他勘定ニ鐵道益金ヲ繰入ルルトキ
四 歲入金ヲ補塡スル爲積立金ヲ支出スルトキ
第十五條 資本勘定中用品及工作收入所屬ニシテ每年度內ニ收入ヲ爲スヘキ權利ヲ得テ每年度出納ノ完結迄ニ收入濟ト爲ラサルモノハ收入未濟トシテ順次翌年度ニ繰越シ現ニ收入ヲ爲シタル年度ノ歲入ニ組入ルヘシ
第十六條 資本勘定中用品及工作費所屬ニシテ每年度內ニ仕拂ヲ爲スヘキ義務ヲ生シ每年度出納完結迄ニ支出濟ト爲ラサルモノハ支出未濟トシテ順次翌年度ニ繰越シ現ニ支出ヲ爲シタル年度ノ歲出ニ組入ルヘシ
第十七條 資本勘定中用品及工作收入又ハ用品及工作費ニ屬セサルモノ竝收益勘定所屬ノ歲入歲出ニシテ每年度出納完結迄ニ收入濟又ハ支出濟ト爲ラサルモノハ現ニ其ノ收支ヲ爲シタル年度ノ歲入又ハ歲出トス
第十八條 歲入ヲ徵收スル官吏ハ每月徵收報吿書ヲ調製シ參照書類ヲ添ヘ之ヲ鐵道院總裁ニ送付スヘシ
鐵道院總裁ハ前項ノ報吿書ニ依リ每月徵收總報吿書ヲ調製シ參照書類ヲ添ヘ所管大臣ヲ經テ翌月中ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
第十九條 金庫出納役ハ每月仕拂請求書受領濟額報吿書ヲ調製シ翌月中ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
第三章 計算
第二十條 本會計ノ資本ヲ分テ特有資本借入資本ノ二種トス
公債、借入金又ハ鐵道國有法ニ依リ政府ノ負擔ニ歸シタル債務ニシテ現ニ本會計ノ負擔ニ屬スルモノニ相當スル金額ヲ借入資本トシ其ノ他ノモノヲ特有資本トス
第二十一條 資本勘定ニ於ケル資金ノ收入、收益勘定ニ於テ補充工事ノ爲支出シタル金額及讓渡又ハ寄付ヲ受ケタル物件ノ見積價格ハ翌年度六月三十日ニ於テ前條ノ區別ニ從ヒ之ヲ特有資本又ハ借入資本ニ編入スヘシ
前項ニ依リ借入資本ニ編入スヘキモノニシテ其ノ實收額ト債務額トニ差額アルモノハ債務額ニ依ル但シ其ノ差增額ハ之ヲ特有資本ニ加ヘ差減額ハ之ヲ同資本ヨリ減スヘシ
用品及工作ノ受拂計算上生シタル過不足ニ付テハ翌年度六月三十日ニ於テ其ノ過剩額ハ之ヲ特有資本ニ加ヘ不足額ハ之ヲ同資本ヨリ減スヘシ
第二十二條 左ニ揭クルモノヲ以テ固定財產ノ價格トス
一 鐵道ノ建設改良及補充工事ノ爲支出シタル金額
二 鐵道國有法ニ依リ買收シタル鐵道ニ在リテハ其ノ買收價格
三 讓渡又ハ寄付ヲ受ケタル物件ハ其ノ見積價格
第二十三條 貯藏物品ハ其ノ購入費、製作品、改製品又ハ修理品ハ其ノ材料價額及工作費ヲ以テ原價トス
前項ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ見積價格ヲ以テ原價ト爲スコトヲ得
第二十四條 前條ノ原價ニ對シ鐵道院總裁ノ規定スル方法ニ依リ取扱諸費及損減步合ヲ割掛ケタルモノヲ以テ物品ノ賣價トス
第二十五條 固定財產ニシテ讓渡又ハ滅失シタルモノアルトキハ其ノ價額ヲ削除シ之ヲ特有資本ヨリ滅スヘシ
第二十六條 貯藏物品毀損變質其ノ他ノ事由ニ因リ價格ヲ減損シタルトキハ其ノ價額ヲ削除スヘシ
