銃砲火薬類取締法
法令番号: 法律第百六號
公布年月日: 明治32年8月4日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル銃砲火藥類取締法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月三日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
內務大臣 侯爵 西鄕從道
法律第百六號
銃砲火藥類取締法
第一條 本法ニ於テ銃砲ト稱スルハ軍用銃砲及非軍用銃砲ヲ謂ヒ火藥類ト稱スルハ火藥、雷管、導火線其ノ他爆發質物品ヲ謂フ
第二條 軍用銃砲及火藥類ハ官廳ノ委任ヲ受ケタル者ニアラサレハ製造又ハ輸入スルコトヲ得ス但シ火藥商及特ニ官廳ノ許可ヲ受ケタル者ノ火藥類輸入ハ此ノ限ニ在ラス
第三條 新奇發明ニ係ル軍用銃砲又ハ火藥類ヲ試驗ノ爲製造セムトスル者ハ陸軍大臣ノ許可ヲ受クヘシ但シ特ニ海軍大臣ノ主管ニ係ルモノニ付テハ海軍大臣ノ許可ヲ受クヘシ
陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ試驗製造ノ成績不良ナリト認ムルトキ又ハ廳府縣長官ノ定メタル危害豫防ノ方法ヲ遵守セサルモノト認ムルトキハ何時ニテモ試驗製造ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第四條 軍用銃砲ノ種類ハ陸軍大臣之ヲ定ム但シ特ニ海軍大臣ノ主管ニ係ルモノニ付テハ海軍大臣之ヲ定ム
第五條 銃砲製造ノ營業ヲ爲サムトスル者ハ廳府縣長官ノ許可ヲ受クヘシ
銃砲ノ修繕ヲ營業トスル者ハ銃砲製造營業者ト看做ス
第六條 銃砲商及火藥商ノ營業ヲ爲サムトスル者ハ廳府縣長官ノ許可ヲ受クヘシ
第七條 火藥商及銃砲商ノ廳府縣ニ於ケル定員ハ內務大臣之ヲ定ム
第八條 第五條及第六條ノ營業許可ヲ受ケタル者其ノ許可ノ日ヨリ六箇月以內ニ開業セス又ハ開業後一箇年間休業シタルトキハ廳府縣長官ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第九條 銃砲製造營業者銃砲商又ハ火藥商カ法律命令ニ違背シ又ハ銃砲、火藥類ヲ危險ノ用ニ供スルノ虞アルトキハ廳府縣長官ハ營業ノ許可ヲ取消シ又ハ營業ヲ停止スルコトヲ得
第十條 銃砲製造營業者ハ其ノ製造改造ニ係ル銃砲ヲ銃砲商以外ノ者ニ賣渡シ讓渡シ交換シ又ハ贈與スルコトヲ得ス但シ官廳又ハ特ニ官廳ノ許可ヲ得タル者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 銃砲、火藥類ハ行商シ又ハ露店市場其ノ他屋外ニ於テ販賣スルコトヲ得ス
第十二條 警察官憲兵ハ必要ト認ムルトキハ何人ノ所有ヲ問ハス火藥類ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第十三條 內務大臣ハ公共ノ安寧ヲ保持スルニ必要ト認ムルトキハ期間及地域ヲ限リ銃砲、火藥類ノ授受運搬及携帶ヲ禁シ又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ警察官憲兵ハ必要ト認ムルトキハ銃砲ノ檢査ヲ爲シ又ハ銃砲、火藥類ヲ領置スルコトヲ得
第十四條 第二條ニ違背シタル者ハ刑法第百五十七條及第百六十一條ニ依リ處斷シ其ノ未タ遂ケサル者ハ刑法未遂犯罪ノ例ニ依リ處斷ス
第十五條 第十三條第一項ノ命令ニ違背シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮又ハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ仍其ノ物件ヲ沒收ス
第十六條 第五條又ハ第六條ノ許可ヲ受ケスシテ營業ヲ爲シタル者及第九條ノ停止命令ニ違背シテ營業ヲ爲シタル者ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十七條 第十條及第十一條ニ違背シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條 左ノ事項ニ關シ取締上必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
一 軍用銃砲及火藥類ノ貯藏運搬及其ノ他ノ取扱
二 火藥類倉庫ノ位置及其ノ構造
三 導火線、煙火、燐寸、爆發質玩弄品ノ製造販賣
四 火藥類ヲ要スル工業ニ關スル必要ナル事項
附 則
第十九條 明治五年第二十八號布吿銃砲取締規則及明治十七年第三十一號布吿火藥取締規則ハ本法施行ノ日ヨリ廢止ス
