朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル要塞地帶法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年七月十四日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
陸軍大臣 子爵 桂太郞
海軍大臣 山本權兵衞
法律第百五號
要塞地帶法
第一章 總則
第一條 要塞地帶トハ國防ノ爲建設シタル諸般ノ防禦營造物ノ周圍ノ區域ヲ云フ
第二條 要塞地帶ノ幅員ハ防禦營造物ノ各突出部ヲ連結スル線ヲ基線トシ此ノ線ヨリ外方一定ノ距離以內ニ於テ之ヲ定ム
第三條 要塞地帶ハ陸地ト海面トヲ問ハス之ヲ三區ニ分チ各區ノ幅員ハ左ノ區別ニ從ヒ陸軍大臣之ヲ定メ竝之ヲ吿示ス其ノ之ヲ變更スル場合亦同シ但シ陸軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域カ海軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域ト相關聯スルカ或ハ軍港要港又ハ海軍用地ニ係ル場合竝陸軍用地カ海軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域ト相關聯スル場合ニ於テハ陸軍大臣海軍大臣協議ノ上之ヲ定メ連署シテ吿示ヲ爲スコトヲ要ス
第一區 基線ヨリ測リ二百五十間以內及基線ト防禦營造物間ノ區域
第二區 基線ヨリ測リ七百五十間以內
第三區 基線ヨリ測リ二千二百五十間以內
第四條 要塞司令官鎭守府司令長官要港部司令官及築城部本部長ハ要塞地帶ヲ劃スル爲其ノ他必要ト認ムル場合ニ於テハ部下官僚ヲシテ要塞地帶內及第七條第二項ノ區域內何レノ地ヲ問ハス出入セシムルコトヲ得但シ陸海軍用地內ニ出入セシメントスルトキハ互ニ當該官廳ノ承認ヲ經ヘシ
第五條 陸軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域ニ關聯セサル海軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域內ニ關シテハ此ノ法律ニ規定スル陸軍大臣ノ職務ハ海軍大臣之ヲ行ヒ要塞司令官ノ職務ハ鎭守府司令長官要港部司令官之ヲ行フ
第六條 此ノ法律ハ防禦營造物ノ設ナシト雖之ヲ設クルコトニ決定シタル箇所ニ於テ其ノ豫定防禦營造物ノ各突出部ヲ連結スル線ヲ基線トシ第二條第三條及第七條第二項ニ定メタル區域ニ付テ亦之ヲ適用ス但シ基線以內ノ區域ハ第一區ニ準ス
第二章 禁止及制限
第七條 何人ト雖要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ要塞地帶內水陸ノ形狀ヲ測量、撮影、摸寫、錄取スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ要塞地帶外ト雖第三區ノ境界線ヨリ外方三千五百間以內ノ區域ニ於テ之ヲ適用ス
第八條 要塞司令官ハ要塞地帶內ニ入リ兵備ノ狀況其ノ他地形等ヲ視察スル者ト認メタルトキハ之ヲ要塞地帶外ニ退去セシムルコトヲ得
第九條 要塞地帶ノ第一區ニ屬スル水面ニ在リテハ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ漁獵、採藻及艦船ノ繫泊、土砂ノ掘鑿ヲ爲スコトヲ得ス
第十條 第一區內ニ於テ新設スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 不燃質物ヲ以テ築造セル家屋及倉庫
二 窖室及固定竈爐
三 不燃質物ヲ以テ築造セル高サ二尺ヲ超ユル諸般ノ築造物
第十一條 第一區內ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 埋葬地
二 水車及風車
三 
四 容易ニ他ニ移動スヘカラサル器械器具ヲ備フル家屋
五 生垣及木造ノ圍牆
六 第十條第一號ニ於テ禁セサル家屋及倉庫
第十二條 第二區內ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 不燃質物ヲ以テ築造セル家屋及倉庫
二 埋葬地
三 不燃質物ヲ以テ築造セル高サ三尺ヲ超ユル諸般ノ築造物
第十三條 第一區第二區內ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ屋內ト屋外トヲ問ハス累積スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 第一區內ニ於テハ高サ五尺、第二區內ニ於テハ高サ八尺以上ニ累積スル不燃質物及石炭類
二 第一區內ニ於テハ高サ一丈三尺、第二區內ニ於テハ高サ一丈七尺以上ニ累積スル薪炭及竹木材
第十四條 第一區第二區內ニ於テハ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ家屋倉庫及諸般ノ築造物ヲ改築增築スルコトヲ得ス
