海軍刑法施行法
法令番号: 法律第四十九號
公布年月日: 明治41年4月10日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル海軍刑法施行法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年四月九日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
海軍大臣 男爵 齋藤實
法律第四十九號
海軍刑法施行法
第一條 本法ニ於テ舊海軍刑法ト稱スルハ明治十四年第七十號布吿海軍刑法ヲ謂ヒ他ノ法律ト稱スルハ海軍刑法施行前ニ施行シタル法律及勅令、布吿ニシテ法律ト同一ノ效力ヲ有スルモノヲ謂フ
第二條 海軍刑法施行前ニ舊海軍刑法ノ罪又ハ他ノ法律ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ左ノ例ニ從ヒ海軍刑法ニ定メタル主刑ト舊海軍刑法又ハ他ノ法律ノ主刑トヲ對照シ刑法第十條ノ規定ニ依リ其ノ輕重ヲ定ム
海軍刑法ニ定メタル刑 舊海軍刑法又ハ他ノ法律ノ刑
死刑 死刑
無期懲役 無期徒刑
無期禁錮 無期流刑
有期懲役 有期徒刑、重懲役、輕懲役、重禁錮
有期禁錮 有期流刑、重禁獄、輕禁獄、輕禁錮
第三條 刑法施行法第三條ノ規定ハ前條ニ定メタル刑ノ對照ニ之ヲ準用ス
第四條 刑法第六條ニ依リ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スル場合ニ於テハ剝奪公權、剝官、停止公權、監視又ハ罰金ヲ附加スヘキトキト雖之ヲ附加セス
前項ノ場合ニ於テハ將校ニ非スシテ官職ヲ有スル者將校ニ在リテ剝官ヲ附加スル刑ニ該ルトキト雖其ノ官職ヲ失ハス
第五條 海軍刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付海軍刑法施行ノ前又ハ後ニ確定裁判アリタル後海軍刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付裁判ヲ爲ストキハ左ノ例ニ依ル
一 確定裁判アリタル罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖海軍刑法ニ於テハ其ノ罪ト餘罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
二 確定裁判アリタル罪ニ海軍刑法ヲ適用シタルトキト雖舊海軍刑法又ハ他ノ法律ニ於テハ其ノ罪ト餘罪トニ付數罪俱發ニ關スル規定ニ依ル
第六條 左ニ記載シタル者海軍刑法施行前更ニ海軍刑法ノ有期懲役ニ相當スル刑ニ該ル舊海軍刑法ノ罪ヲ犯シ海軍刑法施行後其ノ罪ニ付裁判ヲ爲ストキハ海軍刑法ニ於テハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
一 舊海軍刑法ニ依リ海軍刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ處セラレタル者
二 舊海軍刑法ニ依リ海軍刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ依リ死刑ニ處セラレ其ノ執行ノ免除ヲ得又ハ減刑ニ依リ懲役ニ相當スル刑ニ減輕セラレタル者
刑法第五十六條第三項ノ規定ハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リ處斷セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第七條 海軍刑法施行前ニ犯シタル一罪ト海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ一罪又ハ數罪トニ付同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ海軍刑法施行前ノ罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキト雖其ノ罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第八條 海軍刑法施行前ニ犯シタル數罪ト海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ一罪又ハ數罪トニ付同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テ海軍刑法施行前ノ罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リテ定マリタル一ノ重キ罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ海軍刑法施行前ノ罪ニ海軍刑法ヲ適用スヘキトキハ其ノ數罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ適用ス
第九條 海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ罪ニ付確定裁判アリタル後海軍刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ餘罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキト雖確定裁判アリタル罪ト餘罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十條 海軍刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付海軍刑法施行後確定裁判アリタル後海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ罪タル餘罪ニ付裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ確定裁判アリタル罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖其ノ罪ト餘罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十一條 海軍刑法ノ罪ト刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ノ罪ト併合罪タルヘキ場合ニ於テハ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ノ罪ヲ海軍刑法ノ罪ト看做シ第三條、第五條及第七條乃至第十條ノ規定ヲ適用ス
