軍機保護法
法令番号: 法律第百四號
公布年月日: 明治32年7月15日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル軍機保護法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年七月十四日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
陸軍大臣 子爵 桂太郞
海軍大臣 山本權兵衞
司法大臣 淸浦奎吾
法律第百四號
軍機保護法
第一條 軍事上祕密ノ事項又ハ圖書物件タルコトヲ知テ之ヲ探知收集シタル者ハ重懲役ニ處シ其ノ情輕キ者ハ一等ヲ減ス
第二條 職務ニ因リ軍事上祕密ノ事項又ハ圖書物件ヲ知得領有シタル者其ノ祕密タルコトヲ知テ之ヲ他人ニ漏洩交付シ若ハ之ヲ公示シタルトキハ有期徒刑ニ處ス
第三條 偶然ノ原由ニ因リ軍事上祕密ノ事項又ハ圖書物件ヲ知得領有シタル者其ノ祕密タルコトヲ知テ之ヲ他人ニ傳說交付シ若ハ之ヲ公示シタルトキハ輕懲役ニ處ス
第四條 許可ヲ得スシテ軍港要港防禦港又ハ堡壘砲臺水雷衞所其ノ他國防ノ爲建設シタル諸般ノ防禦營造物ヲ測量摸寫撮影シ又ハ其ノ狀況ヲ錄取シタル者ハ一月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ又ハ二圓以上三百圓以下ノ罰金ニ處ス
因テ第一條ノ罪ヲ犯シタル者ハ重キニ從テ處斷ス
第五條 許可ヲ得ス又ハ詐僞ノ所爲ニ因リ許可ヲ得テ堡壘砲臺水雷衞所其ノ他國防ノ爲建設シタル諸般ノ防禦營造物內ニ入リタル者亦前條ノ例ニ同シ
第六條 本法ニ規定シタル輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第二條ノ罪ヲ犯サントシテ其ノ豫備ヲ爲シタル者ハ同條ノ刑ニ照シ二等又ハ三等ヲ減ス
第七條 本法ノ罪ヲ犯シ因テ財物ヲ得タル者ハ其ノ財物ヲ沒收シ旣ニ費消シタルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第八條 本法ハ刑法第二編第二章第二節外患ニ關スル罪陸軍刑法第二編第一章反亂ノ罪海軍刑法第二編第一章反亂ノ罪ニ關スル規定ノ效力ヲ妨ケス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル軍機保護法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年七月十四日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
陸軍大臣 子爵 桂太郎
海軍大臣 山本権兵衛
司法大臣 清浦奎吾
法律第百四号
軍機保護法
第一条 軍事上秘密ノ事項又ハ図書物件タルコトヲ知テ之ヲ探知収集シタル者ハ重懲役ニ処シ其ノ情軽キ者ハ一等ヲ減ス
第二条 職務ニ因リ軍事上秘密ノ事項又ハ図書物件ヲ知得領有シタル者其ノ秘密タルコトヲ知テ之ヲ他人ニ漏洩交付シ若ハ之ヲ公示シタルトキハ有期徒刑ニ処ス
第三条 偶然ノ原由ニ因リ軍事上秘密ノ事項又ハ図書物件ヲ知得領有シタル者其ノ秘密タルコトヲ知テ之ヲ他人ニ伝説交付シ若ハ之ヲ公示シタルトキハ軽懲役ニ処ス
第四条 許可ヲ得スシテ軍港要港防禦港又ハ堡塁砲台水雷衛所其ノ他国防ノ為建設シタル諸般ノ防禦営造物ヲ測量摸写撮影シ又ハ其ノ状況ヲ録取シタル者ハ一月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ又ハ二円以上三百円以下ノ罰金ニ処ス
因テ第一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ重キニ従テ処断ス
第五条 許可ヲ得ス又ハ詐偽ノ所為ニ因リ許可ヲ得テ堡塁砲台水雷衛所其ノ他国防ノ為建設シタル諸般ノ防禦営造物内ニ入リタル者亦前条ノ例ニ同シ
第六条 本法ニ規定シタル軽罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス
第二条ノ罪ヲ犯サントシテ其ノ予備ヲ為シタル者ハ同条ノ刑ニ照シ二等又ハ三等ヲ減ス
第七条 本法ノ罪ヲ犯シ因テ財物ヲ得タル者ハ其ノ財物ヲ没収シ既ニ費消シタルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第八条 本法ハ刑法第二編第二章第二節外患ニ関スル罪陸軍刑法第二編第一章反乱ノ罪海軍刑法第二編第一章反乱ノ罪ニ関スル規定ノ効力ヲ妨ケス