貯藏物品不用ニ歸シタルトキハ其ノ價額ヲ削除シテ不用物品ニ組入ルヘシ
第二十七條 本會計ニ屬スル貸借對照竝損益計算ノ種目ハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ム
第四章 決算
第二十八條 歲入歲出ノ決定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
第二十九條 鐵道院總裁、部長、局長又ハ所長ハ會計檢査院ニ證明ノ爲每月徵收計算書及支出計算書ヲ調製シ證憑書類ヲ添ヘ所管大臣ニ送付シ所管大臣ハ之ヲ會計檢査院ニ送付スヘシ
前項ノ計算書ハ特ニ所管大臣ノ委任ヲ受ケタル官吏ヨリ直ニ會計檢査院ニ送付セシムルコトヲ得
第三十條 出納官吏及出納員ハ會計檢査院ノ檢査判決ヲ受クル爲每月現金出納計算書ヲ調製シ鐵道院總裁、部長、局長又ハ所長ニ送付シ總裁、部長、局長又ハ所長ハ下檢査ヲ執行シ下檢査書ヲ添ヘ之ヲ會計檢査院ニ送付スヘシ但シ出納員ノ出納計算ハ所屬出納官吏ノ出納計算書ニ併算證明スルコトヲ得
第五章 工事ノ請負及物件ノ賣買貸借
第三十一條 左ニ揚クル場合ニ於テハ所管大臣ノ定ムル所ニ從ヒ隨意契約ニ依ルコトヲ得
一 土工、橋梁、隧道、軌道、停車場、倉庫、機械工場、船舶及旅館ニ關スル工事ヲ請負ニ付スルトキ
二 鐵道事業用ノ諸材料、車輛、船舶、器具、機械、機械運轉用品、被服及船舶、旅館ノ營業用ノ物品ヲ賣買スルトキ
三 車輛、船舶、器具、機械、旅館及旅館ニ附帶スル物件ヲ貸借スルトキ
第六章 帳簿
第三十二條 大藏省ハ資本勘定、收益勘定及積立金勘定ニ屬スル主計簿ヲ備ヘ歲入ノ豫算額、確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額、歲出ノ豫算額、豫算決定後增加額、仕拂元受高、支出濟額、翌年度繰越額、殘額ヲ登記スヘシ
第三十三條 鐵道院ハ日記簿、原簿及補助簿ヲ備ヘ資本勘定、收益勘定及積立金勘定ニ關スル一切ノ計算ヲ登記スヘシ
第三十四條 歲入ヲ徵收スル官吏ハ徵收簿ヲ備ヘ歲入ノ確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額ヲ登記スヘシ
第三十五條 金庫出納役ハ支出簿及仕拂元受高差引簿ヲ備ヘ支出簿ニハ歲出ノ仕拂豫算額、仕拂請求書受領濟額ヲ登記シ仕拂元受高差引簿ニハ仕拂元受高、仕拂請求書受領濟額、仕拂額ヲ登記スヘシ
第三十六條 出納官吏ハ現金出納簿ヲ備ヘ現金ノ出納ヲ登記スヘシ
第七章 雜則
第三十七條 本令ニ依リ調製スヘキ諸書類、帳簿ニ關スル規定及樣式ニ付テハ會計規則第百二十條乃至第百二十二條ノ規定ヲ準用ス
第三十八條 本令ニ規定セサルモノニ付テハ會計規則ニ依ル
附 則
本令ハ明治四十二年度ヨリ之ヲ施行ス
帝國鐵道及同用品資金會計規則ハ之ヲ廢止ス但シ明治四十一年度分及韓國ニ於テ帝國ノ經營スル鐵道ノ會計ニ付テハ仍其ノ效力ヲ有ス
