第一條 本法ニ於テ舊海軍刑法ト稱スルハ明治十四年第七十號布吿海軍刑法ヲ謂ヒ他ノ法律ト稱スルハ海軍刑法施行前ニ施行シタル法律及勅令、布吿ニシテ法律ト同一ノ效力ヲ有スルモノヲ謂フ
第二條 海軍刑法施行前ニ舊海軍刑法ノ罪又ハ他ノ法律ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ左ノ例ニ從ヒ海軍刑法ニ定メタル主刑ト舊海軍刑法又ハ他ノ法律ノ主刑トヲ對照シ刑法第十條ノ規定ニ依リ其ノ輕重ヲ定ム
第三條 刑法施行法第三條ノ規定ハ前條ニ定メタル刑ノ對照ニ之ヲ準用ス
第四條 刑法第六條ニ依リ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スル場合ニ於テハ剝奪公權、剝官、停止公權、監視又ハ罰金ヲ附加スヘキトキト雖之ヲ附加セス
前項ノ場合ニ於テハ將校ニ非スシテ官職ヲ有スル者將校ニ在リテ剝官ヲ附加スル刑ニ該ルトキト雖其ノ官職ヲ失ハス
第五條 海軍刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付海軍刑法施行ノ前又ハ後ニ確定裁判アリタル後海軍刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付裁判ヲ爲ストキハ左ノ例ニ依ル
一 確定裁判アリタル罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖海軍刑法ニ於テハ其ノ罪ト餘罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
二 確定裁判アリタル罪ニ海軍刑法ヲ適用シタルトキト雖舊海軍刑法又ハ他ノ法律ニ於テハ其ノ罪ト餘罪トニ付數罪俱發ニ關スル規定ニ依ル
第六條 左ニ記載シタル者海軍刑法施行前更ニ海軍刑法ノ有期懲役ニ相當スル刑ニ該ル舊海軍刑法ノ罪ヲ犯シ海軍刑法施行後其ノ罪ニ付裁判ヲ爲ストキハ海軍刑法ニ於テハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
一 舊海軍刑法ニ依リ海軍刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ處セラレタル者
二 舊海軍刑法ニ依リ海軍刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ依リ死刑ニ處セラレ其ノ執行ノ免除ヲ得又ハ減刑ニ依リ懲役ニ相當スル刑ニ減輕セラレタル者
刑法第五十六條第三項ノ規定ハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リ處斷セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第七條 海軍刑法施行前ニ犯シタル一罪ト海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ一罪又ハ數罪トニ付同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ海軍刑法施行前ノ罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキト雖其ノ罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第八條 海軍刑法施行前ニ犯シタル數罪ト海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ一罪又ハ數罪トニ付同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テ海軍刑法施行前ノ罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リテ定マリタル一ノ重キ罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ海軍刑法施行前ノ罪ニ海軍刑法ヲ適用スヘキトキハ其ノ數罪ト海軍刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ適用ス
第九條 海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ罪ニ付確定裁判アリタル後海軍刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ餘罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スヘキトキト雖確定裁判アリタル罪ト餘罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十條 海軍刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付海軍刑法施行後確定裁判アリタル後海軍刑法施行後ニ犯シタル海軍刑法ノ罪タル餘罪ニ付裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ確定裁判アリタル罪ニ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖其ノ罪ト餘罪トニ付併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十一條 海軍刑法ノ罪ト刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ノ罪ト併合罪タルヘキ場合ニ於テハ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ノ罪ヲ海軍刑法ノ罪ト看做シ第三條、第五條及第七條乃至第十條ノ規定ヲ適用ス