第十二條 第六條第一項各號ニ記載シタル者海軍刑法施行後有期懲役ニ該ル海軍刑法ノ罪ヲ犯シタルトキハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
第六條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三條 海軍刑法施行後ハ舊海軍刑法又ハ海陸軍刑律ノ刑ニ處セラレタル者ト雖刑ノ執行、假出獄及時效ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス但シ死刑ニ付テハ海軍ニ於テ之ヲ執行スル場合ニ限リ海軍刑法ノ規定ヲ準用ス他ノ法律ニ依リ處セラレタル死刑ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ第二條及明治十五年第四號布吿第一條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲スヘシ
舊海軍刑法ノ刑ニ處セラレタル者ノ海軍刑法施行前ニ於ケル時效期間ノ起算及時效ノ中斷ニ付テハ期滿免除ニ關スル規定ニ從フ
第十四條 海軍刑法施行後ハ他ノ法律ニ依リ處セラレタル罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル者ヲ勞役場ニ留置スル場合ニハ軍法會議ニ於テハ主理其ノ言渡ヲ爲スヘシ
第十五條 海軍刑法施行後ハ刑法第六條ニ依リ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ノ刑ニ處スヘキ者ト雖刑ノ執行猶豫ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ第二條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲スヘシ
第十六條 海軍刑法施行前假出獄ヲ許サレタル者及幽閉ヲ免セラレタル者ニ付テハ海軍刑法施行ノ日ヨリ刑法ノ假出獄ニ關スル規定ヲ準用ス
第十七條 剝奪公權、停止公權及監視ノ言渡ハ海軍刑法施行ノ日ヨリ其ノ效力ヲ失フ
第十八條 人ノ資格其ノ他ノ事項ニ關シ舊海軍刑法ノ刑名又ハ罪別ヲ揭ケタル他ノ法律ノ規定ハ海軍刑法ノ施行ノ爲變更セラルルコトナシ
第十九條 刑法施行法第二十九條及第三十條ノ規定ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ海軍刑法ノ罪ニ之ヲ準用ス
第二十條 刑法施行法第三十三條乃至第三十六條ノ規定ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ海軍刑法ニ定メタル刑又ハ舊海軍刑法ノ刑ニ處セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第二十一條 海軍刑法ニ依リ六年未滿ノ懲役又ハ一年以上六年未滿ノ禁錮ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊海軍刑法ノ剝官ヲ附加セラレ又ハ之ヲ附加スヘキ刑ニ處セラレタル者ト看做ス舊海軍刑法ノ剝官ヲ附加スヘキ刑ニ處セラレタル者ニ付亦同シ
第二十二條 他ノ法律中舊海軍刑法第十七條、第十八條及第二十一條ノ規定アル爲人ノ資格ニ關シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ舊海軍刑法第十七條、第十八條及第二十一條ノ規定ハ人ノ資格ニ關シ海軍刑法施行前ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十三條 舊海軍刑法ト刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令トノ關係ニ付テハ舊海軍刑法ヲ舊刑法ト看做シ刑法施行法第二條、第三條、第五條、第六條及第八條乃至第十一條ノ規定ヲ適用ス但シ剝官ニ關シテハ本法第四條ノ例ニ依ル
第二十四條 海軍治罪法ニ於テ軍人ト稱スルハ海軍刑法第八條第一號、第二號及第九條第一項第一號、第二號ニ記載シタル者ヲ謂ヒ陸軍軍人ト稱スルハ陸軍刑法第八條第一號乃至第三號、第五號及第九條第一項第一號、第二號ニ記載シタル者ヲ謂フ
第二十五條 刑事訴訟法第八條ノ規定ハ軍法會議ニ於テ審判スヘキ事件ニ之ヲ準用ス
第二十六條 海軍治罪法中復權及特赦ニ關スル規定ハ之ヲ廢止ス
第二十七條 刑法第五十二條又ハ第五十八條ノ規定ニ依リ刑ヲ定ムヘキ場合ニ於テハ其ノ犯罪事實ニ付最終ノ判決ヲ爲シタル軍法會議ニ於テ判決ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
第二十八條 軍法會議ニ於テハ刑ノ執行猶豫ハ判決ヲ以テ之ヲ爲シ刑ノ言渡ト同時ニ之ヲ言渡スヘシ
第二十九條 刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消スヘキ場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ爲シタル軍法會議又ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ノ所在地ニ最モ近キ軍法會議ニ於テ判決ヲ以テ之ヲ取消シ其ノ言渡ヲ爲スヘシ