朕帝国鉄道会計規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年三月二十九日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
勅令第五十五号
帝国鉄道会計規則
第一章 予算
第一条 本会計ニ於ケル歳入歳出予算ハ之ヲ資本、収益及積立金ノ三勘定ニ分チ各勘定中ニ於テ之ヲ款項ニ区分スヘシ
第二条 歳入歳出ノ予定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ前年度八月三十一日迄ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
前項ノ予定計算書ニハ前前年度ニ於ケル貸借対照表、損益計算表並資本及固定財産価額増減表ヲ添附スヘシ
第三条 歳入歳出ノ予定計算書ハ科目ヲ分チ歳入ノ性質歳出ノ用途ヲ明示スヘシ
第四条 歳入歳出ノ予算ハ決定ノ後所管大臣鉄道院総裁ヲシテ之ヲ執行セシムヘシ但シ部長、局長又ハ所長ヲシテ其ノ一部ヲ執行セシムルコトヲ得
所管大臣歳出予算ヲ執行セシメムトスルトキハ仕払予算ヲ以テ之ヲ命スヘシ
第五条 積立金勘定ノ支出ヲ為シタルトキハ鉄道院総裁其ノ計算書ヲ添附シ所管大臣ヲ経テ之ヲ大蔵大臣ニ通知スヘシ
大蔵大臣前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ会計検査院ニ通知スヘシ
第六条 積立金勘定ヨリ他勘定ニ於ケル歳出ノ不足ニ対シ補填ヲ為シタル場合ニ於テハ会計規則第二十四条ノ規定ヲ準用ス
第二章 収入支出
第七条 本会計ニ於ケル各勘定ノ歳入金、歳出金及歳入歳出外現金ハ交互振替及繰替受払ヲ為スコトヲ得
第八条 本会計ニ於テハ資本勘定ニ属スル現金ノ持越高、当該年度ノ収入済歳入額及帝国鉄道会計法第十二条ニ依ル借入金ヲ以テ仕払元受高トシ歳出ヲ支出スルハ此ノ仕払元受高ヲ超過スルコトヲ得ス
第九条 鉄道院総裁ハ繰替払ヲ為サシムル為大蔵大臣ノ承認ヲ経前条ノ仕払元受高ヲ超過セサル範囲内ニ於テ之カ資金ヲ出納官吏ニ交付スヘキ旨金庫ニ請求スルコトヲ得
前項ニ依リ交付ヲ受ケタル金額ハ当該年度内ニ於テ之カ戻入ヲ為スヘシ
第十条 鉄道院総裁、部長、局長又ハ所長ハ歳出ヲ支出スル為金庫ニ向テ仕払請求書ヲ発スヘシ
第十一条 仕払請求書ノ発行及其ノ執行ニ関シテハ第十二条ニ依リ特ニ定ムルモノヲ除クノ外会計規則第四章第一款及第二款ノ規定ヲ準用ス
第十二条 歳入金、歳出金、歳入歳出外現金ノ出納並其ノ交互振替及繰替受払ニ関スル手続ハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ム
公債募集金、借入金又ハ融通証券ニ依ル収入金取扱ノ手続、余裕金運用ノ手続及出納官吏ノ保管ニ属スル現金預入ノ手続ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第十三条 帝国鉄道会計法第十一条第二項ニ依ル予算残額ノ繰越ニ関シテハ会計規則第六章第一款ノ規定ヲ準用ス
第十四条 毎年度所属歳入歳出金ヲ出納スルハ翌年度五月三十一日限トス但シ左ニ掲クル場合ニ於テハ翌年度六月三十日迄之カ出納ヲ為スコトヲ得
一 出納官吏ノ領収シタル歳入金ヲ金庫ニ払込ムトキ
二 繰替払ヲ為シタル金額ニ対シ仕払請求書ヲ発スルトキ
三 他勘定ニ鉄道益金ヲ繰入ルルトキ
四 歳入金ヲ補填スル為積立金ヲ支出スルトキ
第十五条 資本勘定中用品及工作収入所属ニシテ毎年度内ニ収入ヲ為スヘキ権利ヲ得テ毎年度出納ノ完結迄ニ収入済ト為ラサルモノハ収入未済トシテ順次翌年度ニ繰越シ現ニ収入ヲ為シタル年度ノ歳入ニ組入ルヘシ
第十六条 資本勘定中用品及工作費所属ニシテ毎年度内ニ仕払ヲ為スヘキ義務ヲ生シ毎年度出納完結迄ニ支出済ト為ラサルモノハ支出未済トシテ順次翌年度ニ繰越シ現ニ支出ヲ為シタル年度ノ歳出ニ組入ルヘシ
第十七条 資本勘定中用品及工作収入又ハ用品及工作費ニ属セサルモノ並収益勘定所属ノ歳入歳出ニシテ毎年度出納完結迄ニ収入済又ハ支出済ト為ラサルモノハ現ニ其ノ収支ヲ為シタル年度ノ歳入又ハ歳出トス
第十八条 歳入ヲ徴収スル官吏ハ毎月徴収報告書ヲ調製シ参照書類ヲ添ヘ之ヲ鉄道院総裁ニ送付スヘシ
鉄道院総裁ハ前項ノ報告書ニ依リ毎月徴収総報告書ヲ調製シ参照書類ヲ添ヘ所管大臣ヲ経テ翌月中ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第十九条 金庫出納役ハ毎月仕払請求書受領済額報告書ヲ調製シ翌月中ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第三章 計算
第二十条 本会計ノ資本ヲ分テ特有資本借入資本ノ二種トス
公債、借入金又ハ鉄道国有法ニ依リ政府ノ負担ニ帰シタル債務ニシテ現ニ本会計ノ負担ニ属スルモノニ相当スル金額ヲ借入資本トシ其ノ他ノモノヲ特有資本トス
第二十一条 資本勘定ニ於ケル資金ノ収入、収益勘定ニ於テ補充工事ノ為支出シタル金額及譲渡又ハ寄付ヲ受ケタル物件ノ見積価格ハ翌年度六月三十日ニ於テ前条ノ区別ニ従ヒ之ヲ特有資本又ハ借入資本ニ編入スヘシ
前項ニ依リ借入資本ニ編入スヘキモノニシテ其ノ実収額ト債務額トニ差額アルモノハ債務額ニ依ル但シ其ノ差増額ハ之ヲ特有資本ニ加ヘ差減額ハ之ヲ同資本ヨリ減スヘシ
用品及工作ノ受払計算上生シタル過不足ニ付テハ翌年度六月三十日ニ於テ其ノ過剰額ハ之ヲ特有資本ニ加ヘ不足額ハ之ヲ同資本ヨリ減スヘシ
第二十二条 左ニ掲クルモノヲ以テ固定財産ノ価格トス
一 鉄道ノ建設改良及補充工事ノ為支出シタル金額
二 鉄道国有法ニ依リ買収シタル鉄道ニ在リテハ其ノ買収価格
三 譲渡又ハ寄付ヲ受ケタル物件ハ其ノ見積価格
第二十三条 貯蔵物品ハ其ノ購入費、製作品、改製品又ハ修理品ハ其ノ材料価額及工作費ヲ以テ原価トス
前項ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ見積価格ヲ以テ原価ト為スコトヲ得
第二十四条 前条ノ原価ニ対シ鉄道院総裁ノ規定スル方法ニ依リ取扱諸費及損減歩合ヲ割掛ケタルモノヲ以テ物品ノ売価トス