明治十七年第三十二號布吿爆發物取締罰則ハ本法ノ爲其ノ效力ヲ妨ケラルルコトナシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル銃砲火薬類取締法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月三日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
内務大臣 侯爵 西郷従道
法律第百六号
銃砲火薬類取締法
第一条 本法ニ於テ銃砲ト称スルハ軍用銃砲及非軍用銃砲ヲ謂ヒ火薬類ト称スルハ火薬、雷管、導火線其ノ他爆発質物品ヲ謂フ
第二条 軍用銃砲及火薬類ハ官庁ノ委任ヲ受ケタル者ニアラサレハ製造又ハ輸入スルコトヲ得ス但シ火薬商及特ニ官庁ノ許可ヲ受ケタル者ノ火薬類輸入ハ此ノ限ニ在ラス
第三条 新奇発明ニ係ル軍用銃砲又ハ火薬類ヲ試験ノ為製造セムトスル者ハ陸軍大臣ノ許可ヲ受クヘシ但シ特ニ海軍大臣ノ主管ニ係ルモノニ付テハ海軍大臣ノ許可ヲ受クヘシ
陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ試験製造ノ成績不良ナリト認ムルトキ又ハ庁府県長官ノ定メタル危害予防ノ方法ヲ遵守セサルモノト認ムルトキハ何時ニテモ試験製造ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第四条 軍用銃砲ノ種類ハ陸軍大臣之ヲ定ム但シ特ニ海軍大臣ノ主管ニ係ルモノニ付テハ海軍大臣之ヲ定ム
第五条 銃砲製造ノ営業ヲ為サムトスル者ハ庁府県長官ノ許可ヲ受クヘシ
銃砲ノ修繕ヲ営業トスル者ハ銃砲製造営業者ト看做ス
第六条 銃砲商及火薬商ノ営業ヲ為サムトスル者ハ庁府県長官ノ許可ヲ受クヘシ
第七条 火薬商及銃砲商ノ庁府県ニ於ケル定員ハ内務大臣之ヲ定ム
第八条 第五条及第六条ノ営業許可ヲ受ケタル者其ノ許可ノ日ヨリ六箇月以内ニ開業セス又ハ開業後一箇年間休業シタルトキハ庁府県長官ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第九条 銃砲製造営業者銃砲商又ハ火薬商カ法律命令ニ違背シ又ハ銃砲、火薬類ヲ危険ノ用ニ供スルノ虞アルトキハ庁府県長官ハ営業ノ許可ヲ取消シ又ハ営業ヲ停止スルコトヲ得
第十条 銃砲製造営業者ハ其ノ製造改造ニ係ル銃砲ヲ銃砲商以外ノ者ニ売渡シ譲渡シ交換シ又ハ贈与スルコトヲ得ス但シ官庁又ハ特ニ官庁ノ許可ヲ得タル者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 銃砲、火薬類ハ行商シ又ハ露店市場其ノ他屋外ニ於テ販売スルコトヲ得ス
第十二条 警察官憲兵ハ必要ト認ムルトキハ何人ノ所有ヲ問ハス火薬類ノ検査ヲ為スコトヲ得
第十三条 内務大臣ハ公共ノ安寧ヲ保持スルニ必要ト認ムルトキハ期間及地域ヲ限リ銃砲、火薬類ノ授受運搬及携帯ヲ禁シ又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ警察官憲兵ハ必要ト認ムルトキハ銃砲ノ検査ヲ為シ又ハ銃砲、火薬類ヲ領置スルコトヲ得
第十四条 第二条ニ違背シタル者ハ刑法第百五十七条及第百六十一条ニ依リ処断シ其ノ未タ遂ケサル者ハ刑法未遂犯罪ノ例ニ依リ処断ス
第十五条 第十三条第一項ノ命令ニ違背シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮又ハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処シ仍其ノ物件ヲ没収ス
第十六条 第五条又ハ第六条ノ許可ヲ受ケスシテ営業ヲ為シタル者及第九条ノ停止命令ニ違背シテ営業ヲ為シタル者ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
第十七条 第十条及第十一条ニ違背シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十八条 左ノ事項ニ関シ取締上必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
一 軍用銃砲及火薬類ノ貯蔵運搬及其ノ他ノ取扱
二 火薬類倉庫ノ位置及其ノ構造
三 導火線、煙火、燐寸、爆発質玩弄品ノ製造販売
四 火薬類ヲ要スル工業ニ関スル必要ナル事項
附 則
第十九条 明治五年第二十八号布告銃砲取締規則及明治十七年第三十一号布告火薬取締規則ハ本法施行ノ日ヨリ廃止ス
明治十七年第三十二号布告爆発物取締罰則ハ本法ノ為其ノ効力ヲ妨ケラルルコトナシ