第十五條 各區內ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設若ハ變更スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 地表ノ高低ヲ永久ニ變更スル土工卽チ堆土、開鑿等
二 溝渠、鹽田、排水及灌水
三 公園、育樹場、竹木林、菓園及桑茶畑
四 耕作地
第十六條 各區內ニ於テ陸軍大臣ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設若ハ變更スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
堤塘、運河、道路、橋梁、鐵道、隧道、永久棧橋
第十七條 本章ノ禁止制限ニ違背シ新設改築增築變更シタル家屋倉庫其ノ他ノ築造物又ハ累積物等ハ違背者ヲシテ期限ヲ定メテ之ヲ除去セシメ地形ノ變更ニ係ルモノハ之ヲ復舊セシメ期限內ニ除去復舊セサルトキ若ハ其ノ期限內ニ終了スルノ見込ナキトキ又ハ其ノ方法宜シキヲ得サルトキハ官廳ニ於テ自ラ之ヲ執行シ又ハ第三者ヲシテ之ヲ執行セシメ其ノ費用ヲ義務者ヨリ徵收スルコトヲ得
前項義務者ニ於テ負擔スヘキ費用ハ國稅ノ滯納處分ニ關スル規定ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ政府ハ國稅ニ次キ先取權ヲ有ス
本條ノ處分ハ第十六條ノ違背者ニ就テハ陸軍大臣之ヲ爲シ其ノ他ノ違背者ニ就テハ要塞司令官之ヲ爲スヘシ
第十八條 地帶ノ禁止制限ニ關シ官廳ノ處分ニ服セサル者ハ其ノ處分ニ就テノ吿示又ハ通達ヲ受タル日ヨリ三十日以內ニ陸軍大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ訴願中處分ノ執行ヲ妨ケス
第十九條 陸軍大臣ハ場合ニ依リ或區域內ニ限リ特ニ本章禁止制限ノ全部若ハ一部ヲ解除スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ解除ノ事項及其ノ區域ヲ吿示ス之ヲ變更スルトキ亦同シ
第二十條 本章ノ禁止及制限ハ陸海軍又ハ陸海軍官廳ノ行動又ハ施設ニ對シテハ之ヲ適用セス但シ陸軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域ニシテ海軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域ト相關聯スル場合若ハ軍港要港又ハ海軍用地ニ係ル場合竝陸軍用地カ海軍防禦營造物ノ地帶及第七條第二項ノ區域ト相關聯スル場合ニ於テ當該陸軍官廳若ハ海軍官廳カ此ノ法律ニ揭クル許可又ハ承認ヲ爲シ若ハ第十九條ノ處分ヲ爲サントスルトキハ陸軍官廳ハ當該海軍官廳ニ海軍官廳ハ當該陸軍官廳ニ協議スルコトヲ要ス
第二十一條 陸海軍以外ノ官廳ニ於テ第七條第九條第十一條乃至第十五條ニ揭クル事項ヲ爲サントスルトキハ要塞司令官ノ承認第十六條ニ揭クル事項ヲ爲サントスルトキハ陸軍大臣ノ承認ヲ受クルコトヲ要ス
第三章 罰則
第二十二條 第七條及第九條ノ禁ヲ犯シタル者ハ十一日以上一年以下ノ重禁錮又ハ二圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス第八條ニ依リ要塞司令官ニ退去ヲ命セラレ其ノ命ニ從ハサル者亦同シ
第二十三條 第七條及第九條ノ罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第二十四條 第十條乃至第十三條第十五條及第十六條ニ違犯シタル者ハ二圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十五條 第十四條ニ違犯シタル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
第二十六條 要塞地帶各區及第七條第二項ノ區域ヲ標示スル爲ニ設ケタル標石、標木、標札ノ類ヲ移轉シ又ハ之ヲ毀壞シタル者ハ十一日以上二月以下ノ重禁錮ニ處シ又ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ過失ニ出テタル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
第四章 雜則
第二十七條 要塞地帶創設吿示ノ當時家屋倉庫築造物等ノ新設、變更、改築、增築中ニ係ルモノハ此ノ法律ノ禁止制限ヲ適用セス
第二十八條 要塞地帶各區及第七條第二項ノ區域ヲ標示スル標石、標木若ハ標札ノ類ヲ建設スル爲ニ要スル敷地ノ買收及使用ニ關シテハ明治二十三年法律第二十三號陸地測量標條例ノ規定ヲ準用ス
第二十九條 此ノ法律ノ施行ニ關シ必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
第三十條 此ノ法律ハ軍港規則及要港規則ノ效力ヲ妨クルコトナシ
