農会令
法令番号: 勅令第三十號
公布年月日: 明治33年2月12日
法令の形式: 勅令
朕農會令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年二月十日
農商務大臣 曾禰荒助
勅令第三十號
農會令
第一條 農會ハ市町村農會、郡農會、北海道農會及府縣農會トス
本令ニ依リテ設立シタル農會ニ非サレハ前項ニ揭ケタル名稱ヲ附スルコトヲ得ス
第二條 市町村農會ノ區域ハ市町村又ハ町村組合ノ區域ニ依リ郡農會ノ區域ハ郡ノ區域ニ依リ北海道農會又ハ府縣農會ノ區域ハ北海道又ハ府縣ノ區域ニ依ル
町村農會ニ在リテハ特別ノ事由アルトキハ前項ノ區域ニ依ラサルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ郡長ノ認可ヲ經テ其ノ區域ヲ定ムヘシ
北海道ニ於テハ數郡ヲ以テ一郡農會ノ區域ト爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ北海道廳長官ノ認可ヲ經テ其ノ區域ヲ定ムヘシ
第三條 市町村農會ハ其ノ區域內ニ於テ耕地又ハ牧場ヲ所有スル者及農業ヲ營ム者ヲ以テ之ヲ組織シ郡農會ハ其ノ區域內ノ町村農會ヲ以テ之ヲ組織シ北海道農會又ハ府縣農會ハ其ノ區域內ノ郡農會及市農會ヲ以テ之ヲ組織ス
第四條 市町村農會ヲ設立スルニハ左ノ條件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 會員ノ數第三條ノ資格ヲ有スル者ノ二分ノ一以上ナルコト
二 其ノ區域內ニ於テ會員ノ占有又ハ所有スル耕地及牧場ノ面積カ私用ニ供スル耕地及牧場ノ總面積ノ二分ノ一以上ナルコト
北海道、沖繩縣、小笠原島及伊豆七島ニ於テハ前項第二號ノ條件ヲ要セス
第五條 郡農會ヲ設立スルニハ之ヲ組織スル農會ノ數其ノ區域內ノ町村及町村組合總數ノ二分ノ一以上タルコトヲ要ス
府縣農會ヲ設立スルニハ之ヲ組織スル農會ノ數其ノ區域內ノ郡市總數ノ二分ノ一以上タルコトヲ要ス
北海道ニ於ケル郡農會及北海道農會ヲ組織スヘキ農會ノ數ハ農商務大臣之ヲ定ム
第六條 北海道農會及府縣農會ニ在リテハ農商務大臣、其ノ他ノ農會ニ在リテハ地方長官ニ於テ必要ト認ムルトキハ農會ニ加入セサルモノニ對シ之カ加入ヲ命スルコトヲ得但シ第四條又ハ第五條ニ定メタル要件ヲ闕キタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七條 農會ノ設立者ハ會則ヲ定メ市町村農會ニ在リテハ五名以上ノ委員、其ノ他ノ農會ニ在リテハ之ヲ組織スル農會ノ會長ヨリ之ヲ行政廳ニ差出シ農會設立ノ認可ヲ受クヘシ
第八條 會則ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 名稱
二 事業
三 事務所
四 役員ノ職務權限、選任及任期ニ關スル規定
五 會議ニ關スル規定
六 會費ノ分賦收入ニ關スル規定
七 財產ニ關スル規定
八 處務及會計ニ關スル規定
九 入會及退會ニ關スル規定
十 會則ノ變更ニ關スル規定
十一 解㪚ニ關スル規定
會則ノ變更ハ行政廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第九條 郡農會、北海道農會又ハ府縣農會ヲ設立シタルトキハ之カ會議ニ參列セシムル爲其ノ農會ヲ組織スル農會ニ於テ三名以內ノ代表者ヲ選擧スヘシ
