銃砲火薬類取締法施行規則
法令番号: 勅令第三百六十六號
公布年月日: 明治32年8月4日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ銃砲火藥類取締法施行規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月三日
內務大臣 侯爵 西鄕從道
勅令第三百六十六號
銃砲火藥類取締法施行規則
第一條 銃砲火藥類取締法第三條第一項ノ許可ヲ受ケントスル者ハ計畫說明書、圖案其ノ他必要ナル事項ヲ具シ製造地廳府縣長官ヲ經由シ主務省ニ願出ヘシ
試驗製造ニ關スル危害豫防ノ方法ニ付テハ廳府縣長官ノ指揮監督ヲ受クヘシ
試驗ノ爲製造シタル軍用銃砲及火藥類ハ主務省ノ檢査ヲ受クヘシ
第二條 銃砲火藥類取締法第六條ニ依リ火藥商ニ與フル許可ヲ分チテ甲乙ノ二種トス
甲種ノ許可ヲ受ケタル火藥商ハ火藥類ニ關スル各種ノ商行爲ヲ爲スコトヲ得
乙種ノ許可ヲ受ケタル火藥商ハ火藥類ヲ輸入シ之ヲ官廳又ハ火藥商ニ賣渡スノ外火藥類ニ關スル他ノ商行爲ヲ爲スコトヲ得ス
本令施行前火藥商ノ許可ヲ受ケタル者ハ甲種ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス但シ輸入及卸賣ノ營業ニ限リ許可ヲ受ケタル者ハ乙種ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第三條 銃砲製造營業者ニ非サル者非軍用銃砲ヲ製造シタルトキハ製造ヲ竣リタル日ヨリ十日以內ニ其ノ銃砲ノ說明書及圖案ヲ具シ製造シタル銃砲ノ數ヲ廳府縣長官ニ屆出其ノ檢査ヲ受クヘシ
第四條 銃砲商ニ非サル者ハ所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ軍用銃砲ノ讓渡賣渡交換贈與以下傚之ヲ受クルコトヲ得ス
前項ニ依リテ與ヘタル許可證ハ一箇月間其ノ效力ヲ有ス
第五條 火藥商ニ非サル者ハ劇發火藥綿火藥、ナイトログリセリン、ダイナマイト、雷汞、其ノ他劇發質ノ物品及左ノ數量ヲ超過スル他ノ火藥類ヲ所持スルコトヲ得ス但シ第六條若ハ第八條ノ許可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 火藥 一貫目
一 小銃實包 千發
一 雷管信管類 千箇
一 導火線 百間
第六條 火藥商ニ非サル者ハ第八條ノ許可ヲ受クル場合ト同一ノ條件ヲ有スルニ非サレハ火藥類輸入ノ許可ヲ受クルコトヲ得ス
火藥類輸入ノ許可ヲ受ケントスル者ハ種類數量及使用ノ目的ヲ具シ使用地廳府縣長官ニ願出ヘシ但シ使用地ノ定マラサル場合ニ於テハ所轄廳府縣長官ニ願出ヘシ
前項ノ許可ハ一箇年間其ノ效力ヲ有ス但シ廳府縣長官ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第七條 火藥商ニ非サル者火藥類ヲ讓受ケントスルトキハ種類數量及使用ノ目的ヲ具シ所轄警察官署ノ許可ヲ受クヘシ但シ狩獵免許若ハ火藥類ヲ要スル工業ノ許可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ依リ與ヘタル許可證ハ一箇月間其ノ效力ヲ有ス
第八條 鑛業用土工用船內銃砲用漁業用煙火製造用及火藥類ヲ要スル工業用ノ爲劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ヲ讓受ケントスル者ハ種類數量及使用ノ目的ヲ具シ使用地廳府縣長官ノ許可ヲ受クヘシ但シ使用地ノ定マラサル場合ニ於テハ所轄廳府縣長官ノ許可ヲ受クヘシ