第三十一條 明治三十一年勅令第百七十六號ハ此ノ法律ニ依リ第三條又ハ第六條ノ吿示ヲ爲シタル箇所ニ限リ其ノ效力ヲ失フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル要塞地帯法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年七月十四日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
陸軍大臣 子爵 桂太郎
海軍大臣 山本権兵衛
法律第百五号
要塞地帯法
第一章 総則
第一条 要塞地帯トハ国防ノ為建設シタル諸般ノ防禦営造物ノ周囲ノ区域ヲ云フ
第二条 要塞地帯ノ幅員ハ防禦営造物ノ各突出部ヲ連結スル線ヲ基線トシ此ノ線ヨリ外方一定ノ距離以内ニ於テ之ヲ定ム
第三条 要塞地帯ハ陸地ト海面トヲ問ハス之ヲ三区ニ分チ各区ノ幅員ハ左ノ区別ニ従ヒ陸軍大臣之ヲ定メ並之ヲ告示ス其ノ之ヲ変更スル場合亦同シ但シ陸軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域カ海軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域ト相関連スルカ或ハ軍港要港又ハ海軍用地ニ係ル場合並陸軍用地カ海軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域ト相関連スル場合ニ於テハ陸軍大臣海軍大臣協議ノ上之ヲ定メ連署シテ告示ヲ為スコトヲ要ス
第一区 基線ヨリ測リ二百五十間以内及基線ト防禦営造物間ノ区域
第二区 基線ヨリ測リ七百五十間以内
第三区 基線ヨリ測リ二千二百五十間以内
第四条 要塞司令官鎮守府司令長官要港部司令官及築城部本部長ハ要塞地帯ヲ画スル為其ノ他必要ト認ムル場合ニ於テハ部下官僚ヲシテ要塞地帯内及第七条第二項ノ区域内何レノ地ヲ問ハス出入セシムルコトヲ得但シ陸海軍用地内ニ出入セシメントスルトキハ互ニ当該官庁ノ承認ヲ経ヘシ
第五条 陸軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域ニ関連セサル海軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域内ニ関シテハ此ノ法律ニ規定スル陸軍大臣ノ職務ハ海軍大臣之ヲ行ヒ要塞司令官ノ職務ハ鎮守府司令長官要港部司令官之ヲ行フ
第六条 此ノ法律ハ防禦営造物ノ設ナシト雖之ヲ設クルコトニ決定シタル箇所ニ於テ其ノ予定防禦営造物ノ各突出部ヲ連結スル線ヲ基線トシ第二条第三条及第七条第二項ニ定メタル区域ニ付テ亦之ヲ適用ス但シ基線以内ノ区域ハ第一区ニ準ス
第二章 禁止及制限
第七条 何人ト雖要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ要塞地帯内水陸ノ形状ヲ測量、撮影、摸写、録取スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ要塞地帯外ト雖第三区ノ境界線ヨリ外方三千五百間以内ノ区域ニ於テ之ヲ適用ス
第八条 要塞司令官ハ要塞地帯内ニ入リ兵備ノ状況其ノ他地形等ヲ視察スル者ト認メタルトキハ之ヲ要塞地帯外ニ退去セシムルコトヲ得
第九条 要塞地帯ノ第一区ニ属スル水面ニ在リテハ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ漁猟、採藻及艦船ノ繋泊、土砂ノ掘鑿ヲ為スコトヲ得ス
第十条 第一区内ニ於テ新設スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 不燃質物ヲ以テ築造セル家屋及倉庫
二 窖室及固定竈炉
三 不燃質物ヲ以テ築造セル高サ二尺ヲ超ユル諸般ノ築造物
第十一条 第一区内ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 埋葬地
二 水車及風車
三 
四 容易ニ他ニ移動スヘカラサル器械器具ヲ備フル家屋
五 生垣及木造ノ囲牆
六 第十条第一号ニ於テ禁セサル家屋及倉庫
第十二条 第二区内ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 不燃質物ヲ以テ築造セル家屋及倉庫
二 埋葬地
三 不燃質物ヲ以テ築造セル高サ三尺ヲ超ユル諸般ノ築造物
第十三条 第一区第二区内ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ屋内ト屋外トヲ問ハス累積スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 第一区内ニ於テハ高サ五尺、第二区内ニ於テハ高サ八尺以上ニ累積スル不燃質物及石炭類
二 第一区内ニ於テハ高サ一丈三尺、第二区内ニ於テハ高サ一丈七尺以上ニ累積スル薪炭及竹木材