第十二條 第六條第一項各號ニ記載シタル者海軍刑法施行後有期懲役ニ該ル海軍刑法ノ罪ヲ犯シタルトキハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
第十三條 海軍刑法施行後ハ舊海軍刑法又ハ海陸軍刑律ノ刑ニ處セラレタル者ト雖刑ノ執行、假出獄及時效ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス但シ死刑ニ付テハ海軍ニ於テ之ヲ執行スル場合ニ限リ海軍刑法ノ規定ヲ準用ス他ノ法律ニ依リ處セラレタル死刑ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ第二條及明治十五年第四號布吿第一條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲スヘシ
舊海軍刑法ノ刑ニ處セラレタル者ノ海軍刑法施行前ニ於ケル時效期間ノ起算及時效ノ中斷ニ付テハ期滿免除ニ關スル規定ニ從フ
第十四條 海軍刑法施行後ハ他ノ法律ニ依リ處セラレタル罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル者ヲ勞役場ニ留置スル場合ニハ軍法會議ニ於テハ主理其ノ言渡ヲ爲スヘシ
第十五條 海軍刑法施行後ハ刑法第六條ニ依リ舊海軍刑法又ハ他ノ法律ノ刑ニ處スヘキ者ト雖刑ノ執行猶豫ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ第二條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲スヘシ
第十六條 海軍刑法施行前假出獄ヲ許サレタル者及幽閉ヲ免セラレタル者ニ付テハ海軍刑法施行ノ日ヨリ刑法ノ假出獄ニ關スル規定ヲ準用ス
第十七條 剝奪公權、停止公權及監視ノ言渡ハ海軍刑法施行ノ日ヨリ其ノ效力ヲ失フ
第十八條 人ノ資格其ノ他ノ事項ニ關シ舊海軍刑法ノ刑名又ハ罪別ヲ揭ケタル他ノ法律ノ規定ハ海軍刑法ノ施行ノ爲變更セラルルコトナシ
第十九條 刑法施行法第二十九條及第三十條ノ規定ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ海軍刑法ノ罪ニ之ヲ準用ス
第二十條 刑法施行法第三十三條乃至第三十六條ノ規定ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ海軍刑法ニ定メタル刑又ハ舊海軍刑法ノ刑ニ處セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第二十一條 海軍刑法ニ依リ六年未滿ノ懲役又ハ一年以上六年未滿ノ禁錮ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊海軍刑法ノ剝官ヲ附加セラレ又ハ之ヲ附加スヘキ刑ニ處セラレタル者ト看做ス舊海軍刑法ノ剝官ヲ附加スヘキ刑ニ處セラレタル者ニ付亦同シ
第二十二條 他ノ法律中舊海軍刑法第十七條、第十八條及第二十一條ノ規定アル爲人ノ資格ニ關シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ舊海軍刑法第十七條、第十八條及第二十一條ノ規定ハ人ノ資格ニ關シ海軍刑法施行前ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十三條 舊海軍刑法ト刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令トノ關係ニ付テハ舊海軍刑法ヲ舊刑法ト看做シ刑法施行法第二條、第三條、第五條、第六條及第八條乃至第十一條ノ規定ヲ適用ス但シ剝官ニ關シテハ本法第四條ノ例ニ依ル
第二十四條 海軍治罪法ニ於テ軍人ト稱スルハ海軍刑法第八條第一號、第二號及第九條第一項第一號、第二號ニ記載シタル者ヲ謂ヒ陸軍軍人ト稱スルハ陸軍刑法第八條第一號乃至第三號、第五號及第九條第一項第一號、第二號ニ記載シタル者ヲ謂フ
第二十五條 刑事訴訟法第八條ノ規定ハ軍法會議ニ於テ審判スヘキ事件ニ之ヲ準用ス
第二十六條 海軍治罪法中復權及特赦ニ關スル規定ハ之ヲ廢止ス
第二十七條 刑法第五十二條又ハ第五十八條ノ規定ニ依リ刑ヲ定ムヘキ場合ニ於テハ其ノ犯罪事實ニ付最終ノ判決ヲ爲シタル軍法會議ニ於テ判決ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
第二十八條 軍法會議ニ於テハ刑ノ執行猶豫ハ判決ヲ以テ之ヲ爲シ刑ノ言渡ト同時ニ之ヲ言渡スヘシ
第二十九條 刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消スヘキ場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ爲シタル軍法會議又ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ノ所在地ニ最モ近キ軍法會議ニ於テ判決ヲ以テ之ヲ取消シ其ノ言渡ヲ爲スヘシ
第三十條 前三條ノ判決及其ノ言渡ニ付テハ海軍治罪法中判決ニ關スル規定ヲ準用ス
第三十一條 軍法會議ニ於テハ證人、鑑定人及通事ノ日當、旅費其ノ他ノ給與ニ關シ刑法施行法第六十三條乃至第六十六條ノ規定ヲ準用ス但シ豫審判事、受託判事又ハ裁判所ノ行フヘキ職務ハ主理之ヲ行フ