廳府縣長官前項ニ揭ケタル使用ノ目的ヲ有セサル者ニ對シ劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ノ讓受ヲ許可スルノ必要アリト認ムルトキハ其ノ事由ヲ具シ內務大臣ノ指揮ヲ受クヘシ
本條ノ許可ハ廳府縣長官ニ於テ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第九條 使用ノ目的ヲ具シテ輸入又ハ讓受ノ許可ヲ受ケタル火藥類ハ其ノ許可ヲ與ヘタル官廳ノ許可ヲ受クルニ非サレハ他ノ目的ニ使用スルコトヲ得ス
第十條 警察官憲兵ニ於テ必要ト認ムルトキハ銃砲製造營業者、銃砲商及火藥商ノ帳簿ヲ檢査スルコトヲ得
第十一條 火藥類ハ左ノ規定ニ從ヒ之ヲ貯藏スヘシ
一 火藥及導火線ハ木器、亞鉛器、銅器ニ收納スルヲ要ス但シ少量ノ火藥ニ限リ白鐵葉器ニ收納スルコトヲ得
二 雷管信管類及小銃實包ハ木器、亞鉛器、銅器、白鐵葉器、厚紙製罐ニ收納スルヲ要ス
三 劇發火藥ハ酸氣、鹽氣ヲ含有セサル紙又ハ布防濕ノ爲パラピン類ヲ塗抹スルコトヲ得ヲ以テ包ミ之ヲ木器、亞鉛器ニ收納スルヲ要ス
四 綿火藥及ダイナマイトノ類ハ靑色試驗紙ト共ニ容器ニ收納シ時時之ヲ檢査スヘシ試驗紙赤色ニ變スルノ徵候アルトキハ卽時火藥ヲ水中ニ投棄スルコトヲ要ス
五 火藥類ハ容器ト火藥類ト直接ニ觸接セサル爲紙、澁紙若ハ布ヲ以テ隔絕スヘシ但シ少量ノ火藥ヲ白鐵葉器ニ收納スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
雷管信管類ハ火藥竝劇發火藥ト同所ニ置クコトヲ得ス
火藥及劇發火藥ハ各之ヲ離隔スヘシ
火藥類ハ普通ノ油紙ヲ以テ包被スルコトヲ得ス
第十二條 劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ハ火藥庫若ハ警察官ノ檢査ヲ受ケタル倉庫ニ非サレハ貯藏スルコトヲ得ス但シ鑛業土工ニ要スル火藥類ハ其ノ事業中假貯藏所ニ貯藏スルコトヲ得
第十三條 火藥庫倉庫及假貯藏所ニ貯藏スル火藥類ハ左ノ數量ヲ超過スルコトヲ得ス
庫ノ種類
火藥類ノ種類    
火藥庫
假貯藏所
倉庫
火藥
一萬貫目
十貫目
雷管信管類
五百貫目
一萬箇
劇發火藥
五百貫目
一貫目
小銃實包
無制限
一萬發
導火線
無制限
千間
火藥類ハ左ノ區別ニ從ヒ各別庫ニ貯藏スヘシ
一 火藥、小銃實包及導火線
二 雷管信管類
三 劇發火藥
第十四條 火藥庫及假貯藏所ニハ他ノ物品ヲ貯藏スルコトヲ得ス
劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル火藥類ヲ貯藏シタル倉庫ニハ發火ノ虞アル他ノ物品ヲ貯藏スルコトヲ得ス
第十五條 火藥庫又ハ假貯藏所ハ其ノ位置竝建設ノ方法ヲ具シ且假貯藏所ニ在テハ貯藏スヘキ火藥類ノ種類數量ヲ記シ廳府縣長官ニ差出シ其ノ許可ヲ受クルニ非サレハ建設スルコトヲ得ス
火藥庫又ハ假貯藏所ノ建築修繕又ハ模樣替ノ工事ヲ竣リタルトキハ警察官ノ檢査ヲ受クヘシ
第十六條 火藥庫ハ土藏又ハ煉瓦造ニシテ屋根ハ輕量ノ不燃質物ヲ用井內部ニハ鐵類石瓦ヲ露ハサス窻ニハ透明ノ硝子ヲ用井ルコトヲ得ス
火藥庫ニハ避雷針ヲ設クヘシ避雷針ハ其ノ尖頭ヨリ屋端ノ最モ遠隔セル㸃ニ至ル想像的直線ト四十五度以內ノ角度ヲ有セシムヘシ
火藥庫ノ周圍ニハ二間以上ノ距離ニ於テ高八尺以上ノ土堤ヲ築キ其ノ境界ト爲スヘシ