第三十條 前三條ノ判決及其ノ言渡ニ付テハ海軍治罪法中判決ニ關スル規定ヲ準用ス
第三十一條 軍法會議ニ於テハ證人、鑑定人及通事ノ日當、旅費其ノ他ノ給與ニ關シ刑法施行法第六十三條乃至第六十六條ノ規定ヲ準用ス但シ豫審判事、受託判事又ハ裁判所ノ行フヘキ職務ハ主理之ヲ行フ
附 則
本法ハ海軍刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル海軍刑法施行法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年四月九日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
海軍大臣 男爵 斎藤実
法律第四十九号
海軍刑法施行法
第一条 本法ニ於テ旧海軍刑法ト称スルハ明治十四年第七十号布告海軍刑法ヲ謂ヒ他ノ法律ト称スルハ海軍刑法施行前ニ施行シタル法律及勅令、布告ニシテ法律ト同一ノ効力ヲ有スルモノヲ謂フ
第二条 海軍刑法施行前ニ旧海軍刑法ノ罪又ハ他ノ法律ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ左ノ例ニ従ヒ海軍刑法ニ定メタル主刑ト旧海軍刑法又ハ他ノ法律ノ主刑トヲ対照シ刑法第十条ノ規定ニ依リ其ノ軽重ヲ定ム
海軍刑法ニ定メタル刑 旧海軍刑法又ハ他ノ法律ノ刑
死刑 死刑
無期懲役 無期徒刑
無期禁錮 無期流刑
有期懲役 有期徒刑、重懲役、軽懲役、重禁錮
有期禁錮 有期流刑、重禁獄、軽禁獄、軽禁錮
第三条 刑法施行法第三条ノ規定ハ前条ニ定メタル刑ノ対照ニ之ヲ準用ス
第四条 刑法第六条ニ依リ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スル場合ニ於テハ剥奪公権、剥官、停止公権、監視又ハ罰金ヲ附加スヘキトキト雖之ヲ附加セス
前項ノ場合ニ於テハ将校ニ非スシテ官職ヲ有スル者将校ニ在リテ剥官ヲ附加スル刑ニ該ルトキト雖其ノ官職ヲ失ハス
第五条 海軍刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付海軍刑法施行ノ前又ハ後ニ確定裁判アリタル後海軍刑法施行前ニ犯シタル余罪ニ付裁判ヲ為ストキハ左ノ例ニ依ル
一 確定裁判アリタル罪ニ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖海軍刑法ニ於テハ其ノ罪ト余罪トニ付併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
二 確定裁判アリタル罪ニ海軍刑法ヲ適用シタルトキト雖旧海軍刑法又ハ他ノ法律ニ於テハ其ノ罪ト余罪トニ付数罪俱発ニ関スル規定ニ依ル
第六条 左ニ記載シタル者海軍刑法施行前更ニ海軍刑法ノ有期懲役ニ相当スル刑ニ該ル旧海軍刑法ノ罪ヲ犯シ海軍刑法施行後其ノ罪ニ付裁判ヲ為ストキハ海軍刑法ニ於テハ累犯ニ関スル規定ヲ準用ス
一 旧海軍刑法ニ依リ海軍刑法ノ懲役ニ相当スル刑ニ処セラレタル者
二 旧海軍刑法ニ依リ海軍刑法ノ懲役ニ相当スル刑ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ依リ死刑ニ処セラレ其ノ執行ノ免除ヲ得又ハ減刑ニ依リ懲役ニ相当スル刑ニ減軽セラレタル者
刑法第五十六条第三項ノ規定ハ数罪俱発ニ関スル規定ニ依リ処断セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第七条 海軍刑法施行前ニ犯シタル一罪ト海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ一罪又ハ数罪トニ付同時ニ裁判ヲ為ス場合ニ於テハ海軍刑法施行前ノ罪ニ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキト雖其ノ罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ数罪トニ付併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
第八条 海軍刑法施行前ニ犯シタル数罪ト海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ一罪又ハ数罪トニ付同時ニ裁判ヲ為ス場合ニ於テ海軍刑法施行前ノ罪ニ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキハ数罪俱発ニ関スル規定ニ依リテ定マリタル一ノ重キ罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ数罪トニ付併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ海軍刑法施行前ノ罪ニ海軍刑法ヲ適用スヘキトキハ其ノ数罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ数罪トニ付併合罪ニ関スル規定ヲ適用ス
第九条 海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ罪ニ付確定裁判アリタル後海軍刑法施行前ニ犯シタル余罪ニ付裁判ヲ為ス場合ニ於テハ余罪ニ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキト雖確定裁判アリタル罪ト余罪トニ付併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