第二十五条 固定財産ニシテ譲渡又ハ滅失シタルモノアルトキハ其ノ価額ヲ削除シ之ヲ特有資本ヨリ滅スヘシ
第二十六条 貯蔵物品毀損変質其ノ他ノ事由ニ因リ価格ヲ減損シタルトキハ其ノ価額ヲ削除スヘシ
貯蔵物品不用ニ帰シタルトキハ其ノ価額ヲ削除シテ不用物品ニ組入ルヘシ
第二十七条 本会計ニ属スル貸借対照並損益計算ノ種目ハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ム
第四章 決算
第二十八条 歳入歳出ノ決定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第二十九条 鉄道院総裁、部長、局長又ハ所長ハ会計検査院ニ証明ノ為毎月徴収計算書及支出計算書ヲ調製シ証憑書類ヲ添ヘ所管大臣ニ送付シ所管大臣ハ之ヲ会計検査院ニ送付スヘシ
前項ノ計算書ハ特ニ所管大臣ノ委任ヲ受ケタル官吏ヨリ直ニ会計検査院ニ送付セシムルコトヲ得
第三十条 出納官吏及出納員ハ会計検査院ノ検査判決ヲ受クル為毎月現金出納計算書ヲ調製シ鉄道院総裁、部長、局長又ハ所長ニ送付シ総裁、部長、局長又ハ所長ハ下検査ヲ執行シ下検査書ヲ添ヘ之ヲ会計検査院ニ送付スヘシ但シ出納員ノ出納計算ハ所属出納官吏ノ出納計算書ニ併算証明スルコトヲ得
第五章 工事ノ請負及物件ノ売買貸借
第三十一条 左ニ揚クル場合ニ於テハ所管大臣ノ定ムル所ニ従ヒ随意契約ニ依ルコトヲ得
一 土工、橋梁、隧道、軌道、停車場、倉庫、機械工場、船舶及旅館ニ関スル工事ヲ請負ニ付スルトキ
二 鉄道事業用ノ諸材料、車輛、船舶、器具、機械、機械運転用品、被服及船舶、旅館ノ営業用ノ物品ヲ売買スルトキ
三 車輛、船舶、器具、機械、旅館及旅館ニ附帯スル物件ヲ貸借スルトキ
第六章 帳簿
第三十二条 大蔵省ハ資本勘定、収益勘定及積立金勘定ニ属スル主計簿ヲ備ヘ歳入ノ予算額、確定額、収入済額、不納欠損額、収入未済額、歳出ノ予算額、予算決定後増加額、仕払元受高、支出済額、翌年度繰越額、残額ヲ登記スヘシ
第三十三条 鉄道院ハ日記簿、原簿及補助簿ヲ備ヘ資本勘定、収益勘定及積立金勘定ニ関スル一切ノ計算ヲ登記スヘシ
第三十四条 歳入ヲ徴収スル官吏ハ徴収簿ヲ備ヘ歳入ノ確定額、収入済額、不納欠損額、収入未済額ヲ登記スヘシ
第三十五条 金庫出納役ハ支出簿及仕払元受高差引簿ヲ備ヘ支出簿ニハ歳出ノ仕払予算額、仕払請求書受領済額ヲ登記シ仕払元受高差引簿ニハ仕払元受高、仕払請求書受領済額、仕払額ヲ登記スヘシ
第三十六条 出納官吏ハ現金出納簿ヲ備ヘ現金ノ出納ヲ登記スヘシ
第七章 雑則
第三十七条 本令ニ依リ調製スヘキ諸書類、帳簿ニ関スル規定及様式ニ付テハ会計規則第百二十条乃至第百二十二条ノ規定ヲ準用ス
第三十八条 本令ニ規定セサルモノニ付テハ会計規則ニ依ル
附 則
本令ハ明治四十二年度ヨリ之ヲ施行ス
帝国鉄道及同用品資金会計規則ハ之ヲ廃止ス但シ明治四十一年度分及韓国ニ於テ帝国ノ経営スル鉄道ノ会計ニ付テハ仍其ノ効力ヲ有ス