第十七條 警察官憲兵ハ何時ニテモ火藥庫倉庫及假貯藏所ヲ檢査シ修繕ヲ命シ又ハ火藥類ノ貯藏ヲ禁止若ハ停止スルコトヲ得
第十八條 火藥庫及假貯藏所ノ境界ハ皇居離宮ノ區域ヨリ十町以上ノ距離ヲ保有スヘシ
火藥庫及假貯藏所ノ境界ハ皇陵、社寺境內、公園、火ヲ取扱フ場所、發火質物品ヲ蓄積スル場所、瓦斯ノ傳導管、宅地、公道、鐵道、電線、汽船ノ航路其ノ他內務大臣ノ指定シタル箇所ヨリ五十間以上又蓄積セル燃質物ヨリ十四間以上ノ距離ヲ保有スヘシ但シ火藥庫ト火藥庫ト其ノ境界ヲ接スルハ此ノ限ニ在ラス
假貯藏所ニ付テハ廳府縣長官必要ト認ムルトキハ前二項ノ距離以上ニ於テ特ニ其ノ距離ヲ指定スルコトアルヘシ
第十九條 第十三條第一項ニ依リ倉庫ニ貯藏シ得ル數量ヲ超過スル火藥類ヲ運搬セントスルトキハ其ノ種類、數量、運搬ノ日時、通路及運搬先ヲ記シ所轄警察官署ノ許可ヲ受ケ其ノ許可證ヲ携帶スヘシ
第二十條 劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ノ運搬ハ第十一條ニ準據スヘシ
第二十一條 劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ハ警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ日出前日沒後ニ於テ授受荷造等ヲ爲スコトヲ得ス
第二十二條 警察官憲兵ハ危害豫防ノ爲必要ト認ムルトキハ本令ニ規定スルモノノ外軍用銃砲及火藥類ノ貯藏運搬其ノ他ノ取扱ニ關シ相當ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第一條第二項廳府縣長官ノ指揮命令ニ違背シタル者
二 第二條第三項ニ違背シタル者
三 第八條ノ許可ヲ受ケサル者ニ劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ヲ讓渡シタル者
四 第九條ニ違背シタル者
五 第十條ニ依ル警察官憲兵ノ檢査ヲ拒ミタル者
六 第十二條乃至第十六條及第十八條第一項第二項ニ違背シ若ハ第十八條第三項ニ依ル命令ニ違背シテ火藥類ヲ貯藏シタル者
七 第十七條ノ檢査ヲ拒ミ又ハ命令ヲ受ケテ修繕ヲ爲サス又ハ貯藏ノ禁止若ハ停止ノ命令ニ從ハサル者
第二十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二十圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第四條ノ許可ヲ受ケサル者ニ軍用銃砲ヲ讓渡シタル者
二 第七條ノ許可ヲ受ケス又ハ其ノ但書ニ該當セサル者ニ火藥類ヲ讓渡シタル者
三 第八條ノ許可ヲ受ケスシテ劇發火藥若ハ第五條ニ揭ケタル數量ヲ超過スル他ノ火藥類ヲ讓受ケタル者
四 第十一條ニ違背シテ火藥類ヲ貯藏シタル者
五 第十九條第二十條及第二十一條ニ違背シタル者
第二十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ十圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第一條第三項第三條ニ違背シタル者及第一條第三項若ハ第三條ノ檢査ヲ受ケサル火藥類若ハ銃砲ヲ使用若ハ讓渡シタル者
二 第七條ニ違背シテ火藥類ヲ讓受ケタル者
附 則
第二十六條 從來ノ火藥庫又ハ假貯藏所ニシテ其ノ位置若ハ構造本令ノ規定ニ牴觸スルモノハ廳府縣長官ノ指定シタル期間ニ於テ之ヲ改ムヘシ
第二十七條 汽車若ハ船舶ニ依ル火藥類ノ運搬、運搬ニ關スル一時ノ保管及船舶ニ於ケル火藥類ノ貯藏ニ關スル規程ハ遞信大臣之ヲ定ム
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ銃砲火薬類取締法施行規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月三日
内務大臣 侯爵 西郷従道
勅令第三百六十六号
銃砲火薬類取締法施行規則
第一条 銃砲火薬類取締法第三条第一項ノ許可ヲ受ケントスル者ハ計画説明書、図案其ノ他必要ナル事項ヲ具シ製造地庁府県長官ヲ経由シ主務省ニ願出ヘシ
試験製造ニ関スル危害予防ノ方法ニ付テハ庁府県長官ノ指揮監督ヲ受クヘシ
試験ノ為製造シタル軍用銃砲及火薬類ハ主務省ノ検査ヲ受クヘシ
第二条 銃砲火薬類取締法第六条ニ依リ火薬商ニ与フル許可ヲ分チテ甲乙ノ二種トス
甲種ノ許可ヲ受ケタル火薬商ハ火薬類ニ関スル各種ノ商行為ヲ為スコトヲ得
乙種ノ許可ヲ受ケタル火薬商ハ火薬類ヲ輸入シ之ヲ官庁又ハ火薬商ニ売渡スノ外火薬類ニ関スル他ノ商行為ヲ為スコトヲ得ス
本令施行前火薬商ノ許可ヲ受ケタル者ハ甲種ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス但シ輸入及卸売ノ営業ニ限リ許可ヲ受ケタル者ハ乙種ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第三条 銃砲製造営業者ニ非サル者非軍用銃砲ヲ製造シタルトキハ製造ヲ竣リタル日ヨリ十日以内ニ其ノ銃砲ノ説明書及図案ヲ具シ製造シタル銃砲ノ数ヲ庁府県長官ニ届出其ノ検査ヲ受クヘシ
第四条 銃砲商ニ非サル者ハ所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ軍用銃砲ノ譲渡売渡交換贈与以下倣之ヲ受クルコトヲ得ス
前項ニ依リテ与ヘタル許可証ハ一箇月間其ノ効力ヲ有ス
第五条 火薬商ニ非サル者ハ劇発火薬綿火薬、ナイトログリセリン、ダイナマイト、雷汞、其ノ他劇発質ノ物品及左ノ数量ヲ超過スル他ノ火薬類ヲ所持スルコトヲ得ス但シ第六条若ハ第八条ノ許可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 火薬 一貫目
一 小銃実包 千発
一 雷管信管類 千箇
一 導火線 百間
第六条 火薬商ニ非サル者ハ第八条ノ許可ヲ受クル場合ト同一ノ条件ヲ有スルニ非サレハ火薬類輸入ノ許可ヲ受クルコトヲ得ス
火薬類輸入ノ許可ヲ受ケントスル者ハ種類数量及使用ノ目的ヲ具シ使用地庁府県長官ニ願出ヘシ但シ使用地ノ定マラサル場合ニ於テハ所轄庁府県長官ニ願出ヘシ
前項ノ許可ハ一箇年間其ノ効力ヲ有ス但シ庁府県長官ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第七条 火薬商ニ非サル者火薬類ヲ譲受ケントスルトキハ種類数量及使用ノ目的ヲ具シ所轄警察官署ノ許可ヲ受クヘシ但シ狩猟免許若ハ火薬類ヲ要スル工業ノ許可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ依リ与ヘタル許可証ハ一箇月間其ノ効力ヲ有ス
第八条 鉱業用土工用船内銃砲用漁業用煙火製造用及火薬類ヲ要スル工業用ノ為劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ヲ譲受ケントスル者ハ種類数量及使用ノ目的ヲ具シ使用地庁府県長官ノ許可ヲ受クヘシ但シ使用地ノ定マラサル場合ニ於テハ所轄庁府県長官ノ許可ヲ受クヘシ
庁府県長官前項ニ掲ケタル使用ノ目的ヲ有セサル者ニ対シ劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ノ譲受ヲ許可スルノ必要アリト認ムルトキハ其ノ事由ヲ具シ内務大臣ノ指揮ヲ受クヘシ
本条ノ許可ハ庁府県長官ニ於テ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第九条 使用ノ目的ヲ具シテ輸入又ハ譲受ノ許可ヲ受ケタル火薬類ハ其ノ許可ヲ与ヘタル官庁ノ許可ヲ受クルニ非サレハ他ノ目的ニ使用スルコトヲ得ス
第十条 警察官憲兵ニ於テ必要ト認ムルトキハ銃砲製造営業者、銃砲商及火薬商ノ帳簿ヲ検査スルコトヲ得
第十一条 火薬類ハ左ノ規定ニ従ヒ之ヲ貯蔵スヘシ
一 火薬及導火線ハ木器、亜鉛器、銅器ニ収納スルヲ要ス但シ少量ノ火薬ニ限リ白鉄葉器ニ収納スルコトヲ得
二 雷管信管類及小銃実包ハ木器、亜鉛器、銅器、白鉄葉器、厚紙製缶ニ収納スルヲ要ス
三 劇発火薬ハ酸気、塩気ヲ含有セサル紙又ハ布防湿ノ為パラピン類ヲ塗抹スルコトヲ得ヲ以テ包ミ之ヲ木器、亜鉛器ニ収納スルヲ要ス
四 綿火薬及ダイナマイトノ類ハ青色試験紙ト共ニ容器ニ収納シ時時之ヲ検査スヘシ試験紙赤色ニ変スルノ徴候アルトキハ即時火薬ヲ水中ニ投棄スルコトヲ要ス
五 火薬類ハ容器ト火薬類ト直接ニ触接セサル為紙、渋紙若ハ布ヲ以テ隔絶スヘシ但シ少量ノ火薬ヲ白鉄葉器ニ収納スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
雷管信管類ハ火薬並劇発火薬ト同所ニ置クコトヲ得ス
火薬及劇発火薬ハ各之ヲ離隔スヘシ
火薬類ハ普通ノ油紙ヲ以テ包被スルコトヲ得ス
第十二条 劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ハ火薬庫若ハ警察官ノ検査ヲ受ケタル倉庫ニ非サレハ貯蔵スルコトヲ得ス但シ鉱業土工ニ要スル火薬類ハ其ノ事業中仮貯蔵所ニ貯蔵スルコトヲ得
第十三条 火薬庫倉庫及仮貯蔵所ニ貯蔵スル火薬類ハ左ノ数量ヲ超過スルコトヲ得ス
庫ノ種類
火薬類ノ種類    
火薬庫
仮貯蔵所
倉庫
火薬
一万貫目
十貫目
雷管信管類
五百貫目
一万箇
劇発火薬
五百貫目
一貫目
小銃実包
無制限
一万発
導火線
無制限
千間
火薬類ハ左ノ区別ニ従ヒ各別庫ニ貯蔵スヘシ
一 火薬、小銃実包及導火線
二 雷管信管類
三 劇発火薬
第十四条 火薬庫及仮貯蔵所ニハ他ノ物品ヲ貯蔵スルコトヲ得ス
劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル火薬類ヲ貯蔵シタル倉庫ニハ発火ノ虞アル他ノ物品ヲ貯蔵スルコトヲ得ス
第十五条 火薬庫又ハ仮貯蔵所ハ其ノ位置並建設ノ方法ヲ具シ且仮貯蔵所ニ在テハ貯蔵スヘキ火薬類ノ種類数量ヲ記シ庁府県長官ニ差出シ其ノ許可ヲ受クルニ非サレハ建設スルコトヲ得ス
火薬庫又ハ仮貯蔵所ノ建築修繕又ハ模様替ノ工事ヲ竣リタルトキハ警察官ノ検査ヲ受クヘシ
第十六条 火薬庫ハ土蔵又ハ煉瓦造ニシテ屋根ハ軽量ノ不燃質物ヲ用井内部ニハ鉄類石瓦ヲ露ハサス窻ニハ透明ノ硝子ヲ用井ルコトヲ得ス
火薬庫ニハ避雷針ヲ設クヘシ避雷針ハ其ノ尖頭ヨリ屋端ノ最モ遠隔セル点ニ至ル想像的直線ト四十五度以内ノ角度ヲ有セシムヘシ
火薬庫ノ周囲ニハ二間以上ノ距離ニ於テ高八尺以上ノ土堤ヲ築キ其ノ境界ト為スヘシ