第十条 海軍刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付海軍刑法施行後確定裁判アリタル後海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ罪タル余罪ニ付裁判ヲ為ス場合ニ於テハ確定裁判アリタル罪ニ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖其ノ罪ト余罪トニ付併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
第十一条 海軍刑法ノ罪ト刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ノ罪ト併合罪タルヘキ場合ニ於テハ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ノ罪ヲ海軍刑法ノ罪ト看做シ第三条、第五条及第七条乃至第十条ノ規定ヲ適用ス
第十二条 第六条第一項各号ニ記載シタル者海軍刑法施行後有期懲役ニ該ル海軍刑法ノ罪ヲ犯シタルトキハ累犯ニ関スル規定ヲ準用ス
第六条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三条 海軍刑法施行後ハ旧海軍刑法又ハ海陸軍刑律ノ刑ニ処セラレタル者ト雖刑ノ執行、仮出獄及時効ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス但シ死刑ニ付テハ海軍ニ於テ之ヲ執行スル場合ニ限リ海軍刑法ノ規定ヲ準用ス他ノ法律ニ依リ処セラレタル死刑ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ第二条及明治十五年第四号布告第一条ノ例ニ依リ主刑ノ対照ヲ為スヘシ
旧海軍刑法ノ刑ニ処セラレタル者ノ海軍刑法施行前ニ於ケル時効期間ノ起算及時効ノ中断ニ付テハ期満免除ニ関スル規定ニ従フ
第十四条 海軍刑法施行後ハ他ノ法律ニ依リ処セラレタル罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル者ヲ労役場ニ留置スル場合ニハ軍法会議ニ於テハ主理其ノ言渡ヲ為スヘシ
第十五条 海軍刑法施行後ハ刑法第六条ニ依リ旧海軍刑法又ハ他ノ法律ノ刑ニ処スヘキ者ト雖刑ノ執行猶予ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ第二条ノ例ニ依リ主刑ノ対照ヲ為スヘシ
第十六条 海軍刑法施行前仮出獄ヲ許サレタル者及幽閉ヲ免セラレタル者ニ付テハ海軍刑法施行ノ日ヨリ刑法ノ仮出獄ニ関スル規定ヲ準用ス
第十七条 剥奪公権、停止公権及監視ノ言渡ハ海軍刑法施行ノ日ヨリ其ノ効力ヲ失フ
第十八条 人ノ資格其ノ他ノ事項ニ関シ旧海軍刑法ノ刑名又ハ罪別ヲ掲ケタル他ノ法律ノ規定ハ海軍刑法ノ施行ノ為変更セラルルコトナシ
第十九条 刑法施行法第二十九条及第三十条ノ規定ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ海軍刑法ノ罪ニ之ヲ準用ス
第二十条 刑法施行法第三十三条乃至第三十六条ノ規定ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ海軍刑法ニ定メタル刑又ハ旧海軍刑法ノ刑ニ処セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第二十一条 海軍刑法ニ依リ六年未満ノ懲役又ハ一年以上六年未満ノ禁錮ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧海軍刑法ノ剥官ヲ附加セラレ又ハ之ヲ附加スヘキ刑ニ処セラレタル者ト看做ス旧海軍刑法ノ剥官ヲ附加スヘキ刑ニ処セラレタル者ニ付亦同シ
第二十二条 他ノ法律中旧海軍刑法第十七条、第十八条及第二十一条ノ規定アル為人ノ資格ニ関シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ旧海軍刑法第十七条、第十八条及第二十一条ノ規定ハ人ノ資格ニ関シ海軍刑法施行前ト同一ノ効力ヲ有ス
第二十三条 旧海軍刑法ト刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令トノ関係ニ付テハ旧海軍刑法ヲ旧刑法ト看做シ刑法施行法第二条、第三条、第五条、第六条及第八条乃至第十一条ノ規定ヲ適用ス但シ剥官ニ関シテハ本法第四条ノ例ニ依ル
第二十四条 海軍治罪法ニ於テ軍人ト称スルハ海軍刑法第八条第一号、第二号及第九条第一項第一号、第二号ニ記載シタル者ヲ謂ヒ陸軍軍人ト称スルハ陸軍刑法第八条第一号乃至第三号、第五号及第九条第一項第一号、第二号ニ記載シタル者ヲ謂フ
第二十五条 刑事訴訟法第八条ノ規定ハ軍法会議ニ於テ審判スヘキ事件ニ之ヲ準用ス
第二十六条 海軍治罪法中復権及特赦ニ関スル規定ハ之ヲ廃止ス
第二十七条 刑法第五十二条又ハ第五十八条ノ規定ニ依リ刑ヲ定ムヘキ場合ニ於テハ其ノ犯罪事実ニ付最終ノ判決ヲ為シタル軍法会議ニ於テ判決ヲ以テ之ヲ為スヘシ
第二十八条 軍法会議ニ於テハ刑ノ執行猶予ハ判決ヲ以テ之ヲ為シ刑ノ言渡ト同時ニ之ヲ言渡スヘシ
第二十九条 刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消スヘキ場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ為シタル軍法会議又ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ノ所在地ニ最モ近キ軍法会議ニ於テ判決ヲ以テ之ヲ取消シ其ノ言渡ヲ為スヘシ
第三十条 前三条ノ判決及其ノ言渡ニ付テハ海軍治罪法中判決ニ関スル規定ヲ準用ス
第三十一条 軍法会議ニ於テハ証人、鑑定人及通事ノ日当、旅費其ノ他ノ給与ニ関シ刑法施行法第六十三条乃至第六十六条ノ規定ヲ準用ス但シ予審判事、受託判事又ハ裁判所ノ行フヘキ職務ハ主理之ヲ行フ
附 則
本法ハ海軍刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス