関東州在勤者海軍給与令
法令番号: 勅令第二百八十號
公布年月日: 明治39年10月30日
法令の形式: 勅令
朕關東州在勤者海軍給與令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年十月二十九日
海軍大臣 齋藤實
勅令第二百八十號
關東州在勤者海軍給與令
第一條 關東州ニ在勤スル海軍軍人軍屬ノ給與ハ海軍給與令其ノ他別ニ規定アルモノヲ除クノ外本令ニ依ル軍人軍屬以外ノ者ニシテ本令中特ニ定メタル者ノ給與亦同シ
第二條 下士卒傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在勤地ニ於テ入院若ハ療養ヲ爲ストキハ海軍給與令第十二條第一項第二號及第三號ノ規定ヲ適用セス
第三條 軍人軍屬ニハ左ノ區別ニ從ヒ其ノ俸給及給料ヲ增給ス
一 准士官以上、候補生及文官ニハ俸給十分ノ三
二 下士卒ニハ俸給十分ノ五但シ陸上勤務外宿中ノ者ニ限リ十分ノ三
三 雇員傭人ニハ給料十分ノ三但シ艦營傭人ニ限リ十分ノ五
准士官以上及一等下士ニシテ上官ノ職務心得ヲ命セラレタル者ニハ其ノ增給ヲ加算シタル額ニ就キ增給ス
第四條 准士官以上待命、休職、停職、豫備役、後備役、退役、免官若ハ廢官ト爲リ又ハ召集ヲ解カレ及文官休職、免官又ハ廢官ト爲リ事務引繼殘務調理ニ從事スルトキハ其ノ事務ヲ了リタル日迄仍在職又ハ召集中ノ例ニ依リ增給ス
第五條 軍人軍屬私事ヲ以テ關東州ヲ離ルルトキ、公務ニ原因スルニ非スシテ傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ關東州以外ニ於テ入院若ハ轉地療養ヲ爲ストキ、所在不明ト爲リタルトキ又ハ擅ニ職役ヲ離レ若ハ他方ニ赴キ故ナク歸著ノ期ニ後レタルトキ及留置、收禁、處刑、處罰中又ハ被吿事件ノ爲護送中ハ其ノ間增給ヲ停止ス但シ被吿事件不起訴、免訴若ハ無罪ニ歸シタルトキ、被吿事件繫屬中死亡シタルトキ又ハ准士官以上及候補生處罰中勤務ニ服スルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六條 軍人及文官傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在勤地ニ於テ入院若ハ療養ヲ爲ストキハ其ノ原因故意ニ出テタル場合ヲ除クノ外海軍給與令第三十一條第一項及第三十五條第一項ノ規定ヲ適用セス
第七條 軍人軍屬ニハ宿舍手當ヲ給スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ海軍給與令第四十一條ノ手當ハ之ヲ給セス
前項手當ノ給額ハ海軍大臣之ヲ定ム
第八條 軍人軍屬所在不明ト爲リタルトキ又ハ擅ニ職役ヲ離レ若ハ他方ニ赴キ故ナク歸著ノ期ニ後レタルトキハ其ノ間前條ノ手當ヲ停止ス
第九條 衞生上被服物品ヲ軍人軍屬ニ給與スルノ必要アルトキハ適宜之ヲ給スルコトヲ得軍人軍屬以外ノ者ニ給與スルノ必要アルトキ亦同シ
下士卒ニハ必要ニ應シ海軍給與令第十三表ニ揭クル被服物品ノ箇數ヲ適宜增加シ交付スルコトヲ得
第十條 軍人軍屬ニハ糧食ヲ給ス
軍人軍屬以外ノ者ニ糧食ヲ給與スルノ必要アルトキハ海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ給スルコトヲ得
第十一條 准士官以上、候補生、文官及文官待遇者ニ糧食ヲ給スル場合ニ於テ各別ニ炊爨セシムル必要アルトキハ食數ニ應シ食料ヲ給シ糧食ヲ自辨セシムルコトヲ得
第十二條 前條ノ場合竝關東州ニ於テ海軍給與令第八十六條、第八十七條及第八十八條ヲ適用スル場合ノ食料ニシテ同令第八十九條ノ平均價格ニ依リ難キトキハ海軍大臣適宜之ヲ定ムルコトヲ得
第十三條 准士官以上、候補生及軍屬傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在勤地ニ於テ治療ヲ受クルトキハ其ノ費用ハ官費支辨トス軍人軍屬以外ノ者ニ在リテモ時宜ニ依リ官費支辨ト爲スコトヲ得
第十四條 軍人軍屬死亡シ在勤地ニ於テ埋葬スルトキハ其ノ費用ハ官費支辨トス軍人軍屬以外ノ者ニ在リテモ時宜ニ依リ官費支辨ト爲スコトヲ得
前項死亡者ノ遺物ヲ內地ニ送還スルトキハ之ニ要スル費用ヲ官費支辨ト爲スコトヲ得
第十五條 軍人軍屬ノ俸給及給料ハ之ヲ其ノ家族ニ下渡スコトヲ得
第十六條 第一條乃至第六條及第九條乃至第十五條ノ規定ハ關東州ニ在ル官衙部隊所屬艦船ノ乘員ニ、第二條第六條第十三條及第十四條ノ規定ハ關東州ニ航海中ノ艦船乘員及出張中ノ者ニ之ヲ準用ス
第十七條 軍人軍屬ニ要スル筆紙墨文具及暖房用燃料等ノ消耗品ハ現品ヲ以テ之ヲ給與スルコトヲ得軍人軍屬以外ノ者ニ給與スルノ必要アルトキ亦同シ
第十八條 本令ニ依ル給與ハ海軍大臣ニ於テ適宜減給又ハ停止スルコトヲ得
第十九條 本令ノ規定ハ樺太北緯五十度以南ノ地竝在韓國海軍ノ部隊及官衙ニ之ヲ準用ス
附 則
本令ハ明治三十九年十一月十六日ヨリ之ヲ施行ス
朕関東州在勤者海軍給与令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年十月二十九日
海軍大臣 斎藤実
勅令第二百八十号
関東州在勤者海軍給与令
第一条 関東州ニ在勤スル海軍軍人軍属ノ給与ハ海軍給与令其ノ他別ニ規定アルモノヲ除クノ外本令ニ依ル軍人軍属以外ノ者ニシテ本令中特ニ定メタル者ノ給与亦同シ
第二条 下士卒傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在勤地ニ於テ入院若ハ療養ヲ為ストキハ海軍給与令第十二条第一項第二号及第三号ノ規定ヲ適用セス
第三条 軍人軍属ニハ左ノ区別ニ従ヒ其ノ俸給及給料ヲ増給ス
一 准士官以上、候補生及文官ニハ俸給十分ノ三
二 下士卒ニハ俸給十分ノ五但シ陸上勤務外宿中ノ者ニ限リ十分ノ三
三 雇員傭人ニハ給料十分ノ三但シ艦営傭人ニ限リ十分ノ五
准士官以上及一等下士ニシテ上官ノ職務心得ヲ命セラレタル者ニハ其ノ増給ヲ加算シタル額ニ就キ増給ス
第四条 准士官以上待命、休職、停職、予備役、後備役、退役、免官若ハ廃官ト為リ又ハ召集ヲ解カレ及文官休職、免官又ハ廃官ト為リ事務引継残務調理ニ従事スルトキハ其ノ事務ヲ了リタル日迄仍在職又ハ召集中ノ例ニ依リ増給ス
第五条 軍人軍属私事ヲ以テ関東州ヲ離ルルトキ、公務ニ原因スルニ非スシテ傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ関東州以外ニ於テ入院若ハ転地療養ヲ為ストキ、所在不明ト為リタルトキ又ハ擅ニ職役ヲ離レ若ハ他方ニ赴キ故ナク帰著ノ期ニ後レタルトキ及留置、収禁、処刑、処罰中又ハ被告事件ノ為護送中ハ其ノ間増給ヲ停止ス但シ被告事件不起訴、免訴若ハ無罪ニ帰シタルトキ、被告事件繋属中死亡シタルトキ又ハ准士官以上及候補生処罰中勤務ニ服スルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六条 軍人及文官傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在勤地ニ於テ入院若ハ療養ヲ為ストキハ其ノ原因故意ニ出テタル場合ヲ除クノ外海軍給与令第三十一条第一項及第三十五条第一項ノ規定ヲ適用セス
第七条 軍人軍属ニハ宿舎手当ヲ給スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ海軍給与令第四十一条ノ手当ハ之ヲ給セス
前項手当ノ給額ハ海軍大臣之ヲ定ム
第八条 軍人軍属所在不明ト為リタルトキ又ハ擅ニ職役ヲ離レ若ハ他方ニ赴キ故ナク帰著ノ期ニ後レタルトキハ其ノ間前条ノ手当ヲ停止ス
第九条 衛生上被服物品ヲ軍人軍属ニ給与スルノ必要アルトキハ適宜之ヲ給スルコトヲ得軍人軍属以外ノ者ニ給与スルノ必要アルトキ亦同シ
下士卒ニハ必要ニ応シ海軍給与令第十三表ニ掲クル被服物品ノ箇数ヲ適宜増加シ交付スルコトヲ得
第十条 軍人軍属ニハ糧食ヲ給ス
軍人軍属以外ノ者ニ糧食ヲ給与スルノ必要アルトキハ海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ給スルコトヲ得
第十一条 准士官以上、候補生、文官及文官待遇者ニ糧食ヲ給スル場合ニ於テ各別ニ炊爨セシムル必要アルトキハ食数ニ応シ食料ヲ給シ糧食ヲ自弁セシムルコトヲ得
第十二条 前条ノ場合並関東州ニ於テ海軍給与令第八十六条、第八十七条及第八十八条ヲ適用スル場合ノ食料ニシテ同令第八十九条ノ平均価格ニ依リ難キトキハ海軍大臣適宜之ヲ定ムルコトヲ得
第十三条 准士官以上、候補生及軍属傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ在勤地ニ於テ治療ヲ受クルトキハ其ノ費用ハ官費支弁トス軍人軍属以外ノ者ニ在リテモ時宜ニ依リ官費支弁ト為スコトヲ得
第十四条 軍人軍属死亡シ在勤地ニ於テ埋葬スルトキハ其ノ費用ハ官費支弁トス軍人軍属以外ノ者ニ在リテモ時宜ニ依リ官費支弁ト為スコトヲ得
前項死亡者ノ遺物ヲ内地ニ送還スルトキハ之ニ要スル費用ヲ官費支弁ト為スコトヲ得
第十五条 軍人軍属ノ俸給及給料ハ之ヲ其ノ家族ニ下渡スコトヲ得
第十六条 第一条乃至第六条及第九条乃至第十五条ノ規定ハ関東州ニ在ル官衙部隊所属艦船ノ乗員ニ、第二条第六条第十三条及第十四条ノ規定ハ関東州ニ航海中ノ艦船乗員及出張中ノ者ニ之ヲ準用ス
第十七条 軍人軍属ニ要スル筆紙墨文具及暖房用燃料等ノ消耗品ハ現品ヲ以テ之ヲ給与スルコトヲ得軍人軍属以外ノ者ニ給与スルノ必要アルトキ亦同シ
第十八条 本令ニ依ル給与ハ海軍大臣ニ於テ適宜減給又ハ停止スルコトヲ得
第十九条 本令ノ規定ハ樺太北緯五十度以南ノ地並在韓国海軍ノ部隊及官衙ニ之ヲ準用ス
附 則
本令ハ明治三十九年十一月十六日ヨリ之ヲ施行ス