第十七条 警察官憲兵ハ何時ニテモ火薬庫倉庫及仮貯蔵所ヲ検査シ修繕ヲ命シ又ハ火薬類ノ貯蔵ヲ禁止若ハ停止スルコトヲ得
第十八条 火薬庫及仮貯蔵所ノ境界ハ皇居離宮ノ区域ヨリ十町以上ノ距離ヲ保有スヘシ
火薬庫及仮貯蔵所ノ境界ハ皇陵、社寺境内、公園、火ヲ取扱フ場所、発火質物品ヲ蓄積スル場所、瓦斯ノ伝導管、宅地、公道、鉄道、電線、汽船ノ航路其ノ他内務大臣ノ指定シタル箇所ヨリ五十間以上又蓄積セル燃質物ヨリ十四間以上ノ距離ヲ保有スヘシ但シ火薬庫ト火薬庫ト其ノ境界ヲ接スルハ此ノ限ニ在ラス
仮貯蔵所ニ付テハ庁府県長官必要ト認ムルトキハ前二項ノ距離以上ニ於テ特ニ其ノ距離ヲ指定スルコトアルヘシ
第十九条 第十三条第一項ニ依リ倉庫ニ貯蔵シ得ル数量ヲ超過スル火薬類ヲ運搬セントスルトキハ其ノ種類、数量、運搬ノ日時、通路及運搬先ヲ記シ所轄警察官署ノ許可ヲ受ケ其ノ許可証ヲ携帯スヘシ
第二十条 劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ノ運搬ハ第十一条ニ準拠スヘシ
第二十一条 劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ハ警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ日出前日没後ニ於テ授受荷造等ヲ為スコトヲ得ス
第二十二条 警察官憲兵ハ危害予防ノ為必要ト認ムルトキハ本令ニ規定スルモノノ外軍用銃砲及火薬類ノ貯蔵運搬其ノ他ノ取扱ニ関シ相当ノ処分ヲ為スコトヲ得
第二十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス
一 第一条第二項庁府県長官ノ指揮命令ニ違背シタル者
二 第二条第三項ニ違背シタル者
三 第八条ノ許可ヲ受ケサル者ニ劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ヲ譲渡シタル者
四 第九条ニ違背シタル者
五 第十条ニ依ル警察官憲兵ノ検査ヲ拒ミタル者
六 第十二条乃至第十六条及第十八条第一項第二項ニ違背シ若ハ第十八条第三項ニ依ル命令ニ違背シテ火薬類ヲ貯蔵シタル者
七 第十七条ノ検査ヲ拒ミ又ハ命令ヲ受ケテ修繕ヲ為サス又ハ貯蔵ノ禁止若ハ停止ノ命令ニ従ハサル者
第二十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ二十円以下ノ罰金ニ処ス
一 第四条ノ許可ヲ受ケサル者ニ軍用銃砲ヲ譲渡シタル者
二 第七条ノ許可ヲ受ケス又ハ其ノ但書ニ該当セサル者ニ火薬類ヲ譲渡シタル者
三 第八条ノ許可ヲ受ケスシテ劇発火薬若ハ第五条ニ掲ケタル数量ヲ超過スル他ノ火薬類ヲ譲受ケタル者
四 第十一条ニ違背シテ火薬類ヲ貯蔵シタル者
五 第十九条第二十条及第二十一条ニ違背シタル者
第二十五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ十円以下ノ罰金ニ処ス
一 第一条第三項第三条ニ違背シタル者及第一条第三項若ハ第三条ノ検査ヲ受ケサル火薬類若ハ銃砲ヲ使用若ハ譲渡シタル者
二 第七条ニ違背シテ火薬類ヲ譲受ケタル者
附 則
第二十六条 従来ノ火薬庫又ハ仮貯蔵所ニシテ其ノ位置若ハ構造本令ノ規定ニ牴触スルモノハ庁府県長官ノ指定シタル期間ニ於テ之ヲ改ムヘシ
第二十七条 汽車若ハ船舶ニ依ル火薬類ノ運搬、運搬ニ関スル一時ノ保管及船舶ニ於ケル火薬類ノ貯蔵ニ関スル規程ハ逓信大臣之ヲ定ム