第十條 農會ハ農事ニ功勞アル者又ハ農事ニ關シ學識經驗アル者ヲ名譽會員ト爲スコトヲ得
名譽會員ハ議決權ヲ有セス
第十一條 農會ハ會長及副會長各一名ヲ置クヘシ
會長ハ會務ヲ總理シ會ヲ代表ス
副會長ハ會長ノ事務ヲ補助シ會長事故アルトキハ之ヲ代理ス
第十二條 會長及副會長ハ市町村農會ニ在リテハ其ノ會員中ヨリ其ノ他ノ農會ニ在リテハ第九條ノ代表者中ヨリ之ヲ互選ス但シ名譽會員中ヨリ之ヲ選擧スルコトヲ妨ケス
第十三條 農會ノ經費ハ市町村農會ニ在リテハ其ノ會員ノ負擔トシ其ノ他ノ農會ニ在リテハ之ヲ組織スル農會ノ負擔トス
第十四條 農會ノ事業年度ハ四月一日ヨリ翌年三月三十一日迄トス
第十五條 農會ノ經費ノ豫算及分賦收入ノ方法ハ每年之ヲ議決シ二月末日迄ニ行政廳ノ認可ヲ受クヘシ
第十六條 農會ハ每年六月三十日迄ニ前年度ノ經費ノ決算及會務ノ狀況ヲ會員又ハ農會ニ公示シ且之ヲ行政廳ニ報吿スヘシ
第十七條 農會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農事ニ關スル報吿書ヲ作リ之ヲ地方長官ニ差出スヘシ
第十八條 農會ハ農事ノ改良發達ニ關スル事項ニ付行政廳ニ建議スルコトヲ得
農會ハ行政廳ノ諮問ニ對シ答申スヘシ
第十九條 行政廳ニ於テ必要ト認ムルトキハ農會ノ會務ノ狀況若ハ帳簿ヲ檢査シ又ハ農會ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ若ハ處分ヲ行フコトヲ得
第二十條 農會ノ決議又ハ其ノ役員ノ行爲カ法令若ハ會則ニ違背スルトキ又ハ公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ北海道農會及府縣農會ニ在リテハ農商務大臣、其ノ他ノ農會ニ在リテハ地方長官ニ於テ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 決議ノ取消
二 役員ノ解職
三 事業ノ停止
四 解㪚
解職セラレタル役員ハ二箇年間役員タルコトヲ得ス
第二十一條 農會ニ於テ解㪚ヲ議決シタルトキハ其ノ事由ヲ具シ行政廳ノ認可ヲ受クヘシ
第二十二條 農會ニシテ第四條又ハ第五條ニ定メタル要件ヲ闕キタル場合ニ於テ六箇月以內ニ再ヒ之ヲ具備スルニ至ラサルトキハ解㪚ス
第二十三條 第七條、第八條第二項、第十五條、第十六條、第二十一條及第二十六條ノ行政廳ハ町村農會ニ在リテハ郡長トシ市農會及郡農會ニ在リテハ地方長官トシ北海道農會及府縣農會ニ在リテハ農商務大臣トス
附 則
第二十四條 本令ハ農會法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十五條 本令中郡トアルハ伊豆七島及島司ヲ置キタル島嶼、市トアルハ北海道沖繩縣ノ區、町村トアルハ町村制ヲ施行セサル地方ニ於ケル町村ニ準スヘキ地ヲ包含ス
本令ノ規定ニ依リ郡長ノ行フヘキ職務ハ伊豆七島ニ於テハ東京府知事、北海道ニ於テハ支廳長、島司ヲ置キタル島嶼ニ於テハ島司之ヲ行フ
第二十六條 本令施行前ニ設立シタル農會ニシテ第四條又ハ第五條ニ定メタル要件ヲ具ヘ其ノ他本令ノ規定ニ牴觸セサルモノハ本令施行ノ日ヨリ六箇月以內ニ行政廳ノ認可ヲ受ケ本令ニ依リテ設立シタル農會ト看做スコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請シタル農會ニシテ第一條ニ揭ケタル名稱ヲ有スルモノハ其ノ認可アル迄仍從前ノ名稱ヲ繼續スルコトヲ得
朕農会令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年二月十日
農商務大臣 曽祢荒助
勅令第三十号
農会令
第一条 農会ハ市町村農会、郡農会、北海道農会及府県農会トス
本令ニ依リテ設立シタル農会ニ非サレハ前項ニ掲ケタル名称ヲ附スルコトヲ得ス
第二条 市町村農会ノ区域ハ市町村又ハ町村組合ノ区域ニ依リ郡農会ノ区域ハ郡ノ区域ニ依リ北海道農会又ハ府県農会ノ区域ハ北海道又ハ府県ノ区域ニ依ル
町村農会ニ在リテハ特別ノ事由アルトキハ前項ノ区域ニ依ラサルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ郡長ノ認可ヲ経テ其ノ区域ヲ定ムヘシ
北海道ニ於テハ数郡ヲ以テ一郡農会ノ区域ト為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ北海道庁長官ノ認可ヲ経テ其ノ区域ヲ定ムヘシ
第三条 市町村農会ハ其ノ区域内ニ於テ耕地又ハ牧場ヲ所有スル者及農業ヲ営ム者ヲ以テ之ヲ組織シ郡農会ハ其ノ区域内ノ町村農会ヲ以テ之ヲ組織シ北海道農会又ハ府県農会ハ其ノ区域内ノ郡農会及市農会ヲ以テ之ヲ組織ス
第四条 市町村農会ヲ設立スルニハ左ノ条件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 会員ノ数第三条ノ資格ヲ有スル者ノ二分ノ一以上ナルコト
二 其ノ区域内ニ於テ会員ノ占有又ハ所有スル耕地及牧場ノ面積カ私用ニ供スル耕地及牧場ノ総面積ノ二分ノ一以上ナルコト
北海道、沖縄県、小笠原島及伊豆七島ニ於テハ前項第二号ノ条件ヲ要セス
第五条 郡農会ヲ設立スルニハ之ヲ組織スル農会ノ数其ノ区域内ノ町村及町村組合総数ノ二分ノ一以上タルコトヲ要ス
府県農会ヲ設立スルニハ之ヲ組織スル農会ノ数其ノ区域内ノ郡市総数ノ二分ノ一以上タルコトヲ要ス
北海道ニ於ケル郡農会及北海道農会ヲ組織スヘキ農会ノ数ハ農商務大臣之ヲ定ム
第六条 北海道農会及府県農会ニ在リテハ農商務大臣、其ノ他ノ農会ニ在リテハ地方長官ニ於テ必要ト認ムルトキハ農会ニ加入セサルモノニ対シ之カ加入ヲ命スルコトヲ得但シ第四条又ハ第五条ニ定メタル要件ヲ闕キタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七条 農会ノ設立者ハ会則ヲ定メ市町村農会ニ在リテハ五名以上ノ委員、其ノ他ノ農会ニ在リテハ之ヲ組織スル農会ノ会長ヨリ之ヲ行政庁ニ差出シ農会設立ノ認可ヲ受クヘシ
第八条 会則ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 名称
二 事業
三 事務所
四 役員ノ職務権限、選任及任期ニ関スル規定
五 会議ニ関スル規定
六 会費ノ分賦収入ニ関スル規定
七 財産ニ関スル規定
八 処務及会計ニ関スル規定
九 入会及退会ニ関スル規定
十 会則ノ変更ニ関スル規定
十一 解散ニ関スル規定
会則ノ変更ハ行政庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第九条 郡農会、北海道農会又ハ府県農会ヲ設立シタルトキハ之カ会議ニ参列セシムル為其ノ農会ヲ組織スル農会ニ於テ三名以内ノ代表者ヲ選挙スヘシ
第十条 農会ハ農事ニ功労アル者又ハ農事ニ関シ学識経験アル者ヲ名誉会員ト為スコトヲ得
名誉会員ハ議決権ヲ有セス
第十一条 農会ハ会長及副会長各一名ヲ置クヘシ
会長ハ会務ヲ総理シ会ヲ代表ス
副会長ハ会長ノ事務ヲ補助シ会長事故アルトキハ之ヲ代理ス
第十二条 会長及副会長ハ市町村農会ニ在リテハ其ノ会員中ヨリ其ノ他ノ農会ニ在リテハ第九条ノ代表者中ヨリ之ヲ互選ス但シ名誉会員中ヨリ之ヲ選挙スルコトヲ妨ケス
第十三条 農会ノ経費ハ市町村農会ニ在リテハ其ノ会員ノ負担トシ其ノ他ノ農会ニ在リテハ之ヲ組織スル農会ノ負担トス
第十四条 農会ノ事業年度ハ四月一日ヨリ翌年三月三十一日迄トス
第十五条 農会ノ経費ノ予算及分賦収入ノ方法ハ毎年之ヲ議決シ二月末日迄ニ行政庁ノ認可ヲ受クヘシ
第十六条 農会ハ毎年六月三十日迄ニ前年度ノ経費ノ決算及会務ノ状況ヲ会員又ハ農会ニ公示シ且之ヲ行政庁ニ報告スヘシ
第十七条 農会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農事ニ関スル報告書ヲ作リ之ヲ地方長官ニ差出スヘシ
第十八条 農会ハ農事ノ改良発達ニ関スル事項ニ付行政庁ニ建議スルコトヲ得
農会ハ行政庁ノ諮問ニ対シ答申スヘシ
第十九条 行政庁ニ於テ必要ト認ムルトキハ農会ノ会務ノ状況若ハ帳簿ヲ検査シ又ハ農会ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ若ハ処分ヲ行フコトヲ得
第二十条 農会ノ決議又ハ其ノ役員ノ行為カ法令若ハ会則ニ違背スルトキ又ハ公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ北海道農会及府県農会ニ在リテハ農商務大臣、其ノ他ノ農会ニ在リテハ地方長官ニ於テ左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 決議ノ取消
二 役員ノ解職
三 事業ノ停止
四 解散
解職セラレタル役員ハ二箇年間役員タルコトヲ得ス
第二十一条 農会ニ於テ解散ヲ議決シタルトキハ其ノ事由ヲ具シ行政庁ノ認可ヲ受クヘシ
第二十二条 農会ニシテ第四条又ハ第五条ニ定メタル要件ヲ闕キタル場合ニ於テ六箇月以内ニ再ヒ之ヲ具備スルニ至ラサルトキハ解散ス
第二十三条 第七条、第八条第二項、第十五条、第十六条、第二十一条及第二十六条ノ行政庁ハ町村農会ニ在リテハ郡長トシ市農会及郡農会ニ在リテハ地方長官トシ北海道農会及府県農会ニ在リテハ農商務大臣トス
附 則
第二十四条 本令ハ農会法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十五条 本令中郡トアルハ伊豆七島及島司ヲ置キタル島嶼、市トアルハ北海道沖縄県ノ区、町村トアルハ町村制ヲ施行セサル地方ニ於ケル町村ニ準スヘキ地ヲ包含ス
本令ノ規定ニ依リ郡長ノ行フヘキ職務ハ伊豆七島ニ於テハ東京府知事、北海道ニ於テハ支庁長、島司ヲ置キタル島嶼ニ於テハ島司之ヲ行フ
第二十六条 本令施行前ニ設立シタル農会ニシテ第四条又ハ第五条ニ定メタル要件ヲ具ヘ其ノ他本令ノ規定ニ牴触セサルモノハ本令施行ノ日ヨリ六箇月以内ニ行政庁ノ認可ヲ受ケ本令ニ依リテ設立シタル農会ト看做スコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請シタル農会ニシテ第一条ニ掲ケタル名称ヲ有スルモノハ其ノ認可アル迄仍従前ノ名称ヲ継続スルコトヲ得