第十四条 第一区第二区内ニ於テハ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ家屋倉庫及諸般ノ築造物ヲ改築増築スルコトヲ得ス
第十五条 各区内ニ於テ要塞司令官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設若ハ変更スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
一 地表ノ高低ヲ永久ニ変更スル土工即チ堆土、開鑿等
二 溝渠、塩田、排水及灌水
三 公園、育樹場、竹木林、菓園及桑茶畑
四 耕作地
第十六条 各区内ニ於テ陸軍大臣ノ許可ヲ得ルニ非サレハ新設若ハ変更スルコトヲ得サルモノ左ノ如シ
堤塘、運河、道路、橋梁、鉄道、隧道、永久桟橋
第十七条 本章ノ禁止制限ニ違背シ新設改築増築変更シタル家屋倉庫其ノ他ノ築造物又ハ累積物等ハ違背者ヲシテ期限ヲ定メテ之ヲ除去セシメ地形ノ変更ニ係ルモノハ之ヲ復旧セシメ期限内ニ除去復旧セサルトキ若ハ其ノ期限内ニ終了スルノ見込ナキトキ又ハ其ノ方法宜シキヲ得サルトキハ官庁ニ於テ自ラ之ヲ執行シ又ハ第三者ヲシテ之ヲ執行セシメ其ノ費用ヲ義務者ヨリ徴収スルコトヲ得
前項義務者ニ於テ負担スヘキ費用ハ国税ノ滞納処分ニ関スル規定ニ依リ之ヲ徴収スルコトヲ得但シ政府ハ国税ニ次キ先取権ヲ有ス
本条ノ処分ハ第十六条ノ違背者ニ就テハ陸軍大臣之ヲ為シ其ノ他ノ違背者ニ就テハ要塞司令官之ヲ為スヘシ
第十八条 地帯ノ禁止制限ニ関シ官庁ノ処分ニ服セサル者ハ其ノ処分ニ就テノ告示又ハ通達ヲ受タル日ヨリ三十日以内ニ陸軍大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ訴願中処分ノ執行ヲ妨ケス
第十九条 陸軍大臣ハ場合ニ依リ或区域内ニ限リ特ニ本章禁止制限ノ全部若ハ一部ヲ解除スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ解除ノ事項及其ノ区域ヲ告示ス之ヲ変更スルトキ亦同シ
第二十条 本章ノ禁止及制限ハ陸海軍又ハ陸海軍官庁ノ行動又ハ施設ニ対シテハ之ヲ適用セス但シ陸軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域ニシテ海軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域ト相関連スル場合若ハ軍港要港又ハ海軍用地ニ係ル場合並陸軍用地カ海軍防禦営造物ノ地帯及第七条第二項ノ区域ト相関連スル場合ニ於テ当該陸軍官庁若ハ海軍官庁カ此ノ法律ニ掲クル許可又ハ承認ヲ為シ若ハ第十九条ノ処分ヲ為サントスルトキハ陸軍官庁ハ当該海軍官庁ニ海軍官庁ハ当該陸軍官庁ニ協議スルコトヲ要ス
第二十一条 陸海軍以外ノ官庁ニ於テ第七条第九条第十一条乃至第十五条ニ掲クル事項ヲ為サントスルトキハ要塞司令官ノ承認第十六条ニ掲クル事項ヲ為サントスルトキハ陸軍大臣ノ承認ヲ受クルコトヲ要ス
第三章 罰則
第二十二条 第七条及第九条ノ禁ヲ犯シタル者ハ十一日以上一年以下ノ重禁錮又ハ二円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス第八条ニ依リ要塞司令官ニ退去ヲ命セラレ其ノ命ニ従ハサル者亦同シ
第二十三条 第七条及第九条ノ罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス
第二十四条 第十条乃至第十三条第十五条及第十六条ニ違犯シタル者ハ二円以上四十円以下ノ罰金ニ処ス
第二十五条 第十四条ニ違犯シタル者ハ五銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第二十六条 要塞地帯各区及第七条第二項ノ区域ヲ標示スル為ニ設ケタル標石、標木、標札ノ類ヲ移転シ又ハ之ヲ毀壊シタル者ハ十一日以上二月以下ノ重禁錮ニ処シ又ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ過失ニ出テタル者ハ五銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第四章 雑則
第二十七条 要塞地帯創設告示ノ当時家屋倉庫築造物等ノ新設、変更、改築、増築中ニ係ルモノハ此ノ法律ノ禁止制限ヲ適用セス
第二十八条 要塞地帯各区及第七条第二項ノ区域ヲ標示スル標石、標木若ハ標札ノ類ヲ建設スル為ニ要スル敷地ノ買収及使用ニ関シテハ明治二十三年法律第二十三号陸地測量標条例ノ規定ヲ準用ス
第二十九条 此ノ法律ノ施行ニ関シ必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
第三十条 此ノ法律ハ軍港規則及要港規則ノ効力ヲ妨クルコトナシ
第三十一条 明治三十一年勅令第百七十六号ハ此ノ法律ニ依リ第三条又ハ第六条ノ告示ヲ為シタル箇所ニ限リ其ノ効力